県立3校必修漏れ 生徒のメールで発覚
2006/10/31 朝日新聞


 全国各地で発覚している高校の必修科目の履修漏れが30日、県内の県立高校3校でも見つかった。県内では02年にも県立高59校で履修漏れが発覚していた。記者会見した県教委の担当課長は「前回の教訓が生かされず、遺憾だ」と肩を落とした。履修漏れがあった長田(神戸市長田区)、龍野(たつの市)、相生(相生市)の3校は全校集会を開くなど、対応に追われた。

 県教委の平井敬員高校教育課長らは30日、2回に分けて記者会見し、概要を説明した。

 発覚のきっかけは、27日未明に県立高の生徒から届いた匿名のメールだった。「自分が通っている学校でも日本史の時間に世界史の勉強をしている。無事卒業できるだろうか」と不安を訴えていた。県教委はその日のうちに県立高校全157校に調査を指示。30日までに3校の履修漏れを確認した。

 県教委によると、長田は94〜00年度、龍野は99〜01年度、相生は01年度にも同様の履修漏れが見つかり、県教委が是正を指導していた。だが、長田は03年度から、龍野と相生は06年度から、再び科目の「振り替え」を始めたという。

 各校の調査の締め切りは31日。履修漏れはさらに増える可能性がある。

 理系の3年生216人の未履修が発覚した長田高校は、2、3年で、必修科目の世界史と選択科目の地理、日本史を「社会」の授業としてまとめて実施。同じ教諭が二つの科目を担当し、受験科目に比重を置いて授業時間を割いていた。地理歴史科の2単位分計70時限が未履修という。

 同校は30日午後に全校集会を開き、藤井修校長が生徒約990人を前に「過失のない生徒に不安と動揺を与えて申し訳ない」と謝罪した。生徒からは「今後、どのように補充していくのか」「昨年度の卒業生も同じなのに、私たちだけ補充が必要なのか」などの質問が出たという。

 3年の男子生徒は「週休2日では、世界史も日本史もという現在のカリキュラム自体に問題があると思う。補習があるのは仕方がないが、受験に支障が出ないようにしてほしい」と話した。

 龍野高校では3年生41人が、実際は現代社会の授業を受けているのに、日本史を履修しているかのようなうその時間割りを県教委に提出していた。主に国公立大をめざす文系2クラスの生徒たちで、「センター試験に必要な現代社会をしっかり教えてやりたい」と教師たちが判断したという。

 30日午前11時20分から緊急の全校集会を開き、石原元秀校長が「君たちの受験対策を考えてしたことだが、ルール違反を犯してしまった。申し訳ない」と謝罪した。今後日本史の授業を行う予定だが、単位数をどう確保するかなど、具体的な計画は県教委と相談して決めるという。

 3年の女子生徒は「自分は履修漏れに当てはまらなくて助かったが、センター対策をしてくれるという学校の事情は分かる。これから余分に勉強しなくてはいけない子はかわいそう」と話した。

 相生高校では、理科系選択の3年7組の39人が、日本史Aで一部未履修になっている。観田正信校長によると、日本史Aは1年間で計70時限履修することになっているが、これまでに22時限分しか授業をしていない。代わりに世界史Bを教えていた。世界史と日本史は1人の教諭が教えており、受験科目の世界史に比重を置いていた。

 観田校長は「生徒に不安感を与えることになって申し訳ない。不足する授業時間は多くないので、負担が少ない補習方法を検討したい」と話している。該当するクラスには同日夕にいきさつを説明し、11月1日に全校集会を開いて経過説明と謝罪をする予定。


【とんび岩のコメント】

 県教委は匿名のメール≠ェなかったら、「ほっかぶり」するつもりだったのだろうか。本当に現場の実情を把握出来ていなかったのなら、それはそれで問題だ。

 「匿名のメール」を発信した生徒の高校は、今回履修漏れが発覚した3校に含まれると推測される。3校のうち日本史の時間に世界史を教えていたのは…。

 以下は神戸新聞の関連記事(10月31日分)。

 

 県立3高校で科目未履修 長田、龍野、相生 虚偽の時間割提出 

 全国で相次ぐ高校の必修科目の未履修問題で、兵庫県教委は30日、長田高(神戸市)、龍野高(たつの市)、相生高(相生市)の県立3校で、3年生計296人について、日本史など必修科目の未履修が判明したと発表した。兵庫県では4年前にも同様の問題が発覚したことから、県教委が教員と生徒の時間割を照合するなど「3重チェック」をしてきたが、3校とも県教委に実態と異なる虚偽の時間割を提出していたため、事実を把握できなかった。県内の未履修は、私立海星女子学院高(21人)も含めて計4校になった。

 県教委によると、長田高は、216人が地理歴史科で2科目を学ぶところを世界史の授業で地理を教えるなどし、実際は1科目しか指導していなかった。龍野高は日本史の授業で現代社会を実施し、41人が日本史を未履修。相生高は、日本史の授業で世界史を実施し、39人が日本史を履修していなかった。3校とも過去に同様の未履修が発覚し、龍野、相生高では処分者も出た。

 県教委に提出する教員や生徒の時間割には、学習指導要領に沿った内容で記述。各校とも、虚偽の時間割を作った理由について「受験科目に対応した授業をしたかったため」としているという。

 県教委は未履修問題について、文部科学省から依頼を受け、26日から各校に連絡をとって調査していたが、3校の未履修については、27日に県教委高校教育課に匿名のメールが届いたことなどで判明。県教委は3校について詳しい経緯を調べるとともに、他の県立高についても履修状況の確認を急いでいる。

 

 3重チェック未機能 各校長「自分の責任」

 必修科目の未履修が、長田、龍野、相生の兵庫県立高校3校でも発覚した。県教委は、2002年に同様の問題が発覚した後、時間割などを3重にチェック。「兵庫で未履修はありえない」と自信を見せていたが、3校が虚偽の時間割を提出していたことが明らかになり、幹部はショックを隠しきれない。3校では、校長らが釈明に追われた。

 県教委は、午前11時から兵庫県庁で記者会見。平井敬員・高校教育課長は、3校の校長が「自分の責任」と話していることを明らかにした。「どのレベルで改ざんが行われたのか」「校長は知っていたのか」という報道陣の質問には、「調査中」と繰り返した。

 問題の発覚は匿名のメールがきっかけ。平井課長は「虚偽の時間割の提出は想定外だった」と声を落とした。「刑法犯では」との質問が出ると、「それも含め調べたい」と声を絞り出した。

 一方、3年生216人の未履修が分かった長田高校では、藤井修校長が「虚偽の時間割とは考えていない。授業の運用の中で世界史や日本史を教えていなかったが、夏休みにリポートを提出させるなどしていた」と反論。「02年度に県教委から指摘されなかったので問題ないと考えていたが…。結果的に不適切なものだと分かり、申し訳なく思う」と話した。

 龍野高校では、未履修発覚を受け、全校生徒を集めて事情を説明。石原元秀校長が「受験を考えてのことだが、迷惑をかけておわびします」と生徒に謝罪した。日本史Aが未履修となっている3年生41人は国公立コースの生徒で、石原校長は「センター入試に向けて日本史の時間に現代社会のプリントを配るなどの授業をしていた。校長として認識していたが、受験のためと判断した」と説明した。

 相生高校では、3年生39人が、日本史Aの授業時間が不足していることが判明。觀田(かんだ)正信校長は「現場の教師の判断だったが、親や生徒、世間に迷惑をかけ申し訳ない」と話した。

 

 龍野高校長、4年前のチェック作成関与 未履修問題

 兵庫県立の3高校で必修科目の未履修が判明した問題で、3校のうち龍野高(たつの市)の校長が、4年前に県内で同様の事実が発覚した際、県教委主幹として、再発防止に向けたチェックづくりに携わっていたことが30日、分かった。

 ほかに未履修が判明したのは長田高(神戸市)と相生高(相生市)。龍野高は、石原元秀校長が同様の未履修が60校で発覚した4年前、県教委高校教育課の主幹で、問題の改善に向け、生徒と教員の時間割を照合するなどの「3重チェック」の作成に携わった。

 龍野高での未履修については「学校週5日制の導入で、限られた授業時間で受験に必要な科目を教えなくてはならず、教員も受験をにらんでいろいろ教えたい」と説明。チェックづくりについて「策定には携わったが、(異動で)運用にはほとんどかかわっていない」とし、県教委には未履修について「認識していなかった」と伝えたという。

 県教委は31日を期限に、他の県立高についても確認作業を進めており、未履修の高校が増える可能性もあるという。

 

 長田高の「不正」11年に 大量発覚時は処分対象外

 県立高校3校で必修科目の未履修が発覚した問題で、長田高(神戸市)は、県内で未履修が大量発覚した前後の2年間を除き、合計で11年にもわたって学習指導要領と異なる時間割で教えていたことが30日、分かった。4年前の大量発覚時に処分を免れたために、校内で問題点が受け継がれなかったとみられる。

 県内では2002年1月、多くの県立高校で必修科目の未履修が発覚し、60校の校長が処分された。これを教訓に県教委は、教育課程表に加えて教師用と生徒用の時間割も提出させる「3重チェック」を導入した。

 一方、長田高校では、これに先立つ01年4月に同様の未履修問題が発覚した。過去7年間に及ぶ不正だったが、01年度の授業が始まる直前だったため、時間割を改善しただけで公表されず処分もなかった。また、大量発覚時は改善後で、処分対象から外れていた。

 02年2月、当時の校長が死亡。未履修を生む時間割の問題点が同校で受け継がれることはなく、「うちは大丈夫という誤った認識を生んだ」(高校指導課)という。今年赴任した中西敏昭教頭は「数日前まで、過去に問題があったことは知らなかった」と話す。

 今回発覚した3校のうち、長田高校はもっとも早い03年度から未履修時間割を“復活”させており、06年度までで計11年にわたって不正が受け継がれていた。

 

 “裏時間割”現場で公然 「実際は違う」と生徒に

 4年前の教訓は生かされなかった。30日明らかになった兵庫県立3高校の未履修問題は、県教委の認識の甘さを浮き彫りにした。他府県で未履修が伝えられるたび厳しいチェック体制を誇っていた担当者は、「虚偽の時間割を出されるとは想定していなかった」と青ざめた。しかし、高校現場を経験した県教委幹部は少なくないことからも、現場で公然と存在した“裏時間割”などを「教委がまったく分からないはずはない」との声もある。

 必修科目の未履修は2002年、60校もの県立学校に広がった。高校教育課は、必修科目の単位数などを書き込んだ「実施教育課程」に加え、教師用と生徒用の時間割の提出を義務づけた。毎年4月、県内157校が出す3種類の書類を8人が10日がかりで照合。今回、富山県立高の問題が報道された後も再点検し、25日、「兵庫県はゼロ」と発表した。

 だが県教委によると、長田、相生高は、県教委に提出した時間割を生徒に渡す際、「実際は違う」と口頭で説明していたという。龍野高には提出分とは違う裏の時間割があった。「必修科目と単位がきちんと入っているか点検したが、実際には別の授業をやっていた」。担当者はうなだれた。

 しかし、02年当時の元県立高校長は首をかしげる。「あれだけ多くの学校に広がった問題なのに、県教委の姿勢には疑問があった。提出する教育課程や時間割は表面的にいくらでも整えられる。それだけ調べても実態は分からない」

 県教委は年に1回、各校への訪問指導をしているが、「生徒の時間割を抜き打ちで調べたり、聞き取り調査をすることはなかった」と指摘する。

 30日の県教委会見でも迷走が目立った。高校教育課の担当者が「教育課程に詳しい方ばかりではないので」と校長をかばう発言をした後、同課長が「教育課程は指導要領をもとにつくっていることは、教員であれば当然知っている」と慌てて取り消した。

 今年8月、プールの排水溝のふたの調査で、当初2カ所としていた「不備」はその後、101カ所に膨らんだ。県教委の調査の甘さは今回に限らない。未履修発覚を受け、県教委幹部は「こうした問題を生む土壌を考えなければならない」と表情をこわばらせた。

 

 声詰まらせ「全部私の責任」 校長、涙の謝罪

 必修科目の未履修が発覚した長田、龍野、相生の兵庫県立高校3校では、緊急集会を開くなどの対応に追われた。

 長田高校では、午後に全校集会を開き、藤井修校長が説明、「全部私の責任です」と泣きながら生徒に謝罪。生徒からも泣き声が漏れた。集会後、藤井校長は「世界史の未履修は、社会の科目の中で弾力的に運用した結果。これまで県教委の指導はなく、今になって虚偽と言われても…」と困惑の表情を浮かべた。

 3年生男子生徒(18)は「世界史の教科書は買ったが、使ったことはない。大学受験後に補習をするというが、もし不合格になったら、合格者と一緒の授業など受けたくない」と複雑な気持ちをのぞかせた。

 また、同高の元教諭は「理系コースの世界史未履修は、ゆとり教育で、土曜日が月に2回休みになったころに始まったはず。職員室でも、授業時間が減り、受験に不要な教科を削るしかないと話し合った」と話した。

 龍野高校では、石原元秀校長が生徒に謝罪。未履修分の単位取得には、約35時間分の授業が必要といい、石原校長は「管理の行き届かなかった面があった。責任を感じている」と語った。

 相生高校では、授業終了後、3年生の各クラスで担任教諭らが事情を説明。未履修の生徒からは、「どれくらいの補習時間が必要なのか」などの質問が相次いだという。下校中の3年の男子生徒は「入試の難しさは変わらないのに、『ゆとり教育』で授業時間は減っている。補習はもちろん受けるけど…」とため息。

 觀田(かんだ)正信校長は「すべて私の責任。当初の時間割通りの授業内容に改め、補習も検討したい」と話した。


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