黒点相対数補正値kの算出

著者 伊集


概要
 黒点相対数Rは、チューリッヒ分類に基づいて数えた黒点群数gと総黒点数f、そして観測者ごとの補正係数kにより、 R=k(10g+f)という式で計算される。今回、私は2001年6月から2003年1月までの自己の観測値とSIDC が発表した値を比較し、自己の補正係数を0.99および0.95と算出した。ふたつの値が存在するのは、SIDC発表値 の使用を決定値のみと決定値・暫定値両使用の二通りで行ったためであり、決定値のみから算出した値0.99の使用が現段 階で最も確実だと思われる。ただ、この値は1に非常に近いため、これまで通りのk=1でも計算に差し支えないだろう。


はじめに
 黒点数の増減は、太陽活動の活発さを表す度合いとして古くから知られており、1849年スイス・チューリッヒ天文台長の J.R.ウォルフは黒点数の統計法として黒点相対数を考案した。黒点相対数Rは、

R=k(10g+f)      ・・・(1)

という式で表される。gはチューリッヒ分類法によって分けた黒点群(グループ)の数、fはその日観測された黒点の総数、kは 観測方法、観測者および観測地でのシーイングなどによる係数で、観測結果を一定の基準にして見直すための補正の値である。こ のkの値は前記のウォルフが口径8cm、焦点距離110cm(倍率64倍)の屈折望遠鏡を使い直視法で観測した状態をk=1 としたものである。観測者各自のk値を求める方法として、ベルギーのブリュッセルにあるSunspot Index Data Center(SIDC) が発表したInternational Relative Sunspot Number(Ri)の毎日の相対数を各自の毎日の相対数で割り、その比を少なくとも1年分 以上求めて平均することがあげられる。
{以上、天文年鑑2003年度版 太陽面現象より引用}
 私は、2001年の5月から太陽黒点の観測を始め、現在まで日曜・祝日と長期休暇時をのぞいて観測を継続しているが、これま では相対数の算出にあたって独自の補正係数を求めずk=1として行ってきた。個人内で記録をまとめ集計するかぎりにおいてはこ れでもまったく問題はないが、自身の観測精度の確認や他観測者とのデータ比較のためには、独自の補正係数を求めておくことが必 要である。今回の試みは、これまでとりためたスケッチおよび相対数集計データが補正値算出に足る量になったと判断して行った。


算出方法
 普段から太陽観測用として使用している高橋製作所TS−80屈折赤道儀望遠鏡(口径8cm、焦点距離120cm、倍率67倍) で投影法および投影・直視併用法によって得た太陽黒点スケッチから日ごとの相対数を(1)式をもちいて(この時点ではk=1として) 求め、SICD発表の日ごとの相対数をその値で割ることで補正値を算出した。つまりある日の補正値kdは、SIDC発表値Riと私の 観測値Rから
kd=Ri/R         ・・・(2)

と計算される。以上の計算を、これまで同望遠鏡を使って得たスケッチすべてについて行い、結果を平均することで自己の補正値kを決定 した。つまり
k=(Σkd)/N      ・・・(3)

Nは、kdの個数である。この計算に当たっては、表計算ソフト「Excel」を使用した。また、使用したスケッチは

2001年 6月 3.4.7.18.29日
      7月 1.2.3.4.5.7.9.10.11.12.13.14.16.23.24日
     10月 2.3.4.7.9.11.12.13.14.15. 16.19.23.26.31日
     11月 4.8.14.16.18.19.20.21.22.24.27.28.30日
     12月 3.7.11.12.14.16.19日
2002年 1月 11.12.18.22.23.24日
      4月 2.3.4.5.8.15.18.19.23.24日
      5月 2.14.20.21.28.29日
      6月 5.6.7.8.10.19.21.28日
      7月 4.8.11.12.18.20.22.24.31日
      8月 8.9.14日
     10月 2.4.7.10.11.12.15.16.17.22.28.29.30日
     11月 2.4.6.11.13.14.18.27.28.29.30日
     12月 2.10.11.13.16日
2003年 1月 10.14.15.17.20.21.24.28.30.31日

の全136枚である。SIDCの発表値は、地人書館発行の天文観測年表2003年版に収録されているものと、SIDCホームページ (http://sidc.oma.be/)で公開されているものを使用した。


結果
 Excelを使用して作成した 計算結果表補正値変化グラフを次ページに挙げる。今回の計算では、2003年2月14日現在ま でにSIDCから発表されている相対数の決定値が2002年9月分までで、それ以降が暫定値であるため、補正値は2通りの値を算出した。 まず、第一の値は決定値だけを使用し、それにより私のデータは2001年6月から2002年8月までを用いて算出したもので

k=0.9897883≒0.99


であった。  次に、第二の値はSIDCの値は決定と暫定両方とも使用し、私のデータも全て用いて(2001年6月〜2003年1月)算出した もので、

k=0.9525400≒0.95
であった。


考察
 二つの算出方法で異なった値が出たのは、暫定値を使って求めたkd値が全体の平均値を引き下げる働きをしたためと考えられる。この ことは2つの補正値グラフの線形近似、つまり決定値のみのグラフの線形近似がほぼ水平なのに対し、決定値・暫定値両使用グラフの線 形近似は右下がりになっていることから明らかである。このことから、SIDC暫定値は決定値にくらべて低く見積もられる傾向がある のではないかということが考えられるが、この真偽は現段階では不明である。  次に、以後二つの補正値の内どちらを使用するかについては、変更の可能性がある暫定値も使用して求めた値0.95よりは、決定値 のみで算出した値である0.99を使用するほうが現段階で最も確実だと考える。ただ、この値は私がこれまで使用してきたk=1に非 常に近いため、相対数の計算にはほとんど変化を与えないだろう。


感想
 今回はこの様な結果になったが、集計データがさらに増えた時点でもう一度計算してみようと考えている。

2003年4月23日(水)

参考資料
天文年鑑2003年度版{太陽面現象、194ページ}(誠文堂新光社)
天文観測年表2003年度版{太陽活動、244ページ}(地人書館)
アストラルシリーズ7 太陽観測{185ページ}(清水一郎編、恒星社厚生閣)
SIDCホームページ(http://sidc.oma.be/)



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