窃盗罪
1.総説
詐欺罪との違い
他人の意思に反して占有を取得する
強盗罪との違い
暴行脅迫を手段としない

自己の財物であっても他人の占有下にあるときは他人の財物と見なされる。

2.窃盗罪
(1)財物の定義
財物は固体だけでなく液体・気体も含む

電気は財物に含まれるか?
[判例147]
管理可能性説:可動性と管理可能性を有すれば財物にあたる。(大審院はこの説を採る)
問題点・・・基準が曖昧、財物か否かは盗めるか否かの前に判断されるべき。罪刑法定主義に反する。無断感激、無賃乗車、電話の無断使用、債権侵害、情報の不正入手までも窃盗罪になってしまう利益窃盗を不可罰とする現行法の立場を逸脱する。(管理可能性説の論者はこれはのぞこうとしている)
さらに245条で「電気は財物と見なす」といっているということは電気は財物でないことを前提とするといえる。
有体性説:空間の一部をしめて有形的存在を有するもの。具体的には固体、液体、気体。

電気については立法で解決済み
横領や他のエネルギーについてはどうか?まだ問題は解決されていない。

無主物
空気、自然水、海中の魚、他人が所有権を放棄したものなど
・・・財物にはあたらない
他人が無主物先占によって他人が所有権を取得すれば財物となる。
身体・・・財物ではない。しかし本体から分離し、取引可能性が生じれば財物になる。(髪の毛など)
臓器は売買禁止だがだからといって財物にあたらないとするのは妥当ではない。逆に人工臓器など、財物でも人の身体と一体化すれば財物でなくなる。

人工受精卵(胚)は?
人の生命であるから財物ではないと解するのが多数。
この段階の胚は刑法上の保護を受けないことになってしまう。財物ということにしても罪刑法定主義には反しない。
解釈の問題となる。

納棺物
死体、遺骨、遺髪、棺に納めてあるもの
190条
所有権は放棄されていると見なされる。(民法ではそのように考えられていない)
[判例153]
死体からの分離物についても生前と同様
窃盗ということにすると190条と窃盗がかんねんてききょうごうになって、190条の量刑が意味がなくなるから。

禁制品
偽造文書、偽造通貨、麻薬、銃砲刀剣類、わいせつ物
[最高裁]禁制品に付き物の所持という事実上の状態それ自体が財物罪の保護法益・・・窃盗罪、詐欺罪の成立を認めている。

財産的価値のないもの
窃盗罪成立
悪用のおそれ防止といった消極的価値や主観的価値も財産的価値に含まれる。
日銀が消却する紙幣も対象となる。
[判例159]
[判例160]

情報・・・有体物と一体となれば対象となる。
 有体物の価値と情報の価値をあわせて考える。
・会社の情報の持ち出し・・・成立
・持ち出してコピーして返却・・・不法領得の意思はあったので成立
・その場でコピー・・・コピー用紙の窃盗
・自分のノートにメモ・・・不成立
はっきり言って損害は同じだが、刑法上財物にならないといけない。

(2)占有
占有:財物に対する事実的支配・管理の意味。他人のための占有も含まれる。代理占有、占有改定、間接占有のような観念的な占有は含まれない。
かなり観念化している。

事実的支配
占有の事実と占有の意思 両者の相関判断
@人の事実的支配領域内にあるものなら占有の意思は薄くても

公共的場所に放置された財物
[判例162]推認できる状況が継続していること

占有の意思
財物の所在失念

死者の占有
最初から領得の意思があった場合は強盗殺人の成立
殺害後に領得の意思が生じた場合や第三者が殺害した場合は問題となる。
[判例の立場]
殺害後に領得の意思が生じた場合・・・窃盗
第三者が殺害した場合・・・占有離脱物横領

しかし死者には占有がないのでどちらも占有離脱物横領としていいのではないか?

占有の帰属
ざいぶつのせんゆうにふくすうにんがかんよしているばあいにはせんゆうがだれにきぞくしているかによって横領罪が成立するか窃盗罪が成立するかの区別がなされる。
共同占有の場合
領得の意思で単独の占有に写した場合は窃盗罪が成立
複数の占有に上下関係がある場合
占有は上位のものに属する。店員が領得すると窃盗である。
しかし銀行支店長など下位のものに一定の処分権が与えられている場合は占有が認められ横領が成立する余地あり。
委託された封物の中身の占有
委託者に占有は残るので窃盗罪が成立する。

(3)行為
行為は窃取:他人の占有する財物をその占有者の意思に反して自己の占有に移転させる行為をいう。
密やかにおこなわれたものだけでなく、公然とおこなわれたものについても本罪成立

着手時期
他人の財物に対する事実上の支配をなすにつき密接なる行為をなしたとき(結果発生の具体的危険を生じたとき)
他人の住居に侵入(着手していない)
[物色説]タンスに近寄ったとき、懐中電灯で物色したときなどに着手があるとする。

既遂時期
[取得説(判例・通説)]他人の占有を侵害して財物を自己の占有にうつしたとき
財物の代償・搬出の容易さ・他社の支配性などで判断すべき。

(4)保護法益
[本権説]保護法益は所有権。
[占有説]
財物の占有または所持それ自体。少なくとも構成要件のレベルでは占有の法的正当性を問題にしない。

(5)不法領得の意思
権利者を排除して他人のものを自己の所有物をしてその経済的用法に従い処分する意思。

3.不動産侵奪罪
235条の2
 
昭和35年の改正で新設された。
そのまえには窃盗罪にいう財物に含まれるかどうか問題になる。しかし判例は否定してきた。
戦後の混乱の中で不法占拠事件が相次いだので対処するために新設された規定。

客体
他人の占有する他人の不動産
自己物の特則、親族相盗例が適用される。
242条

行為
侵奪:他人の占有を排除して自己または第三者の占有を設定すること。
他人の土地に不法に住宅を建てる、他人の土地に種をまく、など。

罪質
不動産に対する占有を獲得したとき既遂に達し、その後は違法状態が続く状態犯
賃貸人が期限を過ぎても退去しない、などはこの犯罪にはならない。

4.親族相盗例
244条
[政策説]「法は家庭に入らず」という考え方
・・・他の領域では使えない。共犯者は該当しない、二項は親告罪、という事柄はこの説に調和的。
[違法阻却・減少説]家族間での財産占有は共同的
[責任阻却・減少説]
 

親族とは?
親族の特例は民法の定めるところによる。

親族関係の錯誤の場合は?
父親の占有するものを父親の所有であると思って窃取したが実は他人から預かっていたものだったときなど。政策説からは錯誤は問題とならないが違法性減少説からは問題となりうる。

一項が刑の免除(有罪判決の一種)、二項が親告罪となるのは不均衡ではないか?
一項が適用されるより近い親族の方が不利益な扱いを受けることになる。
学説はいろいろあるが解釈論はどれも無理がある。実際には一項で告訴されることはない。

所有者と占有者が異なる場合
@所有者と犯人の間とする説
A占有者と犯人の間にあればよいとする説
B所有者と占有者の双方と犯人の間に必要とする説
判例はA説を採っているように見えるものもあったが最近ではB説