|
さて、こうした上位の天使の存在が明確になると、当然ながら、その下位にも研究の目が向けられる。
中世の神学者ディオニッシィウス・アレオパキタは、『聖書』の記述を検討して、「天上位階論」を発表。
このなかで、天使の階級が、基本的に「上級」「中級」「下級」の3つに分かれていると主張。
さらに、それぞれの位階には、3つの階級が存在し、合計9つの階級になっているとした。
上級位階は、絶対神のそばにおり、常に賛美歌を贈っている。
そのため、直接、人間との関わりを持つことはない。第1位は「セラフィム(熾天使)」、第2位は「ケルビム(智天使)」、第3位は「トロヌス(座天使)」が構成している。
中級位階は、自然界の宇宙を支配する。絶対神の世界と人間の世界を分け、秩序を護る役割を担っている。
第1位は、「ドミニオンズ(主天使)」、第2位は、「ヴェルテユ(力天使)」、第3位は「パワーズ(能天使)」が構成する。
下級位階は、直接、人間に働きかける役割を担っている。
なじみの深いミカエルやガブリエルといった天使は、この位階。
守護天使として知られる。第1位は「プリンキパリテイズ(権天使)」、第2位は「アーキエンジェルズ(大天使)」、第3位は「エンジェルズ(天使)」が構成している。
まさに会社の組織のようであるが、これが絶対的な天使の階級であるというわけではない。
あくまでもディオニュシウスの仮説である。別の神学者によっては、これらの階級が多少入れ替わっている場合がある。
天使によく似た世界中の神々
天使によく似た存在に「キューピッド」がある。
翼の生えた幼児の姿で、しばしば手に弓矢を持って描かれる。
キューピッドを天使であると考えている人は、意外と多い。
欧米のキリスト教徒でも、両者を混同している場合がある。
だが、『聖書』のなかにキューピッドは出てこない、登場するのはローマ神話である。
女神ヴィーナズと軍神マルスの間に生まれた子供で、ギリシア神話では「エロス」と呼ばれる。
では、なぜ、キリスト教に入ってしまったのかというと、これがおもしろい。
『聖書』には、絶対神を見るためには、子供のような純真無垢な心でなくてはならないと記されている。
と同時に、絶対神のまわりを飛び交う天使が描写されている。
そこで、神学者は考えた。神のまわりを飛ぶ天使は、きっと子供に違いない、と。
さっそく画家は、これを取り入れ、子供の天使を描く。これが「プットー」である。
プットーとキューピッド──これが見事に似ている。そのために両者は同一視されてしまう結果となったのである。
だが、考えてみれば、ローマ・ギリシア神話には天使によく似た神がいろいろと登場する。
首と腕がかけた彫刻で有名な「ニケ」も有翼の神で、一見すれば天使そのものだ。
これをたんに偶然と片づけてしまうのは簡単だが、問題は、そう単純ではない。
『旧約聖書』を基本聖典とするユダヤ教やイスラム教は当然としても、いわゆる天使のような神、精霊は、世界中の神話伝説のなかにも登場するからだ。
たとえば道教でいう天女。翼の代わりに羽衣をつけているが、天と地を行き交うメッセンジャーという役割は同じだ。
ペルシアのゾロアスター教でも、天使はいる。さらに古代シュメールに端を発する一連のメソポタミア文明の宗教、神話にも、イシュタルやリリスなど、有翼の神が登場する。
動物の頭や体を持つ神々のオンパレードのエジプト神話では、それこそ有翼の神は、あちらこちらに見られる。
さらにインドのヒンドゥー教では、ガルーダをはじめとする、数多くの有翼神が登場し、そのおおくが後に仏教の中に取り入れられている。
ちなみに、わが日本の神話においても「天日鷲命」なる有翼の神がいる。
これらの事実は、いったい、どういうことを意味しているのだろうか?
なぜ、かくも神話には、必ずといっていいほど有翼神が登場するのか。空を飛びたいという人間に願望が、神の背中に翼をつけたと解釈もできようが、それだけではないだろう。
もしかしたらこれは、何か人類に共通した記憶が、神話に反映しているということなのではないか。
となると、考えられることがある。すなわち、実際に有翼の神、すなわち天使が、本当にこの世には実在しているのではないだろうか、という可能性である!
多くの人が天使と出会っている!
『聖書』のなかの人間以外でも、天使に遭遇したという人は少なくない。
13世紀、イタリアの聖人フランチェスコの前に、まばゆいばかりの光が出現。
なかから6枚の羽をもったセラフィムが現れた。
15世紀、イギリスとフランスの間で「百年戦争」が続いていた。
戦況としては、フランスが劣勢で迎えた1429年。一介の少女だったジャンヌ・ダルクの前に天使が出現。
救国の啓示を受けた彼女は自ら剣を持って戦線にたち、みごとフランスを勝利に導いた。
17世紀、イギリスにジョン・ディーという博物学者がいた。彼は魔術に深く傾倒し、ついに天使の召還に成功する。
近年ではアメリカ初代大統領ジョージ・ワシントンや心理学者カール・G・ユングらも、天使を見ている。
そして──現在、世界中で天使が目撃されている。とくに最近、それは急増している。
ここ数年、欧米では天使がブームであるといわれ、天使の研究がさかんになっている。
書籍やグッズなどはもちろん、一部では、天使学会なるものまで開催されているほどだ。
一部には、幻覚や思いこみもあるだろうが、天使との遭遇をすべて誤認と片づけることはできない。確かに、彼らは見ていたのだ。
天使と名乗る存在を見ていたに違いない。そうなのだ。天使は確かに実在する。
彼らは、われわれが住む世界とは違う次元の住人である。
肉体を持たない「超常生命体」なのだ。
しかし、注意しなくてはならないことがひとつある。天使と名乗っているからといって、そのすべてが絶対神の使者であるとは限らない。
絶対神以外の使者も存在する。絶対神の天使を「光の超常生命体」とすれば、彼らは、「闇の超常生命体」である。
神学では、地に落ちた天使、すなわち「堕天使」と呼ぶ──!
|