トランジスタ技術2000年10月号「CRL最適定数設計ガイド80」

電流制限回路の電流検出抵抗

回路図1

回路図の説明
 電流制限回路は負荷に流れる電流を制限してパワー半導体と負荷の過電流と温度上昇による破損を防止する保護回路です。
負荷に流れる電流を負荷と直列に繋いだ電流検出抵抗R1で検出しています。
抵抗R1の両端にはTR2のベース・エミッタが接続されているので電流検出抵抗R1の両端電圧が約0.6Vになった時にTR2がONしてTR1のベースをグランド(0V)に落としTR1の出力を遮断します。
回路図1の電流制限回路は定電流特性になります。

  
<図1>定電流特性

回路の用途
モータ制御回路及びDC電源の過電流保護

基本動作のための定数決定

[定電流回路]

・R1=0.6Ω2Wの理由と事情
  電流検出抵抗R1は    
 R1(Ω)=VBE(V)/電流制限値(A) <式1>
 VBE=0.6V
 できまります。
 電流制限値を1Aにしたい場合
 R1=0.6/1=0.6Ω
  抵抗の消費電力P(W)は
  P(W)=I2R×ζ  <式2>
  ζ:安全係数(1.5〜3)
  P=1×1×0.6×3=1.8W
 ∴ R1には 0.6Ω 2W の抵抗を使用します。

・ R2=220Ω2W理由と事情
 トランジスタTR1のベース抵抗です。
 TR1のhFEを20としたとき、電流制限値が1Aならばベース電流は1/20Aになり、電源電圧はDC12Vな 
 のでR2=12V/0.05A=240Ω
 ∴ R2=220Ω
 消費電力はP=(V2/R)×ζ <式3>
 P=(12×12/220)×3=1.96W
 ∴ R2には 220Ω 2W の抵抗を使用します。

・ TR2に2SC2655を使う理由と事情
 出力トランジスタTR1のベース電圧を遮断するトランジスタです。
 遮断時はTR1のベース抵抗R2=220Ωに流れる電流がTR2にも流れます。
 その電流はI=Vcc/R2=12/220=54.5mA
 十分に余裕を見てここでは2SC2655(50V,2A,hFE70;東芝)を使います。

・ TR1に2SC2334を使う理由と事情
 電流制限値は1Aに設定していますが、定格電流1Aのモータの起動電流は約5A程度あります。
 又、モータなどの誘導負荷では逆起電圧の影響で電源電圧が上昇します。トランジスタの耐圧は電源電圧の2倍以上の物を選びます。
 モータ起動電流を考慮してここでは2SC2334(100V,7A,hFE40;NEC)を使います。

ワンランクアップ !

・ 部品のバラツキを考慮しよう
 セメント抵抗の電流検出抵抗は低抵抗では精度の良い抵抗が作れません。そのため抵抗値許容差が10%程度になります。
 また、トランジスタのVBEも若干バラツキがあるので電流制限値にもバラツキがでます。
 電流検出用に作られた抵抗で精密シャント抵抗(抵抗値許容差±0.5〜5%)や無誘導フィルム抵抗(抵抗値許容差±1%)、イサプランシャント抵抗(抵抗値許容差±0.5〜5%)などがあります。
   
   <写真1>セメント抵抗   <写真2>無誘導フィルム抵抗 <写真3>イサプランシャント抵抗

・ 温度変化
 電流検出抵抗は消費電力が大きく発熱も大きいので温度により抵抗値が変化します。
 また、抵抗値は小さいほど温度係数が大きくなります。
  電流検出用の抵抗器はセメント抵抗では100〜400ppm/℃の温度係数があります。
  温度変化による抵抗値変化が問題になる場合はイサプランシャント抵抗(温度係数±30ppm/℃)などを使用します。

・電流制限値を可変にした回路
 回路図2

回路図の説明
電流検出抵抗R1を可変抵抗POT1と抵抗R3で分圧しています。
@電流制限最小値:
  R1の抵抗値で決まります。
A電流制限最大値:
 電流制限最小値とR3,POT1の抵抗比で決まります。
 電流制限最大値 = 電流制限最小値×(POT1+R3)/R3 <式4>

[可変型定電流回路]

・ R1=0.6Ω20Wの理由と事情
R1の抵抗値は電流制限最小値で決まります。
電流制限最小値は1AなのでR1=VBE/CLmin=0.6V/1A=0.6Ω
  R1の消費電力は電流制限最大値で計算します。
  <式2>よりP=I2R×ζ=3×3×0.6×3=16.2W
  R1には0.6Ω20Wの抵抗を使用します。 

・ POT1=200Ω、R3=100Ωの理由と事情
 POT1を最大にしたときに電流制限値は最小値になります。
 POT1を最小にしたときに電流制限値は最大値になります。
  電流制限値を1〜3Aにする場合は(POT1+R3)とR3の抵抗比が3:1になる必要があります。
  3A=1A×(POT1+R3)/R3
   R3=POT1/2
   POT1は容量の小さなものを使用するため、R1より充分大きい抵抗値にします。
   ここでは、POT1を200Ω、R3を100Ωにします。
 
・ TR1に2SC4552を使う理由と事情
  定格電流3Aのモータの起動電流は約15A程度あると考えます。
  モータなどの誘導負荷では逆起電圧の影響で電源電圧が上昇します。トランジスタの耐圧は電源電圧の2倍以上の物を選びます。
  モータ起動電流を考慮してここでは2SC4552(60V,15A,hFE100;NEC)を使います。


                  
   参考文献:
                     トランジスタ規格表、1998年、CQ出版社
                     半導体総合セレクションガイド、1996年、日本電気(株)
                    見城尚志・高橋久,実用電子回路設計ガイド,1981年,総合電子出版社
                     熊坂伊久男;http://www.geocities.co.jp/Technopolis/5348/


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