西はりま幻妖記(6) 神域の島(赤穂)  
2016/08/20 神戸新聞 

 そこは古来より神域とされ、人々の立ち入りを拒んできた。

 「異界」と呼ぶにふさわしい。

 赤穂市の坂越湾に浮かぶ生島(いきしま)。周囲約1.6キロの小島は、丸ごと国の天然記念物となっている。

 聖徳太子の側近、秦河勝が畿内から流れ着き、ここで葬られたといわれる。

 許しを得て足を踏み入れた。眼前に不気味な原始林が広がる。静寂に包まれ、セミの鳴き声も漁船のエンジン音も消えた。

 江戸時代、この島に入った男たちは、怒りに触れた。

 廻船(かいせん)を造る木材を切り出した。完成した船で出港すると、程なくかじが利かなくなった。原因を探したが、どこにも異常は見当たらない。

 命からがら港に戻った船乗りたちは、「河勝のたたり」と恐れた。かじを神社に奉納し、それ以来、島の木を使うことはなくなった、という。

 地元の古老は言う。「島はまちのシンボル。でも近づくことはほとんどない。戒めは親から子へ引き継いできた」

 近年、県外から来る水上バイカーが、神域を知らずに上陸することがある。

 奉納したかじが残る大避神社の生浪島(いなみじま)堯宮司(72)は案じる。「再び災いが降りかからなければいいが」

 いまだ息づく未知なるものの存在。

 「異界」への入口は、あなたのそばにもあるかもしれない。           =おわり

(文・西竹唯太焉A写真・山崎竜)



【とんび岩のコメント】


 このシリーズが始まったときは、お盆の季節にあわせて、怪談話の舞台を紹介するのだろうと思った。

 最終回の結びが「生島」だったということは、私の期待は最初から少しズレていたのだろう。

 諸行無常。地球温暖化の影響で、「生島」では暖地の蔓植物ムベが異常繁殖して天然記念物の照葉樹林の生育を妨げているということで、250人のボランティアが入って伐採したこともあった(2002年)。

 親から子へ引き継がれてきた戒めや伝統の多くは、昔の人々が必要に応じて考え出したもの。私的には、その裏にある自然科学の摂理の方をもっと知りたいと思う。

 



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