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7.平均への回帰について-
成長率のレベルと持続性
高い利益成長を続けているいい企業は今後も高い利益成長を続けるだろうと想像しがちですが、実際には前期の利益成長率と今期の利益成長率はまったくと言っていいぐらい相関はありません。一般には前期増益率が高かった企業は今期もいいだろうと誤って予想され、株価は過大に評価されることになります。
逆に前期で減益率の大きかった企業は今期もだめだろうと市場からは悲観され、株価は下がります。しかし、実際には今期も減益が続く確率は市場が思っているほど高くはありません。
Chan、Lakonishokらは、一貫して優れたパフォーマンスをあげ続ける企業はきわめて少数しかなく、それはほとんどコイン投げで表が出続ける確率に等しいことを実証しました。
しかし、コイン投げで表が出続ける確率のほぼ等しいにしても実際にある確率でそのような企業が存在することも事実です。そのような企業は真の「エクセレント・カンパニー」である可能性があります。そこで、次に実際に5年続けて増益を続けている企業に絞ってその後5年間の業績を見てみると、確かにそのような「エクセレント・カンパニー」は偶然の確率以上にその後も増収増益を続けることがわかりました。この偶然との差を少ないと見るか、多いと見るかは見方が分かれると思いますが、「エクセレント・カンパニー」といえども将来も業績がいい確率はコイン投げで表が出続ける確率に毛が生えた程度であることは言えそうです。唯一将来の利益成長と関連があるものは、研究・開発費です。研究・開発費(R&D)の売上高に対する比率が大きい企業ほど、将来利益成長が継続します。
投資家は楽観反応により「エクセレント・カンパニー」は買い上げられ、悲観主義により「非エクセレント・カンパニー」は売り叩かれるのです。過剰反応により実態以上に買い進められた「エクセレント・カンパニー」と実態上に売り込まれた「非エクセレント・カンパニー」は、ほんの少しだけ業績が平均へ回帰し始めただけで、投資家はあわてて「エクセレント・カンパニー」の株を売り、「非エクセレント・カンパニー」の株を買い始めます。いずれも投資家の過剰反応が根底にあります。
成長性や収益性の高いエクセレント・カンパニーの株式には、すでに割高であったとしても追加的な買い需要が発生し、逆に、赤字企業等の非エクセレント・カンパニーの株式は、たとえ割安でも放置される傾向が見られます。この現象の背景には、分析能力の限界や時間的制約から十分に株式価値の分析を行わずに、典型的な優良株かどうかによって投資判断が行われている状況と整合的と思われます。
8.小型株効果について
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東証に上場している銘柄について、規模(1が最も小さく、5が最も大きい)とPBR別に分類し、1年後のリターンを、1975年から1996年まで調べたもの(飯塚、加藤)。 |
米国株でも、日本株でも、小型株ほど(時価総額が少ない銘柄ほど)リターンがいいことが実証されています。
9.分散投資について
小型株の高い平均リターンは、極めて少数の「大穴株」の非常に高いリターンによるところが大きい
小型株の平均リターンは大型株のそれを上回りますが、小型株から生まれるプラスのリターンの殆どは、非常に数少ない銘柄が生んでいることが実証されています(Peter J. Knez and Mark J. Ready )。
日本株でも、同様のことが実証されています。
リターン(平均値) リターン(中央値) 小型株(1) 2.7 -12.9 大型株(2) 2.2 -0.7 小型株(3)低PBR(4) 10.3 -6.3 大型株(5)低PBR(4) 10.1 7.9 (1)時価総額の下位20%(2)時価総額上位20%(3)時価総額下位800位以下(4)PBR下位20%(5)時価総額上位200位以上。1995年から2002年までの東証1部銘柄での検証(栗田)。
上の図表からわかるように、小型株・低PBR銘柄の平均リターンは高い(10.6%)が、リターンの中央値はマイナスであり、小型株・低PBR銘柄全体としてみれば、マイナスのリターンの銘柄数はプラスのリターンの銘柄数よりもはるかに多い。つまり、小型株・低PBR銘柄は「当たれば大きい宝くじ」のようなものであり、銘柄選択が非常に難しいことを意味します。リターンの確実性をあげるためには、集中投資よりも分散投資のほうがよいと思われます。
バリュー株でも、リターンの平均値>リターンの中央値の関係がありますが、小型株ほど極端な差はありません。そして、上の表のごとく、大型株・バリュー株では、銘柄による「当たり外れ」の程度は小さくなっています。
10.テクニカル(チャート)分析について
● 初心者はテクニカル分析がお好き?
A子「最近、株が上がっているらしいから、私も今度、株をやろうかなと思っているの」
B子「えー、株って、難しくないの?」
A子「うん、ちょっとは勉強しないとね。チャートの勉強はしなければいけないわ」
B子「財務諸表とかは見なくていいの?それに、よく素人は株に手を出さない方がいい、プロのカモになるだけだと聞かされているわ」
A子「財務諸表?何、それ?私が買った本には財務諸表なんて書いていないわよ。チャートだけ勉強すれば大丈夫よ。」まず、ほとんどの方が「株をやる」という表現をしますが、私はこの表現が大嫌いです。「株式投資をする」という表現をしてもらいたいと思います。「個人株主になる」という表現でもいいのですが、ちょっと大袈裟です。またA子さんが、株式投資をするには、チャートの勉強(テクニカル分析)をしなければいけないと思い込んでいるのは間違いです。さらに、素人(個人投資家)がプロに勝てないと思い込んでいるのも間違いです。
● 役に立たないテクニカル分析の本本屋に行くと、株の本の半分以上はテクニカル分析(チャート分析)の本です。テクニカル分析の本を書くような極端な人は、企業の業績とはまったく無関係にチャートさえ見れば、将来の株価の予測ができると信じています。日経新聞などにも、ある銘柄の株価が反発した時は「株価は25日移動線を抵抗線として反発した」と書き、一方下落した時は「25日移動線を割り込み、下放れした」などと、したり顔で解説しています。私も最初は「株でもうけるにはチャートの勉強をしなければ駄目だ」と思い込んでいた一人ですから、あまり偉そうなことは言えないのですが、これらの解説は何の価値もありません。
また、ある有名なテクニカル分析のバイブル的な本には「自分のチャートを見つけろ」と書いてあります。私には意味がよくわからないのですが、個別の銘柄の過去の株価を調べれば、たとえば移動平均を何日にした場合、移動平均からの乖離率が何%になったら買い、何%になったら売れば、リターンが最大化されるかということを自分で調べろということでしょうか?あるいは、ゴールデン・クロスの移動平均を何日と何日に設定すると、一番リターンが高くなるということを調べろということでしょうか?最近はコンピュータがあるおかげで、個人でも比較的簡単にこれらのパラメーターをいじって、「自分のチャート」を見つけられるかもしれません。しかし、問題は、過去の限られたデータではうまくいっても、それが将来には当てはまらないということ、他の銘柄にも当てはまらないということです。テクニカル分析は、財務諸表を読むよりは敷居が低いので、一般の方にもなじみが深いのでしょうが、有効性を示すエビデンスがないので、特別にセンスのあると自負している方(そのほとんどは思い込みですが)以外は、株式の売買にこれらのテクニカル分析は使うべきではありません。
● 何もないところにパターンを見つける人間の性後付で最も都合がいいデータを見つけて事後的に検定を行うと、偶然の要因を正しく評価することができません。科学的な態度は、そこからは仮説を立てるにとどめ、その仮説を別の独立したデータによって他の状況下でも有効であるか否かを検証する必要があります。様々なテクニカル分析に対して、それらの有効性について、アメリカを中心に1960年代にマサチューセッツ工科大学(MIT)、シカゴ大学、スタンフォード大学などの経済学者が中心になって徹底的に検証が行われてきましたが、残念ながらテクニカル分析では市場平均を上回れないことが実証されています。過去の株価の動きからは将来の株価を予測することは出来ないのです。つまり、「移動平均線を越えたから買いだ」、「ゴールデン・クロスしたから買いだ」、「乖離度が25%だから買いだ」、「RSIが20%だから買いだ」などのテクニカル分析は自分に都合のいい例だけを後講釈で説明しているだけで、そのような自分に都合がいい例と同じだけの数の当てはまらない例が存在するのです。乱数表やサイコロあるいはコイン投げで決まる数字で、グラフを描くと、「ヘッド・アンド・ショルダーズ」や「トリプル・トップ」などのパターンが現れることがあることは自分で実験してみると、実感できます。
人々が単なる過去の株価の動きに特別な意味やパターンを求めてしまうのは、もともと人間にある自然な性癖です。認知心理学が明らかにしているように、人間の本性は、予測できない現象や意味のない現象を嫌い、幼少時から一見ランダムに見える現象や数字からパターンや秩序を見つける訓練をされている結果、(それらの分析は多くの場合有益なのですが)秩序がないところにも秩序を見出そうとし、株価のようなほとんどランダムウォークな動きに意味のあるパターンを発見してしまうのです。そしてひとたびそうしたパターンを信じてしまうと、因果関係の理論づけを行うことによって間違った考えがさらに補強されていきます。人間はたまたまうまくいった例を過大評価する傾向があり、不完全で偏りのあるデータからすべてを決めようとします。有名な「ウォール街のランダム・ウォーカー」を書いたマルキール教授によると「科学的に見れば、チャート分析(テクニカル分析)は錬金術と基本的には変わりがない」ということになります。
テクニカル(チャート)分析の有効性は実証されていない
@ 様々なテクニカル(チャート)分析に対して、それらが有効であるか否かについて、今日まで徹底的に検証が行われてきましたが、残念ながら有効性が実証されたものは、事実上ひとつもありません。
「移動平均線を越えたから買いだ」、「ゴールデン・クロスしたから買いだ」、「乖離度が25%だから買いだ」、「RSIが20%だから買いだ」などのテクニカル分析は自分に都合のいい例だけを後講釈で説明しているだけです。それと同じくらいの数、テクニカル(チャート)分析が当てはまらない例が存在します。つまり一般の方(特別にセンスのある方以外)は、株式の売買にこれらのテクニカル(チャート)分析は使うべきではありません。
A テクニカル(チャート)分析のひとつに、「モメンタム戦略」および「リターン・リバーサル戦略」というのがあります。これには、一見有効性を示すEvidenceがありそうです。
つまり、米国をはじめとする欧米の13カ国では、短期(1年以下)では過去の株価の上昇率が大きい銘柄ほど次の期間のパフォーマンスもよく(モメンタム)、長期(1年より長い期間)では、過去の株価の下落率が大きい銘柄ほど次の期間のパフォーマンスがいい(リターン・リバーサル)というEvidenceがあります。
しかし、日本株での解析では、短期、長期ともに、過去の株価の下落率が大きい銘柄ほど次の期間のパフォーマンスがいい(リターン・リバーサル)のです。
このように、国により、また解析する期間の取り方により、正反対の結論が得られる戦略は、普遍性がなく、安定的でないので、この戦略を単独では取るべきではないと考えます。
11.ニュースについて
伝統的ファイナンスでは、ニュースは即時に伝わり、「合理的な投資家」は即時にそれに反応するから、ニュースを利用して、リターンを得ることはできないと説明されています。しかし、実際の市場では、必ずしもそうではありません。投資家はニュースに過剰反応したり、逆に過小反応したりします。
しかし、そのニュースで報道されたことの収益への影響はわからないことが多く、実際の投資では、ニュースを利用するのは、難しいと思います。
12.市場タイミングについて
市場の動きを予測することは不可能である
このことは、学術的にも事例的にも実証されています。従って、相場が上がる前(もしくは直後)に株式を買い、下がる前(もしくは直後)に株式を売って、利益を上げることは不可能であるとされています。
但し、市場全体が加熱して割安な銘柄がない時は、無理して買う必要はありません。
EBIの基礎(4)