20号続き




 ウルヒが王宮に忍び込んだのはカイルを殺すためではなくユーリの服を
盗むためだった。
 ユーリの服、泉が満ちること、イシュタルが昇る。
 この3つが揃えばユーリをヒッタイトから飛ばすことができるのだ。
 ナキアは最後の悪あがき。王宮から逃げ出し、魔力をつかって人を操り、
カイルとユーリの結婚式の日取りを裏から操って、泉が満ち、イシュタルの昇る23日後にした。

「とうとう結婚式の日取りが決まったわよっー!」
 ハッティの3姉妹の長女が嬉しそうに大きな声で叫んだ。
「さあ! これから準備に取り掛からなくっちゃね!」
「忙しくなるわね」
 双子たちもお互いに顔を見合わせて嬉しそうにしていた。
「日取りが決まったからには、これからが大変です。まずは招待状を作らなくてはなりませんな。
ええと、招待状は誰に出しましょうか……。まずは隣国の来賓として、ホレムヘブ王、
ラムセス将軍、ネフェルト様、黒太子さま……」
 イルが指折り数えているとカイルが怒鳴り始めた。
「だぁー! ラムセスなんざ呼ばなくてもいい! せっかく出番が終わったと
思ったのに! うぎぎぎぎぎぃ!」
「えー、いいじゃん。ラムセス呼んだって! それに久しぶりにネフェルトにも
会いたいし……」
 ユーリは黒い瞳をキラキラと輝かせながら言った。
「絶対にダメだ! イル、いっそのことこの結婚式は身内だけでやる
ジミ婚にしようじゃないか! そうすれば余計な奴を呼ばないで済む!」
 どうやらカイル、暴言を吐いてしまったようである。妻ユーリが信じられない表情で
夫を見ていた。
「ひ、ひひひひどいわっ! カイル! ジミ婚だなんて! 結婚式は
たくさんの人に祝ってもらいたいと思っていたのに! 女の子の憧れなのに! 
披露宴に薔薇を飾ってゴンドラで登場したかったのに! ひどい! わああああああ!」
 ユーリは黒い瞳からボロボロ涙を流して、カイルの前から走り去ってしまった。
「ま、待ってくれ! ユーリ! 私が悪かったぁ!」
 カイルは焦ってユーリを追いかけていってしまった。
「あーあ、せわしない夫婦だな。まあ、お二人がいなくとも決められることは
たくさんありますからね。引き出物に式の進行。どれをとっても
ヒッタイト帝国にふさわしい式にしなくてはな!」
 米粒のように小さくなった皇帝夫妻を目で追いながら言った。
「イル=バーニさま、引き出物のことで私に名案があります! 鉄の国ヒッタイトと称して、
引き出物に「鉄ナベ」なんていかがでしょう? 皆さま喜びますわ!」
 提案をしたのは王宮女官長のハディ。
「えー、姉さん。ナベなんてかさばる物、招待客にとったら持ち帰りに不便よー」
 シャラが迷惑そうな顔をして姉に言った。
(ナベを引き出物に出したカップルの皆さん、ごめんなさい BYねね・笑)
「そう……だな。ナベは持ち帰りに困る来賓の方がいらっしゃるかもな……」
 イルは困ったような顔をしてハディを見た。
「そうですか……。ちょっと失礼します……」
 イルに案を却下されてしまったハディはシュンと落ち込み、その場から下がってしまった。
「あーあ、イル=バーニさまが姉さんを傷つけた!」
 シャラが容赦なくイルに言った。
「そそそそそ、そんなつもりで私は言ったのではない! だいたい双子たちがナベは
良くないと言ったのではないか! おーい! ハディ待ってくれー!
「鉄ナベ」も考え直すからー!」
 イルは急いでハディを追いかけて連れ戻した。

「はあはあ、息が切れた。引き出物はあとで考えるから、3姉妹はユーリさまのご衣裳に
ついて考えてくれ!」
「はぁい! イル=バーニさまっ!」
 イルに引き戻されたハディは大変嬉しそうであった。
「やっぱりドレスと言えば薔薇よね薔薇! お色直しは真っ赤な薔薇ドレス
なんてどう?」
「いいわねっ! 赤は天河カラーでもあるしね」
 こんなところにも薔薇ムセスに侵された双子の姉妹がいた。恐るべし! 薔薇ムセス!
そしてユーリのお色直しの衣装はいかに?(笑)
「ねえねえねえねえ、ちょっと」
 ハディは急に声を小さくして双子に小さく手招きをした。
「なあに? 姉さん?」
「あのさ、結婚式にいくら包めばいいと思う? 三? 五? それとも三人で十とか?」
「包む金額でユーリさまとカイルさまのこれからの対応が変わったら大変ですものね。
どうしましょう?」
「うーん?」
 双子も腕を組んで悩み始めた。いくら包むか? これって結構難しい問題である(笑)。

 しばらくすると、先ほどユーリを追いかけて走り去ったカイルが、パタパタと戻ってきた。
「みんな! 大変だ! 聞いてくれ!」
「どうしたんですか? 陛下。ユーリさまに逃げられましたか?」
 イルは座席表を決めながらカイルの話に耳を傾ける。
「逃げられたことはさておいて。それよりも! 今日(9月20日)から23日後を
数えると10月13日なんだ!」
「それがどうか致しましたか?」
「10月13日はなんと――仏滅なんだ!」
(↑本当です。カレンダー見てね)
「えっ!」
 イルも3姉妹も目と鼻と口で3つのOを作って驚いた。
「いくら天文学的に日取りが良くとも、仏滅でいいのであろうか?
もう一度式の日取りを考え直したほうが……」
「そうですな、陛下! 天文学的に良くとも仏滅じゃあ良くないですな!
もう一度式の日取りは考え直しましょう! 今度は天文博士だけでなくて
暦博士も呼んで!」
「そのほうがいいですわね」
 式の日どりの変更に賛成した。

「チッ! 仏滅があったか……」
 結婚式の日の延長を聞いて、ナキアは眉間にシワをよせ舌を鳴らした。
 ナキア、珍しくも計算ミス。仏滅まで考えに入れていなかったようだ。
惜しくもナキア、仏滅でなく(大安じゃないとダメかも)泉が満ちて
イシュタルが昇る日を、これから待たなくてはならない。

 そこで一言ユーリ。
「いつからヒッタイトは仏教に……」
 


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いやぁ、本当にクライマックスって感じですねっ!
今まで「そろそろ天河も終盤」と言い続けてきましたけど、
本当にクライマックスですね。そんな感じがします。
カイルの「おまえはどこにもやらない」ってシーンよかったですね。
2人の気持ちがひしひしと伝わってくるようでしたわ。
ユーリの服持って、馬車に乗って箱の中に入っているナキアさま。
まぁ〜ワルぅ〜♪



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