大石清伍長 遺書

なつかしい静(しい)ちやん!

おわかれの時がきました。兄ちやんはいよいよ出げきします。この手紙がとどくころは、沖なはの海に散つてゐます。思ひがけない父、母の死で、幼い静ちやんを一人のこしていくのは、とてもかなしいのですが、ゆるして下さい。

 兄ちやんのかたみとして静ちやんの名であずけてゐたうびん(郵便)通帳とハンコ、これは静ちやんが女学校に上がるときにつかつて下さい。時計と軍刀も送ります。これも木下のおぢさんにたのんで、売つてお金にかへなさい。兄ちやんのかたみなどより、これからの静ちやんの人生のはうが大じなのです。

 もうプロペラがまはつてゐます。さあ、出げきです。では兄ちやんは征きます。泣くなよ静ちやん。がんばれ! 


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