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〜 メールマガジン「海の関係者」に連載 〜 毎回、締切に追われたため、一部文体の異なることをお許しください。 <その1> 九州は八代海に「乳之瀬戸」という小さな瀬戸がある。なぜそう呼ぶかというと、二つの岩礁があって、それを「乳」に例えたのだという。ちょっと色っぽい話でもある。 ほとんどの方の知らないところではないかと思うので、もう少し説明を続けたい。鹿児島県の熊本県境に近い阿久根市の西側に長島という島がある。九州と長島との間には「黒之瀬戸」がある。その長島の最北端から、次の島、諸浦島との間にあるのが「乳之瀬戸」である。 ![]() ここに来るのも結構たいへんだ。公共交通機関を乗り継いだ場合、朝、東京を発ったとしても着いたのは夕方といった具合だ。東京から浜松町までは電車で、羽田空港まではモノレールに乗る。一番近い空港は鹿児島空港ではなく、熊本空港だ。空港は山の中にあって熊本市内まではバスを利用しなくてはならない。ちょうどその辺りでお昼となるので、お城の近くで食事をとる。市内電車で熊本駅まで出て、鹿児島本線の特急に乗る。当時は、水俣に近い米ノ津というところから長島行きの船との連絡がよかったので、それを利用して八代海を渡る。そこからバスで少々。その頃にはもう夕焼けの時刻となってしまう。(いまは連絡が悪いので、阿久根から回るしかないかも知れない。)種類の違った交通機関を乗り継ぐ、その数で比べるならば、これほど多くを利用していく場所は少ないのではないだろうか? ![]() |
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<その2> 八代海への海水の流入口はいくつかある。先ずは、長島海峡。前述の長島と天草下島との間の海峡である。「乳之瀬戸」はその入り口付近にある。あとは前述の黒之瀬戸で東シナ海と直接、繋がっている。また、天草上島、下島の間には本渡瀬戸が、さらに天草五橋のところにある柳ノ瀬戸や、三角ノ瀬戸がある。これらは有明海を介して東シナ海と繋がっている。 八代海にはそういった海峡や瀬戸がいくつかあるものの、全体的に見ると、海水の出入りのほとんどは、長島海峡、黒ノ瀬戸を通して行われる。つまり、出入り口が二つの閉鎖性の湾である。また、長島海峡、黒ノ瀬戸は地理的に近いところにあって、潮時差がほぼ同時刻であることとや、断面積の大きさから見て、出入り口が長島海峡一つと見なしてもよいのではないだろうか。 乳之瀬戸の潮流エネルギーは、そういった大胆な仮定に基づいて計算することにした。付近の「牛深」「水俣」の潮汐予報値が正しいものとして、どの程度の予測が出来たのであろうか? (参考図) 「な〜んだ!エッセイと言いながら、自慢話っぽくってイヤだな。」「なぜ、つまらないことをくだくだと書くのだ?」と思われる方もいらっしゃることだろう。 「潮汐」というのは昔の学問で、もう確立されているので、新しいことはこれっぽっちもない、と見るのが普通だろう。現に、潮汐の予報値は実際とぴったり一致することはよく知られているところだ。最近では腕時計に満潮や干潮の時刻が記憶されているものまで売り出されているとか。潮干狩りや磯釣りに大変重宝だ、という話を聞いたことがある。 ところが、ところが・・、「潮汐」現象に伴って流れる「潮流」の予測が未だにほとんど手つかずの状態である。船舶の航行などにもっとも必要であろう潮流の予報値が出せないでいるというのはなぜだろう?そのヒントになれば、と思って、この文章を書き始めた次第である。もう少しだけ、お付き合いを願いたい。 【お詫び】前号で最寄りの空港は鹿児島空港ではなくて熊本空港、と書きましたが、いまは鹿児島空港の方が便利のようです。出水、阿久根方面へは鹿児島空港から直通バスが運行されていて便利だ、ということが分かりました。お詫びして訂正します。 ご指摘いただき、ありがとうございました。 |
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<その3> 潮流の速さは時間とともに変化するのですが、どのように変化するかをみてみることにします。読者の中には「数式なんて見たくないよ。いやーだよ!」とお思いの方 もおられるかも知れません。できるだけ分かりやすく紹介しようと思いますので、よろしくおつきあいのほど・・。 「√(5)」(ルート5 : 本当は √ の中に 5 と書きたいところですが・・) これをメルマガンのテキスト文でどうやって表現しようかと、考えていた訳です。要は、その数を2回掛け合わせると(5)になるということで・・・ 2.2360679 × 2.2360679 = 5 --------- ↑( フ・ジ・サン・ロク・オー・ム・ナ・ク) 確かそう覚えた記憶も・・・ 富士山麓にオウム(真理教)がいなくなって、本当によかったと思う反面、今度は千葉県の松戸や柏といった場所で問題となっていて、困ったものだと思います。(これは雑談です。) 話はもとに戻りますが、潮汐の変化は正弦曲線、つまり sin Θ のカーブをしています。 潮流の変化も sin Θ の形をしている(より正確に言うなら、位相がずれているので cos Θ の形を呈する)とされています。 海上保安庁水路部から出されている「潮汐表」の任意の時刻の流速を求める表には sin Θ に基づいて数値が記載されています。 筆者は、潮流の変化は sin Θ ではなくて、 √(sin Θ) の形を呈しているのでは? と思います。理論的にもそれが正しい、と確信しています。 水路部の方が仮にそのことに気づいていたとしても、諸先輩方がそうとしてきたことを今さら修正することが出来るのか出来ないのか?それは、筆者の全く知るところではありません。第三者だからこそ、勝手なことが言えるのかも知れません。 前号の乳之瀬戸の潮流の変化も sin Θ ではなく、 √(sin Θ) で試算していて、実測の値とほとんど一致することでわかっていただけるものと思います。潮流の予測をより簡易に、また正確にするため、議論も必要となってくることでしょう。 こういったことは、「学会で発表せよ!」というお叱りを受けてしまうかもしれません。でも、あえて、ここに書かせていただいたのは、いろいろな学会の方に同時に議論を深めていただければと思ったからです。 また、一般に過去の学問と思われている「潮汐」についても、そのすぐ隣にはまだまだ未知の分野がある、ということをみなさんにご理解いただければと思います。 たかがメルマガ、されどメルマガ。ということで、海の関係者のみなさまから、忌憚のないご意見や、ご感想をお寄せいただければと思います。 【乳之瀬戸の位置】(鹿児島県出水郡東町薄井) 以下のURL(http://..)をクリックして地図をご覧ください。 http://kokomail.mapfan.com/receive.cgi?MAP=E130.10.28.3N32.13.20.6&ZM=7 |
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<その4> 前号からこのコーナー、少し力が入ってしまっているようで、どうもすいません。ちょっと社会的インパクトの大きな問題について触れているような気がして、ついつい・・・。 では、前回の続きなのですが・・・。 潮流が sin Θ の形ではなく、 √(sin Θ) であるとするとどういった意味合いをもつか、影響があるかについて、今回ご説明しようと思います。 仮にあまり速く航行できない船舶が、流速の速い瀬戸や海峡に差し掛かったとします。そういった場合、よくあることなのですが、転流(潮流の流れが逆向きに変わること)の時刻を待って航行することになるとしましょう。 転流時刻の直前、直後の流速は、最強(一番速い)に比べると、小さな値であることに変わりはありません。sin Θ と √(sin Θ)でも最強時を 1 としていますが、時間的な変化を考えると、どの程度小さいかが両者では全く異なるわけで す。 例えば、転流から最強までの時間がちょうど3時間の場合を見てみましょう。 ---------------------------------------------------------------------------- 転流前後 0分 15分 30分 45分 ・・・・・ 3時間 ---------------------------------------------------------------------------- (sin Θ) 0 0.13 0.26 0.38 ・・・・・ 1 ---------------------------------------------------------------------------- √(sin Θ) 0 0.36 0.51 0.62 ・・・・・ 1 ---------------------------------------------------------------------------- 3時間後の最強を 1 とした時に、それぞれの時刻の流速がいくつに当たるか、ということを示しているのですが・・・ 転流前後15分の流速の値は sin Θ と √(sin Θ)でなんと3倍近くの差が、転流前後30分の値では約2倍の差があることがわかります。 詳しくは、多少重いです(259KB) が「任意時の流速を求める表」で両者を比較してみてください。(表の縦方向Aは、転流から最強までの時間を示しています。) (参考図) 仮に筆者の提案する √(sin Θ) の形が正しいとすれば、(sin Θ)の形で計算している今の表で推算している多くの船は、瀬戸や海峡の流速を小さい側に見積もり違いをしてしまっているということになります。 これは、船舶の安全航行上、とても問題があることではないか、と思います。 早急に「任意時の流速を求める表」の差し替えの検討して欲しいと思います。 たかがメルマガ、されどメルマガ? ということで、もしかすると大変に大きなことを提案したことになるのかも知れません。いま、感じていることを率直に述べさせていただいきました。 |
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<その5> 乳之瀬戸の潮流観測をしていて、大失敗をしたことがある。あるテレビ番組で可愛い子供が「××をしました。ごめんなさい。」というのがあるが、その類かも・・。 乳之瀬戸は結構流速があり、また干満もある。ダイバーが岩場に置いてあった足ひれを1枚流してしまったために、町まで行くんだという。私はある「もの」がどうしても欲しくて、その車に便乗させてもらって行くことにした。 流速計はダイバーが海に沈めた後だったので、われわれがいなくても乳之瀬戸の流速は流速計が測ってくれると信じて、出かけたわけである。 私がどうしても欲しかったのは「醤油」。この辺りの醤油は見事なくらいに甘い。阿久根出身のK氏に後でその話をすると、「あっちの醤油はこくがあってうまいでしょう?」と言われ、その後の言葉が続かなかった。醤油などは、普段、口にして慣れているいるものがいいのかも知れない。私のところは、千葉のK社やY社の醤油であり、それに比べると相当甘いということである。 乳之瀬戸のすぐ側に宿をとっていて、いばらくいなくてはならない。その宿で出されるほとんどすべてのものにこの醤油をかけて食べなくてはならないということで、「チャンスがあったら買いに行こう」と最初に着いた日の夕食を食べ終わってから、そう思っていた。次の日の朝食の「大根おろし」や「生たまご」にもそれをかけなくてはいけなかった。 足ひれと醤油を買って戻ると、何と、流速計が回っていないことに気がつく。つまり、醤油を買いに行っていた2時間ほどのデータが全くとれておらず、「欠測」になってしまったわけだ。 後で聞くと、乳之瀬戸周辺では養殖が非常に盛んで、たまーにであるが、養殖カゴを船が曳いていくことがあり、それが引っかけたのではないかということだ。 その後の観測では、小さな船を流速計の上に停船させて実施したことと、醤油は持参することにした。 |
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<その6> このタイトルで何回か連載をしてきたが「タイトルがそれらしくないのでは?」というご意見もあるようだ。もっともだと思う。 かつて、K庁のS調査所から、乳之瀬戸の潮流エネルギーの賦存量を求めるお手伝いをするように、という話があって、その当時のエピソードやそれに関連して感じていることを思いつくままに書いている。お許し願いたいと思う。 このプロジェクトであるが、地元の方の期待もかなり大きかったようだ。 調査が本格化したころ、地元の方と懇談をするチャンスが一度あった。乳之瀬戸にかかる橋の側、民宿の生け簀で飼っている新鮮な「海の幸」などがテーブルいっぱいに並ぶ。「鯛」はそのなかでもとくに美味しかった。 例の地元産の甘い醤油の食卓ビンは黄色のフタ。私がわざわざ買って持ち込んだ千葉産のK社の醤油は赤いフタで、同じテーブルの上に置かれていた。結果的に、欠測 をしてまで買いに走った醤油のこと(前号参照)。私以外の人はいったいどっちを選ぶんだろう、と興味津々で見守った。 すると・・。な、な、なんと、地元の人は間違いなく黄色いフタの醤油を選んだのだった。 さて、ここのプロジェクトがどうなったかというと、賦存量は約20キロワット利用出来ると分かって、乳之瀬戸に近い鹿児島大学の水産試験場まで海水を送る。その方向で乳之瀬戸の潮流エネルギー利用の計画がほぼ固まった。そのための無利子の融資も関係者の努力によって確保された。 しかし、プロジェクトがいざ動きだそうという時に、寸前になって、その仕事を請ける某N社の社内事情があって、中止をせざるを得ない状況となってしまったのである。そのことは、いまでもとても残念に思っている。 乳之瀬戸で潮流観測を終えて、帰り道に出水市に立ち寄った。いまはどうだか分からないが、駅構内の売店では「揚げたてのじゃこ天(さつま揚げ)」を売っていた。八代海でとれた新鮮な魚をふんだんに使っていて、とても美味しい。やや甘く感じたのは、魚のせいだったのか、それとも醤油のせいだったのだろうか? 出水市は鶴の飛来地としても有名だ。「ツル」というと北海道のタンチョウヅルをどうしても思い浮かべてしまう。出水のツルはナベヅル、マナヅルが多いようだ。私が畑で見かけたあのツルたち、この時期、ロシアの方で元気に過ごしていることだろう。 (完)
(参考)「ツル博物館クレインパークいずみ」 → http://www.city.izumi.kagoshima.jp/izumi5/ 「出水のツル情報」(二つの中学校のツルクラブの生徒と県ツル保護会のHP) → http://www.synapse.ne.jp/%7Enomoto/turu.htm |