魅惑の似非科学

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11/24/2000 マザーボード改造の理想のファッションとは?静電気は胸毛の夢を見るかの似非科学 (おすすめ)

11/17/2000 王様の飲み屋さん−外食産業の似非科学

11/10/2000 人体分泌物の電解質を測れ!唾液電池の似非科学 (おすすめ)

11/3/2000  似非英語の似非科学

10/27/2000 祝!白川教授ノーベル化学賞受賞!高分子=人間?の似非科学

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・マザーボード改造の理想のファッションとは?静電気は胸毛の夢を見るかの似非科学

さて、このHPは似非科学、とは言いながらちょっと本来の科学理論を織り交ぜた本物とも偽物ともつかないテーマを扱っているが、安心してほしい、今回は違う。

純度100%の似非科学だ。(しかも人体実験シリーズ)

間違って真似したとしても、大小かかわらず何らかの障害をおったとしても、当研究室では一切関知しないのでそれを承知して読むように。繰り返す。絶対に真似しないように。

さて、当研究室にはあらゆるジャンルの研究テーマの依頼が常に舞い込むわけであるが、今回は「静電気体質を治す方法はないか?」というものだった。

ご存知の通り、これからの季節は静電気が発生しやすい。それだけならいいが、メモリーやマザーボードを扱っているときに静電気が飛ぶと大変である。を(この言い方もレトロになってきたな)壊してしまうかもしれない。このため、当研究室ではパソコンのハードをいじる初心者には、「夏、クーラーを聞かせた部屋でで作業するといいよ」と薦めているくらいなのだ。冬場だと、たとえ作業を裸で行っても飛ぶときは飛ぶし、第一風邪をひいてしまう。そういうわけでパソコンの組み立ては夏が旬ということができよう。

とはいっても、冬場にいじらない、で済ますわけにいかないので、厄介な静電気対策や除電をおこなうわけだが、その方法にはいろいろある。

  1. 鍵であらかじめICを触って除電する
  2. 指先から放電させると電圧が大きくなるので、手のひらで包み込むようにして触ることで放電圧を低くする
  3. 除電ブラシを使う
  4. 除電キーホルダーを使う
  5. 服はもちろん柔軟仕上剤を使って洗濯

実際、二十数年前の電子工作雑誌には、CMOSのICを扱うときは「冬はセーターを脱ぎTシャツ一枚になって、地面または鉄板に片腕をついた状態で扱え」と書いてあったものだ(本当)。ただ、半導体技術の進歩で最近のICは、象が踏むとさすがに壊れるが、手で触ったぐらいではほとんど壊れないくらい丈夫になった。

普通の人間だと、上記の方法やICの品質の向上で静電気対策はOKなのだが、強力な静電気体質の人間はなんと鍵から放電させると電流が流れた瞬間に感電してしまう。手のひらで触るとその電圧でも衝撃を受けるし、除電ブラシ、キーホルダー系は持ち運んでいないといけないし、柔軟仕上剤も効果があまりない。これではさすがに如何に丈夫なICでも安全性が保証できない。

とりあえず、去年の冬は河口(株)の静電気除去リングというものを発見し、それでしのいだ。これは除電繊維をヘアゴム状に仕上たもので、必要がないときは手首にはめておいて、金属製品に触れるときにそれで触ってから除電する、というものだ。キーホルダーなどより気軽に使え、安価な割(300円)に除電性能がよかった。これはお勧めである。

[大きさの比較のためシングルCDの上にのせてある]

だが、今年の冬は、この依頼人に対して恐るべき人体実験を施した。いや、とあることのために人体実験を行ったら、副次的に効果が確認された究極除電の方法が見つかったのだ。

これを発見したのは、別の実験のために依頼人の胸毛と腹毛を短くしたときのことだった。伸び放題に伸びていた胸毛と腹毛を「すき歯かみそり」で漉いてしまったのだ。このため依頼人の胸毛と腹毛は一様に2mm〜3mmになっていた。

これで別の実験をした帰りに依頼人が車に乗り込もうとした瞬間、驚くべき発言を行ったのだ。

「先生、静電気が起きません!」

確かに冬はまだなので静電気の発生は低い状況だが、それでもこの依頼人は10月の残暑の中でも静電気にやられる不幸な体質だったことを考えるとかなりすごい効果だ。しかもそのときは革靴に背広を着ていたため、より静電気がおきやすくなっていたにもかかわらず、だ。

いったいこれはどういうことなのか?(笑)

現時点ではこの謎の解明に関してはあくまでも推測の域でしかない。

静電気がなぜ起きるか、といえば服の中にたまっている空気の中に、服の繊維と皮膚がこすれ合うことで発生した静電気がたまり、それが電位の低い部分に流れるのである。

そうすると、長く伸びた胸毛は下着とこすれあいやすい。昔、髪の毛と下敷きで実験した人は多いであろう。いわば、胸毛と肌着はエレキテルのような役割を果たしていたのである。さらに悪いことに胸毛や腹毛はその密生した中に空気を溜め込む。この空気は体温の保持のために必要だが、同時に電気を溜め込んでしまう、という現象が起きてしまうのである。

ということは胸毛と腹毛を短くすると、空気(埃)がなくなり、さらに胸毛と腹毛が繊維の間に突き刺さることで摩擦を抑え、逆に静電気をおきにくくさせるのである。

というわけで、胸毛や腹毛を2〜3mmにしておくと、静電気はおきにくくなる。以上が、この冬の除電対策なのである。(もちろん除電リングや、柔軟仕上剤は使うが。) ただし、それ以上短くすると、肌をいためたり、逆につるつるになっていると余計肌と下着が摩擦しあうので、静電気を発生させてしまうから要注意である。

しかし、このことから考えると、静電気とは特に胸部、及び、腹部で発電されているのではないか、という推定が成り立つ。つまり、女性で静電気がおきやすい体質の人は、胸が大きくて谷間があるか、乳房が離れた形になっているのではないか、と推定できる。ブラジャーと下着の摩擦で発生した電気が胸の間にたまってしまうためである。

そうすると、女性の場合、静電気が起きやすい人は谷間をつくるブラなどは冬場にはさけたほうがいいのであろう。もし、冬用のブラ(PAT.PEND)があるとしたら、それは谷間メイクではなく谷間を作らずに胸を大きく見せるブラを開発すべきなのではないかと考えられるのである。

また、男性の場合は腹が出ているとそれだけ摩擦面積が大きくなり、起電しやすくなる。さらに、胸部と腹部との段差と服の間に隙間ができて、ここに電気がたまるのである。

そうやって考えていくと、昔の和服が胸が開いている形なのか、ということもここで理解できる。それは胸の上方を空かせることで空気を抜いて、もって除電していたのである!恐るべき先人の智恵、胸の大きい人や太っている男性は冬、和服を着用しよう!

と、いうことはこれからのコンピューターの開発室は男女とも作務衣の着用が義務付けられるかもしれない。某M$ でもまもなくコンピュータールームにがしかれ、男女とも作務衣を着用して作業する日も近いであろう。(下はマザーボードを改造している女性の近未来図である。)

以上が当研究室の開発したマザーボード改造ファッションであるが、これはあくまでも仮説よりさらに不確かな推測の域を出ていない。この問題については

現在調査中

なので、絶対に実践しないでください。

(M)

 

 

 

・王様の飲み屋さん−外食産業の似非科学

不況の波を受けやすい業種は多々あるが、サービス業の一つである飲食業もその例に漏れず不況の波を受けやすい。ボーナスの引き下げなどで、実質的に収入が減っている現在、そんなに外食ばかりしていられないということなのだろうか。そこで、今回は私の働いていたことのある飲み屋(俗に言う居酒屋的な店)の経営を似非科学してみよう。

☆ 外食は高い?

飲食業が不況の波を受けやすい理由は、何しろ外食は高いということだろう。すごくおいしいラーメン、ここでしか食べられない絶品のスパゲッティなどという価値のある商品ならともかく、スーパーでも売っているような食材が、飲食店では2倍、3倍の価格で販売されているのだから、単に食べるという行為として考えれば非経済的である。例えば、豆腐一丁がスーパーやそこらでは約80円だが、居酒屋では280円、380円という価格で「冷や奴」として売られているのである。

なので経済的にみれば、奥さんが「そんなもの外で食べなくってもいいじゃない!」と飲んだくれの亭主に言うのはまったくの正論で反論の余地はない。しかし、飲食に携わったことのある立場から簡単に言わせてもらえば、飲食業として生業をたてている以上、生活をするために利益を得なければならないという経営上の問題もさることながら、実は飲食業というのは家庭では得ることのできない付加価値を販売している職業なのである。私もいろんなお店に飲みにいくが、そこで知り合った人と話していると、「家ではあまり飲まない」「家で飲むお酒はまずい」という人は多い。つまりお店という雰囲気があることによって、同じお酒や料理でもおいしく感じたりするのだそうだ。美しい女性とお知り合いになれるかも、などという下心もあるのかもしれないが、それも付加価値として十分だろうと思う。仕事のグチを奥さんに話すことができないから同僚とちょっと一杯、というのも付加価値となりうる。上司の悪口は最高のつまみかもしれない。

つまみにしても、「ちょっと気の利いたものがおいてある」「家でこのスパゲッティは食べられない」という付加価値が料金として反映されているのである。とてもおいしい料理があるとして、同じ材料、同じ時間、同じ過程で調理すれば、確かに同じようにおいしい料理を調理できるかもしれないが、それを1人前ずつ作るのは時間や材料費という面で効率が悪い。また調理に技術が必要な場合は、その技術を習得する必要もでてくる。 このように場所や雰囲気、調理時間や技術にかかる費用を、みなで分配することで結果的に経済効率があがっているのである。

さて、ここで前述の「冷や奴」の価格であるが、これらの雰囲気料を見積もっても高いと思うかもしれない。実は経営上の理由があるからなのだ。

☆ 出歩き指数(商店街主催の祭りの理由)

さて、これだけ不況が続き客足が遠ざかると、なんとかしてお客様に来て頂かなくてはと、あれやこれや作戦を考えたりするわけだが、ここで面白い考え方がある。

あるお店Aがあるとしよう。地理的な条件で、そのお店のお客様になる可能性のある人を100万人とする。この地理的な条件は大した意味がないので、かなり大雑把な条件としてしまっているが、つまり電車や車、バスなどで移動できると思われる範囲といった物理的区別、市町村などという論理的区別で人口を分けたものだと思ってもらえばいい。

100万人といっても、学生、主婦、サラリーマン、子供と様々だ。なかには外食の嫌いな人もいるし、お酒の飲めない人もいる。区別していくときりがないが、要するに100万人の人口のなかで、飲みに行く人の数は一定なのではないか?という考え方である。

中学生以下の子供は、まず飲み屋さんにいったりはしない。たまに両親と一緒にご飯を食べにくる場合もあるが、これは滅多にない。主婦の皆様にも来店していただくことはあるが、それほど多くない。やはり主役はサラリーマンだろう。そのなかでも週に何度も飲みに出かける人となると、さらに限られてくる。

曜日によっても変化がある。週休二日制の影響で、金曜日が最も忙しい日であることは当然だが、例えば水曜日がノー残業デー(まだあるのか?)で忙しかったり、都会とは違い地方であれば、お店のある商店街の休みの前日なども忙しかったりするのだ。平日でも祝日前であれば忙しいし、金曜日から日曜日の3連休なら木曜日が忙しかったりする。

その他、月や年単位の変化もある。月単位であれば、やはり給料日後の週末は混雑する日だし、年単位ではお祭りなどの行事や、企業の決算期にあわせて忙しさが変わる。最も忙しい月は12月だ。いわゆる忘年会というヤツで、これがすごい。席数の90%が予約だけで埋まってしまう。そのあいだ、こっちはヒィヒィいいながら仕事をするのだが、そんな月でも唯一暇な日がある。それは12月24日だ。俗に言うクリスマスイブで、さすがにこの日に飲みにいく人は少ないらしい。カップルは大量に出歩いているのだろうが、わざわざ居酒屋なんかにはいかないしね。たまに女の子4人とか、男3人で飲みに来ていたりするが、これはちょっと悲しいものがある。かくいう私も仕事をしているのでなんともいえないのだが・・・。

さて、これをまとめると以下のような計算式が成立する。

出歩き数 = 人口 × 基本指数A × 曜日指数B × 月指数C × イベント指数D

利益を出すためには、材料費や人件費を下げるという手もあるが、根本的には、やはり多くのお客様にきていただけることが重要だ。上の計算式を利用すると、どの月のどの曜日に何をすればいいかが見えてくる。

例えば火曜日の指数が低いなぁということであれば、火曜日限定のイベントを設けたり、逆に金曜日が高すぎるようであれば、高額のパーティー料理を選択していただかなくては予約できない仕組みにするのだ。よく商店街などで小さな祭りを開催したりしているが、来店するための動機を増やすという意味もあり、イベント指数はわずかであるが増加するのである。

ちなみに、私はこの飲食業、例えば居酒屋やパブ、クラブ、バーといった夜の仕事全般の不況は、公務員が出歩かなくなったからではないかと想像している。以前は警察の皆さん公務員の皆さんにご利用いただいていたが、今はほとんど皆無と言って良い。このあたりは、以前に官官接待の似非科学のほうに試算してあるので、参考にして頂きたい。

ちなみにまったくの余談だが、地方になると選挙の前日や前々日はなぜか客足が遠い。会社単位のしがらみがあるのだろうか。このあたりは、またいずれ話題にしてみたい。

☆ 実際の一日

飲食業、特に飲み屋さんで働いている人に最も嫌な季節を聞くと、必ず年末と答えるだろう。それだけ忘年会シーズンは忙しさを極めるのだ。特に週末は鬼のような忙しさである。数字的には通常の5割増くらい忙しいが、なにせ人間であるため倍ぐらい忙しいと感じてしまう。しかし、一年間で最高の売上のある日なので、なんとか前年の数字を抜こうと気合いの入る日でもある(だいたい途中で、どうでもよくなってしまうのだが)。

さて、今後、12月某日(金曜日)という鬼のように忙しい日を取り上げて、実際の一日に触れてみよう。

☆ 出勤

昼間12時に出勤する。この日は本当に体が重い。体の調子を整えるため、前日に深酒をしないようにする人もいる。風邪なんか引いたら目も当てられない。この日は一人一人が貴重な戦力で、一人欠けるとずいぶん忙しく感じるのをみんな知っているので、調子が悪いことを言い出すにも言えないし、言ったところで帰してくれるかどうかもわからない。それだけ忙しいのである。

出社して寝ぼけまなこでドアをあけると、ど〜〜〜んとダンボールの山がある。気が重たくなる瞬間だ。このダンボール、レタスやらトマトやら、牛肉やら豚肉、豆腐やトマトソースなどが詰まっている。つまり配達された材料なのだ。その他にも日本酒が一升瓶で何本、ビールが何ケース、生樽(生ビールの樽)が何本と重なっている。憂鬱だ・・・・。

今時の大手の飲食店では当たり前だが、不景気ということもあり、材料費を抑えるために在庫をなるべくおかないようにする店が多くなっている。こうすると、野菜が腐ったり、豆腐の賞味期限が切れたりという材料のロスがなくなる上、鮮度も高くなる。時には豆腐4丁だけもってくることもある仕入れ業者には申し訳ないが、こちらも在庫を抑えるのに懸命なのだ。

これは特に売り掛けにしている飲食店では非常に大切だ。「売り掛け」とは仕入れた材料費を月ごとにまとめて業者に支払うことなのだが、このとき在庫が少ないと業者に支払う材料費を抑えることができる。単独店舗では大したことない金額だろうが、チェーン店になると月に数千万円単位で余剰資金が生まれ、結果、新規店舗開店の資金になったり、運用して利益をだしたりできるのだ。

ちなみに、1品あたりの売値の内訳は以下のようになる。(簡単な記述なので簿記の専門の方が見ると笑うと思う)

売値 = 材料費 + 水道光熱費 + 人件費 + 家賃 + 宣伝費 + 諸経費 + 利益

その他のものは、すべて諸経費にぶち込んでいるので気にしないように。お店によるが、材料費は、売値の20%〜35%という程度だろう。冷や奴であれば、豆腐+ネギ+おろしショウガ+削り節+醤油+α(カラシや盛りつけの氷などの特殊なもの)で原価60円だとしたら、約200円以上で売らないと赤字になるのだ。冷や奴のような材料費や手間のあまりかからず、しかも多くの出品数を見込める商品は、逆に高値に設定して利益を稼ぐという考え方もあるし、安いなら安いなりに価格を設定しているお店もあるが、これはスタイルと考え方の違いによる。

よくお勧め料理などあるが、これもいろいろな考え方がある。まずは「本当においしい」お勧め料理である場合だ。これを食べたいからこのお店にいくという集客効果を狙ったもので、材料費に売値の40%かけ、手間をかけても調理して提供する。お客様にとって、これは本当にお得になる。もう一つは、材料費が「非常に安い」商品だ。お勧め料理と銘打つと、やはり出品数が多くなる。そこで材料費は安いがおいしい料理をお勧めとして販売し、利益をだすのだ。最後は、「賞味期限が近づいている」場合だ。これは販売しないとロスになってしまうため、価格を安くしても販売したい商品である。このようにお勧め料理といっても様々で、お店のスタイルによって異なってくる。一度、こういう視点からメニューをみてみると面白いので実際にご覧になっていただきたい。

飲食業は基本的に薄利多売なので、ある時は1品につき1円の利益なんてこともある。が、これは仕方あるまい。逆に専門の職人さんの工芸品などは、高価なものは月に1個売れるとして、利益は何十万に設定しないと割が合わないだろう。そのかわり材料費の比率は抑えられ、人件費の割合が大きくなるに違いないが、私は他職についてはわからないので、あくまで想像だ。

さすがに豆腐ぐらいはスーパーなどで売値を知っているため、多少の割高感がある。なので、少しでも安くみせかけるためのテクニックを用いている場合がある。よく砕いた氷の上に豆腐が盛ってあったりするのは見た目の効果を狙ったものだ。寄せ豆腐といった高価な食品を使って金銭感覚をごまかすという手もある。国産大豆100%や手作り豆腐という言葉も立派な売り文句だ。最近の大手では有機栽培物などが流行っているが、これが本当だとして、野菜の質にこだわるという姿勢を見せることができるのと同時に、売値を高めに設定することができたり、同じ価格設定でも安くみせる効果がある。

☆ 王様の飲み屋さん、連載開始

筆ものってきたところだが今回はここまでだ。さて、ご存知の方も多いと思うが、有名なフランス料理人の言葉に

人生で起こることはすべて、皿の上でも起こる

というのがある。そう、飲み屋さんの一日も、人生の出来事がすべて起こる。そういうわけで「王様の飲み屋さん」シリーズは筆者の思い入れの深いシリーズになるだろう。今後ともご声援よろしく。

(OG)

 

 

 

・人体分泌物の電解質を測れ!唾液電池の似非科学

いつにも増して意味不明の題名だが、今回は人体実験の話だ。(雪道シリーズは一回お休みをいただく。)

さて。ことの始まりは、とあるテレビ教養番組だった。まず番組の内容をざっと説明すると、虫歯になったときに歯医者は歯に金属の詰め物をする。その金属は食事をしたときの唾液にイオンとして少しずつ溶け出す(イオン自体は普通は無害だ)。だが、その金属イオンが指先や足などの毛細血管が集まる末端部に到達したとき、金属アレルギーを起こして手荒れなどを起こすことがある、というものだった。特に歯並びの矯正具をつけていて2種類以上の金属で詰め物をしている場合、急激に金属がイオン化するという。

これは、口の中に原理的に電池が作られているから、という説明だった。なるほど、確かにそうだ。ボルタの電池等の原理は、高校化学で学んだ方も多いだろう。詳しい説明は別の適当なWebサイトで見てもらうとして、つまり下図のような簡単な構造で電池ができてしまう。

要は、2種類の金属板がにつけてあるとイオン化傾向(注)の差により起電力差が生じて電流が流れるというものだ。口の中の場合も、水銀アマルガム金・銀など詰め物・差し歯のイオン化傾向の差、および矯正具やスプーンが導線がわりになって電池が構成され、イオン化が激しくなる。(ちなみに、スプーンを舐めていると、突然「チカッ」と激しい痛みが顎骨に走ることがあるが、あれは電流が流れた瞬間だ。)

注:イオン化傾向: 「かそうかな、まぁあてにすんな、ひどすぎる借金」とかいう念仏をいまだに覚えている方も多いのでは?でも、あれはイオン化傾向表の語呂合わせだってことは忘れてたでしょ?(高校化学で習う。K-Ca-Na-Mg-Al-Zn-Fe-Ni-Sn-Pb-Cu-Hg-Ag-Pt-Au)

だがここで疑問が生まれる。口の中に金属があるのはいいとして、(ボルタ電池で言えば硫酸)の部分はどうする?これはもちろん、食酢などに含まれる弱酸が思い当たる。つまり食事をした後の食材と混ざった唾液が酸の役割を担い、上図の電池が完成する。食材に含まれるのは弱酸だからそれなりに電流は弱いだろうが、確かに電池の体裁を成す。では、どういった食事を摂ると、この唾液電池は強くなるのか?

ということで、今回は食事をした後に口内に生じる、電池の強さを測る実験をしてみた。とはいっても筆者は歯に詰め物をしていないので、以下のような実験を行った。

まずガーゼを適当な大きさに切っておく。食事をしたあと、そのガーゼをくわえ、唾液を十分含ませる。

まぁ、別に写真で紹介するほどの手順でもないが(笑)、いかにも怪しい実験というのを強調したかっただけだ(爆)。

唾液に浸したガーゼを、銅テープアルミ箔でサンドイッチにする。そして銅とアルミにテスターの電極をあて、微小電流を測定する(下図)。

なお、このアルミと銅を使った電池は「55円電池」という変わった名前が付いている。なぜかというと、10円玉(銅)と1円玉(アルミ)で作れるからだ(本当)。10円と1円を5個ずつ交互に重ね、その間に醤油や食酢を含ませたガーゼをはさむタイプの簡易電池が、理科教育のサイトでよく紹介されている。うまく作れば豆電球くらいは点灯するらしい。(当然のことながら、「55円電池」という名称は日本国内でしか通用しない。)

実際の実験風景はこんな感じだ。

乾燥したガーゼを金属に挟んでも電流計に変化はないが、唾液をつけたガーゼなら電流計の針が振れる。

このとき発生する電流は弱いので、テスターは最小レンジで測る。筆者の行った実験では10μA前後であった。もっとも、唾液電池はパワーが弱いので、電流レンジで測っても電圧レンジで測っても同じだ。(普通は電流計に電池を直結するのはナンセンスだが、唾液電池の内部抵抗は大きいのであんまり気にする必要は無い。また、アナログテスターだとどちらにせよ正確な起電力は測れない。理想的な実験では発生起電力は2金属の種類だけに依存するが、内部抵抗のおかげでそこまで電流が流れない。)

まぁ難しいことはさておき、読者の方々の興味は、何を食べたら唾液電池は強くなるの?というものだろう。これがその実験結果だ。それぞれ、下記のメニューを食べたあと、口の中が少し落ち着いてから唾液を採取、測定を行ったものだ。(なんだか筆者の乱れた食生活が垣間見える。) 唾液電池が強かった順に並べてみた。

イカ天うどん

お茶

牛丼

お茶

松花堂弁当

ウーロン茶

紅ジャケ弁当

14μA 12μA 11μA 10μA

 

いわし蒲焼丼

お茶

肉野菜炒め定食

コーヒー

カツカレー

(対照実験)

ミネラルウォーター

 
8μA 6μA 6μA 5μA

特徴的なところとしては、まずイカ天うどんの唾液電池が最強だったことだ。これはやはり、唯一の「汁物」というアドバンテージが効いたのだろうか。だがそれ以外にも理由があるのではないかと思っている。例えば前述した55円電池の場合、食酢といっしょに少量の食塩をガーゼに染み込ませると電池が強くなるのが知られている。これは液体の導電性を増すための工夫だが、この効果がイカ天うどん電池でも起こったのかもしれない。うどんのスープはかなり塩辛かったからだ。

まぁ、たった7例しか測っていないので、傾向というのははっきりはいえないが、油物は唾液電池が総じて弱いように見える。この辺に結論を出すにはさらに多くの臨床例が必要だろう。

カツカレーの唾液電池は弱い。これは筆者としては少し意外だった。この手の人体実験では、体にわるそーなものがだいたい悪者になるのが常だからだ(笑)。このことはおそらく食べたカレーの辛さと関係すると思う。つまり、カレーが辛くてガンガン水を飲んだので、食後の口の中に酸は残っていなかったのだろう。

このカツカレーの例は教訓的だ。ガーゼに直接カツカレーを塗って実験を行えば、電池の強度はもっと強くなったのだろう。だが、そういう臨床からはずれた実験を行ったところで、何の意味も無い。カツカレーを食べれば当然水をがぶがぶ飲む。だから、唾液電池は弱い。人体実験が理屈を超えた意味を持ついい例だ。そういう意外な盲点を見つけたという意味で、今回の臨床実験は大いに意味があったといえる(かぁ?)。

そう。上記の実験結果は私にしか当てはまらない。たとえばあなたがカツカレーを食べても水を一切飲まない人なら、傾向は全く違ったものになる。これが「個体差」というやつだ。今回の実験はテスターさえあれば簡単にできるから、あなたもぜひやってみることをお勧めする。(テスターはDIYショップなどで数千円で売っている。銅とアルミの金属は、さびの出ていないきれいな10円玉と1円玉を使えばよい。) 

何をかくそう、この実験を行う前は「本当に唾液で電池ができるのかなぁ」と心配だった。が、ちゃんと測定できたときは非常にうれしかった。周囲の人たちに見せても「おぉー!」とかなりウケた。やはり唾液電池というところがポイントだ。息子さん・お嬢さんに実験を見せてあげれば、きっとびっくりすると思う。(おとーさんの株も上がるというものさ。)

さて。一般的に電池の実験といえば、金属に何を使うかが興味の対象であり、電解質に何を使うかは適当だったりすることが多い。だが、今回の実験は逆転の発想で、電解質に焦点をあてたところが筆者としては非常に気に入っている。しかもなんと唾液だ。唾液で電池の実験を行ったのは、本サイトが初めてではなかろうか(でも世の中は広いからなぁ)。

(P)

P.S. このサイトでの人体実験シリーズも今回で3回目になる。まだ他の回をごらんになってない方は「人体のブラックホールを追え!カロリー収支の似非科学」や「毛利氏と究極の食生活の似非科学(ダイエット)」をこの機会にどうぞ。

 

 

 

・似非英語の似非科学

脳科学の観点から考えると、受験主要5科目(国語、数学、理科、社会、英語)の中で一つだけ仲間はずれがある。英語だ。なぜかというと、ほかの4教科は頭の中では「日本語」で考えればよいが、英語に関しては「日本語以外」で考えなければいけないからだ。

ここで「日本語以外」と書いて「英語」と書かなかったのにはわけがある。それは脳科学から推測されるかなり微妙なニュアンスがあるからだ。何のことかわからん?OK、今回このニュアンスをあなたにも体感してもらえる画期的な方法を思いついたので紹介しよう。

ウンチクを述べる前に、まずは体感だ。次の英作文問題を考えてほしい。

Q1: 次の日本語文を英訳せよ。ただし次の単語は使ってはならない。「明々後日(しあさって)(three days hence)」

「明々後日は月曜日だ。」

 

これを「似非式単語しばり英作文」と呼ぼう(PAT. PEND.)。この例はかなり端的に「単語しばり」の本質を表現している。もしこれが入試問題だったら、出題者は単に「明々後日」という言い方を知っているかどうかを問うているだけだが、実社会で必要なのはそうではない。解答例は、

A1: "November 6th is Monday." (この原稿は11月3日にUpしたので)

 

なんとなくわかってきただろうか?この方法は、人間の左脳と辺縁系を強制的にパージし、右脳と言語野だけを働かせる効果を持つ。詳しい解説は後ほどやるとして、続いて第2問。

Q2: 次の日本語文を英訳せよ。ただし次の単語を使ってはならない。「乗り換え(change)」「3番線(Lane3)」「中央線(Central Line)」「特別快速(Special rapid)」

「新宿に行くには、ここで電車を乗り換えて3番線から中央線の特別快速電車にのればいいですよ」

 

英作文のレベルとしては、高校生の期末試験に出そうなレベルだが、なかなかすらすらできる人はいないだろう。それはさておき、注目すべきは、主要な単語がすべて絞ってあることだ。うまく訳せただろうか?正解を見る前にぜひトライしてみてほしい。

正解(例)は次のようになる。

A2: "Shinjuku?  Take that red train, here."

 

これで通じる。設問で「3番線」も「中央線」も「特別快速」も単語しばりされているのだから、こう言うしかないのである。(東京ローカルですまない、中央線の電車は赤い。付け加えると、特別快速という英単語はほとんどの外国人に通じない。)

この単語しばりという方法はどういう効果を生むのだろう?これはまず、単語を知らない人と単語を知っている人の格差を無くす。つまり、どんなに英語が得意な人であろうと、単語力は武器にならない。(というか、単語力でごまかすことができない。)

これは、たとえば車の峠バトルで言うと、ダウンヒルバトルにあたる。直線のほとんど無い峠を、しかも下りで競争する場合、車の性能差はほとんど関係なくなる。純粋にドライビングテクニックを競うことができる。(高速道路の上り道には登坂車線が設けられているが、下りにはない。これは、下り道ではトラックだろうがスポーツカーだろうが、車の性能差が関係なくなるためだ。) この「単語しばり」の方法も同様で、単語力に頼らない、ある別の能力の勝負に持ち込める。

さて。ここで脳の動きをシミュレーションしてみよう。単語しばりが無い状況では、Q2を解くときの脳の動きを敢えて言葉で表せば「えーと、中央線の特別快速って英語なんだったかな??シケ単にそんなのあったかな、うーん、うーん」。一方、英単語が絞られていれば、もうそれは思い出しても無駄な単語なのだから、「中央線の特別快速ってどういえばいいのだろう?。。。赤い電車か。」となる。

この2つのアプローチには明確な違いがある。前者は覚えた単語を文法に当てはめる作業であり、後者は日本語から日本語へイメージを転写する作業である。「単語しばり」は明らかに右脳の力を必要とする。クイズを解くのと同じアプローチなのだ。

あなたは右脳と左脳とどちらが動いているのか感じたことがあるだろうか?Q2で「中央線の特別快速ってどういえばいいのだろう?。。。赤い電車か。」のうちで「。。。」の部分がまさに右脳が働いている瞬間だ。このときの行動は人によってさまざまだと思うが、筆者の場合をあげておくと

あなたの場合はどうだろうか?自分で実験してみてほしい。(周りの人に表情をチェックしてもらうとよい。)

いずれにせよ、「。。。」と考えているときの思考は言葉に表現することができない。これはまさに日本語の言語中枢が切り離され、右脳が自立して動いている時間である。コンピュータ業界の言葉でいえば、「脳が脳内下級言語で動いている」と言える。

ここで重要なのは、どんな歪曲表現でもいいので(どーせ単語しばりの条件下だからきれいな英語を作ろうなんていう努力は無駄である)、自分なりの解答を作り上げることにある。その瞬間あなたの脳内でニューロンがネットワークを作ろうとウロウロ動いて、仮のニューラルネットワークが作り上げられる。この仮ネットワークはあなたの財産である。なぜならその直後に、「特別快速」という単語"Special Rapid"を辞書でひけば、この仮ネットワークは確実に"Special Rapid"と結び付けられ、しかも左脳だけではなく右脳にも残る。

仮のニューラルネットワークすら作られていない状況で、何かを覚えようとすること自体、非効率だ。例えば次の問題(受験生向き)をやってみてほしい。

Q3: 次の日本語文を英訳せよ。ただし次の単語は使ってはならない。「経済不況(depression)」「初頭(early)」「革命(revolution)」「好景気(prosperity)」「回復(recovery)」「兆し(symptoms)」「胎動(quickening)」

「日本の経済不況は1980年代初頭に始まったが、IT革命と米国の好景気に後押しされて最近は回復の兆しが胎動している。」

 

これを単語しばりのない入試問題で出たら、白紙提出する人も多いだろう。あるいは、考えもしないまま解答集を見てしまい、答を覚えこもうとするかもしれない。これは全く非効率だ。解答を丸覚えしようとした時点で、あなたの脳の中には仮のニューラルネットワークすらできない。受験生の人はとにかく無理クリでいいのでQ3の解答を作ってみるといい。

例えば「単語しばり」解答の一例をあげるとこうなる。A1, A2に比べるとかなり退屈だが、まじめな受験生用ということで勘弁してほしい。

A3: "Economy in Japan became bad in 1980, but IT and the good economy in America are making it better, now."

 

だいたい、「兆しが胎動」なんていう馬鹿な表現が外国人に通じるわけがない。そんなものにまともに引きずられていたら、この日本語は一生英訳できない。どうせ単語が絞られているのだから、相手に自分の伝えたいことが伝えられればよい。日本人はどうしても100点の英語を話そうと努力するので、外国語の習得が左脳にかたよる。だが「単語しばり」という前提は、日本人をその呪縛から解いてくれる。

この単語しばりで得たテクニックは、実際の社会でも役に立つ。外資系に就職したり、海外旅行に行ったとき、たった一つの単語 −例えば特別快速− がわからずに「モゴモゴ」していたら、もうそれでアウトなのである。英語とはコミュニケーションの道具であり、意思を伝えるのが最大の目的なのだ。例えば外国人が「私はツブツブが集まっていてネバネバした食べ物を食べたい」と言えば「ああ、納豆?」「ソウソウ!」という風に会話は何事も無く展開していく。もしこの外国人が「納豆」という単語を思い出そうとしてモゴモゴやっていたら、一生納豆は食べられない。「泣かない赤ん坊はミルクはもらえない」のだ(ユーゴスラビアのことわざ)。

日常生活で右脳を使っていない人は、遺伝子には関係なく痴ほうになる。「単語しばり」の方法を使って、自分が右脳を使っているときの感覚を知っておくのは重要だろう。そのとき日本語でも英語でもない、脳内下級言語(Brain Native Language)で右脳と左脳は会話をしている。

(E)

 

 

 

・祝!白川教授ノーベル化学賞受賞!高分子=人間?の似非科学

今年のノーベル化学賞を日本人の白川教授が受賞したのはご存知のとおりだ。そして実は、筆者は白川教授の親戚である。

うそです、ごめんなさい(笑)。おそらくアフリカの原始人くらいまで家系図をさかのぼらないと親戚関係にならないだろう…などというヨタ話はおいといて、今回はその導電性ポリマーを解説してみる。導電性ポリマーがなぜ重要かというと、化学の基礎から話が始まり、まず化学の道は有機と無機にわかれて(中略)で、導電性ポリマーに行き着くのである。おわり。

。。。不親切な科学サイト代表の当研究室としてはこれくらいで済ませるのも手だが、あんまりなので詳しく解説してみよう。

高分子とはなにか、イコール人間といってよい。原子が集まって分子となりアミノ酸を作る。そのアミノ酸が集まり細胞となり、組織、器官をつくり、それらが集まって体となる。これは人工で作られたわけではなく自然に作られたものであるため、人間は天然高分子ということになる。また、細胞は壊れてもまた元に戻る。人間は天然高分子であり、生命活動はつねに天然高分子を合成するといってもよい。ただ、人間は生きるために必要な高分子は作成できるが、プラスチック、合成繊維、ナイロン、ビニール袋等のような高分子は合成できない。(もしできるように遺伝子を改造できれば、それでもノーベル賞がもらえる。)

白川教授の導電性高分子というのもこの合成高分子のひとつである。日本ではポリマーと呼ばれているが、海外ではmacromoleculeと呼ばれている。訳をそのまま理解すれば巨大分子である。「1種または数種の原子あるいは原子団が互いに数多く繰り返し連結していることを特徴とする分子からなる物質」である。現代化学は、この高分子をいろいろ作ってみる学問であるし、大変な性質を発見できる宝の山でもある。

たとえばナイロン袋、これは次のような構造からできている。

また、CD、DVDの材料も高分子だ。

車に至っては、なんと半分近くが高分子からできているのをご存知だっただろうか?人間が100%天然高分子ということをかんがえると、車は50%合成人間(?)なのである。

導電性高分子というものを単純に考えると「電気を通すことのできる高分子」だ。ところが、普通のナイロンやプラスチックは電気を通さないのはよく知られている。だが、多くの高分子が持つC−C炭素結合が電気を通さない、と考えるのは間違っている。電池に使われている炭素棒はちゃんと電気を通すのである。この違いは何だろう?

電気が通る材料というのは「自由電子」を持つことが大きな条件になる。炭素棒や金属では結合せず余っている電子があるからこそ電気がとおる。電気が流れるというのは並んでいる原子がやってきた電子を捕まえて、自分の余っている電子を隣に渡す、という作業をしているだけなのを考えれば当然だろう。上記2つの高分子にはこれが無い。

そしてこれが導電性高分子の一つ、ポリアセチレンだ。

しかし、この分子式を見てみても、原子が結合しているほかに余っていそうな電子が無い。それでも電気が通るのだ。ではどういうものが導電性をもつのか?

「高分子辞典」で調べてみた。ちょうどこの本の執筆者には白川教授の名があったが、それはさておき、導電性高分子は2種類のものがある。ひとつは無機系高分子(炭素を使わないもの)硫黄(S)原子と窒素(N)原子が交互に共役したポリチアジルだ。ポリチアジルは0.3K(ケルビン)で超伝導にもなる。もうひとつの有機系高分子が今回の主役のポリアセチレン(上図)である。炭素の二重結合と単結合がならび共役している。しかし、このままでは電気伝導性はない(自由な電子がないから)。そのために電子供与体(電子が余っている原子)や電子受容体(電子が欲しい原子)を添加する必要がある。電子供与体を付加すると、電気伝導度が まで変化し、電子受容体を付加すると電気伝導度が という値になる。この値は金属に匹敵する良導体の水準だ。

ここで、半導体に詳しい人ならば、「なーんだ。半導体の作り方といっしょじゃん?」と思うだろうが、はっきり言えばそのとおり。しかし、この導電性高分子は半導体と比べ利点がいくつもある。それは、

なんでもないことのようだが、実はこれら一つ一つは革新的な応用を生む。たとえば二次電池、太陽電池、表示デバイス、トランジスター等の電子デバイス、各種センサーなどへの応用研究がされ、実際にこれが実用化し、導電性高分子の広い応用性が認知されたために受賞されたと考えられる。

炭素の二重結合を発見した人が、夢の中で両手をつないでいる女の子にヒントを得たように(信じちゃだめだよ)、今回もまた偶然が味方した。触媒の量を間違えてできたプラスチックの不良品が白川教授にヒントを与えたのである。奇しくも半導体トランジスタの発見と似ている。(しかし、ミリモルモルを間違える大学生って…)

さて。導電性高分子のいろいろな応用のアイデアも浮かんでくるのではなかろうか。たとえば、真っ先に応用できるのは糸電話だ。糸が電気伝導性を持つようになればそこに信号を流して、糸電話をデジタル化できる。

冗談はさておき(普通は銅線使うよな)、例えば導電性の服を作り、発生した静電気でバッテリーを充電して電気をためる、とかはすぐ思いつくだろう。異様に静電気を帯びやすい静電気体質の人たちが世の中にはいるが、もしこの服が完成したら、彼らは「クリーンエネルギーの救世主」としてあがめられるようになるだろう・・・この点に関しては、特に繊維に関しては先のポリチアジルを用いて実際に研究がすすんでいる。まだ成形性に問題があり、これをクリアすればおもしろいものができそうだ。

導電性高分子というものの存在を、今回のノーベル賞受賞ではじめてお知りになった方も多いだろう。キルビーに比べれば非常に地味な研究だ。だがすでにこの技術は日常生活に深く浸透している(ATMのタッチパネルなどがそう)。現代社会のデジタル面をキルビー特許が支えているとすれば、アナログ面を支えているのは、まさしく導電性高分子なのである。これがいわゆる、基礎研究の成果、といってもよい。

まあ、当研究室もノーベル賞をきっかけにこの話を書いているので人のことはあんまりいえないが、手のひらを返す、とは、白川教授のノーベル賞をとる前と後の変化をみるとよく見えてくる。そもそも基礎研究を重視するとか言う以前に、この国はそういう人的資源を評価する力がないし、受け入れる場所もないのだ。白川教授の親戚が雨後の竹の子のように大発生するのも、そういう土壌あればこそだ。

これを機会に身近な高分子っていうのはどんなものがあるのかなぁと考えていただけるとうれしい。

(O)

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