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本稿は全日本鍼灸学会雑誌第49巻1号 1999年 27頁 に掲載されたものであり、全
日本鍼灸学会編集部の許可を頂きました。

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研究部からの報告

鍼治療の起源は中国ではなく古代ヨーロッパにあった?

研究部 中村行雄、川喜田健司

 世界的に鍼に興味が持たれていることを象徴するような記事がScience
誌に載りました(Science, 1998年10月9日発行, 282巻, 242頁)。その内
容の評価については留保しておきますが、鍼治療の始まりは古代中国では
なく、古代ヨーロッパだった可能性があると言い出したのです。その内容
は以下の通りです。

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 オーストリア・チロル地方の氷河の中から発見されたヨーロッパ最古の
ミイラ(Tyrolean Icemanと呼ばれ、約5,200年前のものとされる)は、保
存状態がよく、背中、脚など15か所に入れ墨が見られる。これらの入れ墨
はいずれも線で構成された単純な幾何学模様で、その彫られている場所か
らみても、誇示する目的や装飾的な意味をもったものとは考えにくく、む
しろ中国の鍼治療のツボを連想させた。そこで、入れ墨の位置を計測し、
写真を撮ってそれを経穴図と重ねるなどの調査をするとともに、3人の信
頼できる鍼師からも専門家としての意見を求めた結果、15か所の入れ墨の
うち9か所はツボと重なるか、5mm以内のずれの範囲内にあったという。特
に、背中に見られる5か所の入れ墨は膀胱経のツボに重なるか、ごく近傍
にあった。また、左足くるぶし側面に見られる2つの入れ墨のうちの1つは
崑崙穴に近い所にあった。
 鍼の理論によれば、皮膚の特定局所、すなわちツボの部分の皮膚を鍼で
破るか、刺激するかすれば器官の機能に変化をもたらし痛みや炎症が軽快
されるとされ、その際に刺激するツボは必ずしも器官に隣接するツボであ
る必要はないとされている。ところで、チロルのミイラはCTスキャンによ
って腰椎の関節炎に罹っていたことが明らかになっているが、ミイラの膀
胱経に沿って見られる入れ墨の位置と、従来からこの疾患の鍼治療に用い
られているツボの位置が一致しているのである。
 これらの発見は、治療を目的とした鍼が行われるようになった時代が、
古代中国における伝統医学の発祥(およそ1,000 B.C.とされる)よりもは
るか昔であった可能性を示すと同時に、有史前における人類間の文化的接
触が非常に遠くまで及んでいたことと考え合わせると、鍼治療の起源が地
埋的に見て東アジアではなくユーラシアであった可能性を示唆していると
考える。

関連新聞記事(情報提供:中田和宏先生(財)東洋医学臨床研究所)

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