
|
1. Covered Call Writing のすすめ
1. Covered call writingとは?
今までオプションというと、デルタなどのギリシャ文字を理解しないと無理だと思われてきました。多くのオプションは刻々と変わる値段を見て、オプションの売買をするので、一日中PCの前に座っていられるセミプロがするものと思われてきました。確かに多くのオプションはそうかもしれません。それがオプションの敷居を高くし、一般の方になかなか普及しない理由かもしれません。
しかし、私が行っているオプションは、「馬鹿でも機械的にできる」Covered call writingです。Covered call writingとは、現物金融商品(株式)を保有して、それを原資産とするコールオプションを売る(write)戦略のことです。大儲けは出来ませんが、大損もすることはなく、ほとんどの場合、毎月手堅くキャッシュを得ることが出来ます。
Covered call writingに関しては、ギリシャ文字は必要ありません。医学生は学生時代に、体の隅々まで1本1本血管や神経の名前をラテン語で覚えさせられます。しかし、医者になると、こういった名前の99%は忘れてしまってもまったく問題ありません(残りの1%は英語で自然に覚えます)。それと同じで、Covered call writingも覚えていなければいけないところは、ほんの少しです。2. 米国の証券会社に口座を開設しよう
日本株はCovered callをするのにはまったく適しません。日本株では、実質的には個別銘柄やETFに対するオプションがなく、やるとすれば日経225先物に対するコール・オプションを売ることになりますが、日経225先物は差額決済になるので、日経225先物が下がった時は、マイナスのキャッシュフローになります。それでは、Covered callの魅力のほとんどすべてが消えてしまいます。株価が下がっても、キャッシュフローがプラスになるところが、Covered callの魅力だからです。そこで、米国株でオプションをすることになります。米国株では、株価が下がっても、原資産の株式を売却する必要はないから、コール・オプションを売ったキャッシュがそのまま残り、キャッシュフローはプラスになります(株式は当然含み損を抱えます)。株価が上がった場合は、コール・オプションを買い戻すことにより、キャッシュフローがマイナスになる場合もありますが、株式は当然含み益を抱えます。
米国市場には、豊富なETFや個別銘柄にオプションがあります。また、昼間仕事をしているまっとうな個人投資家は、日本株ではザラ場を見ることはできませんが、米国株ではザラ場を最初の30分見るだけでも、約定しやすくなります。従って、Covered Call Writingをするなら、米国株に限ります。米国株でも、国内の証券会社ではオプションは扱っていないから、米国の証券会社に口座を開設しましょう。
証券会社はどこでもいいのですが、Firstradeが日本人にも人気があるようです。私もFirstradeを使っています。口座開設には中学3年生程度の英語力があれば十分です。なお、他の人も指摘しているように、米国の証券会社のコンピュータ・システムは日本の証券会社のそれと比べて、相当ぼろいです。注文やキャンセルが円滑に行かないことも少なくありませんし、資産残高がリアルタイムに反映されないことも多いです。そのまま何もしなくても、とくに問題はありませんが、どうしても不安な場合は、電話をします。メールでの問い合わせは、一般的な問い合わせのみで、個別の問い合わせには、「電話をください」という返事が来るだけです。電話の場合、こちらがNativeなスピーカーでないとわかると、ゆっくり話してくれるから、英会話に自信がない人でもあまり心配する必要はありません。
3. Covered call writingの実際
口座を開設したら、いよいよ原資産である株式を買います。口座はCash account、Margin accountのどちらでも構いません。米国では、日本と違って、Margin accountでも配当が支払われるのも魅力のひとつです。基本的に、原資産である株式は長期保有を前提とします。株価が上がることが最初からわかっていれば、何もCovered Call Writingをしないで、全力で株式を買うか、コール・オプションを買えばいいのですが、現実には株価が上がるか下がるかわかりません。しかし、「時は金なり」で、時の経過とともに時間的価値のプレミアムは必ず下がりますから、コール・オプションを空売りし、そのプレミアムをこつこつ貯めるのがCovered Call Writingの本質です。
Implied volatilityがHistorical (Actual) volatilityより高い銘柄は、よりプレミアムが高いので、このような銘柄をスクリーニングするWeb siteが米国にはいくつもあります。しかし、Covered Call Writingは毎月繰り返すことが基本で、時間の経過とともに、Implied volatilityもHistorical (Actual) volatilityも変化するので、一般に言われているほど、Implied volatilityとHistorical (Actual) volatilityの関係は大事でありません。従って、Covered callに適した銘柄をスクリーニングするソフトやサイトは無用の長物です。そして、Historical (Actual) volatilityの大きな銘柄は大体決まっているので、それらの銘柄を選びます。Historical (Actual) volatilityの大きな銘柄は大抵の場合、プレミアムも大きいからです。原資産である株式の大幅な値下がりはなるべく避けたいので、「EBIのすすめ」で示した基準で、銘柄を選択します。個別銘柄を選ぶのが面倒なら、ETFがお勧めです。一度Covered Call Writingをすれば、あとは第3金曜日(expiration day)の前日まで株価を見る必要はありません。
第3金曜日(expiration day)の前日になったら、いよいよ仕事です。しかし、前述のように米国の証券会社のコンピュータ・システムはぼろく、アクセスが多いとダウンすることも時々あるので、余裕を持って、2、3日前から仕事を始めたほうがいいかもしれません。
この時、
(1) 株価がstrike price(権利行使価格)を上回り、コール・オプションの買い方に権利が行使される可能性が高い場合、その価格でも原資産の株式を保有したい場合は、コール・オプションを買い戻し、翌月expirationのstrike priceを上げたOTM(Out of the money)のコール・オプションを売却(roll up and out)します。
(2) 一方、十分株価が値上がりしてもはや割安な水準と考えらない時は、そのままにして、exerciseされるのを待ちます。当然、原資産である株式は権利行使価格で売却されます。
(3) Expiration dayに株価がstrike priceを下回っていれば、コール・オプションはexpireされますから、翌月曜日に新たなコール・オプションを前月のstrike priceと同じか下の価格で売ります(roll down)。原資産である株式に見切りをつけた場合は、原資産の株式を売りますが、よほどのことがない限り、これは行いません。
なお、この説明がわかりにくいと思った諸君は、「オプション道場」の説明を見てください。私と違って、大変わかりやすく説明しています。
2. Leveraged ETF を使ったCovered Call Writing
1. Leveraged ETFとは?
Leveraged ETFは、1日の変化率が基準となるインデックスに対して2倍になるように設計されたETFです。1日の変化率が2倍になるからと言って、それより長い期間の変化率が2倍になるわけでない点は注意が必要です。Volatilityが大きな時は、インデックスがプラスでも、Leveraged ETFはマイナスになることさえあります。単純な例では、下記のように、2日間でインデックスが-1%であっても、Leveraged ETF(2×)では-4%になります。
この基本の理解は大事ですが、最近の記事は「Leveraged ETFはあなたを破滅へ追いやる」など、きわめて稀な事態を過大視しているように思います。Leveraged ETFを販売しているDirexionのWeb siteにも、トップページに、"Direxion Shares ETFs seek daily investment goals and should be used strictly as short term trading vehicles."と書いてあります。
一方、Journal of indexesに掲載された論文「Understanding Returns Of Leveraged And Inverse Funds」によると、1日の変化率がS&P500に対して2倍になるように設計されたUltra S&P500 ProShares (SSO)を30日間ホールドした場合のインデックスとのリターンの差を表しています。それによると、インデックスとの差は、平均で-0.002%、メディアンで-0.03%でした(1958−2008年のデータ)。これは手数料以下の差です。
Volatilityが小さい時期は、S&P500のリターンの2倍と実際のUltra S&P500 ProShares (SSO)のリターンとの差は小さくなりますが、Volatilityが大きい時はリターンとの差は大きくなります(プラスでもマイナスでも)。しかし、Volatilityが大きい時はカバード・コールのオプションのプレミアムも大きくなります。
Realized Beta別に見ても、30日後でも、+1.5から+2.5の間に、90.1%が入りました。一方、マイナスのBetaになることも、1.2%の確率であるので、それなりの注意は必要です。
中期的には、
1. 「株価」(=Long)が上昇しても、Ultralongが下落することがある。
2. UltalongとUltrashortの両方が、下落する(UltrashortはUltralongのヘッジにならない)場合がある。の2点を抑えることが大事です。
従って、単にUltralongあるいはUltrashortをオプションなしで保有することにはあまりメリットはありません。「論より証拠」で、株価がランダム・ウォークすると仮定して、株価(紺)、Ultralong(ピンク)、Short(黄)、Ultrashort(水色)の株価の動きを1000日目まで追ってみました。8回試行し、その結果をグラフにしました。こうしてみると、株価が上昇しているときでも、Ultralongのリターンが株価(=Long)以下のことは全然珍しくないことが「実感」出来ます。
2. Leveraged ETF を使ったCovered Call Writingの実際
以上のことを理解したうえで、Leveraged ETFはCovered call wriolatilityが高いので、当然ふつうのETFに比べてプレミアムも高くなります。Covered Call Writerとしては、これを利用しない理由はありません。基本的には、個別銘柄のCovered Call Writingと大きな違いはないのですが、Leveraged ETF を使ったCovered Call Writingの場合、上述のように、Leveraged ETFのリターンが元のETFの2倍から乖離する確率が時間の経過とともに高くなり、またVolalitilyが高い銘柄(ETF)ではITMのコールを売るのが有利となるので、現資産であるLeveraged ETFは長期保有を前提とせず、短期的により大きなプレミアムをとる戦略をとります。すなわち、ITMのコール・オプションを売り、expiration dayに株価がstrike priceを上回っても、コール・オプションをbuy backしません。
Expiration dayに株価がstrike priceを下回った場合は、コール・オプションはexpireしますから、この場合は、個別銘柄と同様に、翌月曜日に新たなコール・オプションをITMで売ります。確率的にはこうなる場合はOTMのコール・オプションを売るよりは少なくなります。
Covered Call のすすめ