法の下の平等
一 平等という思想
そもそも、人間平等という思想は古くギリシャ時代にその起源を求めることができます。しかし、近代憲法において自由と並んで保障されるに至るまでには、長い年月が必要だったのです。
わが国においては、明治維新のときに四民平等とされる(それまでは、武士、農民、工業を営む者、商業を営む者の順に階級が分かれていましたよね)ものの、貴族は特権をもち、男尊女卑も当然のこと、はたまた外国人との差別的取り扱いも憲法に違反しないとされていました。
そんな日本において平等権が当たり前のこととなった背景には、やはり日本国憲法の制定が大きいのです。日本国憲法は数カ所で平等権の大切さをうたっていますが、その最も中核になる条文と言えば、第14条がそうであると言えるでしょう。条文を確認します。
第14条第1項 すべて国民は、法の下に平等であって、人種、
信条、性別、社会的身分又は門地により、政治的、
経済的又は社会的関係において、差別されない。
第2項 華族その他の貴族の制度は、これを認めない。
第3項 栄誉、勲章その他栄典の授与は、いかなる特権も
伴はない。栄典の授与は、現にこれを有し、又は
将来これを受ける者の一代に限り、その効力を
有する。
いかがですか。我々日本国民は、平等権すなわち法的に平等に扱われる権利ないし不合理な差別をされない権利を保障されているのです。
ところで、先の条文の第1項のところで、「法の下に平等」という言葉がありますよね。実はこの言葉の意味については争いがあります。以下で検討してみたいと思います。
ニ 「法の下に」とはいかなる意味か
まず、「法の下に」という言葉の意味を検討したいと思います。
この点、「法の下に」とは、法を執行して適用する行政権・司法権が国民を差別してはならない、という法適用の平等のみを意味する、と考える説があります。
しかし、法の内容自体に不平等があると、それを平等に適用しても意味はありません。
そこで、tanashinは、「法の下に」とは、法適用の平等のみならず、法そのものの内容も平等の原則にしたがって定立されたものであるべきだと考えます。
三 「平等」とはいかなる意味か
次に「平等」の意味について考えたいと思います。
我々がごく普通に平等の意味を考えるとしたら、差別的な扱いを受けないことをいう、ということになりましょうか。
ここでは法律の規定における「平等」について考えていますので、法律の解釈にあった意味が検討されてもよいところです。
ここでは、通説のみ知っておけばよろしいと思います。すなわち、通説は、「平等とは、絶対的・機械的平等ではなく、相対的平等を意味する」と解しています。
相対的平等という言葉は難しいですね。つまり、同一事情・条件の下では均等に取り扱うと言っているのです。
たとえば、税金は皆収入によって違いますよね。でも、同じ500万円という年収がある人同士は同じ税金を払っています。条件が違えばそれに応じて差を設けているのです。これにより平等が達成されると法は考えているわけです。
四 投票価値の平等について
平等については様々な問題があります。ここではその中でも特に重要な投票価値の平等について触れておきたいと思います。
投票価値の平等という言葉、多少分かりにくいと思います。選挙ともなると各選挙区ごとに選挙が行われたりしますよね。各選挙区ごとに選挙権を持つ者の数も違いますし、当選する人の数が違うこともあります。ゆえに、一票の価値が各選挙区ごとに異なってくるのです。
つまり、各投票が選挙の結果に対してもつ影響力の平等について争われているのが投票価値の平等の問題なのです。
まず、投票価値の平等は憲法上保障されているか、という問題についてみてみたいと思います。
これについては憲法上保障されている、ということで問題はありません。法の下の平等の当然の要請であります。
問題は、投票価値の平等が憲法上の原則であるとして、許容される最大格差はどの程度か、ということです。
裁判では、衆議院と参議院とで議論が分かれています。
1. 衆議院の場合
最高裁判決(S51.4.14)では、「投票価値の不平等が、国会において通常考慮しうる諸般の要素を斟酌してもなお、一般的に合理性を有するとはとうてい考えられない程度のまで達しているときで、かつ、人口の変動の状態を考慮して合理的期間内における是正が憲法上要求されていると考えられるのにそれが行われない場合には、違憲になる」と判示しました。
2. 参議院の場合
参議院議員の場合、地域代表的な性格が大きいことから、かなり投票価値の不平等については許容されています。
ただし、最高裁判決(S58.4.28)が5.26対1という格差を合憲としたことには学説からの批判が強いところです。
一応ここまでにしておきます。
以上で、法の下の平等については終わりたいと思います。
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