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札所1番〜札所15番 札所16番〜札所25番 札所26番〜札所30番 札所31番から結願まで

「秩父観音霊場34ケ所」 (午歳総開帳)
(その1)

四萬部寺 12 野坂寺 23 音楽寺
真福寺 13 慈願寺 24 法泉寺
常泉寺 14 今宮坊 25 久昌寺
金昌寺 15 少林寺 26 円融寺
語歌堂 16 西光寺 27 大淵寺
卜雲寺 17 定林寺 28 橋立堂
法長寺 18 神門寺 29 長泉院
西善寺 19 龍石寺 30 法雲寺
明智寺 20 岩之上堂 31 観音院
10 大慈寺 21 観音寺 32 法性寺
11 常楽寺 22 童子堂 33 菊水寺
34 水潜寺

秩父札所の開創は文暦元年(1234年)と言われている。その年が甲午歳(きのえうまどし)に相当することから、12年に一度、午歳(うまどし)に御開帳が行われる。平成14年は壬午歳(みずのえうまどし)なので、3月1日より11月末まで、全ての札所の厨子が開かれ(御開帳)、普段は秘仏として拝観できない本尊(観音様)のお姿を親しく拝観できる。

観音霊場(札所)は日本国中に数多あるが、代表的なものとして、西国33観音、坂東33観音と秩父34観音をあわせて日本百番観音と称す。33という数は、観音様が33のお姿に変化し衆上を救うことを意味しており、また無数・無辺にも通じている。参拝者はあらゆる場面で観音様の大慈悲が受けられることを願う。秩父の札所は百観音に数えるため34観音とされた。

札所巡りは、平安・室町期に起こり、江戸時代には”観音信仰”を敷台にして、庶民の心の糧とレクリエーションの場として隆盛をきわめた。明治の廃仏毀釈運動で一時すたれたが、最近では世相を反映してふたたび盛んになってきている。16番、21番と22番が真言宗なのを除けば、秩父の札所の殆どは禅宗(曹洞宗または臨済宗)のお寺である。

秩父観音霊場34ケ所は、山村風景を残す秩父盆地内にコンパクトにまとめられており、健康的な行楽の場を与えている。案内標識・道しるべも色々な趣向をこらして十二分に完備しており、老若男女を問わず、”日帰りの区切り打ち”で、”歩き遍路”できるのが楽しい。

案内書:「坂東三十三ヶ所秩父三十四ヶ所巡り」 昭文社 2000
平幡良雄 「秩父観音巡礼」 満願寺教化部 1999
秩父札所連合会 http://www.chichibufudasho.jp (西武秩父駅構内に札所めぐりの案内所がある。そこに用意されている案内図と”ふだらく”(秩父札所新聞)の地図と知識だけでも充分に札所めぐりが楽しめる。)


一番札所から出発

  (平14.5.1)

          
栃谷の札所1番から横瀬周辺をスキップして秩父市内の札所までを歩く

定峰峠上り口にある四萬部寺より、秩父盆地の東を囲む丘陵の山裾道を抜け、田園風景の中を、武甲山を南に見ながら秩父市街に出る。

   

 堂内厨子内の観音様右手からの紅白の「お手綱」で堂外の参詣者は結ばれる。開帳時には直接に慈顔を拝観できる。

札所 本尊 観音様のお姿
1.四萬部寺 聖観世音 身の丈50cmほどの美しいふっくらした姿、一番札所だけに印象深い。寺伝では行基作。 46.4cm
2.真福寺 聖観世音 一番とよく似た姿。厨子が二つ並んでいて、右に聖観音、左は木彫りの聖観音。
開山の大棚禅師は土地の人に深く帰依を受けた。
一木作り
54.5cm
3.常泉寺 聖観世音 やや大きくで細身に見えるが、写真で見るとふっくらとしている、引化4(1847)の火災で胸に火傷の跡があるというが堂外からは分からない。 97cm
4.金昌寺 十一面観世音 金箔の厨子が背面で輝き、観音様の表情は堂外からでは分かりにくい。ここも行基作と伝えられているが、室町期の仏。 室町期
99cmの立像
5.語歌堂 准胝観世音 宝冠を頭に秩父札所で唯一の准胝(じゅんてい)観世音。百観音中でも西国11番の上醍醐寺にあるのみ。写真で見ると、蓮台を二人の竜王が支えており、ユーモラスである。
10.大慈寺 聖観世音 ここの聖観音もきれいだ。恵心僧都の作。
11.常楽寺 十一面観世音 細身に見える十一面観音。行基の作という。 90cmの立像
15.少林寺 十一面観世音 非常に小ぶりな十一面観音。
13.慈眼寺 聖観世音 行基作と言われる座像の聖観音。
14.今宮坊 聖観世音 座像の聖観音。弘法大師の作といわれている。

聖(しょう)観世音:普通”観音”といえばこれを指す。顔は一つ腕は二本で、左手に蓮華・右手は開いた形で大慈大悲の菩薩。
十一面観世音:十一の小面を持つ。あらゆる方向を見渡し、阿修羅道の救主。

准胝(じゅんてい)観世音:三目十八臂で胎蔵界曼荼羅遍知院に位す。仏母、女尊で女性の観音。除災、延命、求児の諸願をかなえる。

巡礼風景

AM7:22町田(横浜線)8:03八王子(八高線)8:56東飯能(西武)9:45西武秩父10:05バス定峰行き10:30栃谷バス停、一番札所にはAM10:34の到着である。
本日の最終札所「今宮坊」からは西武秩父駅までは30分、この日は立寄らなかったが、駅の近くに日帰り温泉がある。

1. 四萬部寺 (しまぶじ)

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AM10:34-11:04
一番札所にふさわしい落着いた見事な作り。観音堂の欄間には地獄の図、極楽の図が彫刻されている。納経帖などはこの寺で揃えられる。

昔を偲ばせる門前の”旅籠一番”。県道82に面しており宝登山、長瀞に通じている。

秩父34ケ所は案内標識や道標が完備されている。道端には江戸時代の石仏などが保存され、配置されている。秩父札所連合会の誠意が感ぜられる。

寛永O年の馬頭観音石碑などを畑の中に見かける。二番札所へは前方の山を登っていく。ホソーされているが、樹木に覆われた急な坂である。次第に巡礼の気分になる。
2.真福寺 (しんぷくじ)

AM11:45-12:02
山間にあるお堂で、観音堂だけがある。静かな空間がある。田舎っぽくて良い。

開山の大棚(おおだな)禅師に、鬼となった老婆が救いを求める図の奉納額がある。禅師は堂宇を建て老婆を供養した。禅師への土地の人々の信頼は厚く、地名も大棚、山も大棚山(718m)、川も大棚川である。

麓に降りるには、地道も用意されている。下った所に天然記念物の岩棚のキンモクセイがある。
光明寺(12:36)で2番札所の納経を受ける。藤の花咲く横瀬川を渡ればすぐ3番札所。1番から3番までが
大棚古である。
3.常泉寺 (じょうせんじ)

PM12:55-1:15
こんもりした山を背に三番札所がある。観音堂は境内左の小高いところにある。

観音堂の欄間の”龍のカゴ彫り”と”鳳凰”も見事である。
金昌寺には山田温泉横の”ふるさと歩道橋”(車不可)で横瀬川を渡って行く。この辺りには江戸期の道しるべ、石仏が多い。
4.金昌寺 (きんしょうじ)

PM1:30-2:00
秩父札所で山門があるところは少ない。立派な仁王門であり、大きなわらじが奉納されている。大わらじは、もともとは道中安全を祈願するもので、四国八十八ヶ所でもよく見かける。現在では交通安全、家内安全、招福除厄と欲が深い。

山門からは石仏に迎えられて観音堂(本堂)に登っていく。盃をかざした酒呑地蔵など面白い像もある。お堂も飾気なく良い雰囲気だ。境内の石仏は天明3(1783)の大飢饉の供養で発願された。ここだけ訪れる人も多いと言うのもうなずける。

半裸で乳を飲ませる「慈母観音”が、本堂の縁右端にある。喜多川歌麿が下絵を描いたとも、マリア像とも言われている。

境内と寺の裏山には1千体を越える石仏がある。小鹿野から巡礼が石を運び、金昌寺の石工が寄進者の注文意匠で刻んだという。
5.語歌堂 (ごかどう)

PM2:20−2:40
准胝観音が印象的なお堂。武甲山を見渡す畑の中にあるが、近くまで住宅が進出している。納経は畑を越えた長興寺で。そこで6番に行かず、10、11番を先に打つほうが良いと教えてもらう。
10.大慈寺 (だいじじ)

PM2:55-3:10
ここにも仁王門がある。東雄禅師により室町中期に開山された。小高い丘の上にあり、眼下に横瀬川、東に大野峠、白石峠、定峰峠を見る。バス道に近いが、素朴な、落着いた雰囲気がある。

境内からは武甲山が望まれる。今は無残に切裂かれた山肌だが、江戸期には神々しい姿だったろう。
11.常楽寺 (じょうらくじ)

PM3:22-3:40
国道299を正丸峠越えで秩父市に入ってきた所にある。おばあさん巡礼仲間が、にぎやかに記念写真をお坊さんに捕ってもらっていた。
15.少林寺 (しょうりんじ)

PM3:50-4:00
西武鉄道の無人踏切の向こうに少林寺がある。
境内に明治17年の秩父事件の碑と殉職した二巡査の墓がある。

古い石仏がに残されている。右端の丸い石は「道しるべ」で巡礼道の各所で見られた。
13.慈眼寺 (じげんじ)

PM4:10-4:20
秩父霊場を開いた性空上人など十三権者の像が輪堂(一切経を納めた六角堂)にある。札所連合会事務所はここに置かれている。
14.今宮坊 (いまみやぼう)

PM4:40-5:00
秩父札所でも古い格式のあるお寺で、京都聖護院直末の寺。もとは、今宮神社内に観音堂があった。現在は住宅に囲まれた所にあるが、雰囲気は良い。夕方になって堂内に光が入り、開帳された秘仏の聖観音像は、表情まではっきり拝観できた。

今宮神社にある樹齢1000年の”徳川家康駒つなぎのケヤキ”

龍神池には武甲山の伏流水が湧き出ている。八大龍王を祀り、池端に”秩父霊場発祥の地”、”役行者飛来の地”と記されている。



横瀬駅周辺の札所巡り

   (平14.5.12)

            
横瀬駅周辺の四寺と羊山公園の麓にある野坂寺を巡る半日巡拝

日曜日の昼過ぎから西武秩父線・横瀬駅周辺の札所を巡った。九番札所から十二番札所へは、国道299を歩かずに武甲山の山麓を二山越え、羊山公園より琴平ハイキングコースで日和田町へ抜けた。

    
                                  
横瀬駅

札所 本尊 観音様のお姿
6.卜雲寺 聖観世音 小柄な像で目をこらしても表情は見分けにくい。しかし、なんとなく里のお堂に似つかわしい。行基の作とか武甲山から運んだとかいういわれがある。  36cmの立像
7.法長寺 十一面観世音 この像も行基の作といわれる。こぶりで、遠くから見ると、多面がどこにあるかが分かりにくい。普段前置される写真でその様子をうかがう。
8.西善寺 十一面観世音 恵心僧都の作である。
9.明智寺 如意輪観世音 恵心僧都作の如意輪観音。思惟の姿は秩父では珍しい。
12.野坂寺 聖観世音 一目造り(内ぐりあり)の156cmの身丈。藤原期の地方の代表作とある。堂内から拝観できたが、なるほど素朴な姿で、なぜか黒石寺(水沢)の薬師如来を思い出した。 吉祥天に似た像
藤原期
158cm

如意輪観世音:法輪を転じて一切の願いを成就させる。宝珠・宝輪を持ち、右膝立ちで両足裏を合せて座り、頭を右傾した思惟の相。

巡礼風景

AM9:34町田発の電車に上手く飛乗ったが、八高線・東飯能の西武への乗換えで一分遅れ、結局横瀬に着いたのはPM12:15であった。半日の巡拝は、ハイキングをおりまぜて、前回スキップした横瀬駅周辺の四寺と札所12番とした。

6.卜雲寺 (ぼくうんじ)

PM12:40−1:05
国道299の横瀬橋から道路標識に従い十字路を曲がり、坂を登ってすぐの札所7番を通り過ぎる。さらに民家の間を進むと、桑畑の向うの丘上にお堂が見える。こじんまりとした里の観音堂。

この地に棲む大蛇を退散させ、その跡にお堂を建てた「縁起絵巻」が残されている。旅の禅僧があるとき「はつ秋に風吹きむすぶ萩の堂 宿かりの世の夢ぞさめける」との詠歌が聞こえ、短冊を見つけ、堂を萩野堂と名付けたはなしがある。

境内の六地蔵は武甲山を背負っ立っている。
7.法長寺 (ほうちょうじ)

PM1:15−1:35
明るい境内と平賀源内設計の本堂をもつ。国道299からは、ドライブインの裏手の丘に本堂の後面が見える。

本堂の欄間には四国八十八ヶ所・志度寺にゆかりの海女の「珠取り図」の極彩色の彫刻がある。本堂に、牛伏堂の通称に似つかわしく、牛の像が置かれている。ツアー巡礼が、先達の説明を聴いている。次の札所へは、6番への道を少し戻ってから、畑の中の道を進む。
8.西善寺 (さいぜんじ)

PM2:03−2:20
横瀬川を権現橋で渡ると、「馬頭観音」の祠などある樹間の道に出る。武甲山御岳神社表参道を山を正面にしばらく行くと、森の中に札所が見える。
お寺の境内は盆地状になっていて、樹木が茂っている。お堂は改修中であるが、欄間の二十四孝の彫刻が素晴らしい。

境内の樹齢500年以上のコミネモミジは目を引く。木陰には「なで仏」がのんびりと石の上に座り、参拝者を迎える。
9.明智寺 (あけちじ)

PM2:44−3:00
札所案内の道しるべどうり横瀬駅の方向へもどる。住宅地の中にお堂がある。平成2年(前回の午歳開帳)に再建された六角堂である。近隣の人々がお堂のお世話をしている。堂内まで明るく、如意輪観音の表情をじっくり拝観できる。安産・子育て、眼病治癒の観音様である。

札所9番明智寺からは、国道299で秩父市に入らず、山(丘)を越えて羊山公園の南端に至る道を探す。途中山を越える道を地元の人に尋ね、八木農園の手前の急な勾配の簡易ホソーを登る。竹林がきれいなところがある。羊山公園でまた迷うが、人気のない琴平ハイキングコースを選んで南に向かう。

ときおり、樹木で覆われた遊歩道の向うに武甲山が見える。辰濃和男著”四国遍路”に「地蔵は土なんぞう」という話が紹介されていた。ここも勝手な巡拝路だが、土の上を歩けることは心地よい。大きな秋田犬を連れた人と急な下りで会う。犬を押さえて通してくれる。札所26番の近くに下りてから、野坂寺に向う。
23.野坂寺 (のさかじ)

PM4:35−5:00
やっとたどり着いた野坂寺だが、西武秩父駅からはすぐ。住宅街の中にあるが、お寺の参道が適切な長さつづき、参道を歩く中にお寺参拝の雰囲気にしてくれる。

享保年間(1716-35)に建立された入母屋造りの山門は、威風堂々としている。

羊山公園を背にした本堂は、明治末に再建されたものだが、境内にはキンモクセイが咲き、豊香を放つ。閉門近いお寺では、お接待のおばさん達が店じまいにかかり、境内のお堂の前では僧侶がお経をあげ、扉を閉めていた。
前回とあわせ15番札所までを打ち終えた。


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