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刑法 定義集4/4

参考文献 大谷各論新版 前田各論第2版 大塚各論改訂増補版


第2編 社会的法益

第1章 公衆の平穏・安全

〔騒乱の罪〕

保護法益 公衆の平穏 大谷359

多衆で集合して 集合とは、時とところを同じくすること。多衆とは、その集団による暴行・脅迫が一地方の公共の平穏を害する程度の多数人の集団

暴行・脅迫 一地方の平穏を害する程度の不法な有形力の行使・害悪の告知 大谷361

共同意思 集団として共同して暴行・脅迫を加える意思 大谷362

 

〔放火および失火の罪〕

保護法益 公衆(不特定または多数人)の生命・身体・財産の安全 大谷370

放火して 目的物の焼損を惹起せしめる行為 大谷371

焼損(独立燃焼説) 火が放火の媒介物を離れ、目的物に燃え移り、独立して燃焼する状態に達すること

(効用喪失説)火力が目的物の重要な部分を失い、その本来の効用を喪失したこと

(毀棄説)火力によって、目的物が毀棄罪にいう損壊の程度に達したこと 大谷372

(燃え上がり説)目的物の主要な部分が燃焼を開始したこと

現住性 犯人以外の者が起臥寝食の場所として日常使用していること 大谷375

現在性 放火行為の時に、その内部に他人が現実にいること 大谷377

一体性の判断基準 建造物の外観・構造・物理的接続性、機能的一体性、延焼の可能性などの諸事情を総合して、社会通念上一個の建造物と認められるかどうかの見地から判断すべき(最判平元.7.14)大谷377

公共の危険発生の認識 公共の危険発生について予見したが、延焼を認容しなかったという心理状態

延焼 行為者が予期しなかった物に燃え移って、これを焼損すること 大谷385

 

〔出水・水利に関する罪〕

〔往来を妨害する罪〕

保護法益 道路、鉄道、船舶の交通の安全 大谷399

−往来妨害罪(124)−

陸路 公衆の通行の用に供すべき陸上の通路(道路)

水路 船などの航行に用いられる河川、運河、港口

 河川・湖沼の上にかけられた橋、陸橋、桟橋

損壊 通路の全部または一部を物理的に毀損すること

閉塞 障害物を置いて通路を遮断すること

往来の妨害を生じさせた 通行を不可能または困難にする状態を生じさせること(具体的危険犯)

−往来危険罪(125)−

鉄道 線路のみならず汽車の運行に直接必要な一切の施設 大谷403

標識 汽車・電車の運行に必要な信号機その他の表示物

損壊 物理的に破壊すること

その他の方法 汽車・電車の往来の危険を生じさせる一切の行為(例:無人電車を暴走させること 三鷹事件★1)

灯台 艦船の航行に必要な燈火による陸上の標識 大谷404

浮標 船舶の航行上の安全を示す水上の表示物、つまり「ブイ」

損壊 物理的に損壊すること

往来の危険を生じさせること 脱線、転覆、衝突もしくは転覆、沈没等の災害に遭遇するおそれある状態を生じさせること(具体的危険犯) 大谷404

−汽車等転覆・破壊罪(126条1・2項)−

現に人がいる汽車・電車・艦船 実行の着手時から沈没などの結果発生時までの間において、そのいづれかの時点に、汽車・電車・艦船に、人が現在していれば足りる(大塚・大谷・前田)大谷405

転覆 汽車・電車・艦船の転倒、横転、転落(脱線は含まない)

破壊 汽車・電車・艦船の実質を害して、その交通機関としての用法の全部または一部を不能にする程度に損壊(ガラス窓の破壊などは含まない)すること(判例・通説)大谷406

沈没 船体の全部が水中に没することを要せず、枢要部分が没すれば足りる(座礁は当らず、破壊になる)

−汽車等転覆等致死罪(126条3項)−

よって人を死亡させた 人の現在する汽車・電車・艦船の転覆・破壊・沈没の結果として人を死に致したこと(結果的加重犯) 大谷407

 車船内の人に限らず、周囲にいる人をも含む(歩行者その他汽車等の付近にいた人も含む)大谷408 ★4

−往来危険による汽車等転覆破壊罪(127)−

汽車・電車・艦船 汽車等に人が現在することを要しない(大塚・大谷409)★2

前条の例による 文理上当然に126条3項の適用がある(通説・判例)★3

 

第2章 公衆の健康

〔飲料水に関する罪〕

〔あへん煙に関する罪〕

 

第3章 公衆の信用

〔通貨偽造の罪〕

保護法益 通貨に対する公衆の信用(二次的に国の通貨発行権(通貨高権)もあるとする見解もある)大谷424

−通貨偽造罪(148条1項)−

通用する貨幣・紙幣・銀行券 法律によって強制通用力を与えられている貨幣・紙幣・銀行券 大谷426

偽造 通過の製造・発行権を有しない者が真貨に類似した外観のものを作成すること(抽象的危険犯) 大谷426

変造 通過の製造、発行権を有しないものが真貨に加工して真貨に類似するものを作成すること

行使の目的 偽造・変造の通貨を真貨として流通に置く目的 大谷427

−偽造通貨行使等罪(148条2項)−

偽貨 偽造または変造された貨幣、紙幣または銀行券 大谷428

行使 偽貨を真正な通貨として流通に置くこと

流通に置く 偽貨を自己以外の者の占有に移転し、一般人が偽貨を真貨と誤信しうる状態に置くこと(行使の相手方は自然人であることが必要) 大谷428

交付 偽貨であることの情を告げて相手方に引き渡すこと 大谷429

輸入 偽貨を国外から国内に搬入すること 大谷429

−外国通貨偽造罪・同行使罪(149)−

日本国内に流通している 事実上わが国において流通しているということ 大谷431

外国の貨幣、紙幣または銀行券 外国の通貨発行権に基づいて発行された通貨 大谷431

−偽造通貨等収得罪(151)−

行使の目的をもって収得 行使の目的をもって、自己の所持に移す一切の行為 大谷432

−偽造通貨収得後知情行使罪(152)−

減軽根拠 一般的に見て適法行為の期待可能性が低いという責任の減少 大谷433

−通貨偽造等準備罪(153)−

器械 偽造・変造の用に供しうる一切の器械類 大谷434

原料 地金、用紙、インクなどをさす

準備 器械、原料などを用意し偽造、変造を容易にすること行為 大谷435

偽造または変造の用に供する目的 行為者自身の偽造・変造の用に供する目的(予備としての準備)であると、あるいは他人の偽造・変造の用に供する目的(幇助としての準備)であるとを問わないが、偽貨を行使する・させる目的が必要 大谷435

 

〔有価証券偽造の罪〕

保護法益 有価証券に対する公共の信用

有価証券 財産上の権利が証券に表彰されており、権利の行使処分のためにその証券の占有を必要とするもの 大谷486

−有価証券偽造罪(162条1項)−

公債証書 国または地方公共団体が負担する債務(国債、地方債)を証明するため国または地方公共団体が発行した証券 大谷486

官庁の証券 官庁の名義で発行される有価証券(財務省証券、郵便為替証券など) 大谷487

会社の株券 株式会社の発行した株主たる地位を表示する証券

その他の有価証券 商法上有価証券とされる証券のほか、鉄道乗車券、宝くじ、勝ち馬投票券、競輪の車券、クーポン券、商品券、入場券など(契約証書、郵便貯金通帳、無記名預金証書、荷物預り証、下足札、ゴルフ入会保証金預証は×、印紙、郵便切手も×で特別法による) 大谷487

テレホンカードの有価証券性 テレホンカードの磁気情報部分並びにその券面上の記載および外観を一体としてみれば、電話の役務の提供を受ける財産上の権利がその証券上に表示されていると認められ、かつ、これをカード式公衆電話に挿入することにより使用するものであるから、有価証券にあたる(判例)大谷489

偽造 作成権限のない者が、他人の名義を冒用して有価証券を作成すること 大谷489

変造 権限を有しない者が、真正に成立した他人名義の有価証券の非本質的部分に不正に変更を加えること 大谷490

行使の目的 真正の有価証券として使用する目的(流通させる目的不要) 大谷492、大塚414

−有価証券虚偽記入罪(162条2項)−

虚偽の記入 (判例)付属的証券行為に関して、有価証券に真実に反する事項を記載する一切の行為(付属的証券行為の内容虚偽であれば、権限の有無を問わず虚偽記入)大谷493

(通説)作成権限を有する者が有価証券に内容虚偽の記載をすること(作成権限があり内容虚偽であれば、基本的証券行為か付属的証券行為かを問わず虚偽記入)

−偽造有価証券行使等罪(163)−

行使 偽造有価証券を真正なものとして、また虚偽記入の有価証券を真実を記載したもののごとく装って使用すること(一般人の認識しうる状態に置くこと) 大谷495

交付 情を知らない他人に偽造・変造・虚偽記入の有価証券であることの情を告げて、または情を知っている他人にその占有を移転すること 大谷495

輸入 偽造等の有価証券を国外から国内に搬入すること 大谷495・429

 

〔文書偽造の罪〕

保護法益 文書に対する公衆の信用 大谷436

文書 (1)文字またはこれに代わるべき可視的符号を用い、(2)ある程度永続すべき状態において、(3)物体上に記載された意思または観念の表示で、(4)その表示の内容が法律上または社会生活上重要な事項に関する証拠となりうるもの 大塚421、大谷437

狭義の文書 「文書」のうち、文字その他の発音的符号を用いたもの

図画 「文書」のうち、可視的な象形的符号を用いたもの

名義人 文書に表示された意思または観念の主体(大谷439・445)文書の記載内容から理解されるその意識内容の主体(大塚426)

作成者 現実に文書の内容を表示した者 大塚426

観念説 文書の記載をさせた意思の主体 大塚426・大谷445

事実説 実際に文書を記載した者 大塚426

真正文書 名義人と作成者が一致している文書 大塚426

不真正文書(偽造文書) 名義人と作成者が一致していない文書 大塚426、前田420

虚偽文書 真正文書の内容が真実に反するもの 大塚426

文書の確定性 表示された意思は確実的でなければならないということ(草案・草稿は文書でない)大谷440

文書の原本性 文書は代替を許さない唯一のものでなければならないということ 大谷440

認証文言 写しまたは謄本である旨の文言(認証文言があれば原本的性格を有する) 大谷440

写真コピー 原本と同一の意識内容を保有し、証明文書として原本と同様の社会的機能と信用性を有する限り、公文書偽造罪の客体になる(判例)

有形偽造 作成権限のない者が、他人名義の文書を作成すること 大塚429

無形偽造 作成権限のある者が、虚偽の(真実に反した)内容の文書を作成すること 大塚429

形式主義 有形偽造の処罰を原則とする立場(作成名義の真正さを保護)大谷444

実質主義 無形偽造の処罰を原則とする立場(文書内容の真実性を保護)

偽造 作成権限のない者が他人の名義を冒用して文書を新たに作成すること、または名義人と作成者の人格との間に齟齬を生じさせること 大谷444、前田425

変造 名義人でない者が、権限なしに、既に成立している真正文書の非本質的部分に改ざんを加えること 大谷446

虚偽文書の作成 文書の作成権限を有する者が真実に反する内容の文書を作成すること 大谷447

行使 偽造・変造または虚偽作成にかかる文書を、真正文書もしくは内容の真実な文書として、他人に認識させまたは認識しうる状態に置くこと 大谷448

行使の目的 他人をして偽造文書・虚偽文書を真正・真実な文書と誤信させようとする目的 大谷451

−公文書偽造・変造罪(155)−

公文書 公務所または公務員が、その名義を持って権限内において所定の形式にした勝手作成すべき文書もしくは図画 大谷454

−虚偽公文書作成罪(156)−

虚偽公文書の作成 職務上文書を作成すべき公務員が、行使の目的を持ってその文書に虚偽の記載をすること 大谷458

虚偽公文書の変造 作成権限のある公務員が、その権限を濫用して既存の公文書に不正の変更を加えてその内容を虚偽のものにすること 大谷460

−公正証書原本・免状等不実記載罪(157)−

権利義務に関する 財産上のものばかりでなく身分上のものをも含む 大谷461

公正証書 公務員がその職務上作成する文書で、権利義務の得喪・変更に関する事実を公的に証明する効力を有する文書(登記簿・土地台帳・戸籍簿・住民票は○、自動車運転免許台帳・各種課税台帳は×)

虚偽の申立 真実に反することを申立てること 大谷463

不実の記録 記載事項の重要な点に関して、存在しない事実を存在するものとし、存在する事実を存在しないものとして記載すること 大谷463

免状 特定人に対して一定の行為をする権利を付与するために発行する公務所または公務員の証明書(医師免許証・運転免許証は○、外国人登録証明書は×) 大谷464

鑑札 公務所の許可・登録の存在を証明するもので、交付を受けた者がその備え付け、携帯を必要とするもの(古物商の許可証・犬の鑑札は○)大谷464

旅券 旅券法に定める外国渡航の許可証 大谷465

−偽造公文書・虚偽公文書行使罪(158)−

行使 偽造・変造または虚偽作成にかかる文書を、真正文書もしくは内容の真実な文書として、他人に認識させまたは認識しうる状態に置くこと 大谷448

供用 公正証書の原本たるべき電磁的記録を公務所に備えて公証をなしうる状態に置くこと 大谷465

不実記載公正証書原本行使 一般公衆が閲覧できる状態に置くこと 大谷465

−私文書偽造罪(159)−

他人の 他人の作成名義にかかる 大谷467

権利・義務に関する文書 権利または義務の発生・存続・変更・消滅の法律効果を生じさせることを目的とする意思表示を内容とする文書

事実証明に関する文書 (判例)実社会生活に交渉を有する事項を証明するに足りるもの

(学説)法律上何らかの意味を有する社会生活上の利害関係のある事実の証明に関する文書 大谷467

−虚偽診断書等作成罪(160)−

診断書 医師が自ら行った診察の結果に関する判断を行い、人の健康上の状態を証明するために作成する文書 大谷475

検案書 医師が死体について死因、死期、死所などに関する事実を医学的に確認した結果を記載した文書

死亡証書 当該の者を生前から診察していた医師が、その患者について死亡の事実を医学的に確認した結果を記載する文書 大谷475

虚偽の記載 公務所に提出する目的をもって、みずからの医学的判断に反しまたは真実に反する事項を記載すること 大谷476

 

第4章 風俗

〔わいせつおよび重婚の罪〕

保護法益 健全な性的風俗(性秩序・一夫一婦制) 大谷506

−公然わいせつ罪(174)−

公然 不特定または多数人が認識できる状態 大谷507

わいせつな行為 その行為者またはその他の者の性欲を刺激興奮又は満足させる動作であって、普通人の正常な性的羞恥心を害し善良な性的同義観念に反するもの 大谷508

−わいせつ物頒布罪(175)−

わいせつ いたずらに性欲を興奮または刺激させ、かつ普通人の正常な性的羞恥心を害し、善良な性的道義観念に反するもの(判例)大谷510

わいせつ性の判断基準 大谷512、前田456

相対的わいせつ概念 文書等の販売・広告等の方法、対象とする読者層との関連で判断すべきとするもの

主観的わいせつ概念 著述・出版の意図との関連で判断すべきとするもの

利益衡量論 わいせつ物により侵害される法益と、科学・芸術作品のもたらす利益とを比較して判断すべきであるとするもの

絶対的(部分的)わいせつ概念 作品中にわいせつ性を認めうる部分がある以上はわいせつ物であるとする(最判昭32.3.13)

全体的考察方法 部分的に露骨な性病者があっても作品全体から判断してわいせつ性を否定すべき場合があるとする(最判昭44.10.15)

全体的考察方法(原判例) 性に関する露骨で詳細な描写叙述の程度・手法、右描写叙述の文書全体に占める比重、文書に表現された思想等と右描写叙述との関連性、文書の構成や展開、さらには芸術性・思想性などによる性的刺激の緩和の程度の観点から文書を全体として見て主として読者の好色的興味に訴えるものといえるのか否かを判断すべき(最判昭55.11.28)

文書 発音的符号によって表示されるもの(小説等)

図画 象形的方法によって表示されるもの(映画、絵画、写真等)

頒布 不特定または多数の人に無償で交付すること 大谷513

販売 不特定または多数人に有償で交付すること

公然陳列 不特定または多数人が認識できる状態に置くこと

販売目的の所持 販売の目的をもって、わいせつ物を自己の事実上の支配下に置くこと

−重婚罪(184)−

保護法益 公衆の健全の性秩序すなわち一夫一婦制の保持 大谷506・516

重婚 配偶者のある者が婚姻を解消(離婚)しないで重ねて婚姻をすること 大谷516

配偶者のある者 法律上の婚姻関係にある者(通説)

相手方となって婚姻した者 相手方が配偶者のある者であることを知りながら、これと婚姻した者

重ねて婚姻した 配偶者のある者との婚姻届をすること

 

〔賭博および富くじに関する罪〕

保護法益 健全な経済的風俗(国民の健全な経済的生活の風習〔勤労によって生計を維持するという経済・勤労生活の風習〕を堕落させることを防ぎ、あわせて副次的な犯罪(窃盗・強盗)を防止する 大谷517、大塚508

−賭博罪(185)−

賭博 偶然の勝敗に関し、財物をもって博戯または賭事をすること 大谷518

博戯(バクギ) 行為者自身または代理人の動作の結果によって勝敗を決めること(賭けマージャンなど)

賭事(トジ) 行為者または代理人の動作と関係のない事情によって勝敗を決めること(野球賭博など)

一時の娯楽に供する物 関係者が即時娯楽のために費消する物(飲食物・タバコなど) 大谷520

−常習賭博罪(186条1項)−

賭博の常習者 賭博行為を反復・累行して行う習癖を有する者 大谷521

−賭博場開帳図利罪・博徒結合図利罪(186条2項)−

賭博場を開帳し みずから主催者となって、その支配下において賭博をさせる場所を開設すること 大谷524

利益を図る目的 賭博者から寺銭、入場料または手数料などの名目で、開帳の対価として財産的利益を得ようとする意欲 大谷524

博徒 常習犯または職業的賭博者であって、親分・子分の関係で団結する者

結合して 犯人みずからが中心となって、博徒との間に親分・子分の関係を結び、縄張り内で賭博を行う便宜をこれに提供すること 大谷525

 

〔礼拝所および墳墓に関する罪〕

保護法益 現に存在している健全な宗教的風俗・感情

−死体損壊等・遺棄罪(190)−

死体 死亡した人の身体(死胎、臓器、金歯は○。義歯は×)大谷529

損壊 物理的な破壊のみをいう(屍姦はあたらない) 大谷530

遺棄 風俗上の埋葬と認められない方法で死体を放棄すること(不作為も含む)

不作為による死体遺棄 法令、契約、慣習その他条理により、法律上死体の埋葬義務ある者が、死体を放置したとき 大谷530

領得 不法に死体、遺骨、遺髪または館内収納物の占有を取得すること 大谷531

第3編 国家的法益

第1章 国家の存立

〔内乱に関する罪〕

保護法益 国家の存立(憲法の定める統治の基本秩序)

統治の基本秩序を壊乱することを目的 日本国の政治的基本組織を不法に変革・破壊する目的 大谷538

暴動 多数の者が結合し、基本秩序の壊乱の目的に相当する規模の暴行・脅迫を行うこと 大谷539

暴行・脅迫 社会の平穏を害する程度の暴行・脅迫(通説)

 

〔外患に関する罪〕

〔国交に関する罪〕

 

第2章 国家の作用

公務員 国または地方公共団体の職員その他法令により公務に従事する議員、委員その他の職員(7条1項)大谷552

法令により その資格が法令に根拠を有するということ

公務 国または地方公共団体の事務

公務所 官公庁その他公務員が職務を行う所(7条2項)

 

〔公務の執行を妨害する罪〕

保護法益 公務(国または地方公共団体)の作用〔公務員の職務行為の円滑な実施〕大谷555・557

−公務執行妨害罪(95条1項)−

職務 公務の全て(判例・通説)権力的ないし非現業的公務に限る(団藤・前田484)

執行するに当り 職務を執行する際にという意味(本来の職務と場所的・時間的に接着しており、実質的に見て職務との一体性が認められることが必要)

職務の適法性の要件 (1)公務員の抽象的職務権限に属し、(2)具体的職務権限を有し、(3)その職務の執行を有効にする法律上の重要な要件・方式を履践していること 大谷559

適法性の判断基準 (主観説)公務員がその職務の執行と信じてこれを行ったか

(客観説)裁判所が法令の定める要件に従いながら客観的に定めるべきとし、適法性は事後的・客観的な立場から裁判の時点を基準として判断すべき(純客観説)行為時を基準として判断すべき(行為時標準説)

(折衷説)一般人の見解を基準として定めるべき

暴行・脅迫 公務員に向けられた(補助者に対しても○)、間接的に公務員の身体に物理的に影響を与える(物に対しても○)、積極的な(スクラムを組むは×)暴行・脅迫で、公務員の職務の執行を妨害しうる程度のもの(抽象的危険犯) 大塚551、大谷563

−職務強要罪(95条2項)−

保護法益 広く公務員の職務行為の自由を保護することによって公務の公正かつ円滑な執行を保護する

ある処分をさせるため 一定の作為を強要する目的

ある処分をさせないため 一定の不作為の処分を強要する目的

職を辞させるため 当該公務員をしてみずから退職させる目的

−封印破棄罪(96)−

保護法益 封印・差押の表示によって実現される強制執行の適正かつ円滑な実施 大谷568

封印 物の任意の処分を禁止するために、公務員がその動産・不動産に施した封緘その他これに準ずるもの 大谷568

差押の表示 公務員が、職務上自己の保管に移すべき物に対し占有を取得する強制処分をするに当たり、占有取得を明示するために施す封印以外の表示 大谷568

損壊 封印または差押の表示を物理的に毀損、破壊または除去して、その事実上の効力を滅却すること 大谷569

その他の方法で無効にした 物理的方法で無効とせずに、その事実上の効力を滅却すること

−強制執行妨害罪(96条の2)−

保護法益 強制執行の適正な運用とともに債権者の保護

強制執行を免れる目的 強制執行をしてもその効果があがらないようにする目的 大谷571

隠匿 財産の発見を不能又は著しく困難にすること 大谷573

損壊 財産を破壊し、またはその価値を減少させ、もしくは滅失させること

仮装譲渡 真実譲渡する意思がないのに相手方と通謀して表面だけ譲渡したように見せかけ、有償・無償で財産の所有名義を変更すること

仮装の債務を負担 存在しない債務を負担したように装うこと

−競売等妨害罪(96条の3第1項)−

保護法益 国・地方公共団体が実施する競売・入札の公正 大谷573

偽計または威力を用いて 人の判断を誤らせる術策を用い、または人の自由意思を抑圧するような力を加えること 大谷574

公正を害すべき行為をした 公の競売・入札に不当な影響を及ぼす行為(抽象的危険犯)

−談合罪(96条の3第2項)−

公正な価格を害する目的 競売・入札において公正な自由競争によって形成されるであろう落札価格(通説)を引き下げ、又は引き上げる目的 大谷575

不正な利益を得る目的 談合によって得る金銭その他の経済的利益を得る目的

談合 競売・入札の競争に加わる者が通謀して、特定の者を競落者・落札者とするために、一定の価格以下・以上に入札または付け値しないことについての協定(抽象的危険犯)大谷577

 

〔逃走の罪〕

保護法益 国の拘禁作用

−逃走罪(97)−

裁判の執行により拘禁された 裁判の執行により、現に監獄に拘禁されていること 大谷578

既決の者 刑の言渡が確定し、それによって拘禁されている者

未決の者 刑事手続によって拘禁されている者(被告人・被疑者として勾留状によって拘禁されている者)

逃走 被拘禁者が拘禁状態から離脱する(看守者の実力的支配を脱する)こと(状態犯) 大谷579

−加重逃走罪(98)−

勾引状の執行を受けた者 広く一定の場所に拘禁することを許す令状(勾留状・収監状・逮捕状・勾引状・引致状)の執行を受けた者(現行犯逮捕、緊急逮捕で逮捕状が発せられてない場合は含まない) 大谷580

拘禁場または拘束のための器具を損壊し 「監獄、留置場その他拘禁の為に使用する場所」または「手錠など身体の自由を拘束するために用いる器具」を「物理的に毀損して」 大谷580

暴行・脅迫 逃走の手段として、看守者または看守者に協力する者に加えられる、不法な有形力の行使・害悪の告知

二人以上通謀して 二人以上の逃走罪の主体となりうる者が、逃走するため意思の連絡を取り合い合意すること(必要的共犯−通謀者がともに逃走し、もしくは逃走の実行に着手することが必要)

−被拘禁者奪取罪(99)−

法令により拘禁された者 およそ法令に基づき国家機関によって身体の自由を拘束されている被拘禁者(少年院・少年鑑別所に収容中の者など)

奪取 被拘禁者を自己又は第三者の実力的支配下に移すこと

−逃走援助罪(100)−

法令により拘禁された者 同上

逃走させる目的で逃走を容易にすべき行為をした 逃走させる目的で、逃走の機会・方法を教示し、手錠を解除するなど、言語によると動作によるとを問わず、およそ被拘禁者の逃走を容易にする行為 大谷582

−看守者逃走援助罪(101)−

逃走させた 逃走を惹起またはこれを容易ならしめる一切の行為によって、被拘禁者が逃走すること 大谷584

 

〔犯人蔵匿・証拠隠滅の罪〕

保護法益 犯罪の捜査、刑事裁判、刑の執行など国の刑事司法作用の円滑な運用 大谷585
−犯人蔵匿罪(103)−
罰金以上の刑にあたる罪 法定刑が罰金以上の刑を含む罪 大谷586
罪を犯した者 真犯人にかぎらず、犯罪の嫌疑を受けて捜査または訴追されている者も含む(判例)
拘禁中逃走した者 法令による拘禁を破って逃走した者(逃走が犯罪を構成することを要しない)
蔵匿 官憲による発見・逮捕を免れるべき隠匿場所を供給すること 大谷587
隠避 蔵匿以外の方法により官憲による発見・逮捕を免れしむるべき一切の行為

−証拠隠滅罪(104)−
他人の 行為者以外の者
共犯者の刑事事件の証拠 (判例)他人の刑事事件として本罪の成立を肯定(大判大7.5.7)

(多数説)もっぱら共犯者のためにする意思で行為した場合には,他人の刑事事件の証拠の隠滅として,本罪が成立 大谷590

刑事事件 現に裁判所に継続している「被告事件」のほか,捜査段階にある「被疑事件」,さらには将来被疑事件となる可能性のあるものを含む 大谷590
証拠 犯罪の成立・刑の量定に関する一切の証拠資料(人証〔証人・参考人〕・物証・書証)
隠滅 証拠の顕出を妨げ,またはその価値を滅失・減少させる一切の行為 大谷591

偽造 存在しない証拠を新たに作成すること(参考人の虚偽供述のみならず、虚偽の供述が録取されて供述調書が作成された場合も偽造にはあたらない〔千葉地判平7.6.2 前田判例240〕)大谷591
変造 真正な証拠に加工して,その証拠としての効果に変更を与えること 大谷592
使用 偽造・変造された証拠を真正な証拠として用いること 大谷592

−証人等威迫罪(105条の2)−

自己若しくは他人の刑事事件の 将来刑事事件となりうるものも含む 大谷596

捜査若しくは審判に必要な知識を 犯罪の成否、量刑の資料となるべき情状など犯人または証拠の発見に役立つ知識のすべて 大谷596

有すると認められる者 現にその知識を有する者ばかりでなく、諸般の事情から客観的に知識を有すると認められる者 大谷596

又はその親族 民法の規定による

当該事件に関して 自己又は他人の刑事事件に関連して

正当な理由がないのに 弁護人の正当な調査活動などの理由がないのに 

面会を強請し 正当な理由なくして面会する意思のない相手方の意に反して面会を強要すること

強談威迫の行為 「言語をもって自己の要求に応ずるよう迫ること」「言語動作をもって気勢を示し、不安・困惑の念を生じさせること」大谷597

 

〔偽証の罪〕

保護法益 国の審判作用(裁判、懲戒処分)の適正な運用 大谷598

−偽証罪(169)−
法律により宣誓した証人 法律の根拠に基づいて、法律の定める手続により(有効な)宣誓をした証人
虚偽の陳述 (客観説)陳述の内容が客観的真実に反すること 大谷601
(主観鋭)陳述の内容が証人の記憶に反すること
−虚偽鑑定・通訳罪(171)−
鑑定人 特別の知識経験を基礎として現在の経験事実につき意見を陳述する者(鑑定受託者は含まない)
虚偽 (客観説)客観的な真実に反する行為 大谷605
(主観説)鑑定人・通訳人の所信(信念)に反すること

自白についての特例(170) 偽証罪(169),虚偽鑑定・通訳罪(171)を犯した者が.証言した事件についえ、その裁判確定前または懲戒処分前に自白したときは,その刑を減軽または免除することができる

 

〔虚偽告訴の罪〕

保護法益 国家の審判作用の適正な運用、次に個人の私生活の平穏(通説判例)大谷607

虚偽の告訴・告発・その他の申告 客観的真実に反する告訴・告発・その他の申告 大谷608

人に刑事または懲戒の処分を受けさせる目的 実在する(架空人は×)他人(自己申告は×)に対して、刑罰・保安処分・起訴猶予処分、または公法上の監督関係に基づいて職務規律維持のために課される制裁(公務員・弁護士・医師・公認会計士に対する懲戒など)を受けさせる結果発生の未必的認識 大谷609

自白についての特例(173) 虚偽告訴の罪(172)を犯した者が、その申告をした事件について、その裁判が確定する前または懲戒処分が行われる前に自白したときは、その刑を減軽しまたは免除することができる

 

〔職権濫用の罪〕

保護法益 国家の司法・行政作用の適正な運用、次に個人の自由・権利(大谷611、前田535、大塚599)

−公務員職権濫用罪(193)−

職権を濫用し 一般的職務権限に属する事項について、実質的・具体的に違法・不当な行為をすること 大谷613・614

相手方の職権行使の認識 相手方が職権行使であることを認識できる外観を備えたもので、相手の意思に働きかけ影響を与えるものに限定する(東京高決昭63.8.3)

国民の自由・権利を侵害する不利益を生ぜじめるような権限の不法な公使が認めれらる限り、それが職権行使としての外観を備えるか、相手の意思に働きかけ影響を与えるかどうかは問わない(学説)

義務のないことを行わせた 法律上全然義務がないのに行わせ、または義務がある場合に不当・不法に義務の態様を変更して行わせること(結果犯) 大谷615

権利の行使を妨害した 法律上認められている権利(プライバシーなど事実上の利益も含むと解すべき)の行使を妨害すること(結果犯)

−特別公務員職権濫用罪(194)−

特別公務員 裁判・検察・警察の職務を行う者、またはこれを補助する者 大谷617

職権を濫用し 同上

逮捕・監禁 職権の濫用として行われること

−特別公務員暴行陵虐罪(195)−

その職務を行うに当たり 職務を行う際に

暴行 広義の暴行(に対する直接・間接の不法な有形力の行為)で足りる

陵虐又は加虐の行為 暴行以外の方法で精神上または肉体上の苦痛を与える一切の虐待行為(飲食物を与えない、必要な睡眠させない、女子被疑者に対するわいせつ・姦淫の行為など) 大谷619

 

〔賄賂の罪〕

保護法益 (公務員の清廉義務)公務員は清廉であるべき(大塚606参)。→単に清廉義務違反とするのは妥当でない。職務行為との関連性を要求していない(処罰範囲が拡大する)

(職務行為の不可買収性)職務の正・不正を問わず、職務に関する不正な報酬の授受を禁止する。→加重収賄・斡旋収賄罪の説明が困難
(職務行為の公正)不正なことを行うことについての報酬の授受を処罰する。→単純収賄の説明が困難
(職務の公正とそれに対する社会の信頼)(判例・大谷620)

職務 公務員、仲裁人がその地位に伴い公務として取り扱うべき一切の執務 大谷622

職務に関し 法令上当該公務員の一般的職務権限に属するものであれば足り,かならずしも具体的職務権限を必要としない。また、一般的職務権限に属さなくとも,職務と密接な関係のある行為は,職務行為に含まれる

職務密接関連行為 職務に属するものではないが、職務と密接な関係を有するため、職務行為に準じた扱いを受けるもの 大谷625

賄賂 公務員・仲裁人の職務に関する不正の報酬としての利益 大谷622

対価的関係 賄賂は,職務行為または職務と密接に関連する行為の対価として提供されることが必要

賄賂の目的物 金品その他の財産的利益に限らず、およそ人の需要または欲望をみたすに足りる一切の利益であれば足りる

−単純収賄罪(197条1項前段)−

仲裁人 公務員以外の者で法令によって紛争の仲裁の職務権限を認められた者 大谷627

収受 賄賂を取得すること

要求 賄賂の供与を要求すること

約束 賄賂者と収賄者との間で将来賄賂を授受すべきことについて合意すること

−受託収賄罪(197条1項後段)−

請託 公務員・仲裁人に対して職務に関し一定の職務行為を依頼すること(不正か正当な職務行為かは問わない) 大谷629

請託を受けた 依頼を承諾したこと(黙示でもよい)大谷629

−事前収賄罪(197条2項)−

その担当すべき職務に関し 将来、相当程度の蓋然性を持って担当する可能性がありうるという意味

−第三者供賄罪(197条の2)−

第三者 当該公務員・仲裁人以外の者

供与させ 第三者に賄賂を受け取らせること

供与を要求 第三者に賄賂を供与するよう相手方に求めること

約束 第三者への賄賂の供与について相手方と合意すること

−加重収賄罪(197条の3第1・2項)−

よって不正な行為をし、又は相当な行為をしなかったとき 前二条の行為の結果として、その職務に違反する行為をしたこと(因果関係が必要)

職務に違反する行為 作為・不作為の一切の行為を指し、法規に違反する行為、のみならず自由裁量に属する行為でも、職務上の義務に違反して著しく不当な裁量がなされるときはあたる 大塚618

−事後収賄罪(197条の3第3項)−

−斡旋収賄罪(197条の4)−

請託を受け 他の公務員の職務行為について斡旋することの依頼を受け、これを承諾すること 大谷634

斡旋 他の公務員に職務に違反する行為(作為・不作為)をさせることにつき、請託者と他の公務員との間に立って仲介し便宜を図ること

あっせんすること又はしたことの報酬として 将来のあっせん行為又は過去のあっせん行為(その後にあっせん行為が行われたかを問わない、法セミコンメ238)の対価として 大谷634

−贈賄罪(198)−

供与 賄賂を相手方に収受させること ⇔収受(必要的共犯−相手が賄賂との認識ない限り申込罪)

申込 賄賂の収受を促すこと(相手方の賄賂との認識は不要、認識できる状態に置かれることは必要)

約束 将来において賄賂を供与することについて公務員と合意に達すること

−没収・追徴(197条の5)−

制度趣旨 収賄者等に不法の利益を保有させないため(多数説)収賄者および贈賄者等に不法の利益を保有せしめないため(最判昭29.7.5)大谷635

犯人又は情を知った第三者(没収) 犯人には共犯者も含まれ、起訴されていない場合でも事実認定によって犯人と認定できればよい。情を知った第三者とは、犯人等以外の者で賄賂であることを知っている者 大谷635

没収することができないとき(追徴) 賄賂の性質上没収できない場合、のみならず収受後に没収不能となったときも含む 大谷636