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自衛隊の災害派遣について知ることのできるページ

目次

外国軍の災害派遣

 ここでは、外国の軍隊が行う災害派遣活動について、述べます。資料の制約上情報が古かったり、完全な正確性を保証できない場合がありますので、情報を活用される場合他のページにまして原資料による確認や追加調査を推奨いたします。

はじめに

 現在、外国における軍による災害救援活動について専門的に示されている日本語による著作は、防衛研究所災害派遣プロジェクトチームによって著された「(研究資料92RO-3R)諸外国における災害派遣の実態」(平成4年3月、防衛研究所図書館蔵[50-001067-3])(1)及びこれに類似するもののみであると思われる。

 上記著作の調査は平成2年に(防衛研究所が)防衛庁内局及び外務省の協力を得て行った「諸外国における軍隊の災害派遣活動等の実態調査」を基本としその調査過程で入手・翻訳した『欧州共同体民間災害救援便覧』その他の資料を加え、平成3年度研究のまとめとして整理・分析したと記されている。

 このページをまとめるに当たって「諸外国における災害派遣の実態」および各国軍のサイト等に記述された情報を参考とした。

総論

災害派遣(災害救援活動)の位置づけ

 国内の自然災害を所管する中央政府の責任省庁として国防省など軍を指定する国は、確認した範囲では存在しなかった。災害救援を軍の主たる任務とする国は皆無であり、また、災害救援活動を緊急事態の一部としてではなくそれ単体で軍の基本法上の本来の任務として明示しているのは日本(2)のみと考えられる。さらに述べるならば、世界的にそもそも災害派遣が、「公共な秩序の維持」のための活動か「民生支援」なのか不明確かつ双方を含むものであることも指摘されなければならない。

 しかし、災害救援に軍隊を活用することを完全に禁止する国はなく、小規模な災害及び大規模災害においても災害応急対策以外の局面においては非軍事諸機関の後ろ盾として、大規模災害の災害応急対応の局面においては救援活動の中核として活躍している。(3)

活動の実態

総則

 災害派遣は各国とも防衛に支障がない場合能力の範囲で行うのが原則である。

災害派遣は軍が他者の要請を受けて行う活動である

 災害救援活動は各国とも原則中央または地方の政府または警察などの要請によって開始されるのが原則である。(4)ただし、米国のように地方政府の災害担当部署が「州軍」である場合もある。(5)派遣された部隊は「統一的司令部」(日本で言う災害対策本部に相当)が定めた方針および「統一的司令部」によって行われた調整結果に基づいて、活動するが直接部隊が統制されるわけではない。(この意味で「統一司令部」ではなく「統一司令部」という表現は適切と考える。)

災害派遣の指揮権

 「統一的司令部」の長は地方政府の長や中央の内務大臣・建設大臣など防衛を担当しない大臣が行うのが一般的である。国防大臣が「統一的司令部」の長となる場合があることを確認しているのはイスラエルのみである。旧ソ連では国防大臣が災害復旧作業を指示することがあったようだが他省庁との意志疎通はよくなかった。

派遣の対象となる災害

 派遣対象となる災害は自然・人為を問わない。というかそもそも災害の定義はその国の置かれた状況によりバラバラである。

派遣に要した経費の負担は原則要請者が行う

 軍による災害派遣活動は基本的に有料とされることが多い。軍が個人に請求することはごくまれと思われるが、多くの国では軍が災害救援用の予算を確保せず、程度の差こそあれ要求元に請求するようである。

 日本においては災害派遣経費として特別な予算は確保せずこの点では他国と同一であるが、災害派遣に要した経費は通常支出される様々な経費に振り分けられ計上される。しかし、防衛庁以外から費用の補填を受けないので、現に確保されている防衛庁の予算から余剰分などを流用している。また、通常、装備・保有していないまたは不足する機材については要請元より無償供与・貸与されたものを使用し基本的に費用は請求しない。(6)

 多くの場合軍は災害派遣専用の装備を持たない

 民間防衛組織が専用装備を保有することは一般的だが、軍が災害派遣専用の装備を持つことはまれであり、一般的には軍が保有する車両や汎用機材を使用する。専用装備を保有するのが確認されているのは特異な事情がある国家で、日本(阪神・淡路大震災以降)および旧ソ連の民防部隊である。

 日本における特異な事情は、元々地震という予測不能かつ被害甚大な災害が起こりやすいと言うことに加え、阪神・淡路大震災における軍事の専門家から見れば異常とも言える自衛隊の救援活動への批判のなかで民主的な政府が世論に配慮し、整備が開始されたものである。(7)一方旧ソ連は、強い中央統制の国家で、他国では概ね軍と切り離されている民間防衛組織が、軍に編入されているものと見られる。

軍人による災害派遣専門部隊を持つ国はほとんどない

 災害派遣用の常設部隊を持つ国は旧ソ連である。国防省の中に民防本部(共和国民防本部)を持ち基幹部隊として地域・専門別の民防部隊(連隊級)があった。この部隊は非武装であるが、要員は全員軍人の身分を持つ。

アラート態勢は状況に応じて行われる

 アラート態勢については、各国とも各レベルに応じて民防部隊、軍のいずれかまたは両方がこれにあたっていることが多いようだ。日本においても台風接近時などは情報所の開設など必要なアラート態勢が取られる。

災害派遣時、武器の所持と治安の維持は軍の任務でない

 ほとんどの国では災害派遣時の武器携行は明示的あるいは黙示的に禁止されている。災害時の治安の維持は警察の任務であり、軍が直接的に関与することは少ない。警察は治安の維持のために武器の携帯が認められている。

民間防衛組織及びボランティアは排除されない

 一般的に軍が災害派遣される状況に置いて、民間防衛組織やボランティアを軍が排除することはない。ただし、民間防衛組織やボランティアの組織・目的・性質は各国ごとに異なり、これらについて一般的な原則を述べることは出来ない。

特別な賞罰はない

 災害派遣だけを念頭に置いた特別な賞罰規定はなく、一般の軍法、刑法その他諸規定に従い賞罰が行われる。災害派遣はその他の行動と同様に個人ではなく部隊として行うので、その他の軍の行動と同様、軍人は災害派遣の命令を拒否できない。軍人の範囲は単純に軍の構成員のみをさす場合と、災害救援活動中の民間防衛組織の構成員やボランティアを含む場合とがある。

 表彰についても災害派遣のみを念頭に置いた規定はなく、一般の規定に従い表彰が行われる。著しい功績を挙げたものや死亡したものに対しては個人に対する表彰が行われる場合もある。

外国への派遣

 派遣される地域は基本的には国内である。数カ国間の協定によりまた、オーストラリアのように周辺諸国へ軍による行動を含む災害救援を行う計画を持ち、準備と対応の責任を国防省の自然災害機関が負う制度を持つ国もある。(8)しかし、通常様々な要因により一国の軍隊が海外で行うことは困難が伴い、援助国の軍が被災現場に100人以上派遣し救援活動を実施することはすることは、歴史上相当大規模な派遣であるといえる。(9)

 日本は米国の潜水艦との衝突によってハワイ沖で沈没した「えひめ丸」の捜索活動に自衛隊法83条に基づく災害派遣行動を実施し、米軍と共に捜索活動を行った。つまり、外国で災害の被害にあった自国民に対して、国内での活動を想定した法律を適用して救援活動を行ったわけだが、これをどう評価するかは今後の検討課題である。(10)

 外国への大規模な災害派遣は様々な要件から非常に難しく、今後とも100人を越える規模で行われるのはまれであると考えられる。

2005.1.3追記 2004年12月に発生したインド洋における津波災害において、インド洋におけるテロ特措法に基づく対応措置を交代して帰国のためマレーシア東方海上を航行していた護衛艦「きりしま」「たかなみ」と補給艦「はまな」が2004年12月28日から2005年1月1日にかけて国際緊急援助隊としてタイ王国周辺海域で行方不明者の救助活動を行った。派遣規模は100名を超えるが注9の「オペレーションシーエンジェル」同様たまたま近傍にあった部隊を派遣したに過ぎない。

2005.12.1追記 上記地震ではその後世論の圧力により地震により津波の被害を受けたインドネシアには救援のため米国だけで空母1隻を含む延べ約15,000人、日本も延べ約1,000人を派遣するなど国際情勢の変化に伴い支援の規模は巨大化している。(11)

最後に

 このページの作成に「諸外国における災害派遣の実態」に掲載された19カ国(12)の他に中華民国、カナダ、インドの国防省(部)のサイトを閲覧し日本を含めた計23カ国を比較分析の対象とした。この中で一般的な原則を導き出すのは、各国の文化、自然状況、政治体制などがあまりにも異なるため難しいものではあったが、次のことが認められる。

参考文献等

作者と連絡先