魅惑の似非科学

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11/18/2001 続6・危険物を確実に運ぶドライビングテクニック−頭文字Tの似非科学 (おすすめ)

11/11/2001 閑話休題 雀の行動規範に関する動物学的な検証の似非科学

11/4/2001 似非式携帯電話進化論の似非科学

10/28/2001 ADSL番外地−ADSLディバイド問題の似非科学

10/21/2001 続5・危険物を確実に運ぶドライビングテクニック−頭文字Tの似非科学

10/14/2001 ツールレス・ファイル偽装の似非科学

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・続6・危険物を確実に運ぶドライビングテクニック−頭文字Tの似非科学

★いよいよトラブル編

いよいよお待ちかねのトラブル編だ。今回はタンクローリーの構造や自由度に深く関係した記述が多いので、未読の方はこのシリーズの最初から目を通されたほうがわかりやすいだろう。

さて。観光バスの時もそうだったが、仕事で車に乗っていると本当にいろんなことに出くわす。その比はサンデードライバーと比較にならない(注:決してサンデードライバーを馬鹿にしているのではない)。

余談だが、事故現場に出くわしたサンデードライバーはものめずらしそうに現場を眺めていくのであるが、トラックドライバーなどの職業ドライバーからしてみればそんなことはしょっちゅうで、みんな「さっさと行け!」と心の中で思っている。高速道路では事故渋滞がよく発生するが、あれは事故がおきた車線だけでなく、反対側の車線にも「見物渋滞」という名の渋滞が発生する。本当にこんなものはどうでもいいから、さっさと行ってほしい、というのが本音だ。

ちょっと脱線してしまったが、それでは本編に行ってみよう。

★雪道の・・・に関する技術はここで磨かれた

筆者は以前、観光バスのドライバーだったことはもうご存知であろう。また観光バスのドライバーになる前は、実はこの危険物を運搬するタンクローリーのドライバーであった。長い観光バスドライバー人生の中で、筆者は何度か死線を越えた経験をしているが、そのなかのひとつは「続7・雪道を観光バスで攻めるドライビングテクニック−イニシャルTの似非科学」で披露したことがある。特に観光バスを雪道で転がすときの排気ブレーキの使い方は非常に重要だ。該当箇所を引用してみよう。

(雪道では)当然排気ブレーキはOFF。排気ブレーキが掛かっていると後輪があっという間に横滑りを起こす。このへんのテクニックは「いろは坂を観光バスで攻めるドライビングテクニック」とは正反対である。ドライ路と雪道では、観光バスのコントロールはまったく異なる。

このテクニック(雪道では排気ブレーキをOFFにする)は、今回ご紹介するタンクローリーでの失敗を元に体に叩き込まれたのだ。

★ドリフト!

よく、小僧どもが夜な夜な峠道を後輪を滑らせながら遊んでいて、一般の人に迷惑をかけているのはご存知だと思うが、筆者はそれをはるかに凌駕する「トレーラー&トラクター」でのドリフトを経験したことがある。うまく立て直して今も生きているわけだが、このときの感覚は小僧がドリフトして思う「俺ってカッコエー!あーオモロ」とかいうのをはるかに通り越して、「死ぬ!」というものだった。

場所は高速道路、冷え込みも厳しさを増す12月中旬のころだった。某高速道の走行車線をタンクローリーで走っているときのことである。きつい上り坂に差し掛かり(乗用車にとってはなんともない上り坂なのだが)、登坂斜線にレーンチェンジして思いっきりアクセルを踏んで登っていた。このときのスピードは時速55Kmを若干超える程度だったと思う。灯油を満載しており、車がすごく重かった。エンジンは悲鳴に近い音を出しながらも、車はのろのろとしか進んでいかない。

「あー、もっと速く走れよ!」とか思いながら上り坂を登りきり、やっと走行車線に戻ることができた。するとトンネルが2つ続けてあらわれた。最初のトンネルは結構短く、次のトンネルは少し長めのトンネルだ。長めのトンネルに進入すると緩やかな左カーブとなって、若干下っていた。スピードメーターに目をやると90kmくらい出ている。排気ブレーキをOnにして、スピードを抑えつつトンネル内の左カーブを曲がる。「もうすぐ出口だな」と思い、ヘッドライトのスイッチに手をかけ、ライトを切る準備をする。

出口を出た瞬間、体がふわりと浮いているような感覚に襲われた。

中軸が流れている!

そう、トンネルの出口は路面が凍っていた・・・。危険物を満載したタンクローリーが横滑りを起こしたのだ!

★カウンター

運転席から見る風景は、かなり不思議な光景だった。なぜなら、いつもは高速道路の前方を行く乗用車やトラックが見えるのに、このときは高速道路の右側の側壁が左から右に流れて見えるのである。あわてて、左にハンドルを切り、車を立て直そうとした。排気ブレーキをOFFにして中軸のグリップを回復させようとするが、なかなか回復せずトラクターは横滑りを続けている。「このまま行くと(高速道路から)下に落ちる・・・。」 このままカウンターを当て続けても回復できないのではないかと直感的に肌で感じた。


世にも珍しいタンクローリーの四輪ドリフト

タンクには灯油が20klも入っている。ものすごい重さである。「そうだ!」と瞬間的にひらめいた。なかなかグリップが回復しないのはトレーラーに積んでいる灯油の重みが原因だ。灯油を積んだトレーラーがトラクターを前に押す力が強すぎてグリップが回復しないのだ(まさに慣性の法則、まさに(似非)科学!) すかさずトレーラーのパーキングブレーキを入れて(トラクターのブレーキではなく)、トレーラーの後輪をロックさせた。

するとトラクターの向きが急にまっすぐになり、あわててハンドルを戻して直進する。どんどん高速道路の左側の側壁が迫ってくるが、我慢してブレーキを踏む。ブレーキの手応え(というか足応え?)を感じ、すぐさまトレーラーのパーキングブレーキを解除。トレーラーの全車輪はグリップを回復した。あとは左の側壁にぶつからないように車をコントロールするだけだ。全神経を集中させて車をコントロールする。車は路側帯に進入し、激しい突き上げが運転席を襲う(路側帯は舗装が悪い)。ガンガン!という音とともに車は停車した。

★何とかとまった・・・

上記の出来事は一瞬である。しかし筆者にとっては非常に長い時間に感じられた。よくある一瞬の出来事がものすごいスローモーションのように流れていく「それ」を感じることができたのである。

もしこのままコントロール不能で高速道路から落下していたら・・・。きっと新聞の一面に「灯油満載のタンクローリーが高速道路から落下して炎上!」などと載るんだろうなぁ。今から考えると本当に恐ろしかった。よく立ち直ったと感心している(自分のテクではなく、運に)。

★今回の敗因

排気ブレーキである。排気ブレーキは駆動軸にしかブレーキがきかないがこれをすっかり忘れていたこと、漫然と排気ブレーキをOnにして走行していたことである。また、トンネルの出口は冬場になると凍結していることが多い。これは山の吹きさらしによる現象で、高速道路をいとも簡単に凍結させる。吹きさらしが多い盆地などでもよく凍結する。これらを忘れていたことが今回の原因だ。

★事故はおきなかったが・・・

事故はおきなかったが、この体験は今でも忘れられない思い出である。苦い思い出だがこのような失敗を積み重ねてプロらしくなっていくのだろうと、このときしみじみ思った。

(T)

 

 

 

・雀の行動規範に関する動物学的な検証の似非科学

さて、今回のテーマはスズメである。雀の観察というのは全国でできて、わざわざ野山に赴く必要もないので、動物学的な研究をするには最適である。しかも、意外に雀の行動というのは研究され尽くしていないのではないかという気もする。今回は当研究室で観察した興味深い雀の行動を発表しよう。

ケース1 雀はつがいで行動するのか?

とある早朝、米屋の前を通ったときのこと。朝早くから荷物の配送に追われていた米屋の前の路面では、雀が群れて米をついばんでいた。この群れに近づくと、2羽をのぞいてみんな飛び立ったのだが、この2羽は実に興味深い行動を行った。筆者がゆっくり近づくと、この2羽は90度に展開して歩いたのである。

雀Bは筆者を誘うかのように歩き、Aは横に飛んだ。Bもしばらく歩くと、いきなり飛び立ってAの元へと去っていった。つがいで助け合う行動をとったのだろうか?しかし、この飛び方は実に巧妙である。たとえば猫ならどっちを襲えばよいか迷うであろう。残念なことに、このような行動パターンをまだ1例しか観察していないので調査継続中である。

ケース2 I'm sorry, Mrs. Rachel Carson.

さて、ゴキブリと人類はお互いに相容れない存在である。というわけで、屋内屋外を問わず、見つけ次第射殺を心がけている。もちろん、フマキ○ーであるが。

さて、例によって買い物に出るときに外で見かけたゴッキー君をさくさくと行動不能にした筆者は、意気揚々と買い物に出かけた。そのままにしておくとまれに薬剤耐性を身に付けることがあるので、無論あとでドドメを刺す予定であった。

・・・で、15分ほどして戻ると、筆者はなんとばったり雀に会ってしまった。その雀は、トドメを刺す予定のゴッキー君をくわえていた。

「だめだぁ、それを食べては・・・」

と言いかけたのだが、雀はゴッキー君をくわえたまま飛び立ってしまった。結構でかいやつだったのに。ふらふらとしながら。

この事件を踏まえて、行動不能にしたゴッキーは即刻回収するという風に我が家の殺虫マニュアルを書き変えた。それにしても食物連鎖→生態濃縮という恐怖を本当に目の当たりにしてしまうとは・・・(一応ピレスロイド系なので残効性は少ないのだが)

ケース3 雀の飛行補虫

まあ、雀を観察している人間には常識のことかもしれないが、雀は飛行中の虫を捕食する能力をもっている。しかし、お世辞にもきれいとはいえない。というか、見苦しい。

筆者の観察した例では茶色カナブンを捕食していたのだが、追いつけないのである。しかも飛行センスはお世辞にもうまいといえず、元来飛ぶのが上手でないとされる甲虫類に匹敵するくらい下手である。

雀はカナブンのジグザグに飛ぶ飛行にあわせて自分もこのようにジグザグに動いていたが、追いつけない。結局カナブンが疲れて地面に降りるまで追いかけ続けたのである。

飛行して補虫というよりは疲労補虫であった。

ケース4 炭そ菌は扱っていないけど・・・

当研究室にも、小さいながらも楽しいレベル4のバイオハザード施設がある。これは当然あんなことやこんなことをするためにあるのだが、それをいうと付近住民がパニックに陥るの(特に昨今)で、詳細は差し控えさせてもらう。(注:あくまでも似非なので、本気にしないでくださいね)

とりあえず実験材料の購入や実験体の捕獲のため、筆者も外出しなければならない。その日も早速外出の準備をするべく、研究室と外界との気圧差を0にしはじめた。そのときである。

ぱさぱさぱさ
(何かが飛んでいる)

その瞬間は蛾でも入ったのだろう、と思った。ヤママユガだとそんな羽音がするが、大きいめの蛾のようだ。紫外線防御スクリーン(別名:カーテン)の裏側にでもいるのだろう。ところが、スクリーンの部分にはいない。

ぱさぱさぱさ

やはりセクションAの窓から聞こえてくる。しかも蛾の羽音にしては大きい。そんな巨大な蛾は早速捕獲して、解剖実験や遺伝子のサンプルにせねば。だがこのとき、突如として研究室への侵入者の正体が明らかになったのである。

ぱたぱたぱた
ごきん
ぱたぱたぱた
ごきん
チュン

なんと雀!なのである。しかも絶対気密性を誇る研究室のレベル4区域にあってセクションBの研究室用具洗浄乾燥室(別名:サンルーフ)の窓にぶつかって逃げ出そうとしているのである。

反射的に筆者はセクションAのコントロールパネルにとびつくと部屋の空気を0.7気圧に下げ始めた。急速に空気を抜くため、気温がさがり、呼吸が苦しくなってくる。だが、急がなければならない、次に実験用シャーレなどの細菌(別名:洗い物の山)にすべて廃棄指令を出す。これで室外への流出は避けられる。だが、その代償として意識も遠くなり始める。しかし安全のためにはさけられない。ふたたびセクションBに戻った筆者は呆然とした。雀は恐怖のあまり細菌兵器、もとい糞を撒き散らしているのである。清潔がモットーの洗浄乾燥室が糞だらけとは!もともと薄くなり始めた意識がさらに遠のきかかった。

ここで2つの選択肢があった。

  1. 雀を捕獲し、晩御飯のおかずにする
  2. 逃がして、とある実験をする

しかし、0.7気圧から0.6気圧に下がっている部屋の中で雀を捕まえるのは不可能に近い。逃がさなくては。筆者は紫外線被爆セクション(別名:室外)へ通じるドアを開こうとした。

だが1気圧と0.6気圧の差は巨大な空気の重みを生じさせドアにのしかかる。ドアが開かない。外開き戸にしたのは設計ミスだった。

最後の手段だ。セクションBと研究室用具洗浄乾燥室の扉を閉める。そして、外開き戸のガラスにマットをたてかけた。これを蹴ればガラスが割れ、この部屋との気圧差は0になる。だが、そのショックが大きければ、ほかのガラス部分が全壊し、陰圧によりガラスの破片は筆者を襲う。怪我か最悪の場合は死にいたるだろう。似非の連載も今週が最後なのか?

覚悟をきめて蹴りを入れるしかない。しかし、決して振りぬかない。振りぬくとガラスの破片に当たる確率が大きくなるから、寸止めの感覚で止めなければならないのだ。蹴った。ガラスの割れる音。マットにぐんと力がかかる。同時にすばやくマットを体で押さえた。ガラスがどんどん降ってくる。その間の2、3秒は人生においてもっとも長い時間。

右腕と左足に2,3箇所かすり傷をおった。しかし、何とか成功だ。筆者は外開き戸を開けることができた。だが、雀は前方の窓に当たり続けてさらに糞を撒き散らしている。雀が脱出しようにも、戸のところに筆者が倒れているため、怖くて近寄れないのだ。

そのとき、後から考えても痛恨の極みなのだが、薄れゆく意識の中で筆者は雀にこう言ってしまった。

「おーいすずめさん、こっちだよぉぉ」

なななな、なぜこんなよわっちい言葉を?きっと低気圧のせいで意識レベルが低下していたのであろう。

ところが、この言葉が通じたのか、雀はばたばたと扉から飛び出していった。その後のことは…思い出したくないので省略。しかし、薬用ミューズどこでもウェットティッシュー10枚入り3パックセットの買い置きを使い切ったのは言うまでもない。

後から詳しく調査してみると、じつは完全に気密を保っていると思われた研究室に、工事のときに業者が作った水抜き穴が存在していたのだ。どうもそこを雀が通ったらしい。穴はごく普通のサイズで、これを雀が通るなどという話は聞いたことがないのだが。

今回の反省から、その後水抜き穴にメッシュの網をかぶせた。今後はこういうことは起きないであろうし、今回も最悪の事故は避けられた。もっとも、最悪の次くらいに費用はかかったのだが…

それにしても、筆者だけがこのような想定外の現象に襲われるのはなぜなのだろうか、なぜ雀相手に弱気になるのだろうか…この世でもっとも動物学的に解明する必要があるのは筆者自身なのかもしれない。

(K)

 

 

 

・似非式携帯電話進化論の似非科学

携帯電話の進化が激しい。ちょっと前まで「世界最軽量!」「リチウム電池搭載!」「連続通話時間35年!(嘘)」などとハード面の競争ばかりだと思っていたが、最近は「着信メロディー32和音」「画像が送れる」「ゲームができる」というような、より付加価値としての機能競争が激しくなってきた。

白黒画面からカラーへの進化し、半角カタカナしか利用できなかったものが漢字を入力できるようになり、単なるビープ音しか出せなかったものがMIDI音源とスピーカーまでをも搭載し始めたのだ。そして最近では写真を送れたり、自分の居場所を相手に知らせたり、アーパーネットへ接続できたりと、高機能化が進んでいく。

この様子を見ていて筆者はよく思うのだが、

「この進化はパソコンのそれと似ている」

筆者がNECのPC−8001を使用しているころは、PCの画面は白黒、というよりカラーモニターが高くて買えず(注:PC−8001はちゃんとカラー表示ができた)、文字は半角カタカナか半角英数字で漢字変換ソフトなんてものはなかった。あったとしても解像度が低く、今の人たちが見ても

なんじゃこりゃ〜!(松田優作風)

ぐらいの大きさでしか表示できなかった。余談だが、当時は漢字を表示するのに縦倍角という文字を使っていた。現在のコンピュータ上の漢字は全角(英数字に比べて横幅が2倍)で表現されているが、当時は縦方向のドット数も足りなかったため、ソフトウェアにより2行使って1文字の漢字をあらわしていた。

そのうち音が出せるようになり(音源LSIの高機能低価格化)、外部との通信ができるようになった(モデムの進化)。漢字を自由入力できるようになり(日本語変換ロジックの進化、ディスプレイの高機能化)、そしてフロッピーディスクやハードディスクなど様々なストレージデバイスが安く手に入るようになったのはご存知のとおりだ。

ためしに、これまでの日本でのパソコン史と携帯史を並べてみよう。(かなり偏った年表だが、それは筆者が実際に使ってきたPCと携帯を載せているからである。なお、ここに載せているPCや携帯が必ずしも時代をリードしてきたわけではない。)

パソコン 携帯電話
TK-80 (NEC) いわゆる本来の機能が丸出し。ディスプレイなし
MZ-80 (Sharp) ディスプレイ標準装備、漢字表示なし、ビープ音
FM-New7 (Fujitsu) 縦倍角漢字、カタカナメール可
PC-286VE (EPSON) 全角漢字表示、メール機能、パソコン通信本格化
Thinkpad E300 (IBM) 多重音源、高精度グラフィック、インターネット、Java
3ST390 (Compaq) テレビチューナー、ビデオ録画

(写真はあくまでイメージですので、携帯電話ではないものも混じっています。深く考えないように。)

PCの世界ではその後も飽くなき探求は続き、メーカー間のクロック競争が起こったり、オーバークロッカーが現れ始めた。ビデオカードを交換したり、よりよい音を求めて音源を載せ変えたり、まさにPCがガレージキットのように扱われはじめた時代の幕開けであった。

携帯も恐らくこれと同じ道を歩むに違いない。しかし残念ながら携帯電話の端末改造は禁じられている。電波がとどかないといって、勝手に増幅装置を取り付けたり、iアプリの動作が遅いといって勝手にクロックアップしてはいけない(当たり前)。

とはいえ、筆者は携帯電話はPCと同じ進化を遂げていくだろうと考えている。恐らく携帯電話に何らかのオプションボードを差し込むことで、スペックを向上させるような製品が開発されるだろう。例えば画像拡大カード、iアプリブースター、ビデオカードなどだ。この辺はすでにメーカが水面下で動いているに違いない。

さて。今はまだどの携帯メーカも思いついていない、しかし次世代携帯に必ず取り込まれるであろうPCの技術が存在する。それはPCの進化を加速度的に速めたが、にもかかわらず非常に安価で実用的な技術である。読者の皆さんは思いつくだろうか?固定観念にとらわれていては絶対に行き当たらない。では発表しよう、これが次世代携帯の未来像だ。

似非式CDROMドライブ付携帯電話(Patent Pending)である。CDROMそのものが携帯電話よりも大きいサイズなため、頭の固い日本人の脳では絶対にこの2つがリンクしない。が、別にCDROMは使うときだけ差し込めるようになっていればよいわけで、CDROMが多少はみ出そうがそんなことは実用上関係ないのである。モータドライブと光学系の部品だけが携帯電話のコンパクトなボディの中にあればよい。

むしろ、CDROMで提供される膨大なコンテンツ(ゲーム、音楽、アップデートプログラム)が重要なのだ。現在の携帯電話では、いくら簡単にコンテンツがダウンロードできるとはいえ、その課金システム(電子マネー)に人は常に違和感を持っている。たとえば、ダウンロード途中で回線が切れたらどうしよう、膨大な金額を誤請求されたらどうしよう等等、確実に敷居は存在している。だが、もし店頭でCDROMとして購入できるとしたらどうだろう。その安心感ははかり知れないのだ。もちろんブロードバンドも関係ない。

筆者はこの技術により、将来の携帯電話のコンテンツはすべてファミコンのゲームカセットあるいは音楽CDと同じマーケティングモデル・流通モデルに移行していくと考えている。「電話だから通信を使わなければならない」という固定観念を打破したものこそ、次の時代のリーダーになれるのだ。この次世代携帯電話のBreak Throughを最初に実用化するのはどこのメーカーだろうか。

(OG)

 

 

 

・ADSL番外地−ADSLディバイド問題の似非科学

さて、前回(ブロードバンドとラストワンフットの似非科学)でADSLをこき下ろしたにもかかわらず、友人(実験体ともいう)がフレッツADSLの申し込み申請をした。電気屋で申し込んだにもかかわらず、次の日にはNTTから電話が来たそうだ。

NTT   「お宅は局舎から4.5km離れています。3kmを超えると速度がでないんですよねー。4kmでぎりぎりです。」

実験体 「でも、歩いて10分くらいのところに電話局があるんですよ。つなぎかえられないんですか。どうしてもつなげないんですか。」

NTT   「できません(きっぱり)。今の電話局につながざるをえませんが、速度はでないんですけどー。」

実験体 「じゃあいいです。」

NTT   「じゃあ、キャンセル処理しておきますので。」

こんなやりとりで見事に断られてしまったそうである。(上の実験体は、ADSLを引いたらよからぬことをやるんだーとか楽しそうに話していたが、今はすっかり意気消沈している。)

ADSLを享受できる境界線は電話局から3km、ないしISDN並みの速度で我慢するとしても4kmのところにある。一方、実験体の自宅は4.5kmの地点にある。彼は、「あとちょっとの距離なのに、俺って運が悪すぎ!」と地団駄を踏んでいた。

「運が悪かった」、だって?その話を聴いた瞬間、当研究室は、ADSLに関する重大な懸念に思い至ったのである。

命題:ADSLのサービスを期待通りに享受できる人と享受できない人の割合はどれくらいなのか。

この問題をディジタルディバイド問題にならって、ADSLディバイド問題(Pat.Pend.)とよぶことにしよう。これを正確に計算することは非常に難しいが、いくつかの仮定をおいて概算で推察してみよう。

まず、電話局から同心円に電話線が引かれているとして、距離以外のノイズ問題は存在しないとする。NTTがADSLを引いているのは3kmの範囲までなので、サービスを享受できる人たちの範囲はその円内である。また、人口密度は5kmの円内に均等に分布しており、世帯数も同数であるとする。

こんな同心円が描ける。そうすると、ADSLサービスを享受できる人とできない人の割合は面積の比になるから

享受できる人 3*3*π=9π (注:πはおよそ3でもかまいません・・・(^^))
できない人  5*5π-3*3π=16π

よってそのディバイド比率は9:16となる。青い部分の面積は、なんと全体の36%にしか過ぎない(青が大きめに見えるのは目の錯覚だ)。これは驚くべき比率だ、世の中の大半の人はADSLを享受できないではないか。実験体は特段に運が悪いわけではなかったのだ!

仮にADSLの敷設半径が4kmであったとしても、そのディバイド比率は9:7である。それでも43%の人はADSLを享受できないという結果が得られてしまう。

じゃあ、青い円内だと必ず享受できるかというと、それは難しだろう。なぜなら、ADSLの場合は光ファイバーや道路といった距離以外の問題でつなげないケースも多いからだ。そして、これらのノイズの要素は人口密度の高い点に当然存在するから、青の円内にも享受できない人がいる。ADSLを享受できる比率は、将来的にも実質50%くらいに近づくのではないか、と推察できる。(つまり五分五分。)

ADSLディバイド問題の社会的影響

(1)不動産賃貸業−大学生編

仮にADSLが生活の一部になってくると、このディバイド問題は社会問題化する可能性がある。この問題が顕在化するのは、多分来年の理系大学生のアパート探しからではないか、と推定できる。なぜなら、ADSLはパソコンさえ買えば機器をレンタルするとつなぎっぱなしにできるために親との連絡を安くできるためである。また、理系大学生であれば、当然パソコンとインターネットは必須であるから、この推定は確実に成立するであろう。

ということは、同じ家賃のアパートで大学までの距離が同じでも、ADSLに入れるのと入れないのでは根本的にその不動産価値が異なってくるということになる。つまり対象不動産の属する近隣地域の地域要因を反映した賃貸価格水準の中で、対象不動産の賃料に個別性を生じさせる要因となってくるということである。

というわけで、大学周辺の不動産屋さんは今のうちに電話局舎との距離を調べておけば、商談をまとめる際の有利なポイントになりうるので確認してみてはいかがだろうか。また、合格した際に受験生がアパートを選ぶ場合もこの辺をチェックしてみてはいかがかと思う。 きっと来年の春には、「駅徒歩5分、1ルーム、ADSL 1Mbps保証」といった不動産情報があふれるであろう。

(2)不動産賃貸業−オフィスビル編

さらに、不動産賃貸で問題なのは商業地域でのディバイドである。通信ノイズは都市の中心であればあるほど大きくなるため、ADSLのサービス可能地域はごく少なくなる可能性がある。商業地帯では、オフィスビルのテナント入居の決定事由にADSLが影響する可能性がある。自社ホームページや、自社サーバーをADSLで構築できるかどうかは入居する店舗にとってはこれから重要な問題なので、当然、成約率や家賃の変動につながってくるであろう。(専用線を引くのであれば関係ないが。)

(3)ソフト業界編

この問題がもっとも重大なのは、コンテンツ制作業界の方々にとってであろう。FTTHやCATVにむけてキャスティングボートを取るために、ADSLの段階で自社のコンテンツを普及させるべく努力されている企業もあると思う。しかし、ADSLの普及する人口が約半数に限られるのであれば、ADSL専用に自社コンテンツを普及させる戦略をとるのはどうしたものか。ADSLの普及が頭打ちになるのに伴って自社コンテンツの普及も頭打ち、となる可能性がある。

そうするとADSLを前提としたコンテンツとあわせて、それ以外の簡略版コンテンツ(レートで3.2k前提くらいか)を製作した方が、より大きなマーケットに普及でき、後続の正統派ブロードバンド(ブロードバンドとラストワンフットの似非科学参照)が普及しても業界のスタンダードを握る可能性があると思われる。

最後に

今までADSLは不安定という話をしてきたが、意外にADSLが引けないという問題も深刻なのではなかろうか。このディバイド問題の不透明さは、NTTの局舎がどれくらいの範囲をカバーしているかを公表していないため、正確な情報が国民に開示されていないことによる。NTTはコストがかかるかもしれないが、携帯の通話可能エリア地図のように、サービス可能地区のマップを発表してはどうだろうか?

ここはADSL(あだしり)番外地。。。21世紀によみがえるIT牢獄の始まりである。

(M)

P.S. あだしり番外地というフレーズで笑えなかった人は、お父さんに聞いてみよう!

 

 

 

・続5・危険物を確実に運ぶドライビングテクニック−頭文字Tの似非科学

今回は、前回(続4・危険物を確実に運ぶドライビングテクニック−頭文字Tの似非科学)の続きで、4色納品の仕方を解説する。前回を読まれていない方は先に読まれたし。もちろんあなたの今後の人生において4色納品をやる機会があるとは思えないが、この世に無駄な知識などないのである。よく覚えておこう。

★4色の納品

いよいよ、4色(レギュラー・ハイオク・軽油・灯油)の納品である。納品する順番は特に決まっていないが、私は量が少ないものから順に納品することにしている。今回はレギュラー8kl、ハイオク4kl、軽油2kl、灯油6klである。よって軽油から納品を開始することにした。

★緊張の瞬間

まず、タンクローリーからジョイントホースを引きずり出す。そしてタンク側にジョイントホースを接続する。タンクローリーから出ている排出口はひとつなので、まず間違えることはない。そして、この先が緊張する瞬間である。地下タンクの「軽油」の納品口にジョイントホースを接続する。この納品口はそれぞれ、レギュラー・ハイオク・軽油・灯油と分かれている。ここで間違えると新聞などで騒がれている「油種混合*」事故を起こすことになるので、細心の注意を払う。

*:油種混合

誤って灯油を納品するところにレギュラーやハイオクなどのガソリンを納品し、そのまま気が付かずにガソリンスタンドが販売すると「ガソリン交じりの灯油」を売ってしまうことになる。これを家庭に持ち帰ってストーブなどに使用すると異常燃焼(すなわち爆発)し、火事発生という大変なことになる。特に石油ファンヒーターなどに使用するとファンヒーターの温風口から炎が噴き出す(本当)という、テレビでもお目にかかれないような芸当をファンヒーターがやってくれる。

余談ではあるが、ガソリン(レギュラーやハイオク)には色が付いている。レギュラーは見た目ピンク、ハイオクは少し濃いピンクだ。これは天然の色ではなく、石油を精製するときに人工的にわざと着色しているのである。なぜかというと、このような事故が起きないように、人間の目で油種を確かめられるようにするためである。皆さんもガソリンスタンドなどで灯油を購入するとき、灯油の色が透明であるか確認しよう。また、灯油を入れるポリタンクは白色のポリタンクを使用することをお勧めする。そうすれば、購入したときポリタンクの外から液体の色を確認することができる。

おまけとして、一般家庭で灯油は貯蔵可能である(ただし数量は限られる)が、ガソリンは貯蔵不可である。ポリタンクなどにガソリンを入れて持ち帰り、家庭内で貯蔵することは法律上できない。

私は油種間違いを防ぐため、さらに納品口の「におい」をかいで納品するものが間違っていないか確認した。この作業はこれくらい慎重にやらざるを得ないのだ。なぜなら。。。納品を間違えた瞬間にクビが確定するからである。万一、油種間違いを起こしてしまった場合、運送会社の事務所に連絡する。そうすると別のタンクローリーがやってきて、地下タンクに間違って出来上がってしまったブレンド油を吸い上げる。その油はすべて運送会社が「お買い上げ」ということになる。

★納品油種の確認

最初のアイテム「軽油」を納品するためにタンクローリーの上に登り、軽油が入っている前回参照)のマンホールのふたを開け、排出バルブを開放する。ここで注意しなければならないのは「どのバルブを開けるか」である。誤って隣のバルブを開けると、油種が間違って納品される。

タンクローリーを上から見ると大体こんな感じである。左が前で、右が後ろだ。で、私の場合は、「排出バルブを開けるときはかならずバルブの後ろ(すなわち図では右側)に立ち、マンホールの手前の排出バルブを開ける」という作業手順を守った。なぜ、このような作業手順があるかというと、たとえば排出バルブの前方に立って(すなわち図でいう左側)マンホールの手前のバルブを開けると、違った油種が納品されてしまうからである。ここも緊張の瞬間である。

マンホールの中をのぞきながら排出バルブを開けると「ゴポゴポッ」と泡が出てくる。これは排出口までのパイプラインにたまっていた空気がマンホールの中に流れ込むからである。これで間違いなく目的の排出バルブを開けたことになる。もし間違って別のバルブを開けたときは、この泡が出てこない。これで間違いに気が付く。が、時として(あせっているときなど)この確認作業を怠りがちである。

★納品開始

タンクから降りて排出口のところへ行く。そこにある排出バルブの栓をいよいよ開放するのである。ジョイントホースが間違って接続されていないか最終確認し、排出バルブを「閉」から「開」へ動かす。すると、ジョイントホースから「ゴポゴポッ」と音がして納品が開始される。納品開始直後は「緊急遮断バルブ」に手をかけ、ジョイントホースの接続箇所から油が漏れていたらすぐに遮断できるようにする。数分様子を見て問題がなければ、あとは納品されるのをじっと待つ。

以上のようなことを全油種に対して行えば納品完了となる。納品中は消防法で立会いが定められているため、この間、納品場所から離れることはできない(この辺は観光バス(続8・雪道を観光バスで攻めるドライビングテクニック−イニシャルTの似非科学)とはかなり勝手が違う)。仕方ないので運転日報を書き込む。

★納品終了

すべての油種について納品が終了し、伝票に納品終了の判を押してもらって後片付けをする。ジョイントホースをタンクローリーに戻し、納品場所の片付けをする。すべて納品するのに2時間ぐらいかかってしまった。あたりは暗くなっている。今度は先ほど来た狭い道を前進で脱出する。バックで進入したこと(前回参照)を思えばずいぶんとラクだ。すべて空になったタンクはすごく軽く、車もすいすいと前にでる。やっと帰宅、いや帰庫できる。

★帰庫

車庫に戻って車を駐車したあと、運転日報とタコグラフを事務所に提出する。明日の便を確認してみると比較的遠いところだ。しかも積荷はすべて軽油である。どこかの運送会社かなにかに行くのだろうと思い、早々に事務所をあとにする。

★デート開始

まだこのころは独身で、仕事が終わるとよくデートをしたものだ。しかも作業着のまんま。おまけに体中がガソリンくさい。おまけに手もくさい。それでもよくデートしたものだと思う。彼女はまだいいとして、しゃれたデートスポットで周りにいたカップルにはものすごく迷惑だったろうなぁ。せめて家に帰ってシャワーを浴びたあとにでもすればよかった。ということで、ここで謝っておくからね、ごめん。

余談ではあるが、筆者がガソリンスタンドでバイトしていたころ、午前中だけバイトして午後は友人の結婚披露宴のため早引きして出席、というのをやったことがある。このときはバイト先のガソリンスタンドに礼服を持ち込んで、バイト終了後ガソリンスタンドの事務所で礼服に着替え、そのまま披露宴に出席。。。これも今考えればすごいことをしたなと思う(たんなるバカだったりして)。

あのころは若かったなあ。

★次号では

いよいよ次回は、お楽しみのトラブル編だ。車に乗っていればいろんな出来事(というかトラブル)に出くわします。

(T)

 

 

 

・ツールレス・ファイル偽装の似非科学

最近、インターネット上ではファイル偽装という技術が広まっている。普通のファイルをWeb上に置いてしまうと、インターネットの性格上、誰もがそのファイルを読めてしまう。ところが偽装を行ったあとのファイルは、偽装を解かないとファイルの中身がわからないようになっている。そうやって仲間内(というか、偽装解除方法を知っている人同士)でファイル交換を行うのだ。

詳しくはいろんな雑誌の記事やUG系のWebサイトを見てもらうとして、簡単に偽装ツールを説明すると、普通のファイル(たとえばWordのDocument)を無理やりJPEGやGIFファイルに変換するソフトだ。偽装を知らない人が見ると、偽装後のファイルはおかしな画像(TVの砂嵐のような画像やダミー画像)にしか見えない。だが、これを同じツールで偽装解除すると、元のファイルが復元される。

インターネットによってファイル共有はとても便利になったが、その代わりクローズドなファイル交換は難しくなった。ファイル偽装というのはそういう状況を反映して世に生まれてきたといえる。先日、WebにUploadされている画像を調べて、ビンラディン氏がインターネットで密かに文書交換をしていないかどうか調べた、というニュースが報じられたが、それはつまり、偽装ファイルのことを言っている。

すでに世の中にはいくつもの偽装ツールが存在しているが、ツールが広まれば広まるほど偽装は偽装でなくなる、という矛盾がある。ということで今回は、とことんツールレスにこだわった、ビットマップ(BMP)←→WAVEファイル(WAV)の変換法を発表しよう。これはファイル偽装のひとつと言えなくもないが、特殊ツールを一切必要としない。

なぜツールレスにこだわるのか。プログラマーというのは、ある程度プログラムのやり方を覚えると「サルのように」コードを書きたくなる時期が訪れる。そしてその時期を過ぎてさらに上級プログラマーになると、今度は「いかにプログラムを書かなくていいか」に芸術性を覚えるようになる。昔チェーンメールで回ってきたジョークに次のようなものがあった。"Hello World"と表示するプログラムを書けと言われたときに、

 覚えたてプログラマー    printf("Hello, World!");

 初級プログラマー    cout << "Hello, World!";

 中級プログラマー    CoCreateInstance(CLSID_ICONSOLE, NULL, IID_ICONSOLE, &pCon); pCon->Print("Hello, World!"); pCon->Release();

 上級プログラマー    echo "Hello World!"

 最上級プログラマー    mail bob < 'Write a program which shows "Hello World", Bob?'

このあとに大爆笑できるオチが用意されているのだが、このジョークは筆者が作ったわけではないのでオチを紹介するのは控える。どこかのネットに落ちているはずなので探してみてほしい。このように、プログラマーというのはある一線を超えると、だんだんプログラミングを馬鹿にし始める。(普通はそこまで到達しないが。)

脱線した。そうそう、ツールレスのBMP←→WAV変換法だった。「たまには昔の話を〜カセットテープインターフェースの似非科学(その1)」でも述べたように、WAVファイルというのは非常に単純なフォーマットを持っている。ヘッダー部にいくつかの情報が埋め込まれていて、そのあとに生データ(PCM)があるだけである。そのため、はっきり言ってしまえば、WAVEヘッダーさえつければどんなファイルもWAVファイルにすることができる。

WAVEファイルヘッダーというのは、たとえばこんな感じだ。

いくつかの決まった文字列(RIFFとかWAVEfmtとか)のほかに、サンプリング周波数やステレオ・モノラルの区別などの情報がかかれている。だが、何でもいいからWAVに変換できればいい、という場合、これらのパラメータの中で重要なのはデータサイズだけである。ここに書かれた数値とデータの量が同じもしくは大きければ、それは正しいWAVファイルとして認識される。(まあ、この辺のフォーマットを知りたい方はWindows SDKでも読んでほしい。)

ということで、あなたにもできるWAVファイルエンコード法をご紹介しよう。

1. まず、Windows付属の「ペイント」を立ち上げよう。このプログラムで180×135のBitmapファイルを作成する。「ペイント」のメニューの中に「キャンバスの色とサイズ」を設定するところがあるので、そこで180×135と設定するだけでよい。たとえばこんな画像(HENOHENO.BMP)だ。

2. このBMPファイルにWAVEファイルヘッダーを付け足す。(WAVファイルヘッダ(ENCODE.BIN)を用意したのでこれをダウンロードする。ファイルサイズは172バイト。ダウンロードするときにはリンクを右クリックして「対象を名前をつけて保存」すればよい。)

3. 1で作ったBMPと2でダウンロードしたBINファイルを次のようにして結合する。MSDOSプロンプトを開けて、

copy /b encode.bin+henoheno.bmp henoheno.wav

MSDOSをよく知っている人でも、copyコマンドの/bオプションを知らない人が多いかもしれない。これはファイルのバイナリ結合をおこなうオプションだ。これで完成。出来上がったhenoheno.wavは、たとえばWindows Media Playerなどでそのまま再生できる。このサウンドを聞いて「これはヘノヘノモヘジだ」とわかる人はいない。(ためしに聞いてみたい人はこれ(HENOHENO.WAV)を。)

以上の方法で、180×135のBMPファイルは、どんなものでもWAVファイルとして「聞く」ことができる。ツールを一切使わなくていいところが芸術だ。

さて。次はデコード(復元)である。もちろん、上で作ったWAVファイルからヘッダー部分を切り取れば元のファイルに戻る。だがそのためにはバイナリエディタを使うか、ヘッダーをカットするプログラムを作らなければならない。

エンコードはツールレスだったのに、デコードにツールが必要というのは、まったく美しくない。

ということで、なんとかツールレスでデコードを行う方法をあれこれ悩んでいたのだが、ついにその方法を思いついた。しかもエンコード・デコードの対称性の美しい、芸術的な方法である。思いつきます?

では発表しよう。エンコードして作ったWAVファイルにBMPファイルヘッダーをくっつければいいではないか。つまり、図で書けば次のようになる。

 

まずはBMPファイルヘッダーを用意する。(BMPファイルヘッダー(DECODE.BIN)をダウンロードする。BMPファイルヘッダーにはパレット情報などが含まれていて1000バイトほどあって大きいので、残念ながらダンプリストは載せられないが。) そして例の、

copy /b decode.bin+henoheno.wav henoheno.bmp

で、エンコードされたWAVファイル(henoheno.wav)に無理やりBMPヘッダーを結合するのだ。出来上がったファイルは、まさにBMPファイルとして「見る」ことができる。

さあ、こうしてデコードされたBMPを見てみよう。

すばらしい。完全にツールレスでエンコード・デコードが行えたのだ。え?なんかゴミが入ってるって?それはWAVファイルヘッダーがビットマップ化されてるためなんで仕方ない、それくらい我慢しなさい。

ということで、今回は完全ツールレス「BMP←→WAV変換」をご紹介した。いろいろ応用してみると面白いはずだし、それよりもなによりもツールレスという芸術性に感動してもらえたはずだ(ひょっとして俺だけ?)。もちろんツールレスのファイル偽装としても利用できるが、あんまり変なことに使うのはやめてくれ。

PS 「たまには昔の話を〜カセットテープインターフェースの似非科学(その1)」で実験した、周辺回路不要カセットテープインターフェースに使ってやってください。

(G)

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