<ニュース要約>

救急出動2万件

 

 マサチュセッツ州立大学(UMAS)医学部の救急ヘリコプター「ライフ・フライト」は、このほど発足以来の出動回数が2万件に達した。UMASライフ・フライトの発足は1982年9月15日だから、20年足らずで2万件、毎年平均1,000件ずつの出動をしてきたことになる。また搬送した患者の数は平均1,300人、最近は年間1,500人にも達している。

 UMASライフ・フライトはニューイングランド地域を対象とするヘリコプター救急システムで、ウースターにある大学病院を拠点とし、半径200kmの範囲で救急活動を続けている。


UMASライフ・フライトの活動範囲。
大学病院のあるウースターを中心とする半径200kmの地域。

 UMASライフ・フライトの特徴は、第1にドクターとフライトナースが乗っていることで、米国としては珍しい。全米200を超えるヘリコプター救急プログラムの中で、常にドクターが同乗しているところは、おそらく十指に満たないであろう。通常はフライトナースとパラメディックの組み合わせである。

 もう一つの特徴は出動件数の多いことで、それゆえ20年間で2万件を超えることになった。このように年間1,000件を超えるヘリコプター救急プログラムも、アメリカでは珍しい。しかも使用機は1機だけである。

 この1機はBK117A4双発機。20年前に全米42番目のヘリコプター救急プログラムとして発足した当初はベル206Lロングレンジャー単発機を使っていた。それが1984年にドイツ製のBO105双発機に替わり、1986年から今のBK117になった。

 なお1994年夏からは6年ほど2機のヘリコプターを使用した。本来の1号機はマサチュッセツ州立大学の病院構内で、1日の休みもなく24時間待機をしているが、2号機は補足的な使い方でパーマーというやや西よりの町に拠点を置き、午前9時から午後9時までの12時間待機であった。

 しかし、2号機は2000年10月20日をもって取りやめとし、その代わりに大型のドクターカーを導入した。悪天候や整備の都合でヘリコプターが飛べないときは、医療スタッフが車に乗って現場へ向かう体制としたのである。

 出動目的の大半は病院間搬送。アメリカでは専門病院がそれぞれに分かれているため、患者の病状によって専門病院へ運ぶ病院間搬送が多くなる。また交通事故などの現場出動は全体の35%程度で、このときは路上、空き地、運動場、野球場などに着陸する。しかし、あらかじめ設定した着陸場も多く、対象地域内に病院ヘリポートも含めて2,500か所にもなる。

 こうした体制によって、現在では年間1,500人以上がライフ・フライトの救急治療を受け、搬送されている。

【ニュース解説】
 このニュースにあるマサチュッセツ州立大学は、日本の札幌医科大学との間で、救急医療の国際交流が盛んで、研究者や学生の研修派遣などもおこなわれている。

 ところで、欧州の救急ヘリコプターにはほとんどドクターが乗る。これにより現場での初期治療を確実におこなうことができる。それに対してアメリカではフライトナースとパラメディックが乗る。ドクターは乗らないが、それに匹敵するような応急治療をおこなうことが認められている。

 日本はドクターの乗る「ドクターヘリ」制度がはじまったばかりで、カバーする範囲もごくわずかな地域にすぎない。一方で、自治体の消防・防災ヘリコプターも救急にたずさわっているが、他の任務も多いので、救急出動は2000年度の実績が全国68機のヘリコプターで1,400件余りしかなかった。そのうえ日本の救急救命士は米国のパラメディックのような権限がなく、医療行為はほとんどできないため、救命効果は必ずしも高くない。

 したがって日本のヘリコプター救急の現状は、どこか中途半端な感を免れない。まだ不完全であると同時に、将来どうあるべきか残念ながら不明確でもある。日本独自の方式をつくるのは、そんなに簡単ではないという声もあるが、人の命のかかった制度である。ゆっくり構えてはいられないはず。それでなくても欧米に20年以上の遅れを取っているのである。(児玉則史)

(HEM-Net、2002.7.9)

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