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紫外線 (日焼け) の恐怖

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日焼けした肌は健康的 ?

一昔前までは日焼けは体によいと信じられていました。しかし今は違います。眼科的には白内障の大きな原因ですし、皮膚科的にも様々な病気をもたらすことが明らかになってきました。唯一の日焼けの効能は、骨を丈夫にするビタミンDの合成促進作用ですが、それでも健康のために積極的に日焼けをする理由になるほどのものではないと考えられるようになってきました。ここでは皮膚に及ぼす紫外線の作用について考えてみます。
オゾンホールの話題が連日報道されていたことがあります。そのためにフロンガスの使われていたスプレーは店頭から姿を消しました。この問題は特に欧米を中心に深刻な事態と受け止められています。それは有色人種より白人の方が一般に紫外線による被害が大きいからです。フロンガスにより地球の周囲を取り巻くオゾン層が破壊されると降り注ぐ紫外線量が増加し、皮膚癌の増加が懸念されています。
そうです。紫外線は皮膚癌の原因の一つと考えられているのです。でも紫外線の皮膚に対する作用はそれだけではありません。ここでは紫外線の皮膚に対する影響について考えてみます。

紫外線とは

紫外線とは太陽から放射される電磁波(光の一種)です。赤や青色に見える可視光線も電磁波の一種ですが、紫外線は紫色の光より波長が短く、肉眼では見えません。紫外線は波長の長いものから、UVA(紫外線A波)、UVB(紫外線B波)、UVC(紫外線C波)、の3種類に分けられます。地表に到達するのは、A波 と B波 です。
日焼けで肌が黒くなるのは、皮膚の中にあるメラノサイトという色素細胞が、紫外線の働きでメラニンという黒い色素を作るからです。

B波 の作用

A波とB波の皮膚への傷害日焼けで皮膚が赤くなり、炎症を起こすのは B波 のせいです。炎症が治まった後にはメラノサイト(色素細胞)が増えてくるので、数日経ってから皮膚の色が黒くなるのも B波の効果です。シミソバカスの原因でもあります。皮膚の DNA (遺伝子) を傷つけ、後に皮膚癌を生じさせるのも主に B波 の作用と考えられています。
波長が短いため、皮膚の表面近くにはダメージを与えますが、深部にはあまり影響が及びません。

A波 の作用

日光を浴びてすぐに黒くなる人もいますが、それを引き起こすのが A波 です。B波 と同様、シミソバカスを悪化させます。
波長が長いため、B波 より皮膚の深部まで光が届きます。そのため皮膚深部の真皮といわれる部分にダメージを与え、皮膚のシミやタルミの原因になると考えられています。

サンバーンとサンタン

強い日焼けの例日焼けは英語ではサンバーンとサンタンに分けて表現されます。サンバーンとは B波 が皮膚に引き起こすヤケドのことです。普通は赤くなってひりひり痛むだけですが、重傷になると水ぶくれを生じ、重傷のヤケドと同様に入院を要する場合もあります。サンタンとは日光にあたってすぐ、皮膚に黒い色素沈着を生じる日焼けのことです。A波 がサンタンを起こします。普通は A波 と B波 が同時に作用します。この写真は、海外でいきなり強い日焼けをし、サンバーン(紫外線によるヤケド)を生じた例です。日焼けしてから数日経っているので、炎症は少なくなってきましたが、色素沈着が強く生じてきています。
しかし B波 だけを遮る効果の高い日焼け止めクリームを上手に使うと、サンタンだけを生じ、痛い思いをせずに日焼けした黒い肌になれます。 (皮膚のタイプによってはサンタンを生じない人もいます。このような人は、日焼けよって強く傷害されるタイプの皮膚ですので、無理して日焼けしようとしないでください。) また日焼けサロンの装置から出る紫外線もほとんどが A波 なので、皮膚の炎症を最低限に抑えて日焼け (サンタン) できます。ただし A波 も皮膚に傷害を与えますので、皮膚の健康のためには、サンタンもサンバーンと同様に控えるのが理想的です。

日焼けによる発癌のメカニズム

日焼けで赤くなった皮膚の遺伝子 (DNA) にはたくさんの傷がついています。これらの傷は修復酵素によって治されるのですが、長年にわたり遺伝子を傷つけすぎると、傷の修復が追いつかなくなります。遺伝子の傷が治されないと突然変異が起きるようになり、その結果皮膚に癌細胞が生じてくることになります。
メラニンと呼ばれる皮膚の色素は紫外線に対するバリアーの働きをします。ですから肌の色が白い白人の方が紫外線に弱いことになります。日本人でも色白の人で、日焼け後に赤くなるだけで色が黒くならないタイプの肌を持つ人がいます。このような人は色黒の人より、同じ様に紫外線を浴びても DNA の傷の量がずっと多くなりますので、より注意して日焼けを防ぐ必要があります。

何歳から日焼けを防ぐか

皮膚には2種類の老化があります。ひとつは年齢による老化です。年を重ねるごとに全身の細胞が老化していくわけですが、皮膚も例外ではありません。これは若返りの薬でも発明されなければ誰でも逃れることのできないものです。
もうひとつは光老化と呼ばれる老化です。これは紫外線を浴びた量に応じて皮膚に生じてくる変化をいいます。具体的には、シミ、ソバカス、皮膚の深いシワ等です。皮膚癌も光老化の結果といえると思います。しかし光老化は努力すれば防げるものであることが分かってきました。つまり日焼けをしなければよいのです。
人は18歳までに生涯で浴びる全紫外線量の約半分を浴びてしまうそうです。生まれてから浴びた紫外線の総量が光老化に関係するとすれば、幼小児期から紫外線を避ける習慣を身につけることが重要になります。真っ黒に日焼けした元気な子、というのは皮膚にとっては不健康なことであると考えるようにしたいものです。
特に紫外線の被害が大きいオーストラリアでは、親が子どもに日焼け止めクリームを塗ることが、法律で義務づけられています。オゾンホールが問題になっている現代においては、日本人もこのくらいの意識があって当然、と私は考えます。
25歳を過ぎてから強い日焼けをすると、時間がたっても日焼け後の色素沈着がとれず、シミが残るといわれます。でも実際は25歳からでは遅すぎます。生まれた直後から、なるべく日焼けしないように生活するのが皮膚の光老化を防ぎ、年をとってからもシミやシワの少ない若々しい肌を保つ秘訣なのです。

上手な日焼けの避けかた

日焼けを起こす紫外線は薄い雲や霧を通過します。ですから曇りの日でも日焼け対策は欠かせないことになります。紫外線は透明な水なら 30cm は透過しますので、海や屋外プールで泳いでいる時も要注意です。雪や砂に太陽光が反射している状態は更に紫外線量が増えますので、より完璧な予防対策が必要です。
真夏の明るい日中は特に紫外線が多いので、日焼け止めを使っていても長時間太陽光を直接浴びない方が無難です。日本を含む温帯地方では、午前10時前と、午後3時以降は、日焼けを起こす波長の紫外線が少ないため、比較的安全な時間帯です。午前10時から午後3時までの15分間の紫外線量は、朝や夕方の3時間分にも匹敵します。外で行う作業は、なるべく朝夕の安全な時間帯を利用するとよいでしょう。(特に紫外線の多い季節は)
どうしてもに夏の日中に外出しなければならない時は、日焼け止めクリームを使った上で、ツバのある帽子やパラソルも使うとさらに効果があります。できれば帽子やパラソルの色も白より黒っぽいもののほうが光を吸収するので、肌まで届く紫外線量はずっと少なくなります。
人間の肌が日焼けして黒くなるのも、皮膚の組織のダメージを少なくするために、自然に備わった防御機構だったのです。

日焼け止めクリームの使い方

日焼け止めクリームにはパラアミノ安息香酸等の紫外線吸収剤が使われています。これらの成分が皮膚に強く結合して、発汗や水泳の際に洗い流されないようにするためには、外出する30分以上前に外用する必要があります。
それでも激しいスポーツなどで日焼け止めがはがれ落ちてしまうこともあり得ます。ですから SPF が大きな製品でも、たくさん汗をかくような状況では2、3時間おきに塗りたしていった方が安心です。

SPF とは

B波を遮る効果の度合いを示しています。肌が赤くなる日焼けが始まる時間を、日焼け止めをつけることで、何倍に延ばすことができるかを数字で示しています。平均的な日本人の肌の場合、真夏の午後の日差しで、平均20分ほどで肌が赤くなり始めます。SPF が15 の日焼け止めを使うと
20分×15=5時間 つまり 5時間効果が持続するということです。
SPF が50以上の製品も見かけるようになりました。確かにそのような製品はより長時間紫外線を遮る力があるのですが、外用剤としては粘度が高く、使い心地が余りよくないものが多いようです。ただし UVカットをうたっている製品でも、SPF の表示がないものは、ほとんど紫外線を防ぐ作用がありません。(暮らしの手帳 1998年6、7月号より) ですから SPF の表示のある製品であることを確認し、それが15から25くらいのものを選べば、まず間違いはないでしょう。

PA とは

A波によって起こる肌が黒くなる日焼けを、どのくらい防げるかを示しています。
PA+: 効果がある
PA++: 効果がかなりある
PA+++: 効果が非常にある
A波は、肌から深く真皮までとどいて、肌の弾力を保つ組織に害を及ぼし、シワやタルミの原因を作ります。ですからA波を防ぐPAの度合いにも注意して、日焼け止めを選んでください。

光老化の結果と考えられる皮膚疾患

日焼けしても普通、発赤は数日でひきます。その後に色素沈着をもたらしますが、それも2、3週間で元に戻ります。よほど強い日焼けの場合は、その後も一部にシミとして色素沈着が残ったり、逆に色素脱出が生じたりすることがあります。
でも一見皮膚の状態が日焼け前のそれに戻ったように見えても、実は光老化が確実に進んでいるのです。若い頃からの日焼けが積み重なって、光老化は進行していきます。その結果がシミや皮膚のタルミ、シワなのです。脂漏性角化症も紫外線によって生じる皮膚の良性腫瘍です。しかし日光角化症となると、それはもう前癌状態と考えられます。そしてシミやシワのようにありふれた疾患ではありませんが、最終的には基底細胞癌や、有棘細胞癌といった皮膚癌が、光老化の終着駅として控えているのです。




手術後、外傷後の遮光(しゃこう) について

形成外科の手術の後では、よく遮光が必要になります。遮光とは紫外線を避けるという意味です。要するに日焼け止めを塗ればよいのですが、光老化を防ぐ場合よりも厳密に紫外線を避けなければなりません。

日焼けを避けなければいけない傷

単純に縫合しただけの傷の場合は、普通は遮光の必要はありません。遮光が必要なのは、皮膚の比較的浅い部分に傷がついた場合です。レーザー治療後、電気メスでホクロを削り取った後、グラインダーで皮膚を削った後、植皮術後、などです。浅いヤケドやかすり傷の後も遮光が必要です。

遮光の必要性

外傷後の色素沈着遮光が必要なわけは、皮膚の表面が傷ついて炎症のある時期に紫外線を浴びると、メラノサイト (色素細胞) が増えて、なかなかとれない色素沈着を残すからです。日焼けしなくても色素沈着を生じることがありますが、日焼けをするとさらに強く、とれずらいものになります。
これは左の頬骨部にかすり傷を受傷した症例です。もともと肝斑 (しみ) の合併もありました。1週間くらいで傷が乾き、きれいなピンク色の肌になったので、本人は浅い傷でよかったと安心していたそうです。しかし受傷後2、3週間経過後、ピンク色だった部分に茶色い色素沈着が生じてきました。(写真上) これは炎症のあるピンク色の肌を、無防備に日焼けさせたために生じた色素沈着です。この色素沈着は、レーザー照射後の色素沈着などと同じ性質のものです。
この方の場合は、頬が黒ずんでからあまり時間をおかずに治療を開始できたため、意外に早く色素沈着がとれてきました。下の写真は厳密な遮光と、メラニン色素の合成をじゃまして皮膚の黒ずみをとる作用のあるハイドロキノンクリームを併用して、約1ヶ月後のものです。この例では幸いにして治療効果がすぐに表れていますが、治療が遅れると、非常に長い間このような色素沈着に悩まされることを覚悟するべきです。この様なかすり傷や、浅いヤケドの場合は、受傷直後から遮光を徹底することで、外傷後の色素沈着を最小限に食い止めることが可能です。

遮光の期間

遮光をする期間は、皮膚の炎症がとれて、赤みがなくなるまでです。手術法や患者さんの体質により、遮光の必要な期間はケースバイケースなのですが、たとえば電気メスでホクロを削り取った場合ですと、術後すぐから、最低3ヶ月、できれば半年くらいの間遮光をお願いしています。
シミのレーザー治療後では、最低半年、色素沈着が残っている場合は1年間くらい厳密な遮光を行ないます。もともとシミの場合は日焼けが原因で生じてきますので、照射部はもちろん照射部以外の露出部も、外出前には日焼け止めを塗り、シミの発生を予防しておくことが望ましいと思います。

遮光の方法

照射後数日はガーゼで紫外線を遮り、カサブタが取れてからは日焼け止めクリームを塗ってもらいます。日焼け止めクリームは、SPF が15から25くらいのものをお勧めしています。もちろん SPF が25以上あっても、外用してみて違和感がなければ使っていただいて結構です。ただ私は、患者さんに対して SPF を過信しないように、と注意しています。そして SPF に関係なく、最低朝と昼の2回は日焼け止めを塗ってもらうようにお願いしています。5月から8月までは日が長いので、夕方に外出する際には、更にもう1回日焼け止めを塗った方が安心できます。
日焼け止めをあまりたくさん塗ってしまうと、そこだけ白っぽくなることが多いので、子どもや男性のようにお化粧しない方は不自然にみえます。そのような場合は、不自然にみえない程度に、薄くのばしてしまってかまわないと思います。しかし SPF を測るときの基準の塗りかたは、実際に使うときよりかなり多めなので、日焼け止めクリームを薄くのばして使用すると、そのクリーム本来の性能がだせない可能性があります。ですからあまり SPF を信用せず、薄く塗るぶん塗る回数を増やすことで、十分な遮光の効果を得るようにしています。
日焼け止めが必要な期間は、一日中室内にいる予定の日であっても日焼け止めを塗ってもらいます。なぜなら、急用ができて外出せざるを得ないこともありうるからです。雨の日も、曇りの日も、もちろん晴れの日も、1日2回は患部に日焼け止めを塗ることを習慣にしてもらいたいのです。


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