形成外科ドクター


ヤケドの治療、植皮

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ヤケドが1ヶ月以上経っても治らない場合は原則として手術が必要です。まずヤケド表面の細菌で汚れたところを削りとります。次に患者さん自身の体から薄くはぎとった皮膚をそこに移植 (植皮) します。

植皮をする意味

ヤケドに植皮する意味は大きく分けて3つあります。

細菌感染を防ぐ

ヤケドの傷が1ヶ月経ってもふさがる気配がない時は、手術せずに軟膏療法を続けても更に1ヶ月以上かかることが多く、その間に細菌感染が悪化して、最悪の場合、敗血症という死につながる恐ろしい感染症に陥ることもありえます。それを予防するもっとも効果的な手段が植皮になります。

ヒキツレを防ぐ

深めの2度より深いヤケドの場合、必ず瘢痕 (はんこん) を生じます。瘢痕とはヤケドに限らず、外傷を受けた部位がふさがった後に残る傷あとのことです。関節部に深いヤケドを受けると、その瘢痕がヒキツレて瘢痕拘縮 (はんこんこうしゅく) と呼ばれる機能障害を起こしてきます。つまり、肘に受けたヤケドなら瘢痕拘縮を起こすと曲がったままになってしまい、真っ直ぐに伸びなくなってしまうということです。それを予防したり、あるいは治療するために必要な治療も植皮になります。これが2番目の植皮の意味です。

皮膚癌を防ぐ

3番めの意味は、少し意外かもしれませんが発癌の予防ということです。深いヤケドが治った後の瘢痕拘縮をほっておくと、20年以上経って、皮膚癌を生じてくることがあるのです。これを瘢痕癌とも呼びますが、その正体は有棘細胞癌 (ゆうきょくさいぼうがん) と呼ばれる代表的な皮膚癌で、治療が手後れになると転移を起こして命取りになります。
重傷のヤケドに対して適切な植皮治療をせずに放置すると、何十年も経ってから突然瘢痕部に潰瘍やしこりを生じるようになります。それが発癌のしるしです。実際に瘢痕拘縮のひどいヤケドの傷あとはかなりの頻度で発癌するようです。しかしこの事が一般の人に知られていないために、治療が手後れになる方が後を絶ちません。ですからある程度以上の瘢痕拘縮の患者さんには発癌の可能性も含めて十分説明し、積極的に手術を行うように心がけています。

ヤケド治療の実際

植皮の実際熱湯で両足のふくらはぎから足背にかけてヤケドを受傷しました。1ヶ月経っても治る気配がないため、植皮を行いました。植皮に用いた皮膚は本人の左大腿部からダーマトームと呼ばれる特殊なナイフで採取しました。厚さは 0.3mm くらいです。この程度の厚さの皮膚ですと、採取部に目立つ瘢痕を残すことはありません。術後の写真を見ると、左大腿内側に赤い部分がありますが、これが皮膚をとった後の傷あとです。まだ術後3週間ですので、少し目立ちますが、6ヶ月以上経てば普通の肌色に戻ると思います。
手術中はかなり出血しますが、電気メスを使って丹念に止血します。止血が十分でないと植えた皮膚の下に血が溜まって植皮に失敗することがあるからです。
植えた皮膚はステイプラーと呼ばれるホッチキスに似た針で固定しました。その後は軟膏のついたガーゼでおおい、ギプスで1週間固定します。
このように手術が成功すれば瘢痕拘縮は起こりません。そしてもちろん将来の皮膚癌の発生も予防できると考えてよいでしょう。

瘢痕癌を予防する

瘢痕拘縮術前術後約30年前、10歳の頃にズボンに火がついて両足にヤケドを受傷しました。写真の左側が術前の右膝後面で、右側が植皮術後1年半後のものです。
30年前のヤケドはかなり重傷で、4ヶ月以上入院したそうです。手術は受けていませんでした。両膝の瘢痕拘縮がありましたが、特に右膝後面から右大腿後面にかけての瘢痕拘縮が強く、膝を真っ直ぐに伸ばすことができませんでした。しかも最近ヒキツレた瘢痕部に潰瘍を生じて傷が治りづらくなってきました。ヤケドの瘢痕がくずれて潰瘍ができてきたら要注意です。放置するとかなり高率に癌化することを説明して、手術の同意を得ました。
病理検査の結果、幸いなことに癌細胞は見つかりませんでしたので、結果的には単なる瘢痕拘縮の手術になりました。術後膝の周囲径が明らかに太くなり、植皮したところ以外でも、瘢痕が柔らかく変化して赤みも改善されました。
このように瘢痕拘縮部に植皮をしてヒキツレを取ると、植皮部がよくなるのは当然ですが、その周囲も劇的に改善します。それはヒキツレていると常に瘢痕部に緊張が加わっているため、その刺激で瘢痕の炎症がとれないからだと考えられています。植皮してヒキツレを取ると緊張がなくなるので、瘢痕の炎症がとれ、周囲の瘢痕まで柔らかくなって赤みがとれます。するとひび割れて瘢痕部に傷がついたりすることも少なくなります。このような状態にしておけば、瘢痕癌の発生をかなり防げると考えています。




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