魅惑の似非科学

バックナンバー 6

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12/29/2000 続7・雪道を観光バスで攻めるドライビングテクニック−イニシャルTの似非科学 (おすすめ)

12/21/2000 火星人のプログラミングスキルを推定せよ−人間の遺伝子プログラムの似非科学

12/15/2000 王様の飲み屋さん2−厨房数学の似非科学 (おすすめ)

12/8/2000 クレジットカード最適化の似非科学

12/1/2000  続6・雪道を観光バスで攻めるドライビングテクニック−イニシャルTの似非科学 (おすすめ)

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・続7 雪道を観光バスで攻めるドライビングテクニック―イニシャルTの似非科学

前回(続6・雪道を観光バスで攻めるドライビングテクニック)ではチェーンを巻く作業をサボったために起きた事例を紹介したが、今回もチェーン巻きをサボったのが原因の事例を紹介する。今回は前回より悲惨だ。

★ 滑って落ちる

受験生にとってはまさに「禁句」な言葉であるが、この「滑って落ちる」はまさに今回のお題目にぴったりだろう。まさに「滑って落ちる」なのである。

★ 滑って落ちる・その1

山道に入る前、麓のチェーン脱着場を見渡すと人っ子一人いない。そりゃそうだ。道路には雪ひとつないのである。完全に路面はドライで、誰もこの状態でチェーンなんか巻こうとは思わないだろう。

当然、「私もチェーンなんか巻く必要なし!(そんなことは微塵にも思わなかった)」と判断し、山道に入っていったのである。

ずんずん山道を進んでいくと、やがて道がクネクネしてきて本格的な山道になっていった。するとヘッドライトに照らし出された道路は黒光りの様相を示し(すなわちアイスバーン状態)、雪も徐々に積もってきているのである。それでもかまわず進んでいくと、ついに後輪が滑り出した。交代運転手がガイド席(運転席の横に付いている折りたたみ式の座席)にやってきて、

「こりゃまずいですね。どこかで巻かないと、もしかしたら(この先)行けなくなるかもしれませんね。」

と話してきた。このとき自分もそう感じ、まずいことになったな、と心の中で思っていたのである。まだお客様は寝ており、この危険な状況を理解していない(と思う)。

★ ついに・・・

ついにバスが止まった。ちょっと道が広い直線道路のところで、渋滞しているのである。何で渋滞しているかというと、先頭にいるバスが前に進めなくなりチェーンを巻いているのであった。このとき、「お、これ幸い。おい、ここでチェーン巻くぞ」と交代運転手に話しかけ、バスを停車させるためにパーキングブレーキを引いてギヤをニュートラルにして運転席を離れようとした。

すると、前方に停車している目の前のバスが徐々に進みだした。

「あ、こりゃいかん。動き出したぞ」

と言って運転席にあわてて戻り、バスを発進させようとしてパーキングレバーに手をかけた瞬間、何かおかしい、と思ったのである。そう、あの電車に乗っている感覚を思い出したのである。

駅に停止している電車に乗っているとき、反対側の電車が走り出したのを見て自分の電車が進みだしたと勘違いするときがごくまれにあると思う。まさにそれである。そう、自分のバスが滑って徐々に落ちていくのである。

「うわー、こりゃやばいぞ、おい、○○くん、チェーンを掛けろ!!」

と叫んで、乗降口のドアを開けた。このときに言った「チェーンを掛けろ」とは、前輪と道路の間に止め石となるようにチェーンを挟んで落下を防ごうという意味で言ったのである。

「わかった!!」

と叫んで、チェーンを持ってバスのステップを降りて道路に出た瞬間、なんと、交代運転手も滑ってバスと一緒になって路面を滑り落ちていくではないか!!

「わぁー・・・」

という声とともに、バスと一緒に滑って落ちていく交代運転手。私はどうしたらいいかわからない。とりあえず左側が山の法面だったので、ハンドルを左に切り、バスの左後方を山の法面にぶつけてバスを停車させた。交代運転手も私が運転するバスに轢かれず、なんとかバスの横につかまって車の下に入り込むのを防いだ。運転席に戻ってくる交代運転手と「いやー、落ちなくてよかった」と話し、とりあえず右後輪からチェーンを巻こうとバスを降りたのである。

★悲劇は起こった

ここで、よかったよかった、と話が終わればハッピーである。だが問題はこの後だった。バスの右後輪にチェーンを巻いていると、バスの前のほうで何か、かすかに、声がした。バスの後輪付近はエンジンがあって、エンジンが掛かっていると周りの音はあまり聞こえない。交代運転手はせっせとチェーンを巻いている。

フッ、とバスの前方を見渡すと、前方から別の観光バスが滑って落ちてくるのである。

せっせとチェーンを巻いている交代運転手に、

「おいっ!バスが降ってくるぞ!!!逃げろ!!!」

と叫んだ。交代運転手は「はぁ?」という顔をして私のほうを睨み、その後、前を見ると血相を変えて走り出した。私も無我夢中で走り出した。

自分のバスの後方に隠れると、すぐ横をバスが滑り落ちていく。

「うわー、アブねー。死ぬかと思った」と二人で話していたのもつかの間、落下していったバスは、渋滞していた後ろのバスにぶつかった。しかし、ぶつかったというよりは、横を擦った、という表現のほうが合うであろうか。

滑ったバスはその場で停止した。すぐに走ってそのぶつかった現場に行くと、ぶつけられたバスに乗務していた運転手がなにやら叫んでいるのである。どうやら、もう一人の運転手がバスとバスの間に挟まれたようだ。で、バスとバスの間を覗き込むと後輪付近に人と思わしき影が見える。

下手に動かすと、後輪が回転して被害が大きくなるとみんなで話し合ったが、どうしていいかみんなわからない。みんなでグダグダ言い合っているうちに、白い雪の上に真っ赤な鮮血が染み出した。各バスの運転手はもうパニックである。例外なく私もパニックである。もうどうしようもないのである。

その後、どうなったかについては読者の想像に任せるとする。

★滑って落ちる・その2

やはりチェーンを巻かないで山道を進んだときのことだ。相変わらず後輪は滑り、慎重に慎重を重ねて運転していた。やがてバスはゆるい下り坂に差し掛かり、右への急カーブが前方に見える。右足をアクセルペダルから離し、右足をブレーキペダルに置き、軽くブレーキを当てる。当然排気ブレーキはOFF。排気ブレーキが掛かっていると後輪があっという間に横滑りを起こす。(このへんのテクニックは「いろは坂を観光バスで攻めるドライビングテクニック」とは正反対である。ドライ路と雪道では、観光バスのコントロールはまったく異なる。)

右カーブに差し掛かったとき、カーブミラーが2つ並んでいることから結構回り込んでいるカーブだと判断し、さらに強くブレーキを踏み込む。カーブの向こうに見えるのは崖だ。慎重にハンドルを右にゆっくりと回しカーブを回ろうとする。が、曲がらない。ハンドルを切ってもバスはまっすぐ進んでいく。あわててブレーキを強く踏み込み、さらにハンドルを右に切り込む。がバスはまっすぐ進む。

★ 落ちる!

止まらない。どうしようもない。エンジンはブレーキを強く踏み込んだため、後輪がロックしてエンジンがストール(エンジン停止のこと。すなわちエンスト)し、運転席にピーッという警報音が鳴り響く(大型バスとか、大型トラックなどはエンストすると警報音がなるようになっている)。この警報音は精神衛生上非常によくない。心臓が口から飛び出そうになるのをこらえ、何とかバスを曲げようとする。が、曲がらない。どうしようもない。

「ああ、俺の人生短かったな。明日の新聞の一面を飾るのは俺か。。。ニュースにもなってヘリコプターとか飛んできて、名前も載るんだろうな。。。」

ということを考えた。覚悟を決めた。もうなるようになれ。自分はどうでもいいが、せめてお客様ぐらいは助かってほしい。。。

すると、左側に除雪して出来た雪の塊が見える。これにぶつければがけから落ちずに済むかもしれない。すぐさまブレーキを解除して、ハンドルを少し左に切った。ゆっくりとバスはその雪溜りに左前から突っ込む。雪が大きく飛び散り、フロントガラスにバシバシッという音を立てて当たってくる。その後、ゴンッ!という鈍い音を立ててバスは停車した。

★ 止まった

落ちなかったのである。幸いにも雪溜りとガードレールのお蔭でバスはがけから落ちずに済んだのである。お客様も寝ている。気が付いていない。交代運転手はさすがにおきていたらしく、「もうだめか、と思った」と言っていた。バスをバックさせて雪溜りから脱出させ、バスから降りてタバコをバクバク吸って心を落ち着かせた。その後チェーンを巻いたのは言うまでもない。

★チェーンを巻くということ

本当のところを言うと、スタッドレスタイヤを履いているのであればチェーンを巻く必要はほとんどない。ただし、巻いていたほうがより安全である。

乗用車向けにはチェーンというと、ゴムチェーンから金属チェーン、鎖チェーン(梯子型のチェーン)までさまざまな種類があるが、お勧めはやっぱり金属チェーンであろう。雪がないところでの金属チェーンは走行音や乗り心地などでゴムチェーンより劣るが、やはり雪道では格段の安心感を与えてくれる。

また、バスなどではチェーンを巻くのはほとんど後輪だけであるが、場合によっては左前輪にも巻く。なぜ左前輪だけかというと、

という経験則からきている。左前輪にもチェーンを巻けばなお安心ということだ。ただし、これは乗用車には当てはまらない。乗用車の場合は備え付けのマニュアルを参照してどこに巻けばいいのかちゃんとチェックしてからチェーンを巻くようにしよう。

また、シーズン前には必ず一度はチェーンを巻く練習をしよう。これはチェーンを巻く作業の練習を行うだけではなく、一年間眠っていたチェーンに異常がないことを確かめる意味でも重要である。

★ 次回は

次回はいよいよスキー場に到着だ。到着してからについてのことを紹介しよう。

(T)

 

 

 

・火星人のプログラミングスキルを推定せよ−人間の遺伝子プログラムの似非科学

遺伝子産業は、今や花形産業にのし上がった。人類はこれまでにさまざまな自然改造を続けて豊かな文明生活を築いてきたが、ついに自分自身の解析・改造というパンドラの箱を開けようとしている。今回は、遺伝子産業の中心的な課題、「人間の遺伝子プログラム」の解析だ。

ご存知のように、人間の遺伝子というのはACGTという文字列が何回も繰り返されて作られている一種のプログラミングコードだ。(この辺は「お茶の遺伝子解析の似非科学」で少し触れているので、興味のある方はごらんになるとよいだろう。) では、この遺伝子プログラムは誰が作ったのか?という問いには、いろいろな答えがあると思う。最も一般的なのは「ランダムな突然変異+自然淘汰により最良解が生き残った」、というものだ。だが、火星人神様がコーディングした(人間を作った)という説も、根強く残っている。

さて。このサイトは(似非)科学至上主義の無神教サイトではあるが、もし火星人や神様が人間の遺伝子プログラムを行なったのだとしたら、そのプログラマーのスキル(技術)はどの程度のものなのか、を推定してみよう。なぜこういうことをするかというと、プログラムにはそのプログラマーの人格が反映することが多い。遺伝子プログラムの特徴を調査することで、火星人や神様の人格が逆推定できる!これは人類初の試みではなかろうか。

筆者はプログラマーとして生計を立てていたことがある。いろいろな性格のプログラマーがいったいどういうコードを書くのか、多くのサンプルを知っている。そして地球人プログラマーがやらかす類の失敗を、火星人(あるいは神様)もおかしているのがわかる。

★ 固定幅データ − 2000年問題

2000年問題はもう過去のことと忘れた人は多くないだろうか?この問題の根本原因は、年数のデータ領域を4桁ではなくて2桁で持っていたため、に尽きる。これと同種の問題は、人間の遺伝子プログラムにも存在している。「更年期障害」だ。

人類が誕生したころには、寿命はせいぜい30歳くらいだっただろう。だから、「人間の遺伝子プログラマー」は30年分くらいしか生体維持用のデータ幅をとらなかった。これで十分だろう、30年分で足りなくなる頃には体(ソフト)は使われなくなってしまうだろう、と思ったわけだ(プログラマーにはありがち)。だが、昨今の医療技術の向上により人間の平均寿命は大幅に伸びた。結果、30年分のデータ幅ではまったく足りなくなり、いろいろ体に障害が出てくることになる。

火星人の性格判定1: 割と楽観的。可変長データ構造などのめんどくさいコーディングはしたくないと思っている。「だれにも見つからないバグはバグではない」というのが信条。自分が生きているうちだけバグなしで動けばいい、とよく考える。あるいは、単に納期に追われていただけ。

★ エラーデータ処理 − 無効なデータ処理

エラーデータ攻撃に対してはどうだろう?普通のソフトで言えば、たとえばデータベースの「生年月日を入力してください」のところに「2001年2月29日」と入れるとどうなるか?というものだ。こういうありえない日付はシステムに深刻な悪影響を与えるので、入力段階ではじかなければならない。

さて。人間に対しての「入力」とは「食事」にあたるだろう。つまり腐った食べ物(エラーデータ)を食べたときの遺伝子プログラムの反応は?このエラー処理に関しては、人間の遺伝子プログラムはかなり賢い。おおよそのエラーデータに関しては、消化されず(データベース登録されず)、適当なエラーコードを「表示」する(下痢、発熱、嘔吐)。まぁ、しいていえば、口の中に入れた瞬間にエラー処理されれば理想だが、そこは見逃すことにしよう。

また、変わったところでは「アルコール」がある。本来「アルコール」は体にとっては毒(入力エラー)だが、これを今の人間は受け入れている。脳にはこの「アルコール」が入り込み、肝臓では解毒作業に大忙しだ。遺伝子プログラマはバグを作ったのか?? だが、筆者のプログラマ経験から言うと、これは「ちゃめっけ」の一種だと思う。いわゆる「イースターエッグ」というやつだ。プログラマも人間だし、仲間内で上司に秘密のコードを入れたりするのはわくわくするものだ。毒物の中で「アルコール」に関してだけはエラーチェックを緩め、その代わり深刻な影響が出ずに楽しい気分になれるように肝臓や脳に追加処理を書いたと推定される。

火星人の性格判定2: ちゃめっけあり。イースターエッグはついつい入れてしまう。イースターエッグのような楽しいコーディングは完璧にこなす。エラー処理も割とこまめに書く方で、おそらくデータベースプログラマ。あるいは上司のCode Reviewがきつかっただけかもしれない。

ただ最近はこのエラー処理が効かないことが増えてきた。たとえば人工の環境ホルモン、合成麻薬などはいとも簡単にこのエラー処理を超えてしまう。うーむ。。。

火星人の性格判定3: プログラムを壊すために人為的に作られたエラーデータに関しては穴がある。これは"Ping of Death"のようなもので、ある程度仕方ないだろう。むしろ、この火星人がプログラムした時代には、クラッカーがいなくて平和だったということ。地球で言えば、MSDOS、CP/Mの時代。

★ バッファオーバーラン − 不可解な振る舞い

現代人の中には、時として異常な行動を取る人がいる。車の中に赤子を残してパチンコにいそしむ母親の類だ。リスク管理の甘さ、といえばそれまでだが、人間の本能(BIOS)には本来リスク回避のプログラミングがされているはずだ。

この、基本的な行動規範が時として狂う原因としては、バッファオーバーランが考えられる。つまり本能により「こう行動すべき」というデータが蓄積されているメモリ領域が、ほかのデータによって不正に上書きされていると考えられる。その証拠に、この手の人々は何度も同じ間違いを繰り返す。コードは一見正しく動いている(間違っているのはデータ領域)し、この手の不具合はデバッグしにくい。

人間の父性・母性本能というのは海馬近くの古脳にある。だが、欲望を追求する本能も古脳にある。だから欲求を追及しすぎて情報過多になってしまうと、父性・母性本能領域にそれ以外の情報(パチンコとか)が書き込まれてしまっているのだろう。コード上はこういう上書きは起きてはならないことだが、スピードやメモリ効率の最適化を極限まで上げたプログラムでは、この手のバッファオーバーランが良くおきる。(新人プログラマもよくやるが、それは単にコーディングが甘いだけ。)

火星人の性格判定4: プログラミング時にかなりのスピードとメモリ効率の最適化を行う凝り性。ただ、コンパイラによってメモリ配置がどうなるのか、などのLow Level Codingには興味がないらしく、コンパイラにまかせっきりである。人間の遺伝子プログラムの仕事のときも、重要本能情報(BIOS情報)のすぐそばにワークエリアメモリを配置してしまった。好きな言語はおそらくJava。上記のケースも「Java VMが悪くて、俺のコードは悪くない」と主張するはずだ。

★ マルチスレッディング − マルチCPU処理

脳のCPU個数の似非科学」で詳しく検証したとおり、人間はマルチCPUシステムを採用しているもののマルチCPU対応のOSを積んでいない。これは、火星人プログラマーにスキルがなかったというよりも、確実に動作するものを作れ!という上司の命令があったためであろう。つまり、人間の遺伝子プログラムは、なんかのデモ用のプロトタイプであったと考えられる。

つまりわれわれ人類とは、火星人が初めて作ったマルチCPUシステム搭載の汎用ハードウェアのしょっぱなのバージョン、乗っているソフトウェアはまだプロトタイプと考えられる(うわー、そこまで言うか)。日本のパソコンの歴史を紐解けば、FM7あたりになるであろうか(私が買った2台目のパソコンだ。FM7は6809が2つというマルチCPU構成だったが、片方は描画担当のサブCPU)。

余談だが、FM7ではメインの6809に対する命令しかコーディングできず、もう一方の6809にユーザー命令を出すことは不可能とされていた。だが、当時のハッカーがBIOS解析を行って、なんとサブCPUを操る特殊命令を見つけ出した。「YAMAUCHI」というASCIIコードをパスワードにしてBIOSコールを行うと、それはサブCPUに対する命令になったのだ。うーむ、このバックドアを作ったであろう「YAMAUCHI」さんは、ご健在なんだろうか。ちなみに、この超ど級な解析結果をはじめてメジャーにしたのは月間PC誌の「I/O」であった。

★ 結局、人類を設計したプログラマーの性格は?

とまぁ、いろいろあるわけだが、まとめるとこんな感じだろう。

「高級言語を用いてデータベースソフトを作るのが専門。ちゃめっけがあってイースターエッグなどのコーディングは完璧にこなすが、納期に追われていたようだ(よくある話)。最適化アルゴリズムにも明るく、エラー処理もきちっと書く習慣があるが、ハード寄りのところには関わりたくないと思っている、おそらく30歳台半ばの火星人プログラマー」

ただ、製品がちゃんと動いているかどうかについてはやはり心配なようで、UFOに乗ってちょくちょく地球に様子を見に来ているようだ。いずれにせよ、数万年間たいしたバグもなく動いているプログラムなんだから、たいしたものだ。

(K)

 

 

 

・王様の飲み屋さん2−厨房数学の似非科学

年の瀬も押し迫り、そろそろ忘年会のお声がかかる季節になってきた。まぁ今年に限っては、忘世紀会とか忘千年紀会とかいう呼び方も許されるのかもしれない。年の瀬に繰り返される飲み屋さんの光景−その裏舞台では「飲み屋さんの数学」と戦う人々がいるのを忘れてはならない。

ということで、今回は「王様の飲み屋さん」シリーズの連載第2回だ。第一回「王様の飲み屋さん−外食産業の似非科学」で述べたとおり、このシリーズはある飲み屋さんの一日(年末の金曜日)を時間の経過とともに追っている。前回を先に読んだ方がより楽しめるだろう。

☆ セッティング1 (ノルム空間と初期値問題)

「おはようございま〜す」の声とともに、ホール主任がやってきた。「おはよう」と声をかけると、「今日は暇そうですね〜」なんて冗談を言ってくる。とりあえず笑顔を返すが、本当はそれどころではない。

一般にお客様が御飲食なされるスペースをホールと呼んでいる。それを仕切っているのがホール主任である。仕事の忙しさはホール主任の活躍により違うことが多い。いかにウェイトレスやウェイターに的確な指示をだし、スムーズに仕事をさせるかが腕の見せ所である。

ホールでもやるべき仕事は多い。まずビール、ワイン、日本酒を冷蔵庫にしまっていく。経費節減のため営業後に冷蔵庫の電源を切ってしまっているお店もあるので、とにかく真っ先に電源を入れてビールを冷やしておかなければならない。このビールの数が半端でない。中瓶で1ケース20本入りだが、これがざっと20ケースはある。倉庫に寝かしてあったビールには埃がかぶっていることがあるので、これを一本一本、手で拭いていかなくてはならないのだ。

冷蔵庫は一カ所にあるのではなく、数カ所に配置されている。これはお客様にビールを提供するのに、わざわざ遠くから運ばなくてもいいように配慮しているのである。遠くまで何かを取りにいかなくてはならないというのは、完全に時間のロスだ。そのためホールにある冷蔵庫や、おしぼりや割り箸・グラスなどがまとめて置いてあるサービス台が適所に配置されている。借り部屋の形やコンセントの配置の都合で、どうしても冷蔵庫を置きたくても置けないこともあるのだが、これを改善する方法を考えるのもホール主任の仕事である。とにかく効率を上げていかないと辛いのだ。私たちは、いかに効率を高め部下に楽をしてもらうかを考えている。そうすれば楽しく仕事ができるし、楽になれば早い時間に退店させてあげられる。結果的に人件費が抑えられ、利益が出やすくなるのである。

そのため出入り口から最も遠い冷蔵庫にビールを運ぶ作業は、非常に面倒だがやらねばならないので、さっさと済ませておく。これが終わったら、コースターや割り箸、おしぼりやグラスを並べていく。最近の接客重視のお店では、どんなにお客様の数が多くとも、ウェイトレスが一人一人におしぼりや割り箸を渡したりしているが、このお店ではとりあえずすべてセッティングしてしまう。作業効率上は絶対このほうがいい。

セッティングだけなら簡単そうだが、その数が半端ではないのでマジメにやると結構疲れてしまう。何しろ300人分のセッティングをするのだから、数えるだけでもため息がでてしまうのだ。そしてグラスは汚れがついているとお客様に不快感を与えてしまうので、必ず拭いておかなければならない。本来ならば前日、グラスを洗った直後に拭いておかなくてはならないが、昨日も忙しかったので拭かずに帰ってしまったらしい。う〜と怒りをこらえつつグラスを拭くのだ。

☆ パーティの予約の確認 (串刺し計算と切り捨て誤差の蓄積レンマ)

厨房ではダンボールが鬼のように残っているのがみえる。それを分解し、一つに束ねてゴミ捨て場に持って行かなくてはならない。これがまた重いのだ。魚が入っていたスチロールなどは臭くてたまらない。

生ものは冷蔵庫に、入りきれない食材などはとりあえず出したまま、仕込みに入る。仕込みした料理は、ストッカーと呼ばれるショーケースのような冷蔵庫に仕舞われるため、冷蔵庫に空きができるのだ。

仕込みは、時間がかかるもののあまり手の掛からないものから始める。例えば煮込み料理、卵やじゃがいもなどの茹で料理炊飯などだ。これは鍋に火をかけておけばいいので、その間に別の作業ができる。

次はパーティーの仕込みを始める。ご予約のお客様は、予約しているという立場から、一般のお客様より料理の遅延を気にされることが多い。プロとしてお客様からの遅延クレームは最も気にかける事柄の一つだ。また、パーティーが多数あるので、その都度、揚げ物を揚げたり、焼き物を焼いている時間などない。そのため、あらかじめ揚げ物は揚げ、焼き物は下焼きしておく。

本来ならば、お客様にご来店いただいてから調理をすべきなのだが、そのお店では、作業効率上まず不可能だった。質の悪いお店では冷たい揚げ物や焼き物が提供されてしまう。もっとも質の高い料理店では、その都度調理されているものの、値段はかなり高いと思う。個人店や、それに近いお店は別だが、一人3000円で料理+飲み放題なんてやってるお店の料理は、やはりそれなりだと思ったほうがいい。レンジや鍋ですぐに温められる料理、お寿司などの保存がきく料理や、その場で調理する鍋・鉄板焼きの類が多いのが特徴だ。

さて、いよいよパーティー料理の仕込みだが、まずは人数の確認から入る。人数を確認し、逆算して材料を用意するのだ。これがまた複数のコース料理が設定されているので面倒だ。2000円コースは湯豆腐で焼き鳥とネギ間、3000円コースは味噌鍋で焼き鳥とつくね串、などいうように料理が異なるのである。

各コース料理はだいたい下のようになっている。

さて、なになに・・Aコースは70人、Bコースは156人、Cコースは112人・・・トホホだ。すでに料理だけで100万円の売上があることになる。これを4人ないし5人で仕込むのだから、まるで戦場のような慌ただしさだ。

まず焼き鳥を268本鶏の唐揚げは一人2個だから676個・・・先が思いやられる数字である。数えるだけでも大変な作業だ。しかしやらないと、飯を食べずに戦場にいくようなものだ。

まずはオーブン皿に焼き鳥を並べ、オーブンで下焼きする。このように火を通すと肉が固くなるが、このさい仕方がない。これだけで30分。次に鶏肉をカットする。一人前150gと決まっているので、5.07kgもの鶏肉を用意し、それを人数分にうまくカットしなければいけないのだ。

このとき、一つ多くきってしまった、3つ足りないといったことは許されない。いや、許されるのだが、レシピに従わないとあとでとんでもないことになる。

レシピには1人前何グラムというように記述されているが、これに従わないとひどい目にあう。大量の材料を扱うため、1日5000円の違いでも月に15万もの違いになってしまう。ちなみに、これを売値に換算すると60万円だ。1日の売上に相当する誤差が生じてしまうのである。

別にいいじゃないかと思うのだが、経営者は金にうるさい。儲かっても、損してもダメなのだ。まさに計算上の儲けでないと問題とされてしまうのである。なかにはこれをいいことに、新しいメニューの試食と称して別の材料を注文し、従業員でおいしく頂いてしまっていることもある。ささやかだが、一つの楽しみだ。当然、問題とされるべき行為だが、数字をあわせないと文句をいわれるし、在庫を抱えても腐らせるだけだし・・困った問題である。

☆ セッティング2 (座席組み合わせ論)

厨房は相変わらず鬼のような忙しさだ。なにやら厨房の一人がダンボールを運んでいくのが見える。あまりの量に憂鬱な気持ちになってしまう。相変わらずセッティングをしているが、なかなか終わらない。でも、まだ店の掃除を業者に任せているだけ楽だ。経費節減のため自分たちで掃除をするお店なども増えているが、自分たちでやるとなると相当な負担になるだろうなと思う。

セッティングに専念きればいいのだが、その間にも予約の電話がばんばんかかってくる。これがとてつもなく鬱陶しい。お店の都合で、出入り口付近にしか電話がないのだ。子機はあるが、これはとっくの昔に壊れている。どんなに奥にいても走って電話口に向かわなければならない。無視してやろうかとも思うのだが、上司や業者からの大事な連絡であることも多いので、そうもいかない。電話が終わってため息をつくと、また電話が鳴っている有様だ。時には電話中にもう一つの電話がなったりして、一人だとトホホなときもある。

よほど飲食業界を知らないのか、幹事様が怠けていたのかわからないが、こんな日にも「今日、6人で行きたいんですが・・」なんて電話がかかってくる。空いてるわけないと思わないのかな?などと考えてしまうが、一般の人々はそんなもんだろう。普段は飲まないけど、忘年会だけ参加する人もいるしな、なんて納得しながら、「申し訳ございません。本日、ご予約で満席になってしまって・・」と断る。すると「そうですか」とすぐに受話器を置かれてしまった。そうとう慌てているらしい、恐らく何軒にも電話しているのだろう。

この時、実は8名席が一つと4名席が2つ、2名席が2つまだ空いている。4名席と2名席に6名は無理だが、8名席には6名入れられるはずなのだ。しかしこれはキッパリと断る。なぜなら、2名分損してしまうからだ。

お店には入店率という考え方がある。つまり客席が300席あるとして、実際に使用されている席は何%かということだ。満席時で270人なら90%である。理想は100%だが、4名席に3名様しかおられなかったりして、その分ロスしているのだ。

通常の日なら予約していたかもしれない。しかし、今は忘年会シーズンだ。これだけ需要があるのだから制限は高めにしていかなければならないのだが、心のどこかで良心の呵責があるのも事実だ。お客様のためではなく売上のために働きたくはないと思っているが、上司の命令である以上、これは仕方ないと割り切るしかない。たぶん自分が上司になったら同じ事をさせるかもしれないなと思うと、ああ大人になったんだと、尾崎豊の「卒業」を口ずさんでしまう(笑)。

☆ 今回はここまで

まだその一日は始まったばかりだ。次回から、いよいよ厨房は修羅場と化していく。

(OG)

 

 

 

・クレジットカード最適化の似非科学

この世の中で相性を選ぶのがもっとも難しく、もっとも時間がかかるものが4つある。その4大相性は男と女、ワープロソフトとプリンタ、エンジンとシャシー、自分とクレジットカードであろう。今回はそのクレジットカードの最適化について似非科学式選択法をまとめてみた。

最初の一歩としては、まず年会費無料のカードを作ることがある。SとかLなどがある。これにVISAかMASTERがついていれば別段問題はない。プロバイダの使用料を払うためだけに使う人はこれ以外のカードを作る必要はないし、プロバイダ以外の料金を払わない・電子商店街の買い物はしない、という縛りをかけておけばまず問題がおきることはない。

さて。これはクレジットカードのもっとも初歩的で一般的な使用方法である…とはいってもこれで終わるのはつまらない。巷にあふれる有料クレジットカードの中で最適なカードがあるかもしれない。有料クレジットカードというと、一般の方は「なんで金を払ってまでそんなもの作るの?」と思っているだろう。そういう人は有料クレジットカードの真髄にまだ触れていない。今回の本題はここからである。

では年会費有料カードを作りたい、あるいは作るためには何が必要なのか。今回はその条件を似非科学研究室で検証したので公表しよう。ただし、例によって例のごとく、この研究室の理論を実践して被ったいかなる損害も当研究室では補償しない。あくまでも自己責任のもとにクレジットカードは使用されるものとして話をすすめる。

★ 似非科学式クレジットカード最適化第1条件

還元力価 Pv >= 年会費(税込)

つまり、還元額が年会費よりも上回れば、そのカードは「買い」ということになる。誰しもこのことは考えることだが、この還元率を短期的視野で見てしまってはカード選択を間違う。

流通系で代表的なO社のカードを例に取ろう。この会社の年会費は1050円である。このカードでは請求金額1000円単位で1ポイントが計上される。ポイントは自社グループ店舗で使える商品券や図書券に換算できる。そこで、ポイント換算表を見る。

ポイント

換算商品券(円)

還元率

200

1000

5%

400

2000

5%

500

3000

6%

650

4000

6.15%

800

5000

6.25%

950

6000

6.3%

1000

7000

7%

最低限第一条件を満たすためには、まず年会費が1050円であるから少なくとも200,000円/年を使わなければならない。これでもまだ消費税50円分がバックしない。

ポイントの有効期限は2年(注:自動車会社系カードでは5年というものもあり、会社によって異なる)である。そうすると2年分の年会費は2100円なので2年で500,000円というのが一般的な目標値と結論づけられる。これで第一条件達成であるが、収支トントンなら有料カードを作る必要はない。

さて。ポイント表を詳しく見てみると、ポイントと対価が比例していない。ポイントが最も有効に換算されているのは1000ポイントの部分で7000円のバックである。よってこのO社のカードを、第一条件を満たしつつ最も有効に使おうとすれば、2年で100万円使用する、ということになる。この領域で運用できなければ、このカードを作る価値はないと言っていい。

2年で100万使う、つまり1年で50万使うということはどういうことかというと、月に40,000円使用するということである。ボーナス時に使用を増やすことはこの不景気な時代には避けたい行為であり、ハードルはかなり高いといえる。どうやって使えばいいのだろうか。ここで重要なことは「寄せる」という技術である。

つまり、通常の現金決裁をすべてカード決裁に変更する。

(間違ってもデビットカードで決済しないように。特にO社と郵貯のジョイントカードはデビットにもクレジットにも使えるので要注意である。)

このような「寄せる」技術が現実にうまくいくのは、日常生活のすべての現金決済を自社のカードで決済させたい(そして多くの小売店から手数料収入を得たい)というカード会社の思惑と、上記の「寄せる」技術がマッチポンプ動作をするからである。

ポイントはこのように計算がやさしいが、マイル変換方式は目的地や使用した飛行機でマイルの値が変動してしまう。換金目標額の設定が困難なので、マイル換算が有効になるのはよほど飛行機の利用回数の多い人だけあり、一般の人にはあまり価値がないようである。もっとも、アメリカの航空会社のマイルは日本より力価が高いといわれているので、興味がある方は研究されたい。

また年に数日の期間を設け、その間に買った品物の金額を払い戻すタイプのカードがあるが、コンスタントな使用ではないので非常に気をつけたい。このような場合往々にして買いすぎのリスクが発生する。日々の決裁であればカードに変えても無理がないが、特定期間のキャッシュバックは買いすぎる可能性があるので、よほど計画的な購入ができない限り、このようなカードは持つべきではないだろう。また、初年度年会費無料とか、ポイントが2倍になる購入日があるとかはあえて無視する。このようなうわべのサービスは、カード還元力価の低さをごまかすための常套句である。

このように考えていくと第一条件を満たすカードというのは、広範囲な店の使用残高をすべてコンスタントにポイント換算し、かつその還元力価が高く、年会費の安いカード、ということになる。無料カードにももちろん還元力価はあるが、有料カードのそれは常に上回る。有料カードのカード会社には「年会費」という定期収入があり、その分を還元力価に反映できるからだ。

★ 似非科学式クレジットカード最適化第2条件

さて、ポイントについては力価のほかにもう一つ判定条件がある。ポイント申請から使用可能になるまでの時間をT、ポイントの使える容易度をKとすると

ポイント換価速度 Vc = K*1/T

の式が成立する。同じ条件のカードの場合、Vcの大きいカードがあなたにとって最適なカードとなる。つまり、ポイントが使用可能になる状態が早く、使う機会が多い商品にポイントを使えるほど、あなたにとって最適なカードとなる。この点については盲点になりやすい。

このVcは生活状況に左右される。たとえば、Tが早いのは流通系のMグループである。O社の場合商品券が郵送されるまで約1週間なのでT=7だが、M社の場合は次の買い物からキャッシュバックで使えるのでT=0である。だが、筆者宅の近所にはMの店舗がないのでkの値が低くなる。よってこのカードは最適ではない。マイルの話を蒸し返すと、飛行機にしか使えないポイントはkが低く、マイルを使用可能にするために時間がかかったりするので1/Tもひくい。というわけでVcが小さい以上マイル換算は最適ではない。

まとめると、

  1. いつも使う場所の金額を決裁でき
  2. それによるPvが年会費を越え
  3. Vc値が大きく
  4. 以上の条件が満たされた上で、付加されるサービス(保険など)が自分にとって使用可能な有料カード

うわべだけのサービスやステータス・あいまいな考えでカードを選んではいけない。キャッシングやリボルビングも論外である。カード会社に払うのは年会費+買った品物の請求額だけで、間違っても金利や手数料を取られてはいけないのである。

さて、このクレジットカードシリーズはまた続く。次回はクレジットカードの使用を会計学的観点からながめて、クレジットカードの安全な使用を似非科学してみたい。

(M)

P.S.1 このサイトで扱ってきた同種の話としては「10%還元ポイントカードの似非科学」がある。見方によっては、このサイトで発表した論文のうちで最も重要な社会問題を提起した回かもしれない。高校数学を駆使しているが、一読をお勧めする。

P.S.2 最近、ある裏技的手法でカードを作成する実験が成功してD-Jというカードを作成したが、年会費が9000円から15000円に上昇した(原因については調査中)。9月の終わりのパンフレットでは年会費9000円だったので、Oカードとあわせて年間1万円ほどという予定だったのだが、10月にいきなり値上げされたらしい。カードと一緒に送られてきた会員規約を見て腰を抜かしてしまった。今、年会費の調達におおわらわである(やめようかな…)。 まだ古いパンフレットを見ている人がいるかもしれないので、参考までにお知らせしておこう。この会社のHPは更新されているので、できればそこで確認されたい。

 

 

 

・続6・雪道を観光バスで攻めるドライビングテクニック−イニシャルTの似非科学

★ 長編 雪道シリーズ

しつこいです。しつこいですが前回(続5・雪道を観光バスで攻めるドライビングテクニック−イニシャルTの似非科学)の続きです。前回を読まれていない方は先にそっちをを読んでください。けど、今回は前回読まなくても大丈夫かな?

★ 山道に入る前に

とりあえず、前回は大きな事故を起こしてしまったが、もちろん毎回事故を起こしているわけではない。今後は道中に起きたいろいろな出来事をオムニバス形式でつづりたいと思う。キーワードは「チェーン」だ。

で、山道に入る前、道路上の雪の状態を確認してチェーンを巻くかどうか決める。大抵はチェーンを巻かない(ミックスタイヤ続4参照)を履いているので)が、雪がひどいときや、前日が晴天で、朝雪が降っているとき(*)は山に登る前にチェーンを巻く。

*:前日が晴天で、朝雪が降っているとき

これは、スキー場に向かうまでの道が前日晴天で、向かう当日に雪が降り積もっているときのことをあらわす。このようなシチュエーションのとき、なぜ慎重を期してチェーンを巻くかというと、すなわち、

ということになる。問題は夜に冷え込んだということである。これは溶け出した雪が道路上に水となって流れ出し、夜中に冷え固まってアイスバーンを形成し、さらにその上に雪が降り積もっている状況だ。このような状態ではものすごく滑りやすく、たとえスタッドレスでもあっという間に滑っていくのである。

★ サボると

で、チェーンを巻けばいいのに面倒臭がって、チェーンを巻くのをサボってそのまま山道に入った。山道に入る前でも、タイヤが「わだち」につかまって結構ケツを振る(*)。

*:ケツを振る

ケツを振るとは後輪が滑ってバスが前に進まず、後輪が横滑りを起こしていることである。乗用車なら車体が小さいので大したことないが、これがフルスケールの大型バスとなると結構ビビる。乗用車にとって山道の道幅は何てことないがバスにとっては山道の道幅は非常に狭く感じ、これでケツが滑ったときなんかアッという間にケツをガードレールにぶつけるということも。。。

で、ケツを振り振り、進んでいくのである。バックミラーで後輪の状態を確認しながら走っていると、前方に似たような乗用車に遭遇した。その乗用車はFFの乗用車で、ケツを振るのはあんまり関係なさそうだが、とにかくノロノロ走っている。その前には信号機。信号機は青で、横断歩道の信号機は点滅していた。

「あ、この状態なら自分のバスまで(交差点を通過するのに)間に合うな」と思い、そのまま進んでいく。で、おもむろにポケットからタバコを取り出し、火をつけようとライターのほうを見て火をつけた瞬間、前の乗用車は黄信号で停止した。

「ヤベー、絶対間に合わねー!!!!」

と心の中で絶叫し、あわててブレーキを踏んだがロック。心地よいABSのキックバックが足元に伝わる(注:このときはABS付のバスに乗務していました。) とっさに判断すると、右折レーンが空いている。「オッ!」と思い、ブレーキを解除して、フロントを滑らせないように右にハンドルを切り、うまい具合に右折レーンのところで停車した。

「あー、アブねー。もうちょっとで(事故を)ヤルところだったよ。」

と、思った。タバコを持つ手が小刻みに震えている。おもむろに口に含んで、フゥーッと一息つくと、後ろから声がした。

「運転手さん、いま滑って、あわてて右にいったでしょ?

なんと、お客様が声をかけてきたのである。私は、あわてて振り向き、一瞬ドキッとした後、こう言った。

「いやぁ、こっち(右に)曲がるところですので。

と返すと、

「えっ、本当ですか。今日行くところはこの道まっすぐ行ったほうが早いと思うんですが?

そのとおりである。私もすごく真っ直ぐ行きたい。今すぐにでも、何事もなかったように直進レーンに戻り、真っ直ぐ進みたいのだ。しかし、プロのプライドが邪魔をする。

「そうなんですけど、まっすぐ行くと途中工事があるという情報があるので、こっちに迂回していきます。」

と、ウソ八百を並べて、右折した。

最悪である。何が最悪であるのかというと、右折した道はゲロ狭いのである。おかげでバッチリ目が覚めた。何とか狭い道を抜け、元の道に戻りバスは進んでいく。

★ 今回のミス

もう何も言いますまい。お分かりでしょう。今回は「チェーンを巻くことをサボった」と「わき見運転」である。

「チェーンを巻く」という作業は実は大変な重労働で、乗用車のそれとは比較にならないほど大変である。なんといってもあの馬鹿でかいタイヤにめちゃ重いチェーン(シングルチェーンで20Kg以上、ダブルチェーン(後輪の二つのタイヤにいっぺんに巻くチェーン)だと40Kg以上の重さがあるからである。これを巻くのは本当につらい。

それよりも、むしろ「わき見」に注意すべきだろう。「わき見」は恐ろしい。高速道路で100Km/hで走行中に、タバコに火をつける(約3秒)と、

100Km/h÷3600×3×1000≒83.33

なんと83mも進んでしまうのである。これは危険だ。だからタバコに火をつけるときは交差点等で停止したときに限るだろう。今回は漫然と、それもボーっとして火をつけたのが敗因だったと思う。おかげさまで、悲惨な裏道を走ることになった。

★ 事故はおきなかった

事故はおきなかったが、一歩間違えれば大事故につながることである。今後気をつけようと思ったのは言うまでもない。

★ フェアレディーZ

上記の例は自分がチェーンを巻いていないがため(サボったため)におきたケースであったが、以下に紹介する事例は他人(他車)がチェーンを巻くのをサボったためにおきたケースである。

スキー場にいくのにフェアレディーZで来るなよ!と言いたいが、それは本人の問題なので、特に何も言わない。しかし、おかげさまでこちらが迷惑するのである。そのフェアレディーZ(以下Zと記す)はチェーンを巻いていなかった。明け方、バスはずんずん進み、山道の直線に差し掛かると、道の真ん中でそのZは立ち往生しているのである。山道の直線は上り坂で、どうやらタイヤが滑って前に行かなくなっているようだ。おまけに道の真ん中というのは走行車線の真ん中ではなく、反対車線を含む、本当に道の真ん中なのである。

こんな感じ。これではバスは横を抜けて前に進むことができない。仕方がないので、バスから下りて、Zの主と話すことにした。

「何やってるの?これじゃ、バスが前に行くことできないんだけど。」

Zの主は運転席に座ってアクセル踏んだり、ブレーキ踏んだり、ハンドル切ったり、なにやら不毛な努力を繰り返している。

「いやー、滑って前に行かないんです。」

そんなことは見ればわかる。それよりも、ドライバーがあせっているのに、横に乗っている彼女と思しき女性は、タバコふかしてボヘーとしている。頭悪そうである(イカンイカン、人を見かけで判断してはいけない)。

「じゃ、彼女に押してもらって、車横にどかしてよ。」

と私が言うと、彼女は(注:ここまでは彼女と思っていた)

「私、彼女じゃありません!」

と怒鳴るではないか。あ、そう。英語では三人称でSheなので、それを訳すと彼女になるのだが、まあいいか。きっと、おかまかなんかであろう、と自分で納得し、続けてこういった。

「なんでもいいけど、後ろが詰まってるよ」

するとドライバーは、

「すいませんが、押していただけませんか?」

とお願いしてきた。交代運転手と私は顔を見合わせて。

「こいつ、なんてずうずうしい奴じゃ」

と思い、素直に押すと思ったら大間違い。私と交代運転手は、

「わかった、押してやるから車に乗ってろ。その代わり車に傷がついても知らんぞ。バスのバンパーで押してやるから。」

と、言った。

「エー!それは困ります。手で押して欲しいんですけど。」

「手で押したら日が暮れるわ。うちら、さっさと行きたいから、バスで押すぞ!だいたいチェーン持ってこないやつがバカなんじゃ。」

といい、Zのドライバーはしぶしぶ納得して運転席に乗り込んだ。

「じゃあ、行くぞー」

と声をかけて、Zの後ろにバスのバンパーをコツン、と当て、一気にアクセルを踏み込む。すると、

バキッ!

という鈍いプラスチックにひびが入るときのような音がしてZとバスは前に進んでいく。Zは徐々に走行車線に戻り、バスは抜けられるようになった。

少しバックしてZと離れると、ものの見事にZのテール周りは割れていた。こりゃやばいな、と思いつつも、Zの持ち主に

自業自得やな。今度からはチェーンをもって山に来い。」

と言って、その場を離れた。

★ その後

交代運転手と二人で、あいつはアホやな、とか、ホントいい迷惑や、とか話して、憔悴しきった。勘弁してほしいのである。まあ、自業自得だろう。それよりも「彼女じゃありません!」と言った本心は何だろう?ということで話は盛り上がった。今となってはわからない。

★今回の話は

書いていたら結構な量になってしまった。次回以降も「チェーンを巻く」という作業をサボったためにおきた事件を紹介していく。

(T)

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