トランジスタ技術2000年10月号「CRL最適定数設計ガイド80」

パワーMOS−FET高速ドライブ回路(6N137)のCR定数

回路例1

回路図の説明
高速フォトカプラ6N137(アジレント・テクノロジー)の出力をNPNとPNPのプッシュプル(push−pull)トランジスタでFETゲートのON/OFF(ゲート引抜き)を行なっています。
FETでHブリッジを構成した場合、Hブリッジ上段のNチャンネルFETのソース側は回路のグランド(0V)より浮
いていて電位があるため上段のFETのゲートドライブ(gate drive)電源は専用の絶縁電源を用意します。
高速フォトカプラ6N137の最大定格と伝達遅延時間を表1に示します。

供給電圧 Vcc 7V
平均入力順電流 If 20mA
入力逆電圧 5V
イネーブル電圧 Ve 5.5V
出力コレクタ電流 Io 50mA
出力コレクタ消費電力 85mW
出力コレクタ電圧 Vo 7V
伝達遅延時間0→1 tPLH 48ns
伝達遅延時間1→0 tPHL 50ns
動作温度範囲 −40〜+85℃
保存温度範囲 −55〜+125℃
 <表1>6N137の最大定格と伝達遅延時間

回路の用途
モータ制御でのFET及びIGBTのゲートドライブ

基本動作のための定数決定

[LED制限抵抗]

・ R1=680Ωの理由と事情
 フォトカプラ6N137の発光ダイオード入力電流制限抵抗です。
 発光ダイオードの入力電流範囲は6.3〜10mA。
 信号はDC5VのロジックICで行なうので、抵抗値R1は 
 R1=5V/(6.3〜10mA)=794〜500Ω
∴ R1=680Ω とします。

[電源回路]

・ R2=680Ωの理由と事情
 フォトカプラ6N137のエネイブル電圧を作る定電圧回路の制限抵抗です。
 6N137のイネイブル(enable)電圧はVcc〜Vcc+500mVなります。
 VccはDC5Vなのでイネイブル電圧は5.1Vのツェナーダイオードで作ります。
 エネイブル電圧をDC5.1V,10mAのツェナーダイオードで作るとき、GNDと−12V電源から作るのでR2
 の抵抗値は
 R2=(12V−5.1V)/10mA=690Ω  
 消費電力はP=I2×R×ζ <式1>
 安全係数ζ=1.5〜3
 P=10×10―3×10×10―3×690×ζ=0.069×3=0.2W
 ∴ R2は680Ω、1/4W とします。

・ ZD1に1Z5.1を使う理由と事情
フォトカプラ6N137の供給電源を作ります。
供給電圧は絶対最大定格でDC7V(1分間)なのでDC5V電源を用意します。
ツェナーダイオードの公称電圧値の関係で5.1Vツェナーを使います。

・ C1=0.1μF/25Vの理由と事情
  6N137の供給電圧DC5.1Vのリップル吸収用コンデンサです。
  静電容量は0.1μF,耐圧DC25Vを使用します。

・ R3=5.6KΩの理由と事情
 イネイブル電源の入力電流を決める抵抗です。
  イネイブル電流は平均で−0.9mAなのでR3=5.1V/0.9mA=5.66KΩ
  ∴ R3=5.6KΩ

[トランジスタ回路]

・ R4=2.2KΩの理由と事情
 トランジスタTR1のベース電流を決める抵抗です。
 電源電圧がDC12Vで、ベース電流を5mAにしたときにR4=12V/5mA=2.4KΩ
 ∴ R4=2.2KΩになります。

・R5=220Ωの理由と事情
  トランジスタTR1のバイアス(bias)抵抗です。
  トランジスタのVBEは約0.6V。
  ベース抵抗が1KΩで電源電圧は12Vなのでバイアス抵抗を220Ωにしても抵抗端子の電圧比は約2VありVBEの約0.6Vより十分大きいのでここでは220Ωとします。

・ R6=330Ωの理由と事情
  トランジスタTR2のバイアス抵抗です。
  トランジスタのVBEは約0.6V。
  ベース抵抗が4.7KΩで電源電圧は±12Vなのでバイアス抵抗を330Ωとしても抵抗端子の電圧比は約1.6VありVBEの約0.6Vより十分大きいのでここでは330Ωとします。

・ R7=4.7KΩ1/2Wの理由と事情
 トランジスタTR2のベース電流を決める抵抗です。
 電源電圧がDC±12Vで、ベース電流を5mAにしたときにR7=(12V+12V)/5mA=4.8KΩ
 ∴ R7=4.7KΩになります。
 消費電力はDC24Vで計算するのでP=V2/R×ζ <式2>
 P=24×24/4700×3=0.36W
 ∴ R7=4.7KΩ 1/2W とします。

・R8=4.7KΩ1/2Wの理由と事情
 トランジスタTR3、TR4のベース電流を決める抵抗です。
 電源電圧がDC±12Vで、ベース電流を5mAにしたときにR8は4.7KΩになります。
 消費電力はDC24Vで計算するのでP=V2/R×ζ=0.36W
 ∴ R8=4.7KΩ 1/2W とします。

・ R9=100Ωの理由と事情
 R9はFETのゲート抵抗です。
 FETのゲート・ソース間にはソース接地入力容量Ciss(1000〜3000pF)があるので高速で応答させるにはR9は小さい方が望ましく、且つプッシュプルトランジスタの過電流保護を兼ねるので10〜200Ωの抵抗を選びます。
 PWM周波数25KHzでR9とCissの遅れが0.3μsecまでにしたい時、Ciss=3000pFでは、
 R9×3000pF=0.3μsec
 R9=0.3/0.003=100Ω
 ここではR9=100Ωの抵抗を使用します。


ワンランクアップ !

・ FETの高速ドライブ
 FETはドレイン電流が大きいほどゲート・ソース間容量Cissが大きくなります。
 CissはFETの内部にある容量なので変えることはできません。
 応答時間が遅くなる場合はゲート抵抗R9を100Ωより小さくします。
 20Ω<R9<100Ω <式3>


                    参考文献:
                    HPオプトデバイスデータブック,1994年,アジレント・テクノロジー(株)
                    熊坂伊久男;http://www.geocities.co.jp/Technopolis/5348/

目次に戻る