自己破産(追加事項)@

◎ 自己破産について

 自己破産という行為についての考え方だが、相談者の多くがよく言うセリフに、「借りたものはちゃんと返したい」とか「自己破産はモラルに反する」とか「破産すると債権者に多大な損害を与えることになる」等々がある。だが、返すといっても現実問題無いものを返すことは不可能だし、モラルに反するのは返す資力の無い者に過剰に貸し付ける業者も同じ。また、業者への迷惑は、返せないものをいつまでも引きずって、回収業務や債権管理を長引かせる方が大きい。実際業者の多くは、返せないならさっさと破産して、「貸倒処理」に回した方が簡単でありがたいと考えている。「貸倒処理」に回せば、年末の税務処理で損害額を減らせるし、財産処分があれば多少の損失補填もできる。こうした実情に加え、現行の破産法は「債務者の救済・更生の上に成り立っている、国が認める制度である」事を、ぜひ認識していただきたい。

◎ 自己破産するとどうなるか?
 
 まず前述した問題について言えば、「破産をしても戸籍に乗ることは無い」。戸籍を保管する役所の「破産者名簿」には記載されるが、これは破産宣告を受けてから免責を得るまでの一時的なもので、それが外に漏れることは無いし、免責確定後に身分証明書を発行しても「破産者でない」旨の記載となる。子供については法的に別人格と見るため、「子供に影響が及ぶことは無い」。また、破産手続きにおいて、裁判所が債務者とその代理人、債権者以外に通知を出すことはないし、弁護士には守秘義務があり、債権者が情報を流すこともプライバシーの侵害に当たるので、「破産についての個人情報が周囲に知れることはほとんど無い」。唯一、「官報」という新聞には記載されるが、一日あたりの情報量は膨大で、そこから1名を見つけ出すのは至難の業だ。仕事については、財産を所有している場合のみ多少の制約は受けるが、その職種は特殊なものが多く一般の方にはほとんど関係ない。普通のサラリーマンなら全く心配ないし、破産の情報を勤務先の上司などが知ったとしても「破産を理由に会社を辞めさせることはできない」とされている。何より、「自己破産」の制度は債務によって困窮する状態を打開し、人生の再出発のチャンスを与えるためのものであり、債務者に落伍者のレッテルを貼ったり、法的に束縛するものではないので、破産によってその後の生活に支障をきたすことはほとんど無い。もし破産後に多くの支障が残るのであれば、現行の破産法の意味がなくなってしまうのだ。
 そもそも自己破産とは、回収不能に陥った債権に対し、債務者が所有する財産を処分・換金して債権者に分配することで債務問題を解決しようというものだ。そして、その後の免責手続きによって、返済の法的義務を免除してもらう。このとき債務者にたいした財産が無ければ、財産処分をすることなく免責となる。前記の財産処分をする場合を「管財事件」と言い、財産処分が無い場合を「同時廃止」と言う。
 「管財事件」の場合、債務者はいくつかの制約を受けることになる。ただしその期間は、「破産宣告」を受けて破産者となってから「免責」が確定するまでの、ほんの数ヶ月の間だけである。

 しかし、一般のサラリーマンなどであれば、制約を受ける職業ではないし、財産といってもそれほど高額なものがあるとは思えない。住宅を所有していても大抵はローンを組んでいるだろうし、ローンの残高の方がはるかに大きければ財産とみなされずに同時廃止になる場合が多い。給与の差し押さえがあっても、差し押さえ範囲はおよそ4分の1までだし、それで最低限度の生活が維持できなければ差し押さえの範囲を狭めることも可能だ。ちなみに、年金の場合であれば、差し押さえの対象にはならない。今後の借入れやローンについては多少不自由するだろうが、破産原因となったそうした行為を慎み、今後は何事も現金でのやりとりを心掛けるつもりなら、これも大した不利益とは言えないのではないか。返済不能に陥った一因が給与削減やリストラにあったとしても、今後返済に充てる債務が消えるのだから、何とか生活は維持していけるはずである。何より、サラ金やカードでの借入れをしないことを心掛けるべきだ。生活が苦しくなった場合はまず、行政や身内に頼るべきだろう。それが両者の存在意義なのだから。

◎ 同時廃止と管財事件

 財産が特に無い場合に、管財人が管理して行う財産処分・換価・債権者への配当の手続きをしないものを「同時廃止」と言います。これに対し、財産がある場合の手続きが「管財事件」となります。管財事件の場合、財産処分の目的は、資産価値のある財産を競売などで換価し、債権者の債権に対する配当に充てることにあります。よって、売却または処分しても換価できないものに対しては、財産とみなさず処分の対象外となります。例えば、車を所有していても、6年以上使用している中古車などは売ってもお金にならないから、そのような車は取られないでしょう。また、住宅ローンを組んで購入した住宅の場合、破産手続き中の時点で、売却した場合の金額よりローン残高の方がはるかに上回る不動産であれば処分してもプラスの金銭が発生しないため、財産とみなさず同時廃止扱いにする場合が増えているようです。
 財産の有無は、破産申立て時に債務者から提出される財産目録などが元になります。裁判所は、その申立てに嘘が無いという前提で応対します。しかし弁護士を代理人に立てずに個人で申し立てた場合には、虚偽の可能性もあることから、調査の意味も含めて管財人を選任することがあります。提出書類の記入漏れや記載内容の誤りは注意されますし、破産手続きの中で「嘘偽り無い」旨の宣誓もしていますから、後で嘘が判明した場合まずいことになります。取られたくないものがある場合でも、正直に書き出した方が良いでしょう。生活上で最低限必要な物品や給与の4分の1については差押えができなくなっていますし、住宅を競売にかけるといってもすぐには処分できないのですから、生活に困ることは無いはずです。
 管財事件における財産は、「破産財団」として管理・処分されます。債務者自身が勝手に処分することはできません。債権者がそうした財産について強制執行などの手段を講じてくる場合があっても、破産財団は破産裁判所の管理で処分され、当該債権者全てに公平に分配されるべきものであるため、財産の保全処分が見込めます。ただし、抵当権が設定された不動産などについては、「別除権」としての担保物件の明け渡しが認められます。


◎ 破産手続き中の取立てへの対応

 「貸金業規制法」に関する事務ガイドラインでは、「調停,破産,その他裁判手続きを取ったことの通知を受けた後に、正当な理由無く支払いの請求をしてはならない」と謳われている。破産を申し立てる場合、大抵の方は弁護士を代理人に頼むだろうから、まずは弁護士から「受任通知」を送ってもらう。取立てを行っている債権者が破産申立てをした「債権者一覧表」に記載されている業者であれば、裁判所から「意見聴取書」が最初に送付される。以降、破産宣告時に破産通知と債権届出書、管財事件で行われる債権者集会の通知、免責決定前の意見聴取書、免責決定時の決定通知書が送られる。
 破産を申し立てるからには「返済の資力は全く無い状態」ということだから、破産の申し立てをしたことを正直に業者に伝える。このとき、内容は電話で伝えるより証拠が残る「内容証明郵便」を使い、「破産申立て通知書」を送った方がよい。通知書には、申立てをした日時、裁判所名、破産事件番号を記載し、手続き進行の妨げにならないよう協力を求めるなどの文面を添えればいい。破産宣告時においては、「破産確定証明書」の発行を裁判所に申請し、そのコピーも送付する。
 債務者が破産を申し立てたと知れば、債権者が複数ある場合、その内の何件かは債権を放棄する可能性もある。後は、残った債権者に対し個別に何らかの手段を講じればいい。このときの手段としては、弁護士からの通知、金融課などからの行政指導、裁判所からの取立て禁止仮処分、訴訟の提起、警察への告訴などが検討できる。中には、業者の方から和解案を申し出てくるところもあるだろう。しかし、その内容が不利なものは応じないこと。
 白紙委任状を元にした公正証書による強制執行を起こされた場合は、証書の作成において公序良俗または法に反する部分があったことを主張するなど、請求異議の訴え(裁判所への不服申し立て)を行う。そして、債務額の何割かを保証金として納め、強制執行停止決定の申し立てを行って執行を止める。

 債権者が行う、より強力な債権回収手段としては、強制執行がある。差し押さえの対象は、ほとんどの場合給与か、車や住宅などの財産になる。これらは、破産手続きにおいては「管財人」が管理、処分することになっている。特に担保権の無いものに関しては、債権の比率に応じて各債権者に公平に分配されるべきものとなるため、個別の強制執行については異議申し立てや保全処置などの対抗策が設けられている。給与以外の財産がとくに無く、「管財人」が付かない場合でも、強制執行の執行権は地方裁判所にあるため、同一裁判所内で破産手続きが進行中だと判明した時点で給与に対する保全処置が見込めるだろう。そうやって引き伸ばしているうちに破産宣告が出れば、起こされていた強制執行の手続き自体が失効となる。
 ちなみに、強制執行の申し立ては簡易裁判所に出す。流れとしては、「支払い督促」⇒「仮執行宣言」⇒「強制執行」の順となるが、それぞれの間には債務者が異議を申し立てられる機会が設けてある。つまり債務者は、実行されようとしている強制執行に対して、少なくとも2回中断ができるということだ。また、実際の執行権は地方裁判所にあるが、決定までの手続きは簡易裁判所で進めることになる。ただし、「強制執行認諾約款付きの公正証書」を交わしている場合は簡易裁判所での手続きが省かれてしまい、公正証書を債務名義として即地方裁判所での執行手続きに移るので注意。簡易裁判所は、申し立てがあればその通りに債務者への通知を送付する。だが、先にも述べたとおり、最終的には手続きは、執行権を持つ地方裁判所に手続きが移行された時点でストップしてしまう。それにもかかわらず、業者が強制執行の手続きを起こすのはなぜだろう。それは、目的が「脅し」にあるからだと思われる。たとえば、強制執行についての知識があまり無く、破産の申し立てをして一息ついた債務者のもとに、強制執行の通知が来たとしよう。債務者は、「破産の手続き中でも、強制執行が行われてしまうんだ」とあわてると同時に、対象が給与の場合「差し押さえになれば、会社に知られてしまう」と心配するだろう。特に後者の不安が強い場合、債務者によっては、強制執行を止めてもらおうと考えて申し立てを起こした業者に対して個別に返済してしまう。もちろんこれは、債権者への平等を図る上で、禁じられていることだ。しかし、業者の中には、債務者の知識不足に付け込んで、返済行為に走らせようと画策するケースがまれにあるようだ。
 破産宣告が下されるまでについては、以上のような動きが考えられるが、一番注意が必要なのは破産宣告後だ。破産宣告が下されると、債権者がそれまでに起こしていた強制執行手続きは失効となる。さらに、破産宣告までに確定していた財産は「破産財団」として管財人の下で管理・処分されていくものとなるため、それについての新たな強制執行もできなくなる。しかし、これが「同時廃止」(財産がとくに無く、管財人による財産処分をせずに破産手続きが終了するもの)の場合、破産宣告後から免責確定までの間に発生する新たな収入(新得財産)については強制執行の権利行使が認められているのだ。こうした破産宣告後(大抵の場合、免責手続き中)の強制執行には、次のような対処を検討しよう。

@ 既に破産宣告と同時廃止の決定が出ていることを相手業者に知らせ、申し立ての取り下げを交渉する。通知に際しては、破産宣告と同時廃止の「決定正本の写し」を付け、内容証明郵便で文書を送る。

A 同時廃止で無く、管財事件扱いにしてもらう。管財人選任費用(予納金)が上乗せになるが、管財事件であれば個別の強制執行を受けずに済む。

B 強制執行に対して異議を申し立てた場合など、訴訟(貸金返還訴訟)に持ち込まれたときは、出頭の期日を延ばす、判決後に上級裁判所に控訴するなどして、裁判の引き伸ばしを図る。同時に破産裁判所に対して、免責手続きを早めてもらいたい旨の上申書を出す。判決が確定する前に債務の免責の方が確定すれば、訴訟手続きは中断となる。

C 免責確定までの訴訟引き伸ばしに失敗したり、公正証書の効力を発揮されたりして、免責確定前の数ヵ月間に給与などを強制執行された場合は、免責確定後に「不当利得返還訴訟」を起こし、差し押さえにあった部分を取り戻す方法も考えられる。ただしこの方法は、過去の判例から見て返還が認められない可能性が高い。

◎ 破産することが難しい場合 ( 「破産できない」ということではない。最終的には債務者の気持ちしだい)

@ 現在 無職(=予納金や弁護士の着手金などが払えない)のとき
 ただし、生活保護受給者なら「法律扶助制度」(費用の立替制度)を利用して手続き可能。生活保護を受けていない一般の方がこの制度を使うためには、扶助協会での手続きの際に数万円を払わなければならない。

A 今は仕事をしており収入があるが、警備員や保険の外交員など破産によって制約を受ける仕事であり、破産宣告後に収入が無くなってしまうとき

B 自営業を営んでおり、融資が継続できなければ事業の維持ができない(融資をしてくれている業者が債権者にあたる場合や、破産後に新たな資金調達先が必要でブラックになって審査が通らないと困る場合など)

C 無職ではないが、収入が低い上に資金援助してくれる者が周囲におらず、手続き費用が出せない(不足する)とき

D 会社に破産の事実が知れた場合、会社に居辛い、または破産以外の理由でクビにされる可能性が高いとき
 会社に知られる可能性があるのは、給与の差押えがある時と、雇用契約の上で退職金の規定があり支払金額の証明を裁判所に出す必要がある時など。給料が安く、退職金も出ないという場合であれば、ほとんど知られないで済む。

E 受任弁護士に、誰にも知られたくないという事を強調するとき
(そのように配慮はするし、それでなくても知られる可能性は無いに等しいが、保障まではできないため)

F 債務のほとんど全てに保証人が付いており、「保証人には絶対に迷惑をかけられない」と言ったとき

G 過去10年以内に、破産手続きで免責を得ているとき

H 不動産や車などを、どうしても手放したくないと言うとき

I 仕事が忙しいなどの理由で、弁護士との手続きや裁判所への出廷などの時間が割けないと言うとき

J 債務額が少なく、任意整理で充分に返していくことができるのに、「破産の方が安く済むし、楽だから」という選択だったとき
 「少額」とみなす具体的な金額の基準は、特に定められていない。過去には、130万円の債務で破産が認められたケースもあった。破産する状況かどうかは、裁判所の判断しだいだ。

K 他人の名義を借りて、または配偶者に内緒のカード等による借入れで、名義人本人に打ち明けることができないとき。または名義人本人が破産申請を承諾しないとき

L 「免責不許可事由」に該当する可能性が高いとき
借金のほとんど全てをギャンブルに費やした / ほとんど全ての借り入れが破産申立て直前 / 他人の名義を不正に使用した/ 破産申立て直前または申立て後に財産の名義変更や隠匿をした / 借り入れ契約時に虚偽の記載をした/ 「買取屋」に引っかかり、カードローンで購入したものを転売した・・・・・・・etc

◎ 2度目の破産
破産をすればそれまで抱えていた借金は無くなりますが、ケースによっては同時に財産や仕事、人間関係などをなくす場合もあり、生活レベルが最低限に陥るケースもあるでしょう。そんな時、名簿屋などに流れたブラック情報等をもとにヤミ金融から融資する旨のダイレクトメールが来ると、他に借りるアテも無いからと、そこへお金を借りに行ってしまう人もいるようです。または、新聞や雑誌の広告、投函されたチラシや電話ボックスに貼ってある貼り紙などを見て、自分からヤミ金融に走ってしまう人もいます。こういう業者ははなから法を無視して犯罪行為を行っているので、その後の穏便に完済までもっていくのは大変困難です。法を無視しているため、弁護士が法を盾に交渉しても簡単には片が付かないケースもあります。その他の行政に頼っても、解決の難しさは同じです。行政処分で店が無くなっても、個人的に取り立ててくる業者もいます。2度目の破産ができればいいのですが、一度破産をして免責を受けると、以後10年間は次の免責を得ることができません。破産宣告まではおろす事ができ、その旨の通知は各業者へ行くため、破産を知った業者の中にはその時点で債権回収を諦める所もあるかもしれませんが、2度目の免責がおりず債権が消えないことを知っている業者からはそのまま追いかけられます。運良く、債権放棄する業者が多かったなら、減った債務を一括で払って片ずけられるかもしれませんが、あまりにも危険な賭けと言えます。ですから、いくら破産によって生活が厳しくなろうとも、極力生活を切り詰めたり、身内の援助を得るなどして、業者の誘いには乗らないよう注意して下さい。

◎ 自己破産の管財事件における管財人に積み立てる予納金(およそ50万円)をはじめ、「予納金」という名目で納める金銭は、必要以上の納付があった場合返還される。例えば、管財事件として手続したが特に財産が無いことが判明して「異時廃止」に移行した場合や、申告どおりの財産はあったが予定より早くあっさりと処分できて管財人の報酬予定としての予納金額が変わった場合など。民事再生手続でも、再生委員の成功報酬として納める予納金であまりが出れば、申立て人に返金される。これは、切手で納める予納郵券についても同様。

◎ 自己破産の申立て時などに支払う予納金は、債務者以外の第3者が払うこともできる。他の方がその方の名義で予納したとき、予納届けに返還を求める旨の表記をすれば、破産財団で手続費用が余った範囲で予納名義人に返還される。

◎ 不動産を所有していても、以下の場合には自己破産で同時廃止扱いになる場合がある。

住宅ローンの残債務が、売却価格の1.5倍以上になるとき
不動産の売却価格以上の抵当権の設定(国税の滞納処分による差押え分を含む)があるとき
債権者の意見を踏まえて審査した結果、財産としての価値がほとんど無いと認められるとき
不動産以外に一切財産が無いとき

不動産の評価額査定については不動産鑑定士に頼んだ場合高額な費用がかかるが、所有不動産の近隣の不動産業者に頼んで不動産評価額の証明書を作ってもらい、それを提出すればいい。このとき、書面は2つの異なった不動産業者に作成してもらい、それぞれに不動産業者の名前を記入し、押印する。他に、競売の最低売却価格が記載された期間入札などの通知書、路線価格に関する書面、固定資産評価証明書、近隣の不動産業者による不動産評価額についての代理人弁護士名義の報告書などの提出が必要になる。

◎ 東京地方裁判所での破産手続きは、書類や手続の簡略化で、終了までの所要日数がかなり短くなっている。しかし、せっかく裁判所の手続がスピードアップしても、弁護士との打ち合わせや申請準備に時間がかかっていたのでは意味がない。そこで、弁護士に相談する前の段階から早めに必要書類などの準備をし、弁護士の事務所に訪問する際にはだいたいの書類が持参できるようにしておくと良い。債権者については名称、支店名、住所、電話番号、借り入れ日時、借り入れ金額、借入残高、保証人・担保の有無、利息、月々の返済額などを把握しておく。そうすれば、早急に「受任通知」を送付して催促を止めることができる。あと、戸籍謄本や住民票など、取り寄せに時間がかかるものは早めに申請しておく。債務を負った経緯や家計の状況もまとめておく。どのような資産があるかも、ある程度調べておく。弁護士事務所に行くときには、即手続が可能なように、印鑑(認印でよい)を持っていく。弁護士費用が事前に多くあるほどよいので、法的手続きを考え始めた時点から極力返済より弁護士費用の貯蓄にお金を回す。収入が無いなら、早めに生活保護を申請する。そして、生活保護受給証明書をもらう。これを持って最寄の法律扶助センターか弁護士会の窓口に行けば、扶助協会の立替制度が利用できる。生活保護が受けられない場合は身近な方に援助を求めてもいいが、最初に 3〜5万円ほど用意できれば扶助制度が利用できる場合もある。自分名義のカード類は、全て弁護士事務所に持っていく。カードというのは実はカード会社等、発行先の所有物なので、使わない場合には返却する。弁護士がカードにハサミを入れ、郵送で返却する場合が多い。

◎ 債権者に「自己破産をするつもりだ」と伝えたとき、「詐欺で告訴するぞ」と脅されるケースがたまにある。特に、多重債務で自転車操業状態のとき、「まわし(借り入れては返済に充てることの繰り返し)は犯罪にあたる」と言われ、「免責は下りないから破産申請はするだけ無駄だ」と、考え直すよう要求してくる業者がある。しかし、債務者側に返済の意思があり、結果的に返せなくなったということなら、詐欺行為には該当しない。

◎ 破産申立者が生活保護を受けている上に精神分裂病だったケースで、審尋を省いて破産宣告を下した例がある。

◎ 自己破産の管財業務で、差押え対象以外の家財道具や電化製品が差し押さえられたとき、債務者以外の第3者がそれらを買い取って残す方法がある。差し押さえられた物を一括して買っても、それほど高額ではないはずだ。

◎ 自己破産を申し立てるのであれば、返済の引き落としに使っている口座はすぐに解約した方がいい。そのままにしておくと、自動的に引き落としが続いてしまう場合があるためだ。

◎ 裁判所で自己破産の申請が受理されたとき、取り扱いの整理番号として事件処理番号が付く。その後の裁判所手続きにおいて、度々この番号の提示が必要になるし、債権者への通知に記載することもある。また、裁判所での決定事項を掲載する「官報」にも、決定内容とあわせてこの番号が記載される。だから、申立者は一応自分の事件番号を知っておいた方がいい。ちなみに、「平成○年(フ)第○○○号」の(フ)は破産事件処理番号、「平成○年(モ)第○○○○号」の(モ)は免責事件処理番号を表す。

◎ 
各裁判所によって様々だが、自己破産の手続についてはその処理件数の増加から、手続きの簡略化や時間の短縮の方向に動いているようだ。しかし、それだけ債権者の損害も増えることになるし、債務者だけに有利では公平さを欠いてモラルハザードを起こしかねないため、審査自体は厳しくなっているようだ。東京地裁を例にとると、弁護士が代理人として申し立てた場合には問題となる要因も少ないだろうという判断で、簡略化されてきた。しかし、個人で申し立てた場合には、書類上の不備や問題要因の隠蔽などがあるかもしれないということで、今まで通り時間をかけ、場合によっては財産が無い人でも管財人を立てることになる(その分費用が50万円アップ。下手をすると、弁護士を頼むより個人の方が、全体の費用が高くなる)という。そのため、東京地裁に個人で破産申立手をしようとすると、受付で代理人弁護士を立てるよう勧められ、弁護士を頼まない理由を聞かれる。「お金が無いから」と回答した場合には、法律扶助協会を紹介される。実際、東京地裁で受理した破産事件の98%は、弁護士が代理人として申し立てたものだという。弁護士を頼まない場合は、不慣れな書類作成に時間を割かれ、書類上の要修正部分や不備がある度に裁判所に足を運び、書類のチェックは通常より厳しく、審査期間も長くなり、おまけに費用も高くついてしまう。また、債権者の催促にも個別に対処しなければならない。あげくに、弁護士が代行していればすんなり許可されたであろう免責決定が、陳述説明や書類の記載内容がうまく書けずに裁判官の理解を得るに至らず、免責不許可または一部返済になる事すら起こりうる。そう考えると、やはり弁護士を頼んだ方がいいようだ。楽だし、簡単だし、場合によっては安くなる。

◎ 生活保護の受給は、不景気の影響で申請者が急増しているため、審査通過が難しくなっている。そういう時は、役所で「民生委員」を頼んで口添えしてもらうなどすると有利だ。一方、扶助協会の方も、扶助制度の改正で生活保護受給者以外の低収入者も利用可能という建前になったものの、実際は利用者急増でむしろ以前より審査は厳しくなった。これについては、まず弁護士会に行き、そこで扶助協会を積極的に利用している弁護士を紹介してもらう。そして、その弁護士から扶助協会に予約の電話を入れてもらうのと同時に、申し込みの際の「審査通過に有利な記入のしかた」などのアドバイスを受けるといい。ちなみに扶助協会は、建前上の業務が「申請書類の作成代行」なので、いくら低収入者や生活保護受給者であっても、先に自分で申請書類を書いてしまった場合には利用できなくなる可能性があるという。