西はりま幻妖記(3) 夜泣き石(宍粟)  
2016/08/17 神戸新聞 

 宍粟市山崎町上寺の妙勝寺には、絶世の美女とうたわれた娘の悲しい伝説がある。

 山裾にある門をくぐると、境内の端に石碑が立つ。かつて「夜泣き石」と呼ばれた。ここに安置されるまで、夜な夜な泣き声を上げ続けたというのだ。

 江戸末期、赤穂藩士の娘が若者と恋仲になった。だが、親に反対され、引き離されてしまう。預けられた山崎藩で、重臣の息子から思いを寄せれるが、娘は好意を拒み続けた。

 そしてある夜。城外の石橋で斬り殺される。以来、石から夜ごと、切ない泣き声が響き始めた。「赤穂に帰りたい、赤穂に帰りたい」と。

 石橋は架け替えられ、元の石材は払い下げられたが、夜泣きはやまず、周辺で不幸が続いた、という。

 寺には明治中ごろ、本堂建て替え用の礎石として引き取られた。ここでも、原因不明の出火で境内にあった資材が全焼した。石材の一つに「夜泣霊碑」と彫り、手厚く供養すると、ようやく収まった。

 東日本大震災の被災地で慰霊の読経を続ける現住職の大岩清人さん(64)は言う。

 「会いたい人がいるとき、死者はこちらの世界を訪ねるのでしょう。娘も同じだったはず」

 夕立の雷鳴が近づく中、石碑を見つめる。わずかに反り、石橋の面影をとどめる。

 ざわめきのような稲光が、刻まれた文字の陰影を濃くした。

(文・古根川淳也、撮影・山崎竜)



【とんび岩のコメント】


 どこにでもありそうな、いわゆる「くさい」話だが、シリーズ記事などで敢えて採録。

 「夜泣碑」と彫ったということは、このお寺(妙勝寺)は浄土真宗ではないな(浄土真宗では霊を信じないから)。真言宗かな(?)、と思いながらGoogleで調べたら日蓮宗だった。
 



『新聞(西播磨)』に戻る