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2.太陽黒点とその観測について
 
○太陽黒点とは何か?
 太陽は一見すると白く輝く滑らかな円盤のようですが、望遠鏡で観測するとその表面に黒い斑点が確認できます。これが太陽黒点で、西洋では1610年にガリレオ・ガリレイが自身で製作した望遠鏡で初めて発見しましたが、ほぼ同じ頃にクリストファー・シャイナーやハリオット、ファブリチウスも望遠鏡を使って発見したと言われています。
 黒点は、通常は望遠鏡を使わないと観測できない物ですが、特に規模の大きい物だと日の出や日没などで太陽の明るさが弱まったときに肉眼でも見えることがあり、ヨーロッパや中国の古文書に観測記録が残っています。例えば、中国の唐書天文志第6巻には「宝暦2年(西暦826年)3月甲午、日中黒気あり、杯の如し、辛亥日中黒子あり」と書かれています。
 
 
太陽黒点
 
 
 上の写真は、太陽黒点の拡大写真です。一見するとあまり大きくないように見えますが、黒点の直径は小さい物でも1000〜2000km、大きい物では数万km以上にもなり、写真中央右寄りに写っているものでは地球一個が楽に収まるくらいの大きさがあります。
 太陽黒点が黒く見えるのは、周りに比べて温度が低いからです。太陽の表面にあたる光球の温度がほぼ6000Kであるのに対し、黒点の温度は4500Kです。この1500Kという温度差のために相対的に黒く見えているのです。この様な現象は磁場の作用の結果です。黒点は太陽表面からアーチ状に飛び出した磁力線の束を太陽面で切った切り口にあたる部分で、その磁力線の強さは2000〜3000ガウスになります。この強い磁力線束のために、そこではプラズマガスの対流が妨げられ温度が下がるのです(黒点が低温であることと強い磁場を持つことは、1905〜1908年にアメリカの天文学者ジョージ・エラリー・ヘールが発見しました)。
 さらに拡大写真の黒点のひとつに注目してみると、中央の最も黒い部分の周りを薄暗い部分が取り囲んでいる二重構造をしていることがわかります。最も黒い部分は「暗部」、薄暗い部分は「半暗部」と呼ばれます。写真では、この様な黒点が数個まとまって見えていますが、これも黒点の特徴で、いくつかの黒点がまとまってひとつのグループ(黒点群)を形成します。そしてこのような黒点群は磁気画像でみるとN極(白)とS極(黒)のペアを成していることがほとんどです。(下図参照)
 
 
SOHO可視光画像SOHO磁気画像
可視光画像(左)と磁気画像(右)の比較{SOHO/MDI(ESA&NASA)}
 
 
○黒点と太陽活動の関連
 太陽黒点を観測すると日によって黒点群の大きさや形、黒点の数が変化することがわかりますが、観測を数十年も続けるとより長い周期で黒点の数が規則的に増減している事がわかります。この事実は最初1843年にドイツのアマチュア天文家ハインリッヒ・シュワーベが発見し、後にスイスの天文学者ルドルフ・ウォルフが現在用いられている平均周期の値を決定しました。これが黒点数増減の11年周期です。
 そして黒点の数から太陽活動を推しはかる方法として1849年に先のウォルフによって考案されたものが「黒点相対数」です。彼は小さな望遠鏡での観測からでも正確で客観的な太陽活動の評価を行えるように黒点の数を用いた方法を検討し、すでにある黒点群内で黒点が増えることよりも別の場所に新しく黒点群が発生する方が太陽活動に与える影響が大きいと考え、「黒点」の数より「黒点群」の数に重みを置いたこの統計法をあみだしたのです。この黒点相対数Rは、黒点群の数gと黒点の総数f、そして観測者毎の補正係数kから次の式

R=k(10g+f)

で計算され、Rが大きいほど太陽活動は活発であると見なします。この方法は、彼の手によって1610年の観測までさかのぼって適用され、先の黒点増減の周期決定が成されました。黒点相対数はその後、この測定から求めた周期が太陽電波の強弱周期やフレア発生数の増減ともよく一致していることがわかり、約400年という長い適用実績も相まって現在も太陽活動の目安として使われ続けています。
 下の図は、SUN-SPOTでの観測から作成した2001年6月〜2011年7月の黒点相対数月平均値の変化グラフです。観測数がまだ少なく自前のデータから11年周期を再現するには至っていませんが、第23サイクルの極大期だった2001年以降は相対数が減少し、2008年12月に極小になっている様子がわかります。
 
相対数変化グラフ
 
 
さて、この章で出てきた太陽活動と言う言葉についてですが、これは太陽中心部での核融合反応の事でなく、太陽表面現象やコロナの活動を指しています。核融合反応の結果発生する光や熱の総量は太陽定数と呼ばれるほど常に一定であり、したがって太陽内部での活動もほとんど一定で、11年の周期的変化は起こさないと考えられます。一方、周期的変化を見せる太陽黒点や太陽電波の放射・フレアなど太陽表面での現象やコロナは、太陽表面から飛び出している磁場の活動と深く関わっています。つまり、黒点相対数から求められた太陽の活動度は「太陽表面における磁場の活動度」とするのがより正確と思われます。しかし、太陽の表面や内部の磁場活動の詳細については、現在でもあまりよくわかっておらず、今後の研究が待たれます。
 
 
○黒点発生の性質
 
黒点の発生緯度を11年以上にわたって調べ、縦軸を黒点の緯度、横軸を観測した年にとったグラフを描くと興味深い規則性が見られます。まず最初の極小期に黒点が北・南緯35度くらいから発生し、極大期を経て次の極小期に向かうにつれて黒点の発生緯度が下がってきます。そして次の極小期のある時期から再び高緯度に黒点が発生しはじめ、以下同じような振る舞いを繰り返すのです。この振る舞いがグラフに描く形が羽を広げたチョウチョのように見えることから、「蝶形図」と呼ばれます。
 
 
マウンダー蝶形図
 
 
上の図は、2001年6月から2011年7月までに分科会で観測できた黒点群1211群の出現緯度データを使って描いた蝶形図です。観測を開始した2001年頃には南北とも緯度30°まで黒点が出現していましたが、年が下るにつれて出現緯度が下がっています。 
 
上で挙げた黒点相対数月平均値の変化グラフと蝶形図は、観測記録・研究発表のページでもご覧頂けます。 
 
 
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