幼児期および学童期の言葉の問題(Q&A) <発音と文字表記編>

* 生まれてすぐ学び始める言葉が話し言葉なら、学校で学び始めるのが書き言葉と言えます。書き言葉は文字で組み立てられます。しかし、文字を習得して正しい表記をするためには、それ以前の、音声での話し言葉がしっかりしたものでなければなりません。ここでは、そうした事例を見ていきます。


Q
 発音ができない特定の音はありませんが、常に言いまちがいのような言葉が聞かれます。

A   子供のことばの誤った言い方には、全国的に共通したものがあります。たとえば、次のようなものです。
 トーモロコシ → トーモ
コロ
 オタマジャクシ → オ
ジャクシ
 エレベーター → エ
ベレーター

 「音転位」あるいは「音位転倒」などと呼ばれる現象ですが、どうしてこうなるのかという決定的な説はないようです。ただ、「トーモロコシ」の例だと、語の中の「…ロコ…」より「…コロ…」の音の連続のほうがずっと言いやすい、という話して手の事情が
原因の一つと考えられています。
 試しに「ロコロコ」と「コロコロ」で、どちらが滑らかに速く言えるか、やってみてください。
 このまちがいは、まず本人に気づかせるのが先です。仮名を書くときにも、発音している通りの同じまちがいになりやすいので注意が必要です。その後、時間をかけて訂正していくことになりますが、上の例のような長い単語で難しければ、「カラダ(カダラと言いやすい)」程度の短い言葉から少しずつ練習していきます。誤りを指摘されてすぐ直せるのは、大人にしかできないことです。


Q  覚えてほしい言葉より、覚えてほしくない良くない言葉のほうを先に覚えてしまうので困ります。

A   周囲の大人の期待に反しているわけですが、目くじらを立てるばかりではいけません。悪い言葉を知らなければ、良い言葉の良いところが分からないはずです。
 子供の言葉遣いは、赤ちゃん、年下の子供、お年寄り、異性の友達…といろいろな人の影響を受けています。したがって、年下の子供を相手に自分も同じ年齢の子供のように振る舞えば、マイナスの影響ばかりが大きくなってしまいます。発音の誤りもそうですし、作文で「〜しちゃいました」のような未熟な文末表現が現れたりします。
 しかし、子供なりに、自分の社会的な役割や立場をきちんと理解していれば(兄や姉として、年上の子供として)、問題はありません。
 また、良くない言葉を話す人だからといって、すぐに悪い人である(悪い人になる)とは決めつけられません。子供たちは、聞いている人の反応がおもしろくて、わざと良くない言葉で話をするものです。子供にとっては、それはいわばゲーム感覚ですから、むきになって叱ったところで効果はありません。
 また、人によっては、方言は良くないといって、子供とお年寄りとの接触を嫌う場合がありますが、コミュニケーションの機会も失われ、実にもったいないことです。たしかに、共通語との相違点などいくつか注意する点はありますが、これに気をつければ問題はありません。


Q  平仮名の「は」「ば」「ぱ」の区別がつかず、書くときに混乱しています。

A   これらは、すべて「は」の文字をもとにして表記されます。ローマ字では、この3つは全く違う文字を使用しますので混乱は少ないようです。

 は → ha
 ば → ba
 ぱ → pa

 実際にもそれぞれの音の出し方は異なるので、ローマ字は記号(点や丸)で区別する仮名よりも分かりやすいかもしれません。
 さらに、「ば」と「ぱ」の二つは、上下の唇が一回合わさるという発音時の特徴も共通です。これが、点や丸をうっかりまちがって付ける原因になるのです。まずは平仮名そのものに慣れることが大切ですが、まれには、息の出し方の区別がついていないために、なかなか違いが分からない場合もあります(はじめの子音の b と p で、のどがふるえるほうが b 、ふるえないほうが p 。のどに手を当てて言ってみると確かめられます)。


Q  「冷蔵庫」のことを「れぞこ」と書いています。音をのばす書き方(長音)ができません。

A   「冷蔵庫」は「れいぞうこ」と書きますが、これは漢字の音読みの約束事でしかなく、実際の発音は「レーゾーコ」 で、3種類の音しか出てきません。ところが、日本語には長音と短音の区別があり、長音には仮名を2文字分あてるのが原則です。
 まず、それぞれの発音において、きちんとこの区別をすることが必要になります。
 ことばの最小の単位は音節です。しかし、日本語では二通りの音節の考え方があって、混乱しやすいのです。たとえば「骨董品」では、

 ア  こ/っ/と/う/ひ/ん (6音節)
 イ  こっ/とう/ひん (3音節)

となります。
 小学校では、俳句の五七五のように、アの方法で音節に区切るため、一字で一つの音を表わします。
ところが、母音を中心に数えて、のばす音やつまる音を数えないと、イの区切り方になります。英語などの外国語ではこちらです。
 また、音楽の授業では、音符に歌詞の文字をあてる際に両方の考え方が出てくるので、ますますややこしくなっています。
 「れぞこ」と書く場合では、イの方法で区切っています。この場合、ます目で5文字分のスペース(□□□□□)を作り、文字の通りに声を出しながら平仮名を書いていきます。あるいは、のばす部分に相当する箇所だけを空け、「れ□ぞ□こ」として文字を記入すると、音節の理解が容易になります。
 この方法は、詰まる音の表記「っ」や、はねる音の表記「ん」 を書く場合でも同じです。


Q  発音に誤りがあり、言っている通りそのまま平仮名で書いてしまいます。

A
  子供の言葉は、ほとんどが耳に入った音声から記憶されます。
 発音ができないための誤りではありませんが、「じでんしゃ」(自転車)や「せんたっき」(洗濯機)と書くような場合は、実際の会話でそのように言っているからです。 したがって、書いた字にばつをつけるよりは、正しい言い方を教えることが、この問題を解決する近道になります。
 発音の誤りで、たとえばラ行の発音が難しくて、「サ
ダ」(サラダ)、「モン」(レモン)などと書くような場合には、個々の音で正誤の違いを聞き分け、発音の要領をきちんと身につけることが最初の課題になります。



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