魅惑の似非科学

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10/7/2001 祝ヤクルトリーグ優勝 日本頂上決戦の似非科学

9/30/2001 W32-Nimdaウィルスとマーフィーの大予言の似非科学

9/21/2001 続4・危険物を確実に運ぶドライビングテクニック−頭文字Tの似非科学

9/14/2001 ブロードバンドとラストワンフットの似非科学

9/7/2001 食欲の秋、女心とステーキの似非科学 (おすすめ)

9/2/2001 身を滅ぼす中国茶の似非科学

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・祝ヤクルトリーグ優勝 日本頂上決戦の似非科学

筆者は野球ファンではない。むしろ、お気に入りのテレビ番組が巨人戦で潰されまくって怒っている人の方である。だが、リーグ優勝という結果を出したチームには敬意を表したい。そこにはきっと、「プロジェクトX」が作成できるだけのドラマがあったに違いないからだ(NHK的にどうかはともかく)。

さて。リーグ戦が決着し、これから日本シリーズの季節である。この時期になると「日本シリーズはどちらが勝つのだろう」というのが毎年スポーツ新聞の話題になるのだが、そのどれもがアナログ的・主観的・いいかげんだと思うのは筆者だけだろうか。その原因のひとつは、スポーツ新聞の記者は職業上どこかの球団のファンだろうから客観的な判断ができない、というのがあるだろう。

では、特定の御贔屓球団の無いこの研究室で、日本シリーズの勝者を(似非)科学的に予言しよう。

さまざまな予測をする上で、普通に思いつきそうな条件を下記にあげてみる。

共通していえることは、それらは抽象的である、ということだ。抽象的なままだと、”計測”できない。

よく、SI(System Integrate: 請負で企業のシステムを開発する)の開発工程において、次のようなことがある。ある日、プロジェクトマネージャがさらにそのマネージャに進捗状況を聞かれ、「50%くらいです」と答える。この場合、その”50%”とは、どこからきているのだろうか?125ある開発項目のうち、63が完了しているのであれば、開発項目の大小もあるが、おおむね”半分”といえる。しかし、開発項目を表にまとめもしないで、全体でどれくらいの項目を開発しなければならないのかもわからない者が「50%くらいです」と答えるのは、まったくのカンである。よく言っても”抽象的”であるといわざるを得ない。

さらに、彼らは1週間前までは"1週間の遅れ"だったのに、今日になって"1ヶ月の遅れです"と、たった1週間でさらに23日も遅れるという、時空を超えたスケジュールを出してくる。

ということで、とりあえず抽象的なものを定量的にとらえ、計測する必要がある。それでは、現在入手可能なデータにより、両者の強さを数値で表し、日本シリーズを予測してみることにしよう。

★ データの分析

まず、データの分析からはじめよう。10/5時点のセ・リーグ、パ・リーグの成績表は下記のとおりである。

セ・リーグ 試合数 勝率 得点 失点 打率 防御率
巨人 140 75 63 2 0.543 688 659 196 0.270 4.45
ヤクルト 135 74 55 6 0.573 619 495 142 0.273 3.28
横浜 135 66 65 4 0.503 538 546 91 0.266 3.74
広島 135 65 63 7 0.507 581 572 144 0.266 3.80
中日 137 60 73 4 0.451 470 502 95 0.252 3.47
阪神 138 57 78 3 0.422 463 585 90 0.242 3.70
パ・リーグ 試合数 勝率 得点 失点 打率 防御率
近鉄 140 78 60 2 0.565 770 745 211 0.279 4.97
ダイエー 140 76 63 1 0.546 741 684 203 0.273 4.49
西武 140 73 67 0 0.521 620 584 184 0.255 3.87
オリックス 140 70 66 4 0.514 651 634 143 0.262 4.11
ロッテ 140 64 74 2 0.463 593 608 133 0.258 3.92
日本ハム 140 53 84 3 0.386 593 713 147 0.255 4.79

このデータを解析するにはさまざまなやり方があると思うが、今回は「得点および失点データ」に「ある補正」を加えることでリアルな数字を出していく。

なぜ補正が必要なのか?

次のようなケースを考えていただきたい。

 「強力打撃陣を持つジャイアンツと、非力な攻撃陣のドラゴンズの投手力を比較する。ドラゴンズの投手陣は、”強力な”巨人打線と戦っている。巨人投手陣は、”非力な”ドラゴンズ打線と戦っている。双方のチーム防御率が、仮に同じ3.00だとしたら、それは同じ投手力と言えるだろうか、いや言えない(反語)」

具体的な補正方法は次のようになる。

1 ) 下図のように、まず現在の試合数、得点、失点を元に、140試合終了時の 得点S(140), 失点L(140) を予想する。(まだ140試合終了していないチームがあるため)

セ・リーグ 試合数 S(得点) L(失点) S(140) L(140)
巨人 140 688 659 688 659
ヤクルト 135 619 495 642 513
横浜 134 534 545 558 569
広島 134 576 570 602 596
中日 136 468 497 482 512
阪神 137 462 581 472 594
パ・リーグ 試合数 S(得点) L(失点) S(140) L(140)
近鉄 139 769 738 775 743
ダイエー 140 741 684 741 684
西武 140 620 584 620 584
オリックス 139 644 633 649 638
ロッテ 140 593 608 593 608
日本ハム 140 593 713 593 713

2 ) 次に、S, L, S(140), L(140)から、補正得点項(S2)と補正失点項(L2)を算出する。この作業が今回の補正のメインとなる。S2とは何か?S2とは、「そのリーグのチームが、自チームとの対戦以外で平均的に得ることができる得点」である。何のことだかわからないので、Yの視点で説明すると、S2とは、

「セリーグの全チーム(Yを含む)が、Y以外と対戦したときの平均得点」である。

なぜこの値を出したいかというと、平均得点を直接使うと先ほど述べた不公平な評価が内包されているため、補正項で比較しないことには、正確な攻撃力を測れないからである。同様に、L2とは、「そのリーグのチームが、自チームとの対戦以外で平均的に失う失点」、つまり、Yの場合、「セリーグの全チーム(Yを含む)が、Y以外と対戦したときの平均失点」である。

さて、Y以外と対戦したときの平均得点をどう算出するかは次のようになる。

対戦相手→ G Y B C D T
Gの得点
Yの得点
Bの得点
Cの得点
Dの得点
Tの得点

上の表で、赤の丸がある部分の得点を合計する。そして、赤に含まれる試合数で割るのである。この数字を「Y以外と対戦したときの補正平均得点」とする。補正平均失点の方も同様に計算する。この計算方法で、先に述べたようなチームの特色を無視した得点・失点統計の矛盾を取り除くことができる。

さて、準備は整った。表にまとめよう。これが、セ・パ両リーグでの真のパワーシートである。

セ・リーグ S2(自チーム以外と対戦したときの平均得点) L2(自チーム意外と対戦したときの平均失点) 自チームの平均得点 自チームの平均失点 攻撃力 投手力
巨人 4.13 3.94 4.91 4.71 19.13% -19.49%
ヤクルト 4.34 4.01 4.59 3.67 5.63% 8.51%
横浜 4.26 4.13 3.99 4.07 -6.41% 1.57%
広島 4.22 4.07 4.30 4.25 1.88% -4.59%
中日 4.34 4.24 3.44 3.65 -20.77% 13.91%
阪神 4.22 4.26 3.37 4.24 -20.12% 0.43%
パ・リーグ S2 L2 S(140) L(140) 攻撃力 投手力
近鉄 4.78 4.72 5.53 5.31 15.73% -12.51%
ダイエー 4.87 4.77 5.29 4.89 8.72% -2.45%
西武 5.02 4.95 4.43 4.17 -11.72% 15.70%
オリックス 4.94 4.91 4.63 4.55 -6.16% 7.17%
ロッテ 4.98 4.99 4.24 4.34 -14.96% 12.94%
日本ハム 4.83 4.99 4.24 5.09 -12.22% -2.10%

補正後の攻撃力・投手力については、

自チームの平均得点(失点) / S2(L2)

で計算を行う。この数字の大小が、得失点を客観的に統計しなおしたときのチームの攻撃力あるいは投手力となる。

とまあ、難しいところはさておき、この表から得られる結論のいくつかは次のようになる。

ついでに言わせてもらえば、

何はともあれ、これでヤクルトと近鉄の攻撃力/投手力を数値で表すことができた。

★ 日本シリーズ・裏日本シリーズの勝敗予想

日本シリーズは最高7試合である。7試合、つまり4勝3敗となるパターンはいくつあるか?

○○○●●●○ ●○○○●●○
○○●○●●○ ●○○●○●○
○○●●○●○ ●○○●●○○
○○●●●○○ ●○●○○●○
○●○○●●○ ●○●○●○○
○●○●○●○ ●○●●○○○
○●○●●○○ ●●○○○●○
○●●○○●○ ●●○○●○○
○●●○●○○ ●●○●○○○
○●●●○○○ ●●●○○○○
(○=勝ち、●=負け)

の20パターンである。この”20”という数字は、どのように計算したらよいのか?7試合程度であれば、上のように手で書いてみてもよい。しかし、100試合となると、それは不可能である。わかりますか?

この問題は、”7つのうち、○が4つあるパターンはいくつになるか?”と置き換えることができる(本当はそうではない:後述)。つまり、である。あれ?20じゃないの?

ここにトリックがある。日本シリーズは”最後は必ず勝ち”なのである。つまり、”7つのうち、○が4つあるパターンはいくつになるか?”ではなく、”6つのうち、○が3つあるパターンはいくつになるか?”と置き換えねばならない。すると、

ほらね。同様に、

 4勝2敗 = =10パターン
 4勝1敗 = =4パターン
 4勝0敗 = =1パターン

では、パワーシートの結果を元に、日本シリーズを予測してみよう。両チームが対戦したときのそれぞれの総合力とは

ヤクルトの総合力 = ヤクルトの打撃力 - 近鉄の投手力 = +18.13% = 1.1813
近鉄の総合力 = 近鉄の打撃力 - ヤクルトの投手力 = +7.22% = 1.0722

これをもとに、以下、ヤクルトの視点で計算していく。まず、 1試合だけ試合を行うとして、ヤクルトの勝つ確率は、

となる。この0.524 = P(Y,1,1)とする。これは、ヤクルトが1試合中1試合勝つ確率を意味する。2試合試合を行い、2試合ともYが勝つ確率は、

1勝1敗となる確率は、単純に確率をかけると次のようになるが、

実際には1勝1敗のパターンは○●、●○と2つある。故に、1勝1敗となる確率は、

である。これで、日本シリーズが何勝何敗でどちらの勝利に終わるかが推測される。

Y勝-Bu勝 素確率 パターン 総合確率
4-0 7.55% 1 7.55%
4-1 3.59% 4 14.37%
4-2 1.71% 10 17.09%
4-3 0.81% 20 16.27%
3-4 0.74% 20 14.76%
2-4 1.41% 10 14.08%
1-4 2.69% 4 10.75%
0-4 5.12% 1 5.12%
合計 70 100.00%

今回日本シリーズにてヤクルトが勝つ確率は55.28%である。その中で、最も起こりうるパターンは、ヤクルトの4勝2敗で、17.09%、ということになる。この計算が実際の数字にどれくらい近いかは、もちろん実験で確かめるしかない。ということで実験結果(今回の日本シリーズの勝敗)が出るのを楽しみに待とう。

さて。ここからが似非科学である。この方法を使うと好きなチーム同士の日本シリーズ勝敗予想を行うことができる。たとえば、「阪神−近鉄」大阪ダービーの結果はどうなるのだろう?

おまけ.阪神-近鉄 阪神の勝つ確率38.08%

T勝-Bu勝 素確率 パターン 総合確率
4-0 3.92% 1 3.92%
4-1 2.17% 4 8.69%
4-2 1.21% 10 12.07%
4-3 0.67% 20 13.40%
3-4 0.84% 20 16.72%
2-4 1.88% 10 18.80%
1-4 4.23% 4 16.90%
0-4 9.50% 1 9.50%
合計 70 100.00%

阪神ファンには悪いが、残念ながら負ける確率のほうが高い。だが、阪神が勝利する確率も4割近くある。

とまあ、いろいろ計算できるのだ。ちなみに、ヤクルトと対戦するとパリーグのどの球団も優勝できないという数字がはじき出されるが、一方、仮に巨人が日本シリーズに出てくると、近鉄・ダイエーのどちらのチームでも勝利できるという面白い結果がでた。今回の計算方法は、「チームの微妙な相性」というのを如実に示してくれる。「ダイエー vs マリナーズ」なんてのも計算できるのだ。

総得点数・総失点数に隠された統計のマジック。今回はそれを徹底追及してみた。だがもちろん野球は科学ではなく、ドラマである。今回の計算で出た結果が覆されるとき、人はそれをミラクルと呼んで語り継ぐのだ。

(S)

 

 

 

・W32-Nimdaウィルスとマーフィーの大予言の似非科学

「失敗する可能性のあるものは、失敗する」

この言葉はマーフィーの法則と呼ばれ、予想した不安が的中したり、想定した事象で最もタチの悪い事象が起こってしまうという、人生の現象論を表した言葉だ。10年位前に日本でも紹介されちょっとしたブームになったからご存知の方も多かろう。たとえば

「先に手にとるのはいつもリンスだ」

のような形で応用される。検索エンジンでマーフィーの法則を検索するといろいろ見つかると思うのでご覧いただきたい。

さて、最近、爆発的にW32-Nimda ウィルスが感染していくさまを見ていると、筆者はこのマーフィーの法則を思い起こさずにはいられない。ということで、まずW32-Nimda ウィルスの感染経路を見ていこう。

■ 添付メールからの感染

メールに添付された実行形式のウィルスファイルというのは従来からよくあるパターンだ。「そんな怪しげなファイル実行するヤツが悪い」と思うかもしれないが、実際あなたの家に知らない人から宅急便が送られてきて、「内容物=タラバガニ」と書いてあったら、さすがに中身を開けてみようと思うのではなかろうか。(「きっとなにかの懸賞に当たったのよ」とか都合のいいことを考えながら。)このへんの心理をうまくついている。が、さすがに今頃ひっかかるのは、Windows云々と文句を言う前にあなた自身のセキュリティレベルが甘い。

とはいえ「誰も添付ファイルなんて開けないよな」という状況だからこそ、添付ファイルを開ける人がいるのだ。

■ Webページ閲覧での感染

今回のウィルスの最大の武器は、やはりこれではなかろうか。Webサーバーが一度Nimdaに感染すると、自分の管理しているあらゆるWebページを改ざんし、あるJava Scriptを書き加える。このJava Scriptにはreadme.emlというファイルを閲覧者のパソコンにダウンロードするような非常にシンプルな命令が書かれている。そしてこのファイルは、実はNimdaの母体であり、Nimda本体が添付ファイルの形で含められている。(emlという拡張子は、e-mailから来ている。)

このファイルは、Windowsのプレビュー機能によってブラウザに勝手に渡される。別にここまでは問題ない。emlに入っている添付ファイルさえ実行しなければ大丈夫だからだ。

だが、このウィルスは電子メールの不正MIMEヘッダの脆弱性をうまく利用している。ある不正な文字列を含んだ添付メールをWindowsにダウンロードしようとすると、即座にブラウザがその添付ファイルを実行してしまうというものだ。

つまり、このウィルスはWebページをみただけで、添付ファイル付き電子メールを開いたのと同じ動きを無理やり起こさせるわけだ。先ほどの例で言えば、宅急便を手に取っただけで中身が開くように箱に細工がある、ということになろう。印鑑を押そうが押すまいが関係ない。

「まさかWebを見ただけでウィルス感染なんてしないよね」

だがマーフィーの法則は物語る。

■ ネットワーク共有からの感染

W32-Nimda ウィルスに感染したコンピュータは、ハードディスク、ネットワーク共有されたドライブに関わらず次々と自分の分身をコピーしていく。そして、その場所にhtmlファイルが存在している場合にはやはり先ほどのようにhtmlを書き換えてJava Scriptを付け加えていく。

社内LANにおいて、ネットワーク共有を利用している場合には、ある一人が感染すると次々にウィルスを他のコンピュータにばらまいてしまい、そしてそのファイルを選択しただけで感染してしまうのだ。極論で言えば、怪しいファイルがあるなと思い削除しようとするだけで選択状態となり、デスクトップのプレビュー機能により感染してしまう。

また、W32-Nimda ウィルスに感染したコンピュータは、様々なIP、様々なポートへ攻撃を仕掛け、近くにWebサーバを発見すると不正な攻撃をしかけ任意の場所にウィルスを保存し、かつそのウィルスをサーバー上で実行させてしまう。

そのほかにもEXEに感染し、プログラムを実行しただけで感染したり、すべてのドライブをネットワーク共有させようとしたり、Windows2000 の場合にはゲストアカウントに管理者権限を与えたりと様々な感染経路を持っている。

「俺は添付ファイルも開かないし怪しいWebページも見ないからウィルスとは関係ない」…今の世ではたわごとである。

■ 複合的感染経路

このようにW32-Nimda ウィルスは非常に強力な感染力を持っているのだが、これらはネットワーク管理者や、ネットワークに少しでも関わっている人なら、実は誰でも考えつく感染経路だ。

思えば今回のセキュリティホールのほとんどは既にマイクロソフトが発表・パッチの公開をしていたものであるし、一度社内のLANに感染してしまえばネットワーク共有を利用してあらゆるパソコンにウィルスを送り込むことが可能なのは、ある意味当然のことだ。

このウィルスは、これまでの考えられるあらゆる経路や手段を利用して感染するとても優れたウィルスなのである。おそらく製品開発並みの仕様書とプログラム設計がなされていたはずだ。そうでなければここまでうまく広まらない。(複雑なウィルスになればなるほど、ウィルス自体のなんらかのバグが出て、そこで感染がストップするからだ。)

「そんなものを作るような暇なやつがいるわけがない」−−だがマーフィーの法則は、この手のウィルス(あるいは暇人)を予言する。

■ ではどうすればいいんだい?

とどのつまり、マーフィーの法則で今回のウィルス騒動を言い換えれば

「感染する可能性のあるものは感染する」

まあそういってしまえば実もふたもないんだけど(笑)。

だが筆者は、もともとマーフィーの法則とはカウンセリングの効果を持つと思っている。冒頭の例のように、きっとあなたがお風呂に入って最初に手にとるのはリンスだろう…シャンプーではなく。そんな時、

「なんでシャンプーじゃないんだよ、俺ってなんて運の悪い。。」

とは思わなくていいと、マーフィーの法則は言っている。リンスを最初に手にとってしまうのは自然の摂理なのだ、何も自分を卑下することはない、淡々とシャンプーのビンを探せばよいのだ。

今回のW32-Nimda騒ぎでも、筆者は淡々とパッチを当てて行ったのである。今後どうしようか、なんてことを考えたりもしたが、

「今よりも良い方法を思いついたとすれば、それは今よりも時間をとられる方法だ」

というマーフィーの声が聞こえてきそうな気がするのだ。(ただしネットワーク担当者とマイクロソフト関係者はこの方便を使ってはならない。そうしないとあなたの会社に最悪の事態が起きてしまうよ)

(OG)

 

 

 

・続4・危険物を確実に運ぶドライビングテクニック−頭文字Tの似非科学

★2回転目開始!

とりあえず、必死で苦労した割には報われない1回転目が終了し(続3・危険物を確実に運ぶドライビングテクニック − 頭文字Tの似非科学参照)タンクは空になった。2回転目の油を積み込むため油層所に向かって車を走らせる。次の油層所は現在の場所から比較的近いところにあるので楽である。

ここで不思議に思う人がいるであろう。1回転目終了時はずいぶん山の中で荷下ろしが終了した。そこから近いところに油層所があるということは、つまり山奥の油層所ということである。石油が荷揚げされる港の近くではなく山奥?

実はそうなのである。ちょっとした中継ポイントのようになっているのである。石油製品は海外から原油で輸入されたあと、精製所でガソリンや軽油に精錬される。なので、精製所は船の出入りに便利な場所に作られている。そこで作られた石油製品は貯蔵され、タンクローリーなどで運ばれていくのであるが、大量輸送となるとどうしてもタンクローリーではコストがかかる。そのため貨物列車などを利用して一度内陸へ輸送し、ターミナルで貯蔵するようになっているのだ。で、私はというと、その山奥のターミナルに行って、油を積み込み、近くのガソリンスタンドなどへガソリンや軽油などを運ぶのである。

★4色積み

次の配送先はガソリンスタンドである。配送する油はレギュラー8kl、ハイオク4kl、軽油2kl、灯油6klと4色積みである。

これが非常に厄介で、きれいに「枡」を分けてつめないといけない。タンクローリーのタンクは2klと4klのいくつかのパーティションに分かれているが、この4kl枡と2kl枡がきれいに分かれていないので、積み込むときに慎重に計算しないとあとで全部を積み込めなくなってしまう。

とりあえずセオリーにしたがって危険なものは前のほうへ、安全なものは後ろのほうへ、油を積み込む(まあ、積んでいるのはどれも危険物ではあるが・・・)。

このように複雑な積み込み方をすると、あとで油を降ろすときに絶対やってはいけない失敗「油種間違い」を犯す可能性が出てくる。4色積みはとてもいやなものだ。

★配送先へGO

積み込み終了後、積み込み確認書を事務所に提出して配送先へ向かう。伝票上ではそんなに遠くない距離だ。車を1時間ほど走らせると目的のガソリンスタンドに到着した。とりあえずガソリンスタンドの中には乗り入れず、一度車を止めてガソリンスタンドの事務所のほうへ歩いていく。するとガソリンスタンドの所長が現れて、油を納品するところはこのガソリンスタンドの裏にある、と言われた。その裏側への道を確認すると、

セマイ!!

なんじゃこりゃ〜!!というくらい狭い。狭い。本当に狭い。こんなところに入れるの?というくらい狭い。トレーラーの車幅はだいたい2mちょっとあるが、その納品先への進入路はというと道幅が2m50cmくらいしかないのである。また、その進入路は生活道路で一般の人も歩いてる。乗用車もたまに通っている。申し訳なさそうに「とまれ」の標識もついている。この道を20mくらい奥に進んだ左側に地下タンクのジョイントがあるというのだ。

どうやって入っていくんだよ!おい!と、心の中で叫びながらも、きっと何か技を使えば入れるのだろうと思い、まず下見をした。とりあえず狭い道に面している道路は結構幅が広いので、ここでトラクターヘッドを振って、バックで進入するのは可能だなと考え、運転席に座り込んだ。また、今回はガソリンスタンドのスタッフが誘導してくれるので、比較的他の車を気にしないで進入することができるだろう。まあ、狭いけど何とかなるだろうと思った(楽観的)。

さて。上の図にはわざわざ電柱が描いてあるのにお気づきだろうか。「これはなんで描いてあるのであろう?わざわざ。。。」と思った読者の皆さん。あなたは正しいです、ハイ。実はこれ、あとで大変な目に合わせてくれます。

★バック開始

では、納品しましょう、ということで車に乗り込み、ガソリンスタンドのスタッフが反対車線の車の通行を止めてくれるのを待つ。車が止まってくれたのを見て、一気に反対車線に出てバックを開始する。

狭いです!ちなみに側道のガソリンスタンド側には防火壁(コンクリートでできている。消防法で定められている)があって、ガソリンスタンド側に乗り入れることはできない。また、図を見てもらえばわかると思うが、ここまで車を「く」の字に折ると、トラクターについているサイドミラーでは後ろの様子を確認することができないので、誘導してもらうガソリンスタンドのスタッフの声だけが頼りである。

「ストーップ、ストップ!ぶつかる〜」という声が右から聞こえてきたかと思えば、「ストーップ!標識が曲がる〜!」という声が左からも聞こえる。頭はパニック状態だ。こうなると勘でバックするしかない。何度もバックしては前に進んでやり直して、という具合で必死にトレーラーのお尻を入れていく。

★電柱!

何とかお尻を入れることはできた。あとはまっすぐバックして、左の納品場所へ車を入れればOK!と思い、サイドミラーを確認する。すると、

「電柱とタンクがあたりそうじゃん!!」

ミラーで見ると、後方の物体がものすごく小さく見えるため、ほとんど当たっているように見える。降りて確認しようとすると、今度はドアが開けられない。すぐ隣に壁が迫っているのである。で、誘導してくれているガソリンスタンドのスタッフに聞くと、「あと10cmくらい隙間があるから大丈夫ですよ」って、大丈夫じゃないよ!少しでもまっすぐバックできなかったらタンクの横っ面をゴリゴリとこすってしまうじゃないの!とはいえ、もうここまできたら仕方がない。手からにじみ出る汗をタオルでふき取り、バックを再開した。

ミラーに映る電柱がどんどん大きくなっていく。そろそろハンドルを切って後ろのトレーラー部分を納品所の方向へ向けなければならない。トレーラーのバックである。乗用車やトラックと違い、ハンドルを切る方向は逆になる。すなわち、あの狭い道でさらにハンドルを左に切って、もっとトラクターヘッドを左に寄せなければならないのである。運転席から助手席の窓越しに左側の壁を見て、あと少しだが左に寄せることができる。少しだけハンドルを切ってゆっくりバックする。運転席から顔を出して右後方を確認する。徐々にトレーラー部分が右方向に入っていく。よしよし、このままゆっくりバックを続けようと思った瞬間、

バキッ!

と、いやな音がした。一気に冷や汗が吹き出る。あわてて左側を見ると、ものの見事にサイドミラーが電柱とけんかして、そして無残にもサイドミラーは負けてしまい、運転席の前方にぶら下がっているではないか。サイドミラーは申し訳なさそうに首をたらしている。あたかも「ごめんなさい。負けちゃいました・・・。」といわんばかりに。「やってしまった〜!」と思ってあわてて車を前に出す。すると今度は右後方のトレーラー部分が壁と激突しそうになる。誘導してくれていたガソリンスタンドのスタッフが「ギャー!ぶつかる〜!」と絶叫したため、今度はフルブレーキ。ものすごい揺れが運転席を襲う。もうパニックである。揺れはなかなか収まらない。なぜかというとフルブレーキの衝撃でタンクの中の油がチャプンチャプンと揺れているからだ。

あぁ、どうしよう、と思っていたら、前からまたスタッフがやってきた。何をするのかと思えば無残にもひん曲がったサイドミラーを手で「グイッ!」と元に戻して、ご丁寧にミラー折りたたみ位置に設定してくれた(乗用車で言うとドアミラーを折りたたんだ状態)。そしてこちらを見て「ニコッ」と微笑んだ後、右手を出して親指を立ててくるのである。ちっともそんな気分ではないので、私は引きつった笑いで答えるしかなかった。(ちなみに私はそれからというもの、同僚とトラックですれ違ったときには右手を出して親指を立てるのが癖になりました。)

気を取り直してバックを再開し、どうにか納品所にトレーラーをたどり着かせることができたのは、かれこれバックを開始してから1時間後だった。地図上ではごく近い納品先なのに、伝票上はずいぶん余裕を持った配送スケジュールだなぁと思っていたわけだが、実際はこういうところで時間が取られることを正確に計算した上での配送先だったわけですな。

★納品開始の前に・・・

やっとの思いでトレーラーを納品場所にねじ込んだあと、地下タンクとジョイントするためタンクローリーに備え付けられているホースを取り出していると、ガソリンスタンドの所長が私のほうにやってきた。うん?伝票でも間違っているのかな?と思ったら、開口一番「運転手さん、最近この仕事始めたの?」と聞いてきた。何でこんなこと聞くのだろうと思って「ええ、そうなんですよ。苦労しますわ。」と笑って答えたら、所長いわく「うちに納品しに来る人はみんなだいたい新人で、新人キラーと呼ばれてるらしいですよ。」新人キラー、なんじゃそりゃーと思いつつ、道理で納品場所がへんてこなところが多いわけだ、と妙に納得してしまった。で、油種の確認と納品場所の確認をして地下タンクとタンクローリーをホースでジョイントする。はあ、やっと納品できるよ・・。

★納品開始

ということで、今回はここまでです。4色の納品の仕方については次号にて。

(T)

 

 

 

・ブロードバンドとラストワンフットの似非科学

昔、ADSLが最初に雑誌に紹介され始めたころ、記事の要点は2つだった。

これを見たときに、速いのは速いのだろうけど、安定しないのはいやだなあ、と思っていた。しかしこのような筆者の懸念には関係なく、NTTはせっせとADSL網を構築した。キャッチコピーは「ブロードバンド」。実に華々しい形容詞がついていた。転送スピードがなぜ「バンド(帯)」で表現できるのかはフーリエ変換を知らなければ理解できないと思うのだが、インパクトは十分だった。多分日本人にとっては、グループサウンドかなんかと語感のイメージがダブる(完全な誤解)ためだと思われる。

それはともかく、当初からADSLに注目していた筆者にとっては、まるで売り出したばかりの時から応援していたアイドル(ADSL)が数年後にトップアイドルとしてグラビア雑誌(PC雑誌)を総なめにしているような気分である。近所のかわいい女の子がモー娘になった感じにも似ている。しかもただ単に華々しいだけではなく、実力もかなりのものだ。

しかし、安定しないのはどうなのだろう。

たとえば、電気を考えてみる。もし、あなたの家に供給される電気の電圧が変動したらどうだろう?ICを使っている機械はすべて故障の危険にさらされてしまう。当然あなたは電力会社に文句をいうだろう。それなのに、ADSLに限って変動が認められるのは納得がいかない。

今はISDNより単純に速いために問題とはならないが、何らかのサービスが1.5MBPS安定を前提としたサービスを提供し、それを多くの人が享受するようになれば、この不安定性は大問題になると思われる。では、スタビライズド(安定)ブロードバンドに当てはまるものはなんだろう?候補としてはFTTH、CATV、専用線接続などがあるだろう。

このほかに無線LANをあげている場合もあるが、当研究室ではブロードバンドとは考えていない。なぜなら、電波だと安定性に欠けるからである。また盗聴、妨害の危険性も有線に比べると格段にあがってしまう。それを考えると無線LAN形式が主流になるとは考えづらい。集合住宅などでどうしてもFTTHやCATVを導入できない場合などで、あくまでも補完的な手段として使われるだろう。

それではこの3つの中で、次世代の本命ブロードバンドはどれか?

その前に考えなければならないのは「ラストワンフット問題(PAT.PEND)」である。これはディスプレイからあなたの目までの間、つまり、大量に送られているデータを人間がどれだけ受け取れるか、ということである。いくらパソコンまでの回線がブロードバンドになっても、人間の目がブロードバンド対応しなければインピーダンスが合わない。

仮に、数年後に本格的なブロードバンド時代が到来したとすれば、それはイコール「ラストワンフット」が解決された、ということになる。では、現在インターネットで提供されるというコンテンツを見てみよう。「最新の映像、曲をネットで」「カラオケ」「ニュースを」「教育講座を」・・・・

それって、別にブロードバンドでなくてもできるじゃん

日本がなぜ不景気なのかといえば、大学生が分数ができないことや、構造改革が遅れている云々の前に発想が貧困すぎるためではないだろうか。冒頭の形容詞の使い方一つにしてもその表れである。昨今のブロードバンド用コンテンツというのはすべてCATVやCSで提供されている。カラオケだって別にカラオケボックスで歌ったほうがいいし、映像や曲もレンタルショップにいくと間に合ってしまう。常時接続には電気代もかかるし、セキュリティーの問題もある。落雷による回線破壊の危険性も増すし、そもそも個人でつなぎっぱなしで何をするのか、というのが今ひとつ見つからない。

こういってしまうとみもふたもないようだが、つまり、ブロードバンドの問題というのはNTT vs YahooBBというよりは、ブロードバンド提供コンテンツ(orサービス) vs 他産業提供コンテンツ(orサービス)というのが本質的なのである。では、これを分けて考えてみよう。

1.ブロードバンドの中ではなにが勝つか?

これはブロードバンドの中では何が有利か?という問題に帰着する。そうなると、映像を他チャンネルで提供できるCATVが有利、というのが当研究室の結論である。共用すると速度が落ちる、などの問題はあるにせよ、映像というもっとも通信速度を要求されるメディアを安定に提供できるのであるから、ADSL程度のブロードバンドが勝てるはずがない。そしてCATVの最強の援軍は地上波放送の2010年のデジタル化である。そのときにはデコーダをつないで見る人よりCATVを選択する人が多いと思われる。よってブロードバンドの中では、家庭普及の標準はCATVだろう。

2.ブロードバンドと他のサービスとの競争関係は

この問題はまずADSLの命運について考えてみることからはじめよう。仮にCATVがなかったとして対他メディアとの関係はどうなるのか。

ここで有効となるのはミクロ経済学である。ADSLと他産業というのは代替財の関係に立ち、両者グッヅ(goods)であるから無差別関数は第1象限にあって原点に対して突である。

この場合、どちらが選ばれるかというのは予算制約線の傾きに依存する。長引く不況で所得が低迷している現在、ADSLの人気が高いということはADSLが下級財だから、ということになるだろう。そうすると、今後景気が回復し、国民全体の所得が上昇するとADSLよりは他のサービスが選択される可能性が高い(この辺の経済学の詳しいが不親切な解説は別冊の方に書いておいた)。

以上の考えを総合すると、当面はADSLの人気が続くものの、景気回復とともにCATVが普及し、2012年には国民的な標準ブロードバンドはCATVになっているのではないか。そしてSOHOや映像クリエーターという業界や一部の個人向けにFTTHや専用線が普及していくというのが当研究室のシナリオなのである。ということはADSLの命運も2004年から2012年までの間、と予測できる(構造改革の痛みの期間は3年とされているため)。

もし、このシナリオをひっくり返したいのであれば、各プロバイダーや通信業者が2012年までにブロードバンドならではのサービスを思いつかなければならない。鍵となるのはネットの双方向性なのだが、ネットの双方向性というのは矛盾した考え方である。なぜならネットが双方向的であるためにはその同じ時間に同時にネット端末の前に通信する両者が存在しなければならない。電子メールが画期的だったのは、手紙よりも速く、かつネット端末の前に両者がいなくても通信が成立することで、同時刻に端末の前にいる強制から開放されたことだった。だがBS、CSデジタルの双方向的な番組はその強制が復活してしまう。ブロードバンドにおいても、やはりこの強制の復活はさけられない。双方向性の強制と解放の矛盾、これを解決するものがラスト30cmを制するのである。

もちろん、そのコンテンツが何であるかを筆者はうすうす気づいているのだが、

それはとてもとてもこのHPには書けません(18禁)

・・・各自のご想像にお任せする。メールでの問い合わせにも応じない。

(M)

P.S. 景気が回復するにつれADSLがすたれるであろう理論の詳細は「魅惑の似非科学 別冊!」のほうに載せました。

 

 

 

・食欲の秋、女心とステーキの似非科学

いよいよ食欲の秋がやってきた。この季節になると様々な食材が収穫され、日差しも和らいで夏バテも解消し、自然と食欲が増してくる。秋はスポーツの季節でもあり、運動後に「さぁ飯でも食うか」となると、どうしてもこってりとしたものが食べたくなってしまう。そう、肉だ。肉を食わなくては。

肉料理といっても様々ある。しゃぶしゃぶ・焼き肉などの定番料理からタタキ・ローストビーフなど多種多様だが、材料の安さ、高級感、手間の掛けやすさなどから、今回は題材としてステーキを扱ってみたい。しかも、安い肉を工夫して、簡単に、そしてよりおいしく調理しようというのが今回のテーマだ。

■ 肉を選ぶ

牛肉ほど不思議な価格設定の材料はない。同じ牛肉でも生産地、銘柄、肉の部位によって価格がまったく異なる。100グラム1000円の肉があるかと思えば、100グラム100円程度の肉もある。まぁ、だいたい価格が高ければおいしいお肉なんだろうが、生産地や銘柄にはちょっとしたカラクリがあるので気を付けたほうがいい。

まず、「国産牛」と「和牛」の違いはなんなのかご存じだろうか。国産の牛=日本の牛=和牛、つまり国産牛も和牛も同じ肉では?と思っている人もいるかもしれないが、実はそうではない。和牛とは、数ある牛の種類のなかでも黒毛、褐毛、短角のみを示している。日本で飼育された牛であれば和牛ということではない。和牛(黒毛、褐毛、短角)以外の日本で飼育された肉=国産牛という寸法である。

では「輸入牛」と「和牛」の違いは?勘の鋭い人はもうおわかりだろう。そう、すべての和牛が日本国内で生産された肉ではないらしいのだ。つまり、黒毛牛、褐毛牛、短角牛を海外で飼育し、日本国内に輸入しても、種類としては立派な和牛なのである。なかには国産牛でも高級な肉を和牛と表示している店もあるらしい。

もっと驚きなのは生産地表示である。牛肉の銘柄で有名なのは?と質問すると、多くの人は「松坂牛」「神戸牛」と答えるに違いない。しかし、ちょっと考えてもらいたい。今現在、日本各地で「神戸牛」なるものが販売されているが、そんなに大量の牛が、果たして「神戸」だけで生産できるものなのだろうか・・・・。神戸牛にはちゃんとした定義がある。兵庫県で生まれた牛が兵庫県で飼育され、兵庫県の食肉センターに卸された牛を「神戸牛」と呼ぶことができる。

しかし、この手の話には尾ヒレが付き物で、私も知り合いの業者から、単なる和牛を「神戸牛」と表示して販売していたり、はたまた他県産の牛を兵庫に運び、そこで食肉センターに卸した肉を神戸牛として販売しているという噂を聞いたことがある。業者いわく、もちろんちゃんとした良心的な生産者もおられるが、なかには、こうした生産地銘柄を一つの「ランク」として利用しているお店もあるらしい。つまり「神戸牛並においしいよ」という表示をしているというのだ。まぁ、この話が本当か嘘かはさておき、生産地、銘柄表示には曖昧なものもあるので、自分の舌で確かめてみるのが一番だろう。

同様に輸入牛や、単なる国産牛だからおいしくないということではない。日本人向けに和牛をオーストラリアなどの海外に持ち出し、そこでちゃんと管理して生産し、日本に輸出しているという例もある。また国産牛もとてもおいしく、なによりコストパフォーマンスに優れている魅力的なお肉なのだ。

研究資料として、筆者は近くのスーパーでオーストラリア産輸入サーロインを買ってみることにした。もちろん特売日、しかも深夜の特売時間に仕入れたのは言うまでもない。

200グラム程度の肉が3枚入りで650円。しかも150円引きの500円である。1枚あたり170円。ついでにレトルトタマゴスープ50円、ご飯50円、締めて270円+αの経済的ディナーだ。ファミレスでステーキを食べるぐらいなら自分の家で調理したほうが絶対に安い。このあたりの理由は「王様の飲み屋さん―外食産業の似非科学」で詳しく記述してあるので、興味のある方はそちらをご覧いただきたい。

■ さあ、実験にとりかかろう−−下準準備−−

筆者は醤油好きで、醤油味のおかずをご飯で食べるのが好きなので(戦後は醤油ライスなんて料理もあったね)、今回は和風ステーキを作ることにする。そして、もちろん焼き方はミディアムレア

ステーキの焼き方は、ご存じの通り大まかに「レア<ミディアム<ウェルダン」の3種類あり、後者にいくほど中まで完全に焼けている状態になる。レアというと「ナマっぽくて嫌い」という人もいるが、それは失敗してしまったステーキだ。牛肉の脂の融点は人間の体温より高く、脂をそのまま口に入れても溶けない。そうなると牛の脂はたんにネチャネチャとした食感になってしまい味わいも低下する。見た目は赤いが、しかし熱は通っており、牛の脂が溶けだしているギリギリの点を見極めた焼き加減がレアなのである。この状態ではじめて活性化された肉の味を楽しむことができる。決して表面だけ焼いて中が生焼けになっているものがレアではない。

この焼き加減の調整は微妙だ。まず第一に肉が薄いとすぐに火が通ってしまい、ウェルダンになってしまう。火を止めるタイミングが難しいのだ。しかし厚い肉は高いし、専門のお肉屋さんにいかないと分厚いステーキ用肉は売っていない。また厚いなら厚いなりにタイミングが難しく、中が生焼け状態になってしまう。ステーキ用肉は、食べる1時間前に冷蔵庫から出し常温に戻すというが、これは中まで完全に常温状態に戻すために必要な作業なのである。冷蔵庫から取り出してすぐに焼いてしまうと、中が冷たいままになってしまい、失敗してしまうのだ。女性の心同様、肉質や状態によって焼くタイミングがころころ変わる非常に難しい食材なのである。

しかし筆者の買ってきた肉は冷凍でカチカチになっているうえ、薄っぺらい。

どうすればいいか。薄い肉はすぐ中まで火が通ってしまいミディアムレアにしにくいというのであれば、むしろ中が冷たいほうがタイミングは掴みやすいはずだ。表面をこんがりやいても、それだけでは中まで完全に火が通らない状況を作り出せばよい。ここでは電子レンジで急速解凍し、表面だけを解凍して中を冷たく保ってみよう

電子レンジで解凍しつつ、料理にはタイミングが大事ということで、調味料をあらかじめ用意しておく。調理中にまごまごしていると、アッという間に中まで火が通ってしまうからだ。今回の調味料はこちら。

和風ステーキということで、塩、コショウ、バター、醤油、ワインを利用した。香りづけとソースづくりには以下の調味料を利用。

通常、ナマのニンニクを使うが、面倒なので乾燥のガーリックを利用した。クレイジーペッパーは、塩、コショウ、香草類がセットになった魔法の調味料である。ちょっと隠し味に使うとおもしろい味になる。乾燥バジルもいろいろ使える香草の一つだ。イタリアンテイストの料理に使うと面白い。

■ さあ、実験にとりかかろう−−調理編−−

まず肉の下ごしらえだ。肉の片面に塩・コショウをする。焼こうとしている面に、焼く直前に塩・コショウする。肉のどちらの面を最初に焼くかには実はプロのルールがあるのはご存知だっただろうか?お客様(あるいは家族)にステーキを出す際には、肉についている脂身が右側にくる状態で提供する。なので、最初にこの面に塩・コショウをして焼くのだ。直前に塩・コショウするのは浸透圧の関係で肉汁が中より表面にでてきてしまうのを防ぐためだ。ちなみに、魚は頭が左になる状態で提供するので、この面を最初に焼く。

まずフライパンに油とニンニク(注:生の場合。今回は粉末のニンニクを利用したので、あらかじめ肉に振っておいた)を入れ熱し、煙がでるまで待つ。油はなんでもよいが、スーパーで無料でくれる牛脂を使うのがベストだ。肉の風味が損なわれないでおいしく食べられる。フライパンを熱する理由は、牛肉を強火で一気に焼き上げ肉汁を中に閉じこめるためで、そのためにフライパンを熱しておく必要がある。そして肉を投入する。

焼き上げること30秒ほど、焦げ目がついて表面がしっかり固まっていたらひっくり返す。

このぐらいで充分だ。通常ならこれだけで中まで火が通ってしまうが、今回の場合、意図的に中をまだ冷たい状態にしている。肉が焼けたら火を弱火に落としバターを投入し、鍋にフタをする。こうして蒸し焼きにし、中まで火が通るのを待つのである。強火で焼き上げると表面が焦げてしまうし、火の通りのタイミングが難しくなる。バターは最初から入れてしまうと熱で焦げてしまうので、このタイミングでいれるとちょうどいい(あくまで私の味覚の趣味です)。

こうして、表面にうっすらの肉汁がしみ出た状態がレアである。それからしばらくするとミディアムになるので、このタイミングでフタをあけ、すかさず赤ワインを投入する(いわゆるフランベ)。アルコールに火が付くので熱に気を付けてね。アルコールを飛ばさないと酔っぱらうステーキができてしまうので、必ずアルコールを飛ばすこと。焼き上がり直前に、鍋肌から醤油をたらして和風に仕上げる。私は大根おろしで食べるのが好きなので大量の赤ワインと醤油、香草等でソースを作りステーキの上からかけてしまう。すると、以下のようになって完成だ。

ご飯を盛り、スープを作り、さぁ召し上がれ!

ほら、たった300円でこのメニュー。経済的だしカロリーも充分です。あとはサラダがあればベストか・・・・。さて、問題の肉の焼け具合はどうだろう。ここが、このメニューの肝心なところだ。肉を切って中をみた瞬間にいままでの苦労が報われるのである。早速、ナイフを入れて肉の中身をみてみよう。

ほら、ちゃんとミディアムレアになってるでしょ?ちょっと下のほうが赤くなっているのは、ひっくり返した時にフライパンの温度が下がっていたからだが、ここを指で触っても冷たくなく、ちょうどいい感じに火が通っている。こんな薄っぺらいお肉でも、今回の方法を使えばレアやミディアムのタイミングが掴みやすく、うまいステーキが作れるのだ。料理とは、最もおいしい(そして家族受けがいい)科学実験なのである。

(OG)

 

 

 

・身を滅ぼす中国茶の似非科学

さて。以前「お茶の遺伝子解析の似非科学」でも少し触れたことがあるが(ちなみにあの回は、お茶の科学というよりも説教モード全開の回として有名だ)、筆者の個人的な趣味のひとつに「お茶」がある。今回はその中でも中国茶にフォーカスを当ててみる。

最近は日本でも特に中国茶がブームだ。だが、もちろんこのサイトで「中国茶のおいしい飲み方」なんていうWeb上に情報のあふれているトピックを扱う気はないので安心してほしい。また、鉄観音のような超メジャーな中国茶のレビューなんてのもやるつもりは無い。今回の主なターゲットは「蘭貴人」「君山銀針」「明前雪芽」といった、レア中国茶(日本では)の話である。これまで中国茶に興味の無かった方でも、その奥深さに触れていただければ幸いだ。

筆者は6月に中国に旅行に行った。北京のお茶専門店を回って、いくつかのお茶を買い求めた。中国茶を買う方法はいろいろあるが、日本で出回っているものはいまいち信用できない。たとえば鉄観音は日本でもよく見かけるが、鉄観音ひとつをとっても、さまざまなランクが存在している。日本で売られている鉄観音で「ランク」別に種類がそろえてあるのはごく小数だ。となると、資本主義の原則から言って、最低ランクの鉄観音である可能性も高い。

筆者が立ち寄った北京市内のお茶専門店は、観光客相手の店ではなく、地元のお茶好きのためのお店だ。どうやって見つけたかというと、たまたまハイヤーの運転手さんがお茶好きで、彼が普段通っているお茶屋さんに連れて行ってもらったのだ。あえて店名は伏せるが、

中国に行く前に、ほしいお茶を10種類ほどリストアップしておいたのだが、そのほとんどが置いてあったのにはおどろいた。いそいそと買い求める。基本的には量り売りで、研究資料として50gずつ買い求めた。これらのお茶名をだらだらとリストアップしても退屈だろうから、いくつかを書いておくと、

値段(/50g) 外観
蘭貴人 180元 (2600円)
君山銀針 150元 (2200円)
明前雪芽 100元 (1500円)
銀針白毫 30元 (500円)
等等

茶葉50gというと、大体手のひらにのるくらいの量である。それを8種類で合計800元。為替レートで計算すると、日本円で1万2千円くらいになる。日本人の感覚では「おお、結構高いお茶を買ったのね」といったところだろう。中国国内でこの値段だから、日本に輸入されると倍くらいの中間マージンが付いてくるはずだが、まあ許せる範囲だろう。しかし、中国の物価を為替レートで論じるわけにはいかない

たとえば、中国のいわゆる大衆食堂(観光客向けのところではなく)でチャーハンと炒め物を頼んでみよう。ラーメンどんぶりにテンコモリのチャーハンと大皿からあふれんばかりの炒め物が出てくる。当然一人では食べきれない。で、お値段は10元(150円)しなかったりする。日本で食べると1000円は下るまい。

この物価の安さから考えると、50g×8種類のお茶800元は、日本でいえば10万円くらいの感覚であろうか。つまり、これらの中国茶の値段は、普通の金銭感覚からすると信じがたい領域のものである。しかしこのお茶屋さんは、別にお金持ちや観光客相手の店ではなく、庶民の店である。日常はともかく、何かのお祭りごとのときに大切に飲まれる茶葉であるにちがいない。

平和ボケの日本人観光客(筆者)が金に物を言わせて高級茶葉を買いまくる。。。筆者としてはそういう構図を地元の人(観光客相手ではない人たち)に感じさせるのは耐えがたかったため、「研究用、科学研究、遺伝子」などとわけのわからん漢字を筆談しながら買った(伝わったかどうかはわからない 笑)。

さあ、日本に帰って研究だ。下の写真は自宅試飲会の様子である。

最初は、お茶のラベルを隠し、筆者の感覚でどれが一番おいしいと感じるか、順番をつけてみた。値段というブランドで、おいしいかどうかの感覚が麻痺しないようにするためだ。以下、いくつか特徴的な茶葉4種類について詳しく述べてみよう。(実際には11種類で飲み比べたが、退屈でしょうから。)

マイベスト1だった明前雪芽は、非常にマイルドな香りを持っている。

このお茶は、写真から分かるように新芽の部分だけをとってあるものだ(いわゆる針茶)。普通、新芽のお茶は、マイルドというよりもすがすがしい感じの味(若い味)がするはずだが、この明前雪芽はそんなことがなく、うっすら甘い。今回買ってきた茶葉には花(たぶん金木犀)が織り込んであったようだ。(これが普通なのかどうかはちょっと分からないが)

あと写真では見えないと思うが、茶葉に細かい羽毛のようなものが付いていてケバケバしている。これは非常にランクが高い茶葉の証拠である。

次に蘭貴人

高級鉄観音系の味がする。やはり花の香り付けがされていた。この手の味は飲みなれているせいもあって気分が落ち着く。写真を見ていただければ分かるが、変な形をしているとは思わないだろうか?実は、この一粒一粒をお湯の中に浸すと、見事な一枚葉に展開していくのだ。上の写真で白い棒のように見えるのは、実は圧縮された茎なのである(いわゆる茎茶)。

右が元の茶葉で、左が展開した後の姿だ。丸まった茶葉(だんじゅう、という)の茎と葉が見事に広がった。これも高級茶葉のしるしで、葉っぱと茎が広がっていく様子はみやびとしか言いようがない。こういう茎が残っている茶葉は手づみでしか得られない(機械づみだと茎は切れてしまう)。

君山銀針は、明前雪芽と同じく針茶だ。

非常に高いお茶だが、筆者的には実はあまりおいしく感じなかった。このお茶は白茶と呼ばれる微生物発酵を施した後のお茶のようで、独特の香りと酸味がある。まあ、これがツボにはまる人もいるということなのだろう。好みは人それぞれだ。

ということで、だらだらと続けてしまったが、これからが「似非科学」である。高いお金を出せば上記のようにそれなりの茶葉が買えることは分かった。だが、これには技術も知識も何もいらない、ただお金だけあればよい。しかし「似非科学」ファンであれば、値段的にリーズナブルで穴場的存在のおいしい茶葉こそ、買い求めたいと思うに違いない。現地の人からも「おっ!こいつは茶の事がわかっているな」とか「ただの金持ち日本人じゃないんだ」とか、一目置かれること請け合いだ。今回の旅は、こういう茶葉を見つけるのが目的だったのだ。では発表しよう、それは

銀針白毫

非常に香りが高く(やはり金木犀の花がいくらか混ぜてあったようだが)、高級感のある深い味わいだった。外観は針茶でケバだっており、高級茶葉の品格がある。それでありながら値段は30元(500円)/50gで、上記で紹介した高級茶葉に比べると1/5程度の値段だ。今度買い付けに行くときは、この茶葉をたくさん買ってこようと思っている。

とはいえ、人間の味覚とは人それぞれだ。これらの感想はあくまで筆者個人の好みであって、あなたにそのまま当てはまるとは思えない。また、最初に述べたように茶葉には「ランク」というものがあり、同じ種類のお茶でもランクが違えばピンキリなのだ。実はあといくつか、購入のポイントがあるのだが、それはあえて書かないので、自分で研究されてほしい。そして、金に物を言わせたブランド茶葉買いの観光客ではなく、自分なりに中国茶のおいしさを理解した文化人としてお茶を楽しんでほしい。それが中国4000年の歴史に対する敬意でもあろう。

(TK)

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