−第7回− PITTBURGH STEELERS'95


第7回は前年まさかのチャンピオンシップ敗退から、チームを立て直して
スーパーボウル出場を果たした95年のスティーラーズを、お送りします。
グレッグ・ロイドとケビン・グリーン、ロッド・ウッドソンなどが活躍していた
正真正銘の「鉄人軍団」であったこの頃が、ピッツファンの「あの頃は楽し
かった」ではないでしょうか。


●PITTBURGH STEELERS'95 −あと3ヤード。頂点を目指す鉄人軍団−
 レギュラーシーズン:11勝5敗(AFC中地区1位/地区優勝2位)
 シーズン最終成績 :第30回スーパーボウル出場 VS DAL 17−27 LOST
 攻守成績     :攻撃6位/ラン12位・パス8位
          :守備3位/ラン2位・パス6位
 ヘッドコーチ   :ビル・カウアー(4年目)
 
●95年時のチーム状況
 名将チャック・ノールの後を受けた若き闘将ビル・カウアー。周囲の心配をよ
そに、カウアーは着々と名門チームを再建していきました。就任3年目の94年に
は、悲運の王者BUFに替わるAFCチャンプとして期待されるほどに戦力を整
えましたが、地元のチャンピオンシップでまさかの大波乱。SDとのゲームは意
外な接戦となり、第4Qで17−13と4点のビハインド。最後のドライヴでエンド
ゾーンまで9ydに迫りますが4D3のギャンブルを余儀なくされます。ここでQ
Bニール・オドネルから投じられたパスはRBバリー・フォスターのキャッチ寸
前でLBデニス・ギブソンに叩き落とされ、悪夢のようなシーズン終了となって
しまいました。

 「あと3ヤード」。この言葉を胸にSBを目指し始めた95年シーズンでしたが、
戦力流失が相次ぎ、主な移籍選手でもRBフォスター、TEエリック・グリーン、
OGデュバル・ラヴやKゲイリー・アンダーソンとその名を知られた顔ぶれ。さ
らに開幕戦でCBロッド・ウッドソンがシーズンエンドの負傷退場などその前途
は多難を予想されました。

 しかし「鉄人軍団」はSB出場をあきらめることなく前進します。ロイドやグ
リーンを中心とした守備陣はよくランを止め、ウッドソンの穴はSSからコンバー
トしたカーネル・レイクが頑張って埋めました。攻撃陣も安定したOLの後ろか
らバム・モリスとエリック・ピーグラムがランを進め、WRヤンシー・シグペン
や「スラッシュ」コーデル・スチュワートら若い力が活躍して、ふたたび地区優
勝を果たし、地元でチャンピオンシップを迎えます。まるで昨季の悪夢を思いだ
すような、シンデレラ・コルツとの対戦でしたが、今回は勇者ジム・ハーボーの
ラスト・ドライヴも防ぎきって、ついにSB出場を果たします。肝心のSBは最
強DAL相手に善戦、第3Qには奇襲オンサイド・キックで攻撃権を取り返すな
ど健闘しますがQBオドネルの致命的な2INTで追撃しきれず敗退しました。

 現在から俯瞰すれば、この年のPITはとても「PITらしい」シーズンを送っ
ています。戦力流失と負傷者の穴をコンバートと若手登用で見事に埋め、守備陣
は変わらず強力、剛健なOLを基礎に展開される骨太のラン攻撃。さらにミスの
少ないオドネルとエキサイティングな「スラッシュ」スチュワートのQBチェン
ジ戦法を用い、シグペンとアンドレ・ヘイスティングス、チャールズ・ジョンソ
ンら若手WR陣とピーグラム、ジョン・L・ウィリアムズら万能派RBも揃った
パス攻撃も魅力でした。あまり注目されませんが、この当時のレシーバー陣の有
能さは、派手ではありませんがかなりのもので、現在に至るまでこの陣容に並ぶ
面子を揃えられない点も、00年までのPITとスチュワートの不振の大きな要因
となっていたくらいです。

●95年時の中心選手たちと、彼らのその後
1.ビル・カウアー(92年就任・ノースカロライナ州立大)
 就任の92年から97年まで6年連続でプレイオフ出場、95年にはSB出場を果た
した若き闘将。大変優れた「プレイヤー・コーチ」で選手の兄貴分としてチーム
を統率、95年も主力選手の流失や負傷にも、若手起用やコンバートなどの大胆な
選手起用で崩れかかるチームを立て直し、SBまでチームを牽引した。

 サイドラインでの怒声が目立つが、ただの荒くれではなく、STと規律を重視
し、安定した攻撃と積極的な守備でタフでシブいチームを作り上げる。この方針
には学生時代のHCルー・ホルツと、プロでの師匠格だったマーティン・ショッ
テンハイマーの影響が強いとされる。

 カウアーもショッテンハイマーと同じく、自らのスタッフの中から有能な人材
を輩出することでも知られている。名の知られているところでは、
○92−94年守備コーディネイター:ドム・ケイパース
前CARヘッドコーチ、前JAX守備コーディネイター、新HOUヘッドコーチ

○92−94年DBコーチ、95−96年守備コーディネイター:ディック・ルボー
前CIN守備コーディネイター、現CINヘッドコーチ

○97−99年守備コーディネイター:ジム・ハスレット
元CAR守備コーディネイター、現NOヘッドコーチ
*この人はどちらかと云えばジム・モーラ門下ですが関係者として入れました。

○92−94年ラインバッカーコーチ:マーヴィン・ルイス
前BAL守備コーディネイター、現WSH守備コーディネイター

と云った面子。歴代守備コーディネイターは全員HCとして職を得ていることか
らも、PITコーチ陣の有能さが周囲に知られていることが窺がえる。現PIT
守備コーディネイターのティム・ルイスも今後どこかのチームにHCとして招聘
される日もくるだろう。

2.ニール・オドネル(QB14・90年D3巡:メリーランド大)
 派手さはないが、安定・確実なプレースタイルを持つQB。95年のSB出場に
も少なからぬ貢献をするが、SBでの驚愕の2INTで一気に評価を落とした。
この年のレイティングは87.7(TD17・INT7)と好成績を残しているものの、
「冒険をしない安易なパスに逃げている」という評や「ここ一番での逆転、無理
にでもボールを進めることは期待できないプレースタイル」という評価もある。

 SB出場のエースQBながら、どうも落ち着きというか貫禄が感じられず、ピ
ンチになると、動揺が顔と目に浮かんでしまうのでイマイチ信頼に欠け、まさに
「おどおどオドネル」(GAORA実況タージン氏の名言)になってしまう。

 しかしVIP待遇で移籍しながらも大苦戦したNYJ時代、控えに甘んじたC
IN時代を経て、TENに移籍した99年に負傷のスティーヴ・マクネアを好リリー
フしてチームのSB出場に貢献する。超一流ではないが、それでもやはり一流の
グッドQBであると証明した、と思える。

3.バイロン(バム)・モリス(RB33・94年D3巡:テキサス・テック)
 &エリック・ピーグラム  (RB20・95年FA:ノーステキサス大)
 &ジョン・L・ウィリアムズ(RB22・94年FA:フロリダ大)

 この95年のラン攻撃を支えた面々。PITのRBと云えばバリー・フォスター
かジェローム・ベティスだが、SB出場年には複数RBで乗り切っていた。成績
はピーグラムが213回813yd、モリスが148回559yd。ウィリアムズは3rdダウンで
の活躍を果たした。

 ウィリアムズはこのSB出場を最後に現役引退。モリスは翌年にBALに移籍
2年間エースとして活躍。CHIを経てKCで99年まで働いた。プライベートの
トラブルが多く、一度も1000ydを走れないやや不満の残るキャリアになってしまっ
た。ピーグラムは97年にNYGを経てSDでキャリアを終えている。

4.ヤンシー・シグペン(WR82・92年FA:ウインストンセーラム州立大)
 PITパス攻撃の中心選手。この年の成績はレシーヴ85回1307yd、5TD。か
つての名WRであるジョン・ストールワース、リン・スワンに比べられるような
活躍だったが、好条件で移籍したTENでは負傷からほとんど活躍できずにキャ
リアを終えることになってしまった。

5.ダーモンティ・ドーソン(C63・88年D2巡:ケンタッキー大)
 頑健OL陣の代表的選手。プルアウト、リードブロッカーまで務めるスーパー
センター。フォスター、モリスやベティスらの前で彼が走るとまるでOLが二人
走っているような、PIT重量ラン攻撃の典型的シーンが展開された。昨季まで
で負傷引退するが、マイク・ウェブスターに並ぶ、PITラインを支える名選手
だった。当時のOLにはレオン・シアシーやジョン・ジャクソンら強力なOTも
おり、Gにもトム・ニューベリー、ジャスティン・ストレルジック、ブレンディ
ン・スタイらと層が厚く、堅実な攻撃陣をサポートした。

6.「スティール・カーテン」の再来にして「ブリッツバーグ」最強守備陣
 誰も彼も良い選手なので、全員紹介。「育成のPIT」らしい選手構成。

LE :ブレントソン・バックナー(94年D2巡:クレムソン大)   
    当時は期待の若手。この年3サック。
NT :ジョエル・スティード  (92年D3巡:コロラド大)  
    3−4守備の要。トリプルチームでも下がらない隠れた名選手。
RT :レイ・シールズ     (94年FA:ノーカレッジ)  
    大学出身でない本物の叩き上げ。この年8.5サック。

OLB:ケビン・グリーン    (93年FA:オーバーン大)
    チームトップの9サック。ロイドとのコンビは守備陣の象徴だった。
ILB:レボン・カークランド  (92年D2巡:クレムソン大)
    ランストップ、パスカバー共に要求され、120点で応える名ILB。
ILB:チャド・ブラウン    (93年D2巡:コロラド大)
    今はSEA守備陣の中心。OLBは翌年のロイド負傷から。
OLB:グレッグ・ロイド    (87年D6巡:フォートバレー大)
    「ミーン・グリーン」の正統後継者。グリーンとのコンビは最凶?  

CB :カーネル・レイク    (89年D2巡:UCLA)
    本来はS。でもCBでもプロボウル選出。今季はBALで活躍中。
CB :ウィリー・ウィリアムズ (95年FA:ウエスタンカロライナ大)
    ウッドソン負傷を受けて抜擢。チームトップの7INTで応える。
SS :マイロン・ベル     (94年D5巡:ミシガン州立大)
    普段はニッケルだが急遽Sに。2INTを記録し大過なく務める。
FS :ダレン・ペリー     (92年D8巡:ペン州立大)
    ケガに強く、コンスタントに活躍する好DB。この年も4INT。
CB :ロッド・ウッドソン   (87年D1巡:パーデュー大)
    開幕戦で負傷するもSBで奇跡の復活。現在はBAL守備陣の重鎮。

 SBで敗れてしまったとはいえ、強力な守備陣と看板のラン攻撃に加えて、
「スラッシュ」の変幻自在なマルチタレント攻撃など見どころの多いシーズン
でした。「あと3ヤード」のPITと「シンデレラ」INDのチャンピオンシッ
プは今でも名勝負として語られています。SB出場以降、徐々に力を落として
いったPITですが、01年はなかなかの好成績を残しました。今季はかつての
力強さを取り戻してくれるのでしょうか。