
<米国調査報告書>
第3章 リーチ・エア・アンビュランス (つづき) ![]()
4 ヘリコプターの出動 救急事案が発生すると、現場から各カウンティの救急本部に911番の電話がかかってくる。救急本部にはリーチ社のコミュニケーション・スペシャリスト(CS)が常駐していて、その場でヘリコプターが必要かどうか判断することができる。
必要と判断されたときは、そこから3か所のヘリコプターまたは飛行機に対して出動指示を出す。コミュニケーション・スペシャリストと航空機との連絡は衛星通信によっておこなわれる。
出動指示を受けたヘリコプターは4分以内に離陸する。パイロットのほかにナースとパラメディックが乗り組む。その背後には会社の嘱託医がいて、メディカル・ディレクターとして「メディカル・コントロール」をしている。この医師は救急医療について25年以上の経験を有する。
出動内容は現場救急と病院間搬送が半々である。
5 活動範囲 ヘリコプターは通常、それぞれの拠点から半径200マイル(320km)の範囲を飛行する。その範囲は下図に示す通りである。
(リーチ・エア・アンビュランスのサンフランシスコ周辺3拠点からのヘリコプター飛行範囲)また飛行機はサンタローザを拠点として半径350マイル(560km)の範囲を飛ぶ。
ヘリコプターと飛行機の飛行距離と所要時間との関係は次表の通りである。
表3−2 飛行距離と所要時間
マイル ヘリコプター 飛行機 25 10分 ―― 50 19分 ―― 75 28分 ―― 100 37分 30分 150 56分 45分 200 75分 60分 250 ―― 75分 300 ―― 90分 350 ―― 105分
6 着陸場所の条件 リーチ社は、救急現場におけるヘリコプターの着陸場所について、その準備をする救急隊員その他の外部の人に対し、次のような設定条件を要望している。
表3−3 着陸場所の大きさ
- 昼間75×75ft(23×23m)
- 夜間125×125ft(38×38m)
表3−4 着陸帯の留意点
- 危険物の有無
- l障害物(周囲)の有無
- 地形の特徴
- 地面の状態
- 動物や野次馬(これも動物である)
- 風と天候(風向、風速、視程、雲高)
表3−5 航空機の安全注意事項
- 関係者以外は機体から100フィート(30m)以内に近づかない。
- 関係者も、パイロットや乗員の指示のないまま機体に近づかない。
- 機体には真横から近づく。
- 尾部ローター付近には近づかない。
- 斜面の高い方から機体に近づかない。
- 機体には頭を下げ、腰をかがめて近づく。
- ローターの巻き上げたほこりが目に入らぬよう気をつける。
- 着陸帯の中に軽いものや布きれなど、ローター風で巻き上げるようなものを放置しない。
- 機体から100フィート以内でタバコを吸わない。
![]()
7 気象条件 リーチ社では、ヘリコプターの飛行可能な最低気象条件について、下表のように定めている。
表3−6 最低気象条件
飛行条件 視 程 雲 高 有視界飛行
3.2km 1,000ft 有視界飛行
(カテゴリーA)1.8km 500ft 計器飛行
1.35km 400ft ![]()
8 救急現場の安全確保 リーチ社は1987年の創業以来、無事故で飛行してきた。この間の出動回数は11,000件以上である。
救急飛行は飛行目的からしても、決して事故を起こすようなことがあってはならない。それにはパイロットのみならず、航空機に乗り組む医療スタッフもクルーの一員として安全の確保に努めなければならない。さらに、その飛行を支援する会社全体が安全運航に留意する必要がある。
加えて、一見部外者と思われるような人びと――救急現場でヘリコプターを待つ救急隊員や警察も、飛行の安全については重要な役割を担っている。そうした関係者に対して、リーチ社のチーフ・パイロットで安全管理責任者のヴィッキー・スペディアッチさん(Vicky Spediacci, Chief Pilot/Safety Officer)は次のような一文を書いて協力と支援を呼びかけている。
「私たちの救急ヘリコプターが安全かつ完全に任務を遂行するには、皆さんとのチームワーク――すなわち地上からの支援が重要です。ここでは特に無線連絡のやり方について、具体的にお願いしたいと思います。
救急現場とヘリコプターとの無線連絡は、できるだけ早くから始めるのが望ましいことです。ヘリコプターが交信可能な距離――通常は現場から5分くらいの範囲に入ってきたら、直ちに交信をします。これによって、地上で待っている皆さんはヘリコプターが何分後に到着するか、正確な時間を知ることができます。
次にヘリコプターの着陸場所に近いランドマーク(目印)を連絡して下さい。何か大きな建物や目立つ看板、あるいは学校のグラウンドなどです。
また、ヘリコプターの音が聞こえたら、すぐに連絡をして下さい。それも簡単に「南の方から音が聞こえる」といったようなことで充分です。これだけでヘリコプターは迷うことなく、一直線に現場へ向かって飛ぶことができます。
さらに皆さんがヘリコプターの姿を見つけるのは、当然、パイロットが皆さんを見つけるよりも早いはずです。したがって、機影が見え次第、「そのまま真っ直ぐ」とか「ちょっと西へ」などと知らせて下さい。
こうして現場近くまでゆけば、パイロットは皆さんを見つけます。そのとき、どこに着陸したらいいか、障害物はないか、風はどちらから吹いているかを無線で連絡してください。ただし、皆さんが無理に着陸場所を決める必要はありません。ヘリコプターをどこに降ろしたらいいか分からなくても、上空にいるパイロットの方が周囲を広く見渡せますから、最適の場所を探して着陸します。
ヘリコプターが降りてきたら、物陰に隠れるなどして、土ぼこりが目に入らないよう気をつけてください。そして注意しながら、ヘリコプターが完全に接地するまで見ていてください。もし何か危険なことが起こったら、無線で「ストップ、ストップ、ストップ」と叫んで下さい。
勿論パイロットはそんな叫び声は聞きたくないのですが、それを聞けば直ちに着陸するのをやめて、危険から逃れ、あなたの名前を命の恩人としてクリスマス・カードのリストに加えるでしょう。
もう一度繰り返しますが、無線連絡はできるだけ簡潔に、内容は飛行の安全にかかわることだけにしていただくようお願いします。
関係者の皆さま、ヘリコプター救急の安全をチームワークによって守りましょう」
調査団への説明にあたってくれたパイロットのスペディアッチ運航部長(左)
とフライトナースのフジイさん(ご亭主が日本人だった)(HEM-Net、2003.12.8)
(表紙へ戻る)