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自衛隊の災害派遣について知ることのできるページ

目次

災害派遣50年の集大成『災害派遣の参考』(陸上自衛隊災害派遣マニュアル)

はじめに

 自衛隊史上災害派遣が始めて実施されてからおよそ50年。初期においては政府の政治判断によるところが大きかった災害派遣も、今では自衛隊が事態やむ終えないときに行う通常の任務として規定されている。この歴史の中で災害派遣という活動に対してさまざまな判断を迫られる場面があったことは想像に難くない。指揮権者、派遣時期、活動内容等、これらの判断と積み重ねが陸上幕僚監部により『災害派遣の参考』(陸幕運第4号(12.1.11)別冊)としてまとめられている。今回、災害派遣に関する法令、規則、関連資料等約370ページに及ぶ資料を情報公開請求により入手したので簡単な紹介を行いたい。

概要

 本資料では、災害派遣とは何かというところから始まり、各ケースごとの対応基準、自衛隊法、災害対策基本法など災害派遣関連法規、訓令・達、各省庁との協定や自治体との協定文例が掲載されている。

若干の注目点

災害時における救援航空機等の安全対策マニュアル(平成8年1月26日)

 阪神・淡路大震災大震災において、陸上自衛隊が王子公園へリポートの上空についてnotamに基づき、事実上の航空管制を行っていたのは広く知られるところとなっている。

 この文書は(おそらく)運輸省航空局(当時)が関係機関(警察庁、防衛庁、運輸省、海上保安庁、郵政省、消防庁)との合意の上作成したとされるものである。自衛隊関係で注目される点は、今後同様の事態が発生した場合にも阪神・淡路大震災大震災同様の措置をとることが可能となっている点である。(3航空機安全対策(2)運輸省航空局の措置9匐交通情報の提供についての周知)

 また、(い修梁勝砲任狼澑膤萋旭奮阿了觧“行、航空写真撮影について管制機関又は航空交通情報の提供の実施者と十分に調整を実施するよう協力を求め、救援活動に支障がある飛行を行っている運行者に対し運輸省航空局が協力を求めること。さらに危険な飛行を行う航空機の運行者に対しては運輸省航空局が適切な措置を講じることが定められており、能力の面から主として自衛隊が行うことになると見られる場外着陸場周辺に対する航空交通情報の提供に従わない場合は、自衛隊が直接取り締まるわけではないものの、航空当局により必要な措置がとられるとされている。

災害派遣の初動(偵察)

 阪神・淡路大震災大震災以前では初動の偵察活動について、「演習」として行ったことがあるが、本書によれば「一般命令」又は「行災命」処置するように指示されている

損失補償と損害賠償

 平成7年の災害対策基本法改正により、自衛隊の権限か強化されたことに伴い損失補償と損害賠償に関する見直しが行われ、損失補償(適法な公権力の行使により特定個人に与えた経済上の損失に対する填補、ただし法律上填補することが定められていなければならない)は自衛隊の行動が市町村長等の権限の代行、補完であるから自治体が行う。

 損害賠償(民法上の不法行為(交通事故その他)に対する損害の填補)について、以前は自治体のと正式な協定により自治体が負担することがあったが、自治体が損害賠償することについて協定以外の根拠がないため、今後は協定を求めず自衛隊が損害賠償を行う。

急患輸送の根拠

以前の特別企画にて、その根拠に疑問を持っていた急患輸送の根拠であるが、本資料によれば現行法上、離島における医療サービスの提供(診療所の設置および離島から適切な医療施設までの患者輸送手段の確保)は地方自治体の責務とした上で、本件活動が一見特定個人に対する活動と取られかねないことを認めている。この部分は私が以前法的根拠があいまいであると指摘している部分であるがこの件に関しては次のような解釈を行っている。

 これを災害派遣とするのは本来公の機関が提供すべきサービスが提供されていないという社会的欠陥の是正を公の要請により行うということにより、公共性の原則を見たいしていると考えるからである。ただし、この場合にあっても、緊急性の原則および非代替性の原則が満たされる場合に限られることはいうまでもない(1-25)

 このように、災害派遣3原則のうち、まずひとつの原則(本件の場合は公共性)に注目し災害派遣を行うことの根拠とすることは、災害派遣として行うべき活動か否かのボーダーライン上にあるものの自衛隊のみがなしえる活動又は緊急に措置が必要な活動の解釈に使われる手法である。事例としては、雲仙岳噴火災害派遣があげられる。

 この派遣は、1600日以上に及ぶ長期間の派遣であったが、この中で3要件の内「緊急性」の要件が長期化に伴い薄れており、見方によっては「公共性」すら怪しい(墓参支援、家財運び出し等・ただし、被災住民および復興行政を円滑に進めたいと願う地元自治体にとってとって切望された活動であったことはいうまでもない。)活動が含まれていたことは周知の事実であり、実際にほかの災害派遣でも行われているところである。このような活動においては「非代替性」(装備、練度の面において自衛隊のみが危険な警戒区域内での活動をなすことができる)という観点からこれを災害派遣活動として実施している。

臓器移植

 臓器移植に伴う臓器の輸送は現行法上災害派遣(隊法83条)では行うことができない。(臓器移植を受ける個人の受益に帰するもののため。)(急患輸送との兼ね合いで私的にに解釈すれば、もし自衛隊が災害派遣として行う場合は臓器移植を受けなければならない疾病が「災害」であるか地方自治体が側に移植用の臓器を常備する義務が生じていることになるが、現行法上は疾病は「災害」でなくまた、自治体は臓器の常備までは求められていない。)

 臓器の輸送について第一義的には(社)臓器移植ネットワークの保有する緊急車両、新幹線等公共交通機関、チャーター航空機等を使用し輸送されることになっている。

 臓器の輸送について防衛庁自衛隊が協力する場合は、東京女子医大病院における臓器移植に際しての協力(平成13年7月26日)のように自治体からの要請により医療機関近隣の防衛庁施設を一時的に使用させる場合や、国又は地方自治体の要請に基づき自衛隊法第100条(土木工事等の受託)の規定または、官庁間協力により自衛隊の航空機による搬送の協力を行うことはありうるとされている。

最後に

 ほかにも興味深い点が多くあるが、今回は上記の点にとどめたい。本資料は災害派遣の試行錯誤を反映した資料として興味深く、災害派遣の歴史についてある程度の知識があれば50年間の先人たちの考えに思いをはせることができるものであった。なお、本資料の目次(ただしサイズの大きな画像が9枚あります合計1.8mb)を掲載するので、興味のある方は参照されたい。(法、訓令、通達等についてはインターネットで参照できるものもあります)

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