■市議除名――いくら何でもやりすぎだ
 横浜市議会で、異常なできごとがあった。


 今議会が始まって間もなく、2人の女性市議が議場から日の丸を撤去しようとして退場させられた。1週間後、2人は議長席と事務局長席を占拠し、6時間後に強制的に連れ出された。

 これを重大視した市議会は2人を「議会の品位をけがし、秩序を乱した」という理由で除名してしまった。自民党をはじめ、民主、公明両党など、賛成は出席者の4分の3を超えた。

 もとより2人の行為が穏当だとはいえない。だが、選挙で選ばれた議員の資格を失わせてしまうことの重さを、他の議員はどこまで真剣に考えたのだろうか。

 国旗の法制化から3年。横浜市議会は今議会から議場に日の丸を掲揚することにした。議会運営委員会での決定だったが、少数会派の2人はこの委員会に出席できなかった。そこで「こういう思想信条にかかわる問題は、みんなで決めるべきだ」として、本会議での議論を主張していた。

 議長席などの占拠について2人は「議長と議論しようとしたが応じなかったので、やむをえなかった」と説明している。

 意見表明の場がなかったからといって、こうした行為が許されるはずはない。懲罰の対象にされるのもやむをえまい。しかし、いきなり除名とは何とも乱暴である。

 地方自治法は懲罰の種類として「除名」のほか「戒告」「陳謝」「一定期間の出席停止」を定めているが、除名には特に厳しい条件をつけている。選挙で選ばれた議員の身分を手厚く保障し、多数派による恣意(しい)的な追放を防ぐためだ。

 国会でも、与党ペースの審議や採決を阻むために少数派が議場の前で座り込むといった実力行動は、過去に何度も繰り返された。それでも、除名などという話は聞いたことがない。

 汚職や不祥事にからんだ国会議員について、政権党は法的拘束力のない辞職勧告決議案でさえなかなか認めない。有権者の負託を受けた議員の身分は重い、というのがその理由だ。

 そう考えると、自民党が先頭に立って2人の議員資格を奪った横浜市議会のありようは尋常ではない。気になるのは、日の丸という機微に触れる問題だったからこそいきり立ったのではないか、という点だ。

 発端がほかの問題だったなら、2人が同じようなことをしても除名にまでしただろうか。与党が押し切った国旗・国歌の法制化は、こんなところにも後味の悪さをひきずっているといえまいか。

 世の中には、対立や争いの要因は数え切れないほどある。気にくわないからといって議長席を占拠するのが幼稚な行為だとすれば、多数派が寛容さを失って排除で応じるのは危険な行為というものだ。

 ワールドカップ決勝戦が行われる国際都市。横浜市民はこれを許すのだろうか。

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媒体 朝日新聞 掲載日 2002.06.26