魅惑の似非科学

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2/18/2002 真・おとなの科学〜電磁波による男女産み分け実験の似非科学

2/11/2002 速攻インプレッション一太郎12〜その知られざる野望の似非科学

2/3/2002 史上最強キャリアDDIポケット−−KX-HV200とパソコン接続の似非科学

1/27/2002 IR式競馬必勝法の似非科学

1/20/2002 続8・危険物を確実に運ぶドライビングテクニック−頭文字Tの似非科学

1/14/2002 さよなら小泉首相〜構造改革の似非科学(1)

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・真・おとなの科学〜電磁波による男女産み分け実験の似非科学

先日、知り合いの御夫婦に待望の第一子が生まれた。夫妻ともよく知っている人だったので、筆者も大変うれしかった。最近は超音波検診などで生まれる前に男の子か女の子かわかってしまうそうだが、奥さんの要望で男女は生まれるまで教えないで欲しいとお医者さんにお願いしたそうだ。これには個人的には賛成である。生まれる前に男女がわかれば、それは経済的とか親にはいろいろメリットはある。が、「子供にはいかなるレールも敷いてはならない」というのが筆者のポリシーである。(ちなみに筆者は放任主義というのも大嫌いである。愛で包むがレールは敷かない主義、とでも言おうか。)

それはともかく、友人たちの間では生まれてくるのは男か女かというのがもっぱらの話題だった。というか、「間違いなく女の子」と全員が口をそろえた。旦那さんの職業がコンピュータープログラマーだったからである。

筆者の知り合いのプログラマーの家庭は、ほんとうにお嬢さんが多い。感覚的には男女比=1:9程度である。ディスプレイから出る電磁波の影響とかまことしやかにマスコミは書きたてるが、どうも根拠が非科学的だ。ディスプレイや携帯電話の電磁波が危険というのなら、夏の日差しの危険度は核兵器並みである(日光は電磁波です、念のため)。

まあ根拠はともかくも、プログラマーにお嬢さんが生まれやすいのは少なくとも筆者の周りでは事実だ。これを当研究室で検証実験してくれないか、とみんなから言われてしまった(をいをい)。人体実験はいろいろと倫理上の問題とかあるし(というか、筆者はいいけど奥さんがいやだと言。。。そんなにポンポン子供は作れない)、適当な実験用生物を見つけてみることにした。

まず最初に思いついたのはハムスターである。が、家族の猛反対にあう。(現代社会とは大量のラットの尊い犠牲の上に成り立っていると思うのだが。。。まぁいろいろ難しい。)次に思いついたのは植物である。例えばベコニアの一部の品種(シュウカイドウ等)は雄花と雌花が同じ株に咲く。ベコニアは室内で簡単に飼えるので、ディスプレイの光を長時間あてつつ受粉させ、第2世代株の雄花と雌花の比率が偏っているかどうか統計を取ればよい。

ということで、花屋さんを何件もはしごしてシュウカイドウを探すが、見つからない。あるのはリーガースベコニア(たぶん球根ベコニア)ばっかりである。また、お店の人に話を聞いてみると、最近の株は3倍体を使っていたりするので、うまく受粉させても第2世代は育たないだろうと言われて断念した。

その後あれこれと思いをめぐらせて数週間、ついにこの実験に適した生物を見つけたのである。それは、

アルテミアナイオス

なんのことかわからん?ではこれでどうだ、

シーモンキー

20年ほど前にこの生物は日本中で大ブレークした。30歳以上の人でこの生物を知らない人はいないし、30代のうち半数くらいが飼育したことがあるだろう。

このHPの読者の方々でも若い方は知らないかもしれないので簡単に説明すると、シーモンキーとは体長1cm〜2cmくらいのエビである。

塩水中に卵を入れると24時間で孵化し、だいたい1ヶ月くらいで成体になり交尾をして卵を産む。孵化させるところまでは簡単なので、実は「学研の科学」の教材の定番であった。ただ、成体にするのはなかなか難しくその前にほとんどのケースで死滅してしまう。当時の子供たちはこの教材で「生命誕生の不思議」と「生命のはかなさ」を同時に学習したのだった。(全滅がわかった日には筆者も号泣した。。。)

さて。「学研の科学」はあくまで「子供の科学」である。大人が「子供の科学」をそのまま遊んで満足感に浸るのはただのノスタルジーであって、ちっとも「おとなの科学」とは呼べないと筆者は反発している。「子供の科学」は子供のときにおなかいっぱい経験すべきであり、大人が懐かしがって遊ぶのは実に後ろ向きだ。大人だったら真の「おとなの科学」をやるべきなのである。さて、筆者の考える「おとなの科学」は次の条件を満たさなければならない。

ということで、筆者はシーモンキーを使った電磁波男女産み分け実験を開始した。もちろん「シーモンキー飼育セット」なんてものを買っては「おとなの科学」にならない。以下飼育実験の準備を説明するが、もしあなたが大人なら十分用意できる。ぜひ試してみて欲しい。(うまくいくかどうかは保証しませんが。)

まず、シーモンキーの卵だが、近所のペットショップの熱帯魚コーナーに行こう。そこに「ブラインシュリンプ」という熱帯魚用のエサが売ってある。生きた卵の形で売られているものがあるので、それを買う。筆者が買ったのは250万個入りで780円だった(テトラベルケ社製)。

実は「ブラインシュリンプ」=「アルテミアセリーナ」は厳密な意味のシーモンキーではないようだ。昔のシーモンキーは「アルテミアナイオス」という改良品種だったらしく、種が違うらしい。しかしまあ、手軽に入手できるシーモンキーはブラインシュリンプだ。

次に海水を準備しないといけない。要は塩水だが、「学研の科学」にも書いてあったとおり食卓塩は使用不可である。熱帯魚屋さんには海水の元が売ってあるのでそれを買おう。シーモンキーを飼うくらいだったらごく少量でいいのだが、残念ながら25リットル用のものしか売ってなかったので、それを買った(1000円)。高いが、潤沢な資金投入は「おとなの科学」の鉄則なので惜しまない。

水は水道水を天日に一日さらしたもの(カルキ抜き)を使った。だいたい、1リットル当たり20gの塩を入れればOK(海水の比重は約1.02)のはずだが、熱帯魚店を物色していたら面白いものを見つけた。「比重計」だ。ここはとことんこだわって、正確な塩分濃度を実現しようではないか(他の実験にも使えそうだし)。筆者が買ったのは以下のようなものだ。

実は今回の実験器具のうちでは、この比重計が一番高かった(2500円)。もちろん子供は買えないだろう。だから買う。「おとなの科学」とは財布には厳しいものでなければならない。

さらに、酸素石と呼ばれるものも一緒に買った(1200円)。これは、水槽に一個入れておけば一ヶ月くらい酸素を供給してくれる便利な石らしく、面白いなあとおもった。効果のほどは未知数だが、熱帯魚と同じ環境でシーモンキーを飼育するのは間違っていないと信じる。

あとは熱帯魚用の水温計も用意しよう(これは安かった)。総計、6000円の「真・おとなの科学〜シーモンキー飼育セット」がこれだ。

熱帯魚店の人に飼育の注意を聞いてみた。失敗の原因になるのは、だいたい、

ディスプレイの明かりを当ててもいいか?と聞いてみたが、多分大丈夫という話だ。まあ他にそんなことする人はいないしなあ。筆者の職場は常に空調が効いているのでなんとか水温は大丈夫だろう(ほんとは少し低い。ヒータがいるか?)。ということでついに電磁波男女産み分け実験は開始された。


[うまく育つか良くわからないので、まずはペットボトルでいい加減に飼ってみる]

ディスプレイのそばに24時間置いておく。産卵まで行けば、卵を分離して別の水槽で育て男女比を数える。気が遠くなるような作業だが、まあ生物実験とはそういうものだ(お茶の遺伝子解析の似非科学参照)。たぶん一回や二回では産卵まで行き着かないだろう。うまく飼育できたら、あらためてご紹介することにしよう。

(A)

※ このHPでの生物実験シリーズには、人体のブラックホールを追え!カロリー収支の似非科学毛利氏と究極の食生活の似非科学(ダイエット)人体分泌物の電解質を測れ!唾液電池の似非科学などがあります。未読のかたはこの機会にどうぞ。

※ ちなみに冒頭のご夫婦のお子さんはお嬢さんでした。やっぱり!

 

 

 

・速攻インプレッション一太郎12〜その知られざる野望の似非科学

さて、PHSの回(史上最強キャリアDDIポケット−−KX-HV200とパソコン接続の似非科学参照)でもわかるとおり、当研究室ではマイナーなものにも深い探求心を持っている。今回は、どちらかというと惰性に近いバージョンアップを繰り返したかにみえる一太郎シリーズの最新版「一太郎12」についてインプレッションをまとめてみよう。(もちろん、どこの雑誌にでも載っているようなレビューにする気は毛頭無いのでご安心を。)

とはいうものの昨今のワープロ事情を見てみると、日常で使う機能についてはもうほとんどバージョンアップが出尽くした感がある。しかし、どうやら今度の一太郎12のバージョンアップはジャストシステムの深い野望の元に作られている。なぜなら、一太郎12とは知る人ぞ知るジャストウィンドウの正統な継承者といえるからだ。

まずは、次の衝撃画像を見ていただきたい。

タイトルバーには一太郎イメージカラーの赤のアイコン。これが一太郎であるのは間違いない。だが、

何かが違う。

だいたい、孫悟空の絵はWordXPの「マスコット」に似ている(非推奨マシンにおけるOfficeXP速攻インプレッションの似非科学参照)。良く見るとメニュー体系やツールバーのボタンもWordXPのそれとそっくりである。ついにここまでやったか、ジャストシステム!

というのは冗談で、実は一太郎のWindowの中から他のアプリケーション(たとえばWord)を透過的に使えるようになったのである。いやもちろん、これまでも埋め込み画像などをダブルクリックすると他のアプリケーションがAddOnされてくる例はあった。だが今回はその部分が徹底的に拡張されているのだ。今回の一太郎はExcelのようなシート制になっており、「Sheetを新規作成」すると一太郎・Word・Excel・PowerPointのうちどの文書を作成するか聞いてくるのである。

ここであなたが「Microsoft Document」を選べば、上図のような「一太郎のタイトルバーの付いたWord」が立ち上がる。これはおもしろい。一太郎の中でワードを使うことができる。

特に実用的なのは「一太郎&Excel」の呉越同舟利用だろう。日本の文書形式は罫線中心であり(ドルトンの仮説の似非科学参照)一太郎を使いたいという声は多い。一方で表計算はExcelだったりする。そういった企業では、とにかく新人君には一太郎の起動だけを教え、Excelは一太郎の中の一機能として使わせるようにすればよい。もちろん一太郎上で「Word&Excel」という風に、ワープロとしての一太郎を完全に無視して使うこともできる。(もっとも、リソースの点では後者の使い方はお勧めしないが。)

実はこの点はマーケティング的視点からも非常に重要な部分だ。仮に日本企業で使うアプリは「一太郎&Excel」が最適だったとしよう。しかし業務によっていちいち別々のソフトを立ち上げて作業するとなると、企業の偉い人はいい顔をしない。だが上記の機能を使えば「一太郎の中からあらゆる業務が可能です」と言えるのだ。

一太郎12の店頭デモではこの機能をがんがん宣伝しているので見に行ってみよう。かく言う筆者も、この機能を試してみたくて思わず衝動買いしてしまったクチなのである。(YKさんからの指摘:Word取り込みの機能そのものは一太郎10で搭載されています。)



[これが本来の一太郎12の画面です。お間違いなきよう。]

脱線した。ジャストシステムの深い野望を知るには、まず歴史を学ばなければならない。時代はMS-DOSの時代にさかのぼる。Microsoft Windowsのバージョン1や2が発表されたその当時、国産Windowsシステムとして「ジャストウィンドウ」はデビューした。

DOS時代のジャストウィンドウはただ単に枠の中にファイル名が出てくる程度で、筆者は全く使わなかった。それは単なるファイラー(今のExplorlerのようなもの)であり、当時のDOSのファイラーといえばなんといってもFD(←当時、一世を風靡したフリーソフト)だったからである。 まあ当時は、MSのWindowsもジャストのそれも五十歩百歩であり、「そんなものいらない」というのが世論の大勢であった。結局、ジャストシステムはジャストウィンドウの開発を断念する。

その後、一時期Fullbandというソフトを出した。これはアウトルックに対抗したものらしい。その中で画期的なことは、すべてのファイルをショートカットで取り込むことによりファイル管理機能を持たせたことにあった。そして全文検索ソフトコンセプトベースというのもある。ジャストシステムは一太郎やATOKの陰に隠れながら、ファイル管理ソフトを着々と練ってきたのである。

これまでの一太郎は単なるワープロアプリとしてOSの上に乗っかっていた。しかしここからの一太郎は、ワープロとしてのアプリでありながら、明らかにOSと他のアプリの間に挟まろうとしている。つまり一太郎として機能しつつ、他のアプリケーションを取り込んでいるのである。(ということはジャストオフィスはやっぱり惨敗だったのかもしれん。ソフトの語呂はよかったんだけどなあ。)

一太郎12の「シート」機能の最大の特徴は、シートを透過させることにより、一太郎上でいくつものデータを重ねて編集・印刷ができるというものだ。CADソフトを使ったことがある人であれば、ワープロの文書と表計算の文書がそれぞれ別レイヤーとして扱われており、レイアウト編集や印刷が1画面で行える、といえばピンとくるだろうか。

これをお店の人に聞いたときは瞬間的に「Excelのデータと一太郎の罫線を重ねれば最強ソフトが誕生する!」と思った。しかし、それはできないようである。文書シートのレイヤーともいうべき機能が一太郎のシート同士でしかきかないという点は非常に残念だ。この「Excel透過」こそが、一太郎のキラーフィーチャーになるのは想像に難くない。もし実現できれば「表計算はExcel、ワープロは一太郎」といった区別が全く意味をなさなくなる。すべて一太郎上で作成し、重ね合わせることができるからだ。

OSとアプリの間に入るというコンセプトは驚異だ。将来的にはLinux上にアプリを移行することができるかもしれない。つまり一太郎がトレーラーのように荷台にOffice製品を乗せてOS間を運搬することができることになるかもしれない。インテリジェントドキュメントプロセッサの指向するのは、明らかにソフト的にはVirtual Machineの位置付けであり、かつ、機能的には人間の言語データすべての管理のように思えてならない。

一太郎12とは透過型Windowを引っさげた新しいジャストウィンドウの始まりであり、今までのワープロとしての一太郎の終わりでもあるわけだ。

・終わりに

悪の帝国はコンピューター言語の覇権を握ろうとしているが、ジャストシステムは人間の言語の覇権を握ろうとしている。OSを征するものは世界を征する。だが同時に、データを征するものも世界を征するのである。インテリジェントドキュメントプロセッサ、当研究室的にはトレーラープロセッサ一太郎12は、そのもっともプリミティブな最初のバージョンなのである。

(K)

P.S. 筆者はジャストシステムの関係者ではありません、念のため。(ハッ、先週と同じ引きだ)

 

 

 

・史上最強キャリアDDIポケット−−KX-HV200とパソコン接続の似非科学

PHSの歴史は悲惨だ。次世代モバイルの最有力候補として華々しくデビューしたものの、某PHSキャリア2社が筆舌に尽くしがたいほどいい加減な事業展開をしたおかげで、PHSの汚名は永久に消えることはなくなった。もはや筆者が「DDIポケット(以下、Dポケと略す)は他の2社とは違い、実は史上最高の電話&モバイルキャリアなんだよ」と熱弁をふるったところで誰も信じまい。だから今回はあくまで筆者の独り言として聞いてほしい。

DDIがPHSの回線をどう利用するかという方針として、2つの流れがあったと思う。(注:フレックスチェンジは省略)

  1. 安価な音声通話端末として、ドコモなどの携帯に対抗する。そして音楽配信サービス等の付加価値をつけていく流れ。
  2. データ通信端末としてPCカード型にして、モバイルのデータ通信に特化する流れ。

1の流れがエッジ→フィールエッジであり、音楽・カメラ・動画の配信へとつながっていく。しかし音声通話端末としてのPHSは、ご存じの通り、携帯端末に負け続けていた。某悪徳PHSキャリア2社のおかげでPHSは「切れる」という定説が広まっていったためだろう。「切れない」Dポケでさえも、「山で遭難したときにはPHSでは困りますよ」とセールスされてしまえば出る幕は無い。人はやはり通話範囲が広い方が安心するのである。このためKDDIはDDIの売却すら検討していた(1月の第4週に延期が決定)。

2の流れは、音声ではなくデータ通信に特化するというもので、報道などを総合するとDDIはこちらへの方針転換を検討しているらしい。この流れがエアーエッジである。

実はDポケによるデータ通信の歴史は少しややこしい。エアーエッジはデータ通信専用で音声通話はできない。じゃあ逆に、エッジやフィールエッジのような音声通信端末ではデータ通信ができなかったのかというと、カタログには「可能」と書いてある。実際できるのだが、PIAFS(αDATA32/64)とパケット通信の違いについてあまり書いていないため、普通の人が混乱してしまうのは無理のない話であろう。

1の流れでインターネットを行うのがPIAFSという通信規格である。これは独自のプロトコルによりデータ通信を行う規格で、料金計算は「分」計算になる。ということは最大速度で1分通話しても電波の状態で低速になって1分通話しても同じ料金がかかってくる。

2はパケット通信である。基本的にはデータ通信量で計算され、通話がいったん中断しても数分以内なら再接続する(ただしこの場合は通話時間がカウントされる)。PIAFSでは切れてしまうとそれまでだが、これなら継続して通信が可能なのである。つまり、パケット通信はモバイルにはフィットする料金形態だ。

昨年までは、この2つの流れで別々に端末が作られていた。このためパケット通信を使いたい人は音声通話端末とは別にカード型端末を買わざるを得ず、非常に非効率だった(もちろん割引はあったが)。PHSを電話とデータ通信の両方で活用したいと思っている人にとっては暗黒の時代だったといってよい。

・救世主現る!

というわけで筆者は、古いPHS端末で音声通信・無料Pメール(注:Dポケではいわゆるセット料金に加入した場合はPメールは無料)をやりとりしていたのだが、長年の使用で電池がへたり、PHS最大の武器である待ち受け時間が1週間程度しかもたなくなってきていた。そのため買い替えの機種を探していた。(友人から「携帯はだいたい毎日充電する必要がある」と聞かされてびっくりした。普通、PHSは2週間くらい充電しなくても平気であり、筆者は出張のときも充電器を持っていったことがない。)

さて。筆者としては音声通話もパケット通信も両方できるモバイルとしての端末が欲しかった。しかし1の流れの端末と2の流れの端末は別々になっており、両方買わざるを得ないという状況しかなかった。

そこに現れたのがKX−HV200(パナソニック 昨年12月発売)だったのである。これは1の流れと2の流れを両方継承した、まさに1台2役のインターネット冷蔵庫(←これは大失敗だったようだが)といった感じであった。KX−HV200を見た瞬間、筆者の血は逆流したのである。衝動買いというか、買うのが当たり前という感じであった。そしてサン電子のUSBケーブルPSP01ももちろんダッシュで購入した。パソコンに接続するためである。

・KX−HV200パケット通信速攻インプレッション

ケーブルは写真のとおり大体45cm。思ったよりも短めで邪魔にならない。ケーブルの長さは開発に当たってかなり検討されていると感じた。価格も4480円(税抜)で安い。今までのPIAFSケーブル(1万円前後)より標準価格ベースではかなり安価である。戦略商品であると見た。

さて、パソコンにつなぐにあたり、ドライバーのCD-ROMをインストールしてからケーブルをつないだ。とりあえずPRIN(入会手続き不要の完全従量制Dポケ専用プロバイダ)にサインアップした。モードはとりあえずフレックスチェンジである。

最近、ADSL普及のおかげで通信速度測定サイトがいくつも登場している。今回はこちらのサイト(http://member.nifty.ne.jp/oso/speedtest/avg500k.html)で500kのダウンロードを試してみた。実験開始時間は21時頃、場所は当研究室内および屋外である。

場所 研究室内 屋外
受信時間 84.2秒 86.5秒
平均速度(byteベース) 5.9KByte/S 5.8KByte/S
平均速度(bitベース) 48KBPS 46KBPS

苦労した割にはあまり研究室と屋外の差がなかった。逆に言うと無線でありながら安定度は高そうだということがわかる。速度そのものはADSLとは比較にならないがモバイルとしては十分であろう。(しかし別の日(2月1日)にアクセスしたら妙に速度が落ちていた。どうも通信が殺到しているようだ。)

・ 改善点

KX−HV200の使い勝手はおおむね良好だと思うが、いくつか注文をつけたいところもある。またパソコンとの接続やOutlookとの連携についても別冊の方に書いておいたので、興味のある人は見てほしい。

KX−HV200を使っていると、DDIが日本の携帯電話市場を制覇できなかったのには、某粗悪PHSキャリア2社の問題以外にもマーケティングの問題点があったように思えてならない。Dポケでデータ通信が可能になった時点からKXを市場投入しなかったのは、ユーザーのニーズを読み違えていたとしか思えない。というか、DDI社内が混乱しているのではなかろうか?

大体、1月のDDI社はKXユーザーのために料金体系をあわてて作り直していた。なんかドタバタしているのである。また、筆者はKX関係の最新情報をDDIのプレスリリースで知ったのだが、その情報は代理店にすら浸透していなかった(筆者が買いに行ったとき誰も知らなかった)。とっても変、というか、人間味あふれる、というか、そういう印象を受ける。そういえば無料Pメールが解禁になる前に、無料メールの大技(※)が流出したのもDポケだった。

※無料メールの大技 その昔、Dポケはメールを出す際に送信者の「ニックネーム」というのを付けることができた。この「ニックネーム」は受信者が受話器をとる前(通信料が発生する前)に相手の端末に表示されたので、「ニックネーム」に通信文を書けば無料メールが行えたのだった。

それはともかく、特にDポケの料金体系は複雑すぎるのでいったん整理が必要であろう。法人ユーザーしか使わないような料金コースまでいっぺんにホームページに載せるのはやりすぎだし、オプションもわからなさ過ぎる。パンフのPIAFSとパケットの説明も見直すべきである。Dポケファンの筆者が見てわからないのに、他の人が見てわかるはずがない。

それにしても、筆者がこんなにDポケを押しても世間の風は冷たい。PHSは子供向けだという印象や、携帯に比べてつながらないという某外道PHSキャリア2社による先入観。それでもDポケを使っている人に向けられるまなざしは、マック信者に向けられるそれとそっくりである。

ならば、このKXは最後の花火なのだろうか。それとも、DDIの反攻の第一歩となるのだろうか?それはすべてDDIの社員の人組みにかかっている。初めて巨人NTTに対抗する通信事業者として出発したときのあのときの緊張を、役員一同思い出すべきなのである。

(K)

P.S. 筆者はDDIの関係者ではありません、念のため。

 

 

 

・IR式競馬必勝法の似非科学

今回は「いかにも怪しい」題名を付けてみたわけだが、単に検索エンジンのエサなので過大な期待を持たないように。

さて。競馬人気も最近は陰りを見せており、JRAもあの手この手で勝馬投票券を買わせようとしている。昔ながらの単勝・連勝の他に、馬連・ワイド馬券のようなさまざまな投票方式が乱立しているのは皆さんもご存知のとおりだ。初心者は面くらうと思うが、ギャンブルは複雑になればなるほど「大衆の混乱」が発生するため、特定の人の儲けに結びつきやすい。以下の例を見てみよう。

ここはとある町のインチキ競馬場。今日また、ある“いかさまレース”(以降 IR:Ikasama Race)が実施される。そのIRとは、

「一部の人間がレース結果・もしくはレース結果を左右する情報を知っていて、その馬券を大量に購入している」

というものである。話を簡単にするために、ここでは3頭の馬が出走予定でしかも単勝と馬連(連勝複式)の馬券だけが売られるものとしよう。下記のオッズが今回のIRである。

単勝オッズ

馬1 馬2 馬3
5.6 1.6 2.2

馬連オッズ

馬1 馬2 馬3
馬1 2.9 6.1
馬2 1.3
馬3

問題: このレースがIRだとすれば、どの馬連が当たる(一部の人だけが知っているレース結果)のだろうか?

ここでは前提条件として、

を仮定してみる。

答えは・・・1−2である。単勝のオッズがいかさま無しの公平な情報に基づいているとするならば、馬連のオッズは以下のようになるべきなのだ(解説は後述)。

本来あるべき馬連オッズ

馬1 馬2 馬3
馬1 3.5 5.6
馬2 1.2
馬3

しかし実際はIHが勝馬連馬券を購入しているため、その馬券(1−2)のオッズが不当に下がってしまっている。その他の組み合わせは必然的にオッズが上がっているのがわかる。よって、いかさま馬券(以降 IB: Ikasama Baken)は1−2ということになる。

さて。IBを予想するために必要な「本来あるべき馬連オッズ」の導出方法を数式で解説しよう。普段なら、このHPで出てくる数式はアートと考えて読み飛ばせばよいわけだが、今回ばかりは「赤鉛筆握りしめながら数式を追う」人も多いかもしれない。健闘を祈る。

解説: 単勝n番の売り上げ(総購入金額)をU(n)とする(U(1)…単勝1番の売り上げ、U(2)…単勝2番の売り上げ、・・・)。するとこのレースでの総売上U=U(1)+U(2)+U(3)となる。

単勝n番のオッズをO(n)とすると、前提として80%が配当なのだから、

・・・(式1)

となる。さて今回の例では単勝の人気のばらつきが馬連でも適用されると考えて数式を展開していくわけだが、話を単純化するためにまず連勝単式で考えることとする。連勝単式での馬の勝つ確率をP(N, M)とおく。

馬1 馬2 馬3
馬1 P(1, 2) P(1, 3)
馬2 P(2, 1) P(2, 3)
馬3 P(3, 1) P(3, 2)

また、馬番nが単勝で勝つ確率をP(n)であらわすことにする。

馬1 馬2 馬3
P(1) P(2) P(3)

先ほどの(式1)は、 を使うと、

・・・(式2)

となる。また、連勝単式の馬連1-2の想定される確率P(1,2)は、

と表現できる(連勝単式では1位と2位の順番も当てなければならないのに注意)。この式を一般化すると、

・・・(式3)

(式2)、(式3)により

・・・(式4)

連勝単式の馬連オッズをO(x, y)であらわすと、

・・・(式5)

これでやっと連勝単式の馬連オッズを単勝のオッズのみで表すことができた。あとはこれを連勝複式(1位と2位の順番は問わない連勝馬券)の馬連オッズO2(x, y)であらわすと、

・・・(式6)

・・・(式7)

となる。このO2(x, y)こそが、単勝オッズから導かれる「本来あるべき馬連オッズ」である。

では、実際の競馬はどうであろうか。まず筆者は昨年の有馬記念の結果を入手し、上の式でオッズを再計算をしてみた。下記の表は、(実際のオッズ)÷(本来あるべきオッズ)を%で示したものである。前述の理論からすると、この値が小さいものが怪しいレースということになる。

2001年有馬記念:

数字が20%未満のもの、つまり怪しさ度5倍以上のものを太字で示している。そして実際の有馬記念の結果は。。。1−4。おぉ、当たっているではないか!!!しかも48.6倍の高配当馬券だ。

ということで、当然のごとく筆者はとりあえず理論をホームページで発表するのを中止してそそくさと競馬場に足を運んだ。実際に馬券を買ってみたのは、以下の2つのレースである。

調査レース

  1. とある日のとある競馬場第1レース
  2. とある日のとある競馬場第3レース

第一レース

候補は、3−4、3−7、4−7といったところ。しかし実際は2−6であった。ううむ、めげずに次のレースに行ってみよう。

正解は4−11でまたも失敗。この方法ではまったく見当違いの結果となってしまう。

というわけで、この理論は実戦で使うのを中止され、検索エンジンのエサにまで地位を落としてしまったわけだが。。。まだあきらめるのは早い。上の3例の結果のばらつき具合を見ると単勝と馬連は連動していないようにも見えるが、ひょっとするとGIレースのような規模の大きいものほどIRになりやすい可能性はある。それは、GI、GII、GIIIのような大きなレースほど、大衆心理が見かけ上のIRを作り出す可能性があるからだ。そう、IRとは、例えば高名な競馬解説者が間違ったマスメディア操作をするだけで起こりうるものなのである。

誰が言ったか「競馬は究極の推理ゲーム」。今後の調査に期待しよう。※実践する場合は自己責任で行ってください。

(S)

P.S. totoくじ予想ソフトウェア(フリーソフト、Windows用)付き超高配当totoを予想せよ!−Million TOTOの似非科学もこの機会にどうぞ。

 

 

 

・続8・危険物を確実に運ぶドライビングテクニック−頭文字Tの似非科学

★前回の続き

今回を読まれる前に、まず前回(続7・危険物を確実に運ぶドライビングテクニック−頭文字Tの似非科学)を必ず読まれたし。前回を読んでおかないと、今回の内容はまったく意味がわからないのでご注意。

★24時間耐久配送・・・配送開始

ガソリンスタンドを破壊し尽くしてくれた結果、私はこのままでは納品できないことを悟った。タンクにはまだ12KLのガソリンが残っている。このまま事務所に帰ることはできない(法律上、移動式タンクに危険物を貯蔵することはできない)。事務所に無線で連絡しようとしたが山の中のためつながらない。当時はまだ携帯電話も普及していなかったため公衆電話を探すが、ガソリンスタンドの中にある電話は沈没事件で使用できない。消防車と警察の車はわんさかやってくるわ、田舎だから近所(といってもものすごく離れているが)の人が車でやってくるわ、もう、ちょっとしたパニック状態である。

仕方がないので集まった近所の野次馬の人に電話を貸してくれないか、とお願いして、その人のお宅まで車で連れて行ってもらった。事務所に電話したところ、そこで待機しろ、ということである。げーっ、そんなこといっても納品できないものはできないんですけど、と思いつつも仕方がないのでその人のうちで待機させてもらうことにした。

お茶やお菓子を出してもらい、沈没事件の様子をお世話になったその人の家族に話していると、2時間ほどして電話が鳴った。すると今度は「代わりの配送先をなんとか用意したから、そこに配送しろ。配送先をFaxするからFaxの電話番号を教えてくれ」ということである。もちろんその当時のFax普及率など微々たるものである。当然その人の家にはFaxがないのでどうしようと事務所に伝えたところ、「近くのFaxがある家を教えてもらえ」、と。「鬼か〜!」と思いつつもお世話になった人に聞くと、近所に(といっても車で10分くらいのところ)Faxを持っている家があるらしい。で、その家の人に連絡してFaxを使わせてほしいと頼み込み、そちらのお宅に向かった。

★24時間耐久配送・・・つらいぞ!

すると。。。ものすごい枚数のFaxが届いている。それぞれ目を通すと、ごく少量をあちこちのガソリンスタンドに配送しろ、という内容である。配送する件数はなんと9件で、それぞれ最大で2KL、少ないところで500Lである。ちなみにタンクローリーは2KL枡と4KL枡にしか分かれていない(続4・危険物を確実に運ぶドライビングテクニック−頭文字Tの似非科学参照)のであるが、タンクの中にメジャーがついていて、これでどれだけの量を卸したかがわかるようになっている。中途半端な量の油を卸すときには、メジャーを確認しつつ目的の容量に達したらバルブを閉めるという非常にめんどくさい手作業を行わなければならない。

で、Faxで届いた伝票を持ってタンクローリーに戻ると、今度は移動式クレーンが来て道をふさいでおり、タンクローリーを動かせなくなっている。

何とかお願いしてクレーン車を移動してもらい(これも1時間くらいかかった)、その場を脱出しようと試みた。しかし、ガソリンスタンドでUターンするのは沈没事件により不可能。他にUターンできる場所がないかと聞いてみたが、この先は狭くて無理らしい。

もう、ここで覚悟を決めた。

狭い峠道をトレーラーでフルバック!

だが、あたりは暗いし、バックする途中で自分が山道から転落しそうな雰囲気だ。(このサイトの常連の方はすでにご存知だと思うが、トレーラーがバックするときにハンドルを切る方向は乗用車とは逆である。しかもあのでかい車体だ。相当な覚悟が必要になる。)

そこで警察の方にお願いして、「バックの誘導」と自分がバックしている最中に「対向車が来たら対応してくれ」というお願いをした。警察官は最初はそんなことはできないと言っていたが、このままではこの場所にタンクローリーが延々と居続けることになると必死に陳情した。事情が事情だし、ようやく重い腰を上げてくれてバックの誘導をしてくれることになった。警察官に交通整理のガードマンみたいな仕事をさせたのは初めてだ。まあ、服装も似ているし大丈夫だろう。

ということで、狭い山道をタンクローリーで延々2キロもバックした(これで1時間)。途中、対向車がやってきたが、さすがに警察官自らがバックを誘導してくれただけあって、すんなりと道を譲ってくれる。狭い道を抜け、大きな道に出る交差点に着いたところで、今度はその交差点を行きかう車を警察官がすべて止め、何とかUターンした。そして代わりの配送先に向かって車を走らせた。すでに午後9時である。

★24時間配送 1件目・・・タンクの中の油は減らない

1件目の配送は比較的近場にあり、すぐに到着した。だが、納品する油の量はたったの500Lである。それでも通常の納品と同様の手順を踏まなければならないため(法律により規定されている)、たった500Lの納品にも手間は非常にかかる。

とりあえず、地下タンクとタンクローリーをジョイントし、納品する目的の油(ガソリン)の排出バルブを開放した。ジャーと納品が開始されジョイント周りから油漏れがないことを確認すると、すぐさまタンクローリーのタンクの上によじ登り、油の減る量を確認する。中についているメジャーが500L減ったところで、すぐさまタンクの上についている排出バルブを閉める。マンホールのふたを閉め、タンクローリーのタンクから降りて、ジョイントパイプやパイプラインに残っているガソリンが排出されるまで待つ。ジョイントパイプからゴポゴポと音がするのを確認したら、パイプを上下に動かして残りの油を全て地下タンクへと排出する。

上図に納品手順を書いてみた。タンクへ登ったり降りたりする回数が多くていやになってしまう。これをあと8回も行うのかと思うといい運動になりそうだ(泣)。

納品が終わったら、すぐさまジョイントホースを片付け、次の配送先を確認する。ここで問題になったのは残り8件の納品先をどういう順番でまわろうか?ということである。何枚も届けられたFax用紙と地図を見比べて配送する順番を決めた。(通常、事務所は配送順まで決めてはくれない。この辺はすべてドライバーの技量に任せられる。) まるでサラリーマン巡回問題を現実の世界で解いている感覚である。しかもその正解は自分で実践して確かめるというオマケつきである。

必死に悩んだ挙句、とりあえずベストと思われる道順を選択した。本当はもっと近道できるルートもあったのだが、そのルートを選択すると一部知らない道を走ることになり、もし万が一ハマッたら(たとえば、途中で高さ制限があるとか大型車進入禁止になっているとか)あとで泣きを見るのでやめた。また、夜間走行することになるため、知らない道を走ると道を間違いやすい。だから、とりあえず知っている道で行くことにしたのだった。

残り8件。時間はすでに午後10時をまわっている。(つづく)

(T)

P.S. 以前書いたスーパーの配送とサラリーマン巡回問題と状態遷移の似非科学続・スーパーの配送とサラリーマン巡回問題と状態遷移の似非科学(配送シミュレータプログラム(フリーウェア、Windows用)付き)もこの機会にどうぞ。

 

 

 

・さよなら小泉首相〜構造改革の似非科学(1)

さて。筆者は年末からずっと風邪を引いていて体調が思わしくない。安静にして例の風邪治し法ボディビルダーとインフルエンザの似非科学参照)を使えばよいのだが、年末年始はそうも言っていられず、悪化してずっと寝込んでいた。初夢は最悪だった。「小泉首相が退陣するぞ!」と仕事中にインターネットを見ていた上司が叫んだので、(それよりあんたサボってんじゃねえ!)と思っている夢だった。しかし、これは単なる悪夢なのだろうか?現実に不安要素はいくつかある。

今回はまず、構造改革の考え方そのものの問題点について考えてみよう

断っておくが、骨太の方針そのものは悪くない。グローバルスタンダードというのは経済学的にいえば新古典派に忠実であり(グローバルスタンダードの複雑系の似非科学(その2)参照)、骨太の方針もそれに沿っている。いわゆるケインズの総需要管理政策から脱却して、民間需要を市場原理によってコントロールするものであるからだ。

しかしこの新古典派の思想は、財政学上の垂直的公平水平的公平という観点から分類すると垂直的公平を重んじている。垂直的公平と水平的公平を簡単に説明すると、これは財政学の特に租税のところで議論される考え方で、

という風に説明される。今までの終身雇用制においては、出世の差はあっても基本的には水平的公平のもとに運用されていた。どっちがいいのかの判断は難しい。どちらも当然だと思われる理由があるからである。

構造改革はこの辺から考えると、雇用の流動化を謳う以上、能力の高い人はどんどん転職してキャリアと所得を上昇させるような行動をとることを前提にしている。そういう意味では垂直的公平を実現していくことが政策目標になっていると考えてよいであろう。

だがこの公平性を実現するときに、歴史的な観点と9月11日を照らし合わせて考えると、一つの落とし穴がある。

たとえば東京都で施行されるホテル税を考えてみよう。この税金に対しては大分県知事が「反射的利益を享受している」と批判した。これは単にホテル税だけではなく、構造改革の基本的な弱点を象徴していると言う意味で特筆に価する。

ここでいう反射的利益というのもまた説明が難しいが、これは副次的な利益が発生していると言う意味である。ホテル税に限っていうと「みんなが東京に集まらざるを得ないから税金を徴収できるのだ」という意味である。

東京都知事は、たとえ都外の人たちが払った税金でも、東京で獲得した税金をそのまま東京に使うことを主張している。確かに現状では、東京都は獲得した利益をその獲得能力に応じて(東京都に)配分できていない。むしろ国税として地方に還元する水平的公平が大きなウェイトをしめてきた。このことから、ホテル税に関する東京都知事の意見は垂直的公平の考え方にもとづいている。

しかし、ここで歴史をさかのぼってみよう。なぜ東京を犠牲にしてまで地方に配分するのか、それはもちろん選挙制度における1票の格差もあったかもしれないが、2・26事件が一番の原因だったと思われる。

世界恐慌のあとの地方は貧困にあえぎ、しかも天候も不順だったため作物も実らず、娘をどんどん売っていた。(今では児童ポルノ法があるから娘すら売れない。当時の児童売春が、彼女らがブランド品を買うためにあったとすればどんなに平和な時代だったか。) それが結局2・26事件の軍部のテロにつながったのは歴史の教えるところである。

戦後、国土の均衡ある発展を目指していったのは、この地方と中央の不均衡を是正し、2・26事件のような社会の不安定性をもたらさないということが目的のひとつだったと思われる。

じゃあ、道路などの施設ができたから地方は十分で、これ以上の要求は贅沢なのか?難しい問題である。というのも、中央と地方にはどうやっても埋められない差がある。その象徴がホテル税である。つまり、地方には反射的利益を得る「機会」というのがやってこないのである。もしそれを無視してそのまま垂直的公平を貫けば、利益があるところに資金と資源と情報が集中し、最終的に巨大な固定された貧困層を生み出し、最終的には経済圏から排除し、テロリストを生み出す。アメリカが9月11日になぜ突っ込まれたのかも、結局貧困層が経済圏からのスピンアウトをしてしまったからである。アメリカの場合はそういった経済的な敗者を国際的に生み出し、その敗者たちは大義をもってああいった行動が取れたのである。2・26事件も同じである。日本人にとっては大して珍しくもない事件だといえる。都知事が言うことも一理あるが、調子に乗っていれば単に歴史のネジを巻き戻している大変おろかな事態を招くだろう。

しかし小泉首相も、どうもその辺が理解できていないのか、そうした命題について優先して検討することがない。これが社会的経済的な混乱を招く恐れがある。それが小泉首相の退陣につながっていくのだろう。

垂直的機会均等という構図を暗黙のうちに固定する。。。実は小泉首相が推し進めている改革とは、政府によってさりげなく構造化された改革ということになろう。つまり筆者が言いたいのは、

改革を構造してはいかん、ちゅうことやね

冗談はともかく、この問題は痛みや自助努力などというスローガンを根本的に空虚に変える力を持っている。

(K)

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