
姫路のホテル営業休止 耐震計算に疑問点
2005/12/01 神戸新聞
耐震強度偽造問題で、ジェイアール西日本デイリーサービスネット(大阪市北区)は30日、姫路市南駅前町のビジネスホテル「ヴィアイン姫路」(11階建て、230室)の耐震強度に疑問があるとして、同日から営業を休止した。これまでの偽造にかかわっていた姉歯(あねは)建築設計事務所(千葉県)が構造計算を手掛け、木村建設(熊本県)が施工していた。姫路市はこれまでの調査で「問題なし」としていたが、デイリーサービスネット社が自主調査で構造計算をやり直したところ、安全性が確認できなかった。同市は「早急に再調査する」としている。
デイリーサービスネット社によると、同ホテルの構造計算書について11月下旬、大阪市内の構造設計会社に再調査を依頼。耐震構造を判定するソフトウエアを使って計算し直すと、一部項目で耐震強度が不足していることが分かった。柱の太さや壁の厚みの数値が偽造された疑いがあり、水平方向の揺れに耐える力に疑問が残った。
ただ、姉歯設計事務所が建設前に使ったソフトウエアとは異なるため、偽造の断定にまでいたっておらず、耐震性にどの程度問題があるのかは不明。判断はできないものの、安全性も確認できず、営業休止を決めた。
同ホテルについて姫路市は、2002年の建築確認時と、一連の偽造問題発覚後の調査でいずれも「問題なし」としていたが、構造計算の再計算はしていなかった。
瀧川吉弘都市局長は「書類上のチェックでは問題点は見つからなかった。今回のケースは想定外」としており、同市は民間会社に委託し構造計算を行うことにしている。
兵庫県建築指導課は「11月21日時点で姫路市から『構造計算書を再チェックしたが、偽造の恐れはない』と聞き、国に報告した。再計算の必要性は想定していなかった」とした。県は30日、同ホテルの件について国に修正報告した。
県内で姉歯設計事務所が関与したホテルは三田市内にもあり、県は再計算を含めた調査を徹底するよう同市に助言したいとしている。
デイリーサービスネット社はJR西日本の子会社で、同設計事務所が関与した「ヴィアイン新大阪ウエスト」(大阪市淀川区)も調査している。
ヴィアイン姫路はJR姫路駅のすぐ南側にあり、2002年10月にオープンした。
お墨付き一転「なぜ」
首都圏で発覚した耐震強度偽造問題が、兵庫県にも飛び火した。30日、姉歯建築設計事務所(千葉県)が設計に関与した姫路市内のホテルで構造計算書の数値が偽造された疑いが浮上し、休業に追い込まれた。一度は姫路市の調査で「問題なし」とされていただけに、ホテル側の幹部は「信じられない」。関係者に戸惑いが広がる中、同ホテルに何度も宿泊した客は「もし地震が起きていたら…」と表情をこわばらせた。
「信じられない。まったく理解できない」
姫路市のビジネスホテル「ヴィアイン姫路」を経営するJR西日本の子会社、ジェイアール西日本デイリーサービスネット(大阪市北区)の吉岡勉開発本部長は、会見で顔をゆがめた。
姉歯建築設計事務所や、下請けとして施工した木村建設(熊本県)への連絡はつかず、姫路市による今後の詳細な調査時期も未定で「いつ再開できるか分からない」という。
ホテルも対応に追われた。JR姫路駅のすぐ南という好立地で、この日も230室に約200人が予約。全員に近隣の宿泊施設を紹介し、宿泊費は同ホテルが負担した。
「お詫(わ)び」と記した紙を張り出したホテル入り口付近では「本当に申し訳ありません」と従業員が頭を下げ、タクシーで客を送り出した。1週間先まで計約800人の予約が入っており、同様の対応を取るという。
会社の同僚7人と宿泊予定だった大阪市の男性(25)は「出張でこれまでに10回以上利用したが、まさかこんな問題が出るとは。宿泊時に大地震が起きていたらと思うと怖い」と話した。
建築行政に限界 姫路市2度チェック漏れ
耐震強度への疑問が浮上したビジネスホテル「ヴィアイン姫路」については、姫路市が建築確認時と一連の偽造問題発覚後に調査していたが、2度とも今回の不審点をチェックできず「問題なし」としていた。現行の建築確認は、建築士の責任の下で『偽りなし』という前提で申請が出ており、記載漏れなどを短期間で審査。同市や兵庫県は「偽造は想定外」としており、建築行政の限界を露呈した格好だ。
同市は2002年、設計を手掛けた平成設計(東京都)から確認申請を受け、設計図や構造図と構造計算書を照らし、柱の寸法などを調べた。
同市がホテルの構造計算を姉歯設計事務所が手がけていたことを知ったのは、県から連絡のあった11月21日。「約200ページの構造計算書の通し番号を調べたが、差し替えられたり、抜け落ちたりした部分はなかった」と話す。
建築確認は性善説に立っており、記載漏れや法令とのずれを短期間でチェック。同市の2度目の調査でも、今回ホテル側が民間会社に依頼した構造計算のやり直しは行っていなかった。
県建築指導課も「構造計算のできるソフトは市レベルではないと思う。今回のような問題に対処するなら、構造計算に万全を期す時間と人がもっと必要」と指摘する。
一方、建築確認が民間に開放され、建築関係職員は減り、経験も不足。人材の確保と育成が課題で、耐震構造に詳しい一級建築士は「官民を問わず、日本の建築士は外観や室内のデザインを専門とする人が多く、構造計算の専門家はごくわずか。耐震構造に社会の関心が低かったことが背景にある」とし、大学教育の見直しや構造計算業務の地位向上を訴える。
【とんび岩のコメント】
テレビに写る業界関係者には、「姉歯という異常者が引き起こした例外的な事件」として処理したい願望がありあり。それを見せられるとよけいに、「姉歯は氷山の一角ではないか?」と思えてくる。