***王宮バーベキュー大会***


 火の季節といわれるハットゥッサの夏の夕暮れ。
肌を刺すように照りつけたいた太陽も沈み 心地よい風が
昼間の熱さを冷ますように王宮の庭の木々の間をすり抜けていた。
 今日の夕食は 王宮の中庭でバーベキューだ。3姉妹達は 野菜や肉の用意をし、
三隊長達は 炭火の用意をしていた。炭火に火を起こすとパチパチ音をたてて 
炭は破裂するように燃えていた。
日が陰るに連れて 炭火のオレンジ色が綺麗に浮かび上がっている。
「さあ、用意が出来たわ。そろそろ皇帝陛下やユーリ様を
お呼びしましょう。リュイ シャラ、陛下とユーリ様を呼んできて。」
ハディは双子達に呼びに行かせた。

「わあ、バーベキューなんて久しぶり。この世界にもバーベキューなんてあったのね。
早くお肉焼こうよ。なんだか急にお腹空いてきちゃった。」
ユーリが無邪気に言った。
「あっ、その前にカイル様にユーリ様。油が飛んでお衣装が汚れては大変で
ございます。ハディの作ったエプロンをお召しになってくださいませ。」
 ハディはこの日のために人数分の エプロンを作ってあったのだ。
バーベキューをする人数分のエプロン。カイル、ユーリ、イル、キックリ、
三隊長、三姉妹の10枚のエプロンを 夜も寝ないで昼寝して
丁寧にひと針、ひと針縫っていたのだ。
 ハディはお手製のエプロンを広げると皆は呆然とした。

「・・・・・。ねえ ハディ。どうしてエプロン薔薇柄なの・・・。」
ユーリが おそるおそる言った。
赤の生地に 黒い薔薇模様のエプロン。それも全員おそろいの柄・・・。
「えっ、300円/1mで すごく安かったから。お揃いの三角巾も
作りましたのよ。ほらっ!」
ハディは得意そうに『パン!』と三角巾を広げた。
「どこかの薔薇男が 嗅ぎつけてこなければいいんだけど・・・。」
ユーリが心配そうに言った。
「いくらなんでも ここまで あいつが来るわけないさ。それよりユーリ、
せっかくハディが作ってくれたんだ エプロンをつけようじゃないか。」
みんなは仕方なく ハディの作ったエプロンをつけた。もちろんお揃いの薔薇柄三角巾も。
「まあ、ユーリ様。新婚ホヤホヤの若奥様のようで とってもエプロン姿が
お似合いですわ。」
「ありがと。ハディも三角巾がとっても似合ってるよ。
カイルはどう?・・・ぎゃはは、皇帝陛下のエプロン姿!これは カメラに収めておかなくっちゃ。
誰か 写真撮って!撮って!ミッタンのエプロン姿もなんだかとってもプリティー。
みんなで記念撮影しなくっちゃね。」
「えっ、ユーリ様照れますなぁ。」
ユーリに誉められて?ちょっと嬉しいミッタンナムワであった。
調子にのって 別にする必要のない三角巾までつけていた。
「さあ、記念撮影も終わった事だし、そろそろバーベキューをはじめようか。」
カイルが言った。
「そうだな。」
ここにいるはずのない奴の声が カイルとユーリの間から聞こえた。
やっぱり 予感は的中!どこぞのピラミットの国の薔薇男に 嗅ぎつけられてしまったのだ。
「なんで あんたがいるのよ。ラムセス。それも私とカイルの間に座っているの?!」
「ド○ゴンレーダーならぬ 薔薇レーダーが反応してな、
急いで 飛んできたんだ。さあ、細かい事は気にせずにバーベキュー始めようじゃないか。
ちゃんと差し入れも持ってきたんだぞ。薔薇肉だ!」
「ちょっと ラムセス。漢字の変換がおかしいよ。バラ肉でしょ。」
「オレのPCは 薔薇でもう登録されてあって変えることができないんだ。
だからバラバラ死体も薔薇薔薇死体になってしまう。どうだすごいだろう。」
「所詮ラムセス程度じゃ バラ肉なんだな。松坂牛でも持ってくれば
歓迎してやったんだが 仕方ないヒッタイトーエジプト間の友好も大切だ。
今回は 入れてやるとするか。」
 ヒッタイトーエジプト間の友好も含めて ヒッタイト王宮の中庭で
バーベキュー大会が始まった。

「さあ、最初にタンから焼いたほうがいいですわね。イル=バーニ様、
鉄板に油を塗ってくださいます?」
平民のはずのハディは 貴族の書記官であるイルに命令していた。
どうやらこのバーベキューで一番張り切っているのは ハディのようだ。
「あっ!キックリそれは私がキープしておいた肉だぞ。主人の私をさし抜いて
食べるとは何事だ!」
「カイル様。弱肉強食と言う言葉をしらないのですか?強いものが 勝つのです。」
「えっ?キックリ?!焼肉定食もあるの?どこどこ?」
ヒッタイトへ来る前 ユーリは漢字テストで『○肉○食』に
焼肉定食と入れた事があった。どうやら 話が全く噛み合っていないらしい。
 猛烈な勢いで 肉や魚に群がる皇帝陛下&ご側室とその側近達。(おまけラムセス)
ハタから見ると エサに飢えているピラニアかハイエナのようだ。

「ほーほほほ。皇帝陛下ともあろう者が 肉に群がっているなんて
なんというお姿。このような陛下に 軍事や祭事がお任せ出来るのかしら?
のう、ウルヒ。私達は おしとやかにバーベキューでもしようではないか。
ほーほほほ。」
高笑いしながらのナッキーとウルピーの登場である。
カイル達の隣で同じくバーベキューをするつもりらしい。

「ラムセスに続いて また変なのが来たな。」とカッシュ。
「なんだって 俺達の隣でバーベキューするんだよ。」とミッタンナムワ。
「食材に 黒い水を入れられなければいいんだが・・・。」とルサファ。

「ウルヒ!さっさと用意をするんじゃ。早く肉を焼け!ワタクシはタマネギ食べたい。
箸つまみに きゅうりの漬物も用意するのじゃ。野沢菜漬けも食べたいな。」
ナキアのワガママに振りまわされるウルヒ。この日のために用意した
割烹着と給食当番用の帽子をかぶって ウルヒは一人でバーベキューの準備をしていた。
「ウルヒ!よくもワタクシのキープしていた肉を取ったな!!!」
「申しわけございません。ナキア様。(ビクビク)」
ナキアは帝位に関する執着心も強いが同じくらい 食べ物に対する執着心も強いらしい。

「なんだか ウルピーは苦労しているんだな。」とカッシュ。
「そうだな 俺達も苦労しているつもりだが ウルピーに比べれば まだまだだな。」とミッタンナムワ。
「ガンバレ!ウルピー。」とルサファ。

「ねえ、ちょっと野菜が余ったから隣のナッキーとウルピーにお裾分けしようか。」
「そうだね。リュイ。」
リュイとシャラは余った野菜をナキアとウルヒに分けてあげた。
カイルに敵対心を持っているナキアだったが 貰えるものは貰っておくタチらしい。
特にお礼も言わなかったが 野菜を貰って嬉しそうだ。特にウルヒが。

「さあ、もうそろそろバーベキューもクライマックス!オレの持ってきた
薔薇肉でも焼こうじゃないか。」
ラムセスはたっぷりタレに浸かった薔薇肉を鉄板の上に置いた。
見かけは何の変哲もない通称『薔薇肉』はジューと音を立てた。
するとどうであろう 薔薇肉が1枚1枚集まって 薔薇の花をかたどっているではないか!
黒い鉄板の中央で 大きな薔薇が一輪まるで 生きているかのように咲いている。
「すごーい、ラムセス。これは感心しちゃうわ。」ユーリが正直に言った。
「ラムセス!将軍やめて手品師に転職した方がいいんじゃないか?そうすれば
まるくヒッタイトーエジプト間は収まることだし。」とカイル。
「何を言う!ムルシリ!オレ様のような真面目な軍人がいなくては 国は治まらないんだ。
オレ様はエジプトにいなくてはならない人間なのさ。」
「真面目?・・・ラムセスに真面目なんて言葉を使ったら真面目が文字化け起こすぞ。」
カイルが負けずと言い返した。そんなカイルとラムセスの争い?をよそに
「薔薇エプロンに薔薇三角巾。それに薔薇肉なんて三拍子そろって
なんて縁起がいいんでしょう。」とハディ。

「でも この薔薇肉、どんな味がするんだ?」イル=バーニが呟いた。

「シーン・・・。」

薔薇肉に感動はしたが誰も箸をつけようとは しなかった。

「こうやって 花びらを1枚1枚とって 薔薇ダレにつけて食べるんだ。うまいぞ。」
ラムセスが 説明した。
「あっ、もう暗くなってきたわね。夜は魔が強まるし もう宮殿のなかに入りましょ。」
「そうですわね、ユーリ様。夜風はお体に障りますわ。」
「私も明日の元老院会議の打ち合わせがあったんだ。キックリ!イル!
打ち合わせするぞ。」
「私達 三隊長も武器でも磨きますかな。」
薔薇肉に感動だけした皆々は ラムセスと薔薇を一輪のこして去って行ってしまった。

残されたラムセスは「好き・・・嫌い・・・」と呟きながら
可憐に鉄板の上で咲く薔薇肉の花びらを1枚1枚 箸でむしりとり
さみしそうに食べていました。

 

〜ごちそうさまでした〜