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”しみ”を考える

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しみはお肌の大敵といわれています。一般にしみの意味するところは後天的に皮膚に生じた茶色の色素斑というところでしょう。しかししみといわれる色素斑は、医学的に見るといくつかの病気がごちゃ混ぜにされています。実はそれぞれの病気の種類によって治療法が全く異なるので、しみといってもその実態がどの病気なのかを、正しく判断することが非常に大切です。

”しみ”のいろいろ

肝斑 (かんぱん)

肝斑しみの中の代表的な疾患です。ひとことで言えば中年女性の両方の頬に生じた左右対称性の茶色い色素斑です。女性ホルモンの影響を強く受けて発生するため、妊娠や、出産をきっかけに発生することもあります。男性にはほとんどできません。日焼け (紫外線) 、化粧品かぶれなどの炎症等で悪化します。
治療法は内服薬が主流です。トラネキサム酸という止血剤の一種が非常に効果的です。もちろんビタミンCも悪くはありませんが、トラネキサム酸ほどの効果は期待できません。ただこの薬も、よくなったところで中止すると肝斑が再発してくるようです。ですからかなり長期間内服を続ける必要があります。副作用は胃腸障害が主で、重篤なものはありません。
外用剤も重要です。もっとも基本となるのが日焼け止めクリームです。紫外線をカットすることで、しみの悪化を防ぐ訳です。その他にハイドロキノンクリーム、コウジ酸クリーム、ビタミンAクリーム等があります。いずれもある程度の効果がありますが、単独で肝斑を消す程ではないようです。

老人性色素斑

ひどい日焼けをした後に残ってしまうしみがこれです。老人性といっても25歳以上になるとできる可能性があります。老人性色素斑の原因は日焼けによる皮膚の老化現象です。ですから完全に日焼けを避ければ予防できます。ただし幼少期からの日焼けが加算された結果ですので、子どもの頃から日焼けをしないような習慣が大切です。
顔にできることが多いのですが、手の甲にできることもあります。しかし前腕にできることはあまりありません。その理由は、手の甲は冬の間も露出しているので、紫外線にさらされる時間が長いからだと思います。ヤケドやかすり傷の後で日焼けしても、この色素斑が残ってしまうことがあります。この場合も日焼け止めで完全に紫外線を遮れば予防できます。
老人性色素斑レーザー症例 治療は外科療法が主です。形成外科用のグラインダーやメスで皮膚を薄く削る方法や、電気メスによる焼灼、レーザー照射等です。どの方法でも治療が可能です。
術後2週間して、カサブタが取れたての頃は色素斑が消失し、再生した皮膚がきれいなピンク色を呈します。(照射後2週間の写真参照) しかしこのまま普通の肌色になるわけではなく、ほとんどの例で、術後1ヶ月くらいで再び色素沈着して黒っぽくなってしまいます。(照射後1ヶ月の写真参照) これを術後色素沈着と呼びますが、根気よく日焼け止めクリームを使って遮光を続けると、多くの場合、3ヶ月から6ヶ月くらいでこの色素沈着は取れてきます。術後色素沈着が強い時は、ハイドロキノンクリームなど、メラニン色素の合成をじゃまする作用のあるクリームを併用します。

照射後色素沈着 傷が治って皮膚が再生するのが最も早いのは、やはりレーザーです。つまりガーゼを当てている期間がもっとも短いということです。だいたい3日から、5日くらいでガーゼがとれ、日焼け止めクリーム外用やお化粧をすることができます。術後色素沈着もレーザーが一番弱いようです。その理由は最近のレーザー装置が色素細胞のみに反応するように設計されており、正常の皮膚の細胞をほとんど傷つけないからです。
レーザーで消しゴムで消すように簡単にしみが取れて、翌日から普通にお化粧できると勘ちがいしている方も多いのですが、最新のレーザーをもってしてもそれは不可能です。しかも術後色素沈着もほとんどの症例で起こります。ですからこの事実を術前によく理解していただくことが大変重要です。この写真の症例でも、照射後1ヶ月の時点では、もとより濃いくらいの色素沈着を来たしています。日焼け止めによる遮光を徹底し、ハイドロキノンクリームも併用したところ、照射後4ヶ月の時点では術後色素沈着が消失し、満足のいく結果が得られています。
最終的な治療成績はレーザーでも、あるいはそれ以外の方法でも、その方法に習熟さえしていれば大きな差は生じてこないように感じています。

脂漏性角化症

脂漏性角化症術前術後老人性疣贅 (老人性いぼ) とも呼ばれます。ほとんどの場合老人性色素斑ができてから、その上に生じてくる茶褐色の腫瘍 (できもの) です。ですから紫外線による皮膚の老化現象の一環と考えてよいでしょう。普通は表面がざらざらしていて盛り上がっていますので、しみには含めない場合もあります。しかし隆起がわずかですと老人性色素斑と区別がつけずらいこともありますので、ここでは広い意味でしみの一部と捉えることにしました。
治療法は老人性色素斑とほとんど同じです。ただし脂漏性角化症の方が盛り上がっている分だけ厚みがありますので、レーザーでは1回でとりきれないことがありえます。盛り上がりの大きな場合は、レーザーよりも電気メスで焼灼したほうが効率がよいと思います。
この症例はもともと老人性色素斑だったところに生じてきた脂漏性角化症です。盛り上がっていて表面がざらざらした部分だけレーザー照射しました。矢印の部分はもともとあった老人性色素斑の部分で、ここはレーザーを照射していませんでした。そのために脂漏性角化症が取れてしまうと、今度は残った色素斑が気になってきます。

両側性遅発性太田母斑様色素斑

両側性遅発性太田母斑様色素斑長い名前ですが、これもしみといわれる色素斑の一部を占めています。以前は肝斑と混同されたり、太田母斑と間違われたりしていました。最近になってひとつの病気として独立したカテゴリーと考えられるようになってきました。
発生原因はわかりませんが、ほとんどの場合肝斑と合併しています。ただ肝斑が茶色い色素斑なのに対し、この色素斑は茶褐色から少し青みがかっていることが特徴です。これはメラニン色素が肝斑より深いところにあることを示しています。発生部位も肝斑が頬骨部中心なのに対し、これはこめかみや、鼻翼 (小鼻) にも色素斑が及んでいることがあります。この症例は頬に肝斑がありますが、小鼻 (矢印の部分) 、こめかみにも色素斑がありました。しかもその色調が青褐色で、肝斑のそれとはかなり感じが違います。恐らく両側性遅発性太田母斑と呼んで間違いない症例だと思います。
治療は太田母斑と同じようにQスイッチレーザーが有効です。ただしレーザー照射で悪化しやすい肝斑の合併がありますので、注意が必要です。まずはトラネキサム酸などで肝斑を治してから、残った両側性遅発性太田母斑様色素斑をレーザーで治療するとうまくいくことが多いようです。ただしレーザーの照射は老人性色素斑と異なり、1回だけでは不十分で、太田母斑のように数回の照射を必要とします。

ソバカス

ソバカスはしみとは異なるものと考えていますが、場合によってはしみとまぎらわしい場合があり間違われることもあるので、このページで取り上げておきます。
ソバカスは遺伝的な体質で生じてきます。色白の人にできることが多い、小さな色素斑の集まりですが、顔だけでなく、胸にもできることがあります。日焼けによって悪化するので、やはり日焼けを避けることが必要です。
ソバカスを治して欲しいと来院する方の中には、実はソバカスに似た肝斑の方もいらっしゃいます。普通肝斑はべったりとしたひとつながりの色素斑ですが、ソバカスのように点状に広がる場合もあるからです。ここでよくこの二つを見分けないと治療に失敗します。ソバカスはレーザーに反応する場合があるので、一部のソバカスにテストして、改善するようなら全体に照射していきます。肝斑ならレーザーは無効ですから、トラネキサム酸内服になります。


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