第一回 鈴木淑夫世田谷フォーラム

第三部 鈴木淑夫・植草一秀対論 全文 
年金問題解決への道筋
 

-少子高齢化社会の日本における年金制度を設計する-

  

司会(佐藤):皆さま色々アンケートをご提出いただきましてありがとうございました。これから速やかに集計しまして、なるべく皆さんのお声を先生方に聞いていただき、ご意見をお伺いしたいと思います。

 尚、この討論がベースとなりまして、「鈴木淑夫世田谷フォーラム」が提案する「年金政策の提言」になろうかと思います。このやり方は、職業政治家ではない市民からの政策提言ということで、新しい民主主義の形がここから出来るんじゃないかと、司会の私自身も少しワクワクする気持がしております。

 さて今、年金制度と申しますと、難問でございまして、しかもホットな問題ですね。今、年金積立金の、600兆のうちの4割ぐらいが不良債権化しているんじゃないかというようにも言われております。一方で若い人たちの国民年金の未払いが非常に急速に増えていると。先程、植草教授の方からもありましたけれども、それも4割近い人が納めていないようなことが起こっております。どうも若者たちは、この年金というものに対して拒否反応を示しているのではないでしょうか。そんなとこを含めて、お二人の先生に、一時間ほどご討論いただいて、有意義な時間にしたいと思います。

 では、鈴木先生の方から、問題提起をしていただきたいと思います。
 

 1 現行の年金制度は少子高齢化の時代に馴染まない(鈴木)

鈴木:それでは年金問題について、植草さんと討論をさせて頂きます。また皆様方からのご質問頂いて、お答え出来る範囲でお答えしたいと思います。

 私は鈴木淑夫後援会の会合で年金のことを時々お話していたと思うんですが、そこでお話していた基本的な考えと、考え方というのは次のようなものです。さっき植草さんもおっしゃいましたけれども、今の年金というのは、働く世代が納めた保険料をその時点の高齢者に年金として給付する、これを負荷方式と言います。それに対して働いている間に年金を積み立てていって、その自分が積み立てたものを年とってから給付としてもらうと、積み立てたものは運用しますから少し増えている。これを積立方式といいます。年金保険には今言った負荷方式と積立方式と二つあります。そして厚生省は当初、基本的には積立なんだと。ちょっと違うところがあるから修正積立方式だという言い方をしていましたけれども、日本の厚生年金、国民年金、社会的な皆保険制度をとっている年金は全部基本的には負荷方式、働く世代がそのまま払う方式になっています。

 そういう方式は少子高齢化の問題なんかが発生する前の、植草さんがさっきおっしゃった1973年、高度成長18年間の最後の年に作ったわけですね。で、その後、高度成長のおかげで先進国に追いついたら、その結果として少子高齢化が進みはじめた。まあ少子高齢化が進みはじめれば、これは小学生でもわかることで、払う方の、保険料を払う方の働く世代の数が相対的に減って、そして給付を受ける高齢者、一般的には65歳以上ですが、60歳からもらったりとか色々法令がありますが、高齢者の方が増えていく。そうすれば、これは成り立たないに決まっていますよね。保険料を払う人達が減って、給付を貰う人達が増えて、しかも負荷方式で、その払い込んだものをもらうんだということであれば、これは足りなくなるに決まっている。
 

 2 各党が提案している年金改革の問題点
 
 その足りなくなってくるということに対して、じゃあ、今国会に提出された政府、自民党、公明党の年金改革案というのはどういうことになっているかというと、それじゃあしょうがない、保険料を引き上げましょう。給付を引き下げましょうと。これまた小学生でもすぐ考えつく対策なんですね。でまあ、標準的なケースでいって、今年収の13.58%ぐらいの保険料を、ジリジリ2017年までに18.3%ぐらいまで上げましょう。これ平均的な560万ぐらいの年収の人にとっては毎年1万円ずつ上がるというぐらいの大きな上がりになっていきます。13年間1万円ずつあげられちゃ、13万円上がっちゃう。そしてもらう方はどうかと言うと、現役の時の、現役の年収の今59.3%、標準ケースですが、これ2023年までじりじりじりじり下げていって、50.2%までさげましょうと。こういう案が出ているわけですね。

 これで年金制度は、一番高齢化がすすむ2020年代を乗り切れるという説明をしているんですが、その乗り切れるという計算根拠を全然示していない。全然示していないですね。どういうふうに人口がかわっていくという計算をしているか、どういうふうに経済成長をして、年収が動いていくというふうに考えているか、その説明の根拠をきちんと示していない。それからまたちょっときめ細かい話になってくると、少し積み立ててあるお金があります。600兆ぐらいある。その4割が不良債権化しているっていう大変な話もありますけれども、それも取り崩していくわけですね。ピークの2020年代までに取り崩しちまおうというわけです。そういうのを全部入れた結果、これで磐石なんだという計算根拠を出していないんですね。出してきていない。

 民主党の方が対案を出しましたけれども、これも実は計算根拠を政府が教えてくれないものだから、ある程度不正確かもしれないと断った上である一定の仮定をおいて民主党は案を出しているわけです。
 

 3 年金財源は所得税か消費税か

 私は鈴木淑夫後援会の席上いつも申し上げていたのは、さあそうなっていったら給付を下げて保険料を上げて、こんなものは解決にならないでしょうと。そうしたち、給付についてこれだけ払うということを決めたら、その財源を国民全体が支えざるを得ないじゃないですかと。その財源というのは税金でしょう。税金の場合、所得税か消費税かということになるけれども、所得税というのは実は公平なように見えていて大変不公平だと。所得の把握率が違う。サラリーマンの所得は完全に把握されちまうけれども、自由業の所得はちゃんと把握出来ない。農業もちゃんと把握出来ない。だから所得税というのは公平なようでいて実は把握に大変な差があるから不公平です。そこにいくといくら所得をごまかそうと、結局お金を使った段階でかかってくる消費税の方がやっぱり消費する力に対して公平にかかってくるんですよと。しかも消費税について、福祉目的税にかえる時、食料品といったような基礎的なところを外してしまえば、所得水準の低い人にとって厳しい課税になるというのも、ある程度緩和出来るでしょうと。だから食料品のようなものを外した上で、消費税にかけていくのが実は一番公平にキャッチ出来るんですというお話をしました。
 

 4 公平性からいえば消費税の福祉目的税化がベター(鈴木)

 他方、皆さん方は今保険料で支えているけれど、保険料は公平だと思いますか。保険料は基本的にはお一人様いくらです。消費や所得の水準に関係なくかかってきますからね。特に一番ひどいのは、年金じゃなくて、健康保険、介護保険のところ、もう有無をいわせずかかってくるでしょう。保険料というのは実は、昔の中世の王様が自分の領民たちにかけた人頭税、人の頭かけるなんぼといって税金をかけてきたわけですが、一人いくらという人頭税と基本的には同じものなんですよと。ですから人頭税と同じ保険料、それから所得の把握が色々と違って、以外と不公平な所得税、それからもう消費のところでばっちりつかむ消費税、それに食料品は除外とかいうのをつけて、これ三つ比べてどれが一番皆さん方耐えられますか。みんなで日本のために今日まで働いてくれたお年寄りに年金をあげるんだという考え方の時、どれが、三つの内いいですかというふうに必ず聞いておりました。で、多くの方はなるほど、それはやっぱり消費税を福祉目的税にして、他に使わないで、年金にだけ使うとか。そういう考え方の方が公平だねというふうに理解していただけたと思っていたと思いますが、今お話したことは、私の基本的な考え方です。
 

 それをどこに使うかというと、基礎年金に使う。これは国が全ての日本国民が65歳に達したら保障する最低の年金のレベルに消費税を使っていく。収入が多い人は沢山もらいたいと言うところはもう積立方式の新しい年金に切り換えていく。これは場合によっては民間でも出来るかもしれないんですけれどね。国が社会保険としてやらなくてもいいかもしれません。で、そういうふうにはっきり切りわけてしまえというのが私の基本的な考え方です。
 

 5 消費税は基礎年金にだけ使用-報酬比例は積立方式で(民主党案)

 今、民主党が出してきている案も基本のところは私と同じですね。消費税は基礎年金にだけ使いましょうと。報酬比例のところは自分で積立方式でいきましょうと。そういう制度に向かって今の制度から時間をかけて移行しましょうよと。そうすると今朝の新聞にも出ていましたが、基礎年金のところに消費税を当てるととりあえず3%でいけますが、人口がピークに達して、高齢化がピークに達してきたところで4%いりますねという試算がでています。ただこの民主党案というのは、今の基礎年金は収入に関係なく全ての人に基礎年金を渡しますが、民主党案はそうではなくて、収入が多くて、積立方式で十分年金が貰える人には基礎年金を渡さない。だから基礎年金といわないで、最低保障年金とか言っていますが、そういう福祉年金的な思想の強い基礎年金だというところがちょっと違っています。

 以上、ごく基本的な考え方を言いました。民主党の方式というのはここに黒板があれば一番いいんですが、遠くの方がご覧になれるかどうか、こういうふうにですね、これ縦軸が年金、横軸が所得税。縦軸が年金だとすると、所得の多い人ほど沢山年金を貰えると。こういうふうに上がってきますね。これ積立方式でやろうよと、いうのが基本にある。だけども、所得がこんなに少ない人、年金これしか貰えないじゃないか。これは最低保障の水準より低いねと。それじゃあ国が保障しよう。今、斜線で書いた分だけ国が保障してあげましょうと。そうするとどういうふうになるかというと、収入の全然ない人でもこれだけ国から最低保障年金をもらえる。収入が少ない人についてはだんだんこうのっかっていくんですが、ここまでいったらもう後は最低保障年金は出さないと。全部は積立分でいくと。こういう考え方なんですね。

 ですからこれ今の基礎年金のように、全ての人に払いませんので、この支払い総額は今より小さいんです。それが消費税のとりあえず3%で大丈夫だぞ。ピークでも4%でいけるよといっている理由です。いっぺんにこれやろうったって無理なんで、やっぱりこれは時間をかけて移行するんですね。今まで払い込んでいる人はそれなりに給付を受けることが出来るけれど、ここから先はこの方式でいきましょうというようなことを提案しています。まあ、考え方の基礎は私と同じです。以上です。
 

司会:今、鈴木先生から、民主党案の説明があったと思うんですが、植草さん、そのあたり民主党の今の年金政策について論じていただければと思いますが。
 

 5 財政の面からみれば給付水準の引き下げも視野に(植草)

植草:私が先程配っていただいた資料の21ページをご覧いただきたいんですが、今、鈴木先生がお話されたこととほぼ同一で、実は私は民主党案がいいというふうに思っております。
 

社会保障制度の抜本改革

1)問題の本質       制度の未熟性=1961年に国民皆年金確立
                   ゆきすぎた高福祉設計=1973年に確立
                   600兆円の積み立て不足

2)根本からの再検討  高福祉の維持は負担の激増、激しい世代間不公平をもたらす
                             負担増を緩和するには給付水準引き下げが不可欠
                   給付の高水準維持を前提にしていることが本質的問題

3)財源は二者択一     財源は保険料か税金しかありえない
                   保険料による財源調達は経済合理性を伴わない
                   所得税による財源調達は経済活力の低下を生む

4)新たな制度の検討   「消費課税を主たる財源とする最低保証年金」
                   と「完全積み立て方式をベースとする報酬比例年金」
                   の組み合わせによる「新しい制度」への移行を検討すべし
                   社会保険庁の合理化も重要課題

 一番に問題の本質、二番に、結局、我々がしっかり考えなければいけないのは、選択肢は三つのうちに一つなんですね。(1)高福祉高負担か、(2)中福祉中負担か、(3)低福祉低負担か。国民が一番喜ぶのは当然高福祉で低負担と。これが一番いいんですけれども、これは魔法を使わないとこれは出来ないんですね。魔法を使えばそれも可能かもしれませんが、魔法は使えないという前提に立つと、高福祉を望むんだったら高負担に耐えなきゃいけない。高負担をいやがるんであれば低福祉に甘んじなければいけないと。そこをやはり政治が奇麗事ですまそうとするために前に進まないと。責任ある政治というのは、やはりそこをはっきりと示していくことですね。財政を本当に建て直すというのが、小泉さんがもし本気で思うのであれば、ここに踏み込まずに財政を建て直すのは大事と言うのは本当にもういいどこどりといいますか、奇麗事だけの無責任体質というふうに言わざるをえないと思います。ただ今の高福祉の水準を維持するためには激しい負担の増加が生じると。そうなると当然激しい世代間不公平が発生します。ですからその問題を緩和するには、給付水準をかなり引き下げざるをえないんではないかと。

 財源は先程先生がお話されたように、保険料か税金しかないんですが、保険料というのは基本的に強制力を伴いませんので、割に合わない保険料はやはり払わない人が当然増えます。強制徴収なんて言ってもこれは限界が当然あるわけで、これは強制的にとるのであればこれは税しかないんですね。税には強制力がありますから、今度保険料でなく税を考えなければいけない。
 

  6 財源は所得税より消費税の方が経済合理性がある(植草)

 税は所得税か、そうでなければ消費税ということになりますけれども、所得税の場合ですと一部の人々に非常に大きな負担が出ます。公明党が国庫負担を増やす部分をですね、所得税で賄おうと、こういう案でありますから、より一段とこの一部の人の負担が増える案。金持ちからお金をとればいいんだということなのかもしれないんですけれども、そうすると、先程三つのうちのどれがいいか、保険料か所得税か消費課税かと。

 私は国民全体の社会保障制度ですから、国民全体が広く、出来れば薄く負担するという意味で、消費課税に合理性があると思います。ただ、その逆進性の問題がありまして、所得が少ない人、税の負担が過大になりますので、それは先程、これもご指摘ありましたが、非課税品目、生活必需品は非課税にする。
 

  7 消費税の還付制度導入を(植草)

 それともう一つ私は提案しておりますのは、申告による還付制度と。つまり消費税、所得に比べて払いすぎた人は確定申告で、これは技術的な問題もあるかもしれませんけれども、申告によって払った消費税の還付制度、これを私は導入すればいいと思っています。ですから逆進性の問題は非課税制度と非課税品目の設置とそして申告による還付。これ非課税品目という制度を導入するのにやはり帳簿方式からインボイス方式という形に、消費税の仕組みももう少しガラス張りに変える必要もあると思います。
 

 8 報酬比例年金は自己の積立で最低保障年金は財政からの補填で(植草)

 一番下に書いております新たな制度の検討とありますけれども、基本的にはこの完全積立方式をベースとする報酬比例年金と。ですからこれはもう完全積立ですから、基本は自助努力です。自分で積み立てた分を老後にもらうと。ですからこれはもう民営化も可能ということが視野に入ってきます。これはアメリカなどがやはり年金は自助という、公的給付ではなしに自助というのをベースにしていますが、自分の年金は自分で積み立てると。これをベースにすると。ただ所得の少ない人は、その貰える年金は少なくなりますので、老後の生活で、これは生存権というふうに考えてもいいかもしれませんが、一定の生活水準は国が保障するという意味で最低保障年金と。この部分だけが財政からの持ち出しになりますので、一般財政からの補填と。これが先程のいわゆる最低保障年金ですね。そうしますと、税から負担する部分というのは非常に少なくてすむと。この最低保障年金をどれぐらいに設定するか。一人7万円で、夫婦で例えば14万円とか。まあこの程度かなというふうに思いますが、これも水準の設定によって財政負担が当然変わってきます。
 

 9 新年金制度への移行期をどのように乗り切るか(植草)

 問題は、現行制度をこの制度に移行する過程で、積立不足がこれは結局誰かが穴埋めしなければいけないので、で、あの「政策構想フォーラム」というところがかつて試算を出しておりまして、それは一つの結論ではないんですが、2001年の2月に「年金改革への道筋」というレポートを発表しておりますけれども、この移行期の問題ですね。移行期にどのような措置をとるかと。こういうことは色々なバリエイションを検討すべきだと思います。

 それからもう一つは、このような形で、完全積立方式と、一部の最低保障年金という制度に移行しますと、基本的には社会保険庁はいらなくなる。実質民営化可能ということを考えますと、これも大きな行政改革に繋がる。厚生労働省が保険料方式に非常に強くこだわっておりますのは、この社会保険庁が廃止になるというところを何としても避けたいと。この年金に関連した様々な団体があって、そこが色々な、よくわからないリゾート施設などを作って、損失を大量に発生さしておりますけれども、こういう問題もあります。

 10 厚生労働省の既得権益を守るような改革を許すな(植草)

 結局はこの、もう一つは雇用保険もそうですけれども、雇用保険も保険寮の中から色々と無駄なことをやっているわけですが、まあ関係者の方がいらっしゃったら申し訳ありませんが、今後の問題としまして、それを合理化していくということも含めて、将来非常に合理的な新しい制度を描いて、ただ問題はその移行期の問題がありますから、これ非常に難しいんですけれども、誰しもが納得出来るような制度に移行すると。移行期の問題を具体的に詰めると。やはりこの手順を踏むべきで、今の厚生労働省の考え方は、あくまでもこれまでの保険料方式を何としても死守すると、これを出発点に議論を進めているのは、国民の視点に立った議論ではなくて、厚生労働省の利権を守ると、これがもう前面に出た考え方ですから、まあそういう意味で、民主党案をベースに論議を深めることが望ましいと、私はそう思います。
 

 11 民主党の保険料15%案は自民党18%に対する数字合わせの提案ではないか(会場の意見から)

司会:じゃあ、ここでで会場から出された意見から、先生方に質問させていただきます。「民主党案が、昨日発表されましたが、15%だと言われています。これは与党案の18%に対する単なる数字合わせじゃないか」とのアンケートがありましたが、この点、鈴木先生どうでしょうか。

鈴木:15%は18%より低いでしょう、だからこっちの方が負担は楽でしょうと言っているという、そこを批判されているんだったら、それはやっぱり政治だからそういうところありますよね。だけど、大事なことは、その負担が保険料でなくて消費税、福祉目的税でいこうよと、言っているところが僕は大事だと思うんですね。

 それからこの数字は保険料を使う部分は積立方式の報酬比例年金でしょう。これは何%負担するかは個人の自由なんですね。それは民間で出来ます。報酬比例の積立方式の年金は。だけど国が強制してやる部分についての議論なんですね。それは当然民主党案の方が低くなりますよ。だって消費税使うんですからね。だからどういうご主旨でそう言われたか、ちょっとわからないところありますが。
 

 12 与党案は現行制度を引きずっている(植草)

司会:わかりました。植草さん同じ意見なんですけれども、まあ今両方の意見が出ているわけですね。民主党案と自民党与党の案ですか。そのあたりの根本的な違いを簡単に説明いただけませんでしょうか。

植草:先程のいわゆる報酬比例で完全積立方式と最低保障年金と、これはまったく別の制度で、与党案は現行の保険料方式、社会保険方式というのをベースにしていますがね、これは考え方は違うと思いますが、ただ移行期の問題などがありますので、民主党もまだそこまで積みきっていないというのが現状で、今の制度の延長上に制度を変えるというのは、暫定的な案として出しているんだと思います。

 ただその問題は参議院選挙があって、選挙用の争点としてどういう戦術を使うかとした時に、これもそういう意味では民主党も若干無責任な部分があると思いますけれども、これだけ増税になるんだと、こんなに負担が増えるんだというのを争点にして、民主党の案はそんなに負担が増えないというのを、選挙用の戦術としてとっているという、それで、やはり政治的な判断ということではないかと思います。
 

 13 年金制度における「新アリとキリギリス論」(植草)

 その将来的に、報酬比例のところを完全に積立方式にすれば、独立採算で民営化も出来るわけですが、ただそれも完全に個人の選択に委ねると何がおこるかと言うと、結局年金積立ないとかなり出てくるわけですね。これアリとキリギリス論といいますか、昔のアリとキリギリというのは、アリは夏も一生懸命働いてですね、冬に豊かに暮らしたという話です。キリギリスは夏は遊び呆けてですね、冬、寒さに凍えて死んでしまう話ですが、現代版のアリとキリギリスというのは、キリギリスは夏、遊び呆けてですね、アリは夏、一生懸命働いて、冬になったらアリは過労で死んでしまってですね。キリギリスがアリが蓄えたお金で豊かに暮らしたというのが現代版のアリとキリギリスなんて言われています。

 けれども、完全に個人にまかして、年金は積み立てないという人か出てくると、その人達が老後に路頭に迷った時に、じゃあそれは自己責任で片づけられるかというと、さすがに今度はここ生存権だというような話になります。何て言いますか、モラルハザードということも起きてくるので、国民皆年金という仕組みは一応そういう制度の中に個人を全員引き入れた方が、国として安定が保たれるという考え方だとすれば、完全積立方式でも全員何らか加入の義務、その中に選択肢が何通りかあってもいいと思いますけれども、低負担低負担でいくか高負担高福祉でいくか、その選択がバリエ-ションがあってもいいと思いますが、そこの問題は残るのかなという気はします。

 それと現行制度の問題で言いますと、現在、非常に手厚い年金ですが、これはやはり戦後の日本の復興、国の再建に貢献した人々に報いると。これが保険料の積立に対してかなり手厚い年金給付の論拠ですけれども、問題は、いよいよ団塊の世代がそろそろ給付にさしかかって来る時に、団塊の世代もその恩恵を与えるべきか。団塊の世代は私より一つ世代の上の人達ですけれども、そこまで何というか苦労していないんじゃないかというかですね、国が手厚くする必要があるのかどうか。団塊の世代のところで切って、少し給付を下げれば相当これ設計は楽になるわけですね。
 

 14 移行期の財源不足には国債発行も一案(植草)

 それが今後の大きな論点だと思いますので、ですからここはやっぱり二つに分けて、現在の制度を将来別の制度に変えるという話が一つあります。それをもし変えるとした時に、その移行期の問題で、どの世代からどういう形で移行させるか。積立不足がありますから、誰か負担しなきゃいけないんです。「政策構想フォーラム」の提案では、例えばその部分は一旦、国債を発行して財源調達をしておいて、もう少し先の将来の世代でならして、負担していったらどうかと。これも一つの提案なんです。そこがまだきちっと区分されて、精密な議論にならない中で、各党がマニフェストといったような形で公約を出さなければいけなくなっているのが今のその議論の少し混乱の背景じゃないかなと、こんなふうに思います。
 

 
 15 年金問題で国家への信頼が揺らいでいる(会場の女性の声)

司会:今ここに二人の女性の方からこういう意見が寄せられています。「年金問題とは国家の信頼の問題である。現行の年金制度は、余裕の富裕層への悪平等の面もあるのではないか。」、「今回の年金改革では、くれぐれもモラルハザードを招かない抜本的な仕組みをつくらなきゃいけないのでは」というような意見です。現行制度には、色々な不平等感というのがあると思うんですが、若い人が保険料を払わないというのも、何かそういう不平等への抵抗みたいなものとして考えられないでしょうか。また今、悪名高いグリーンピアですか、ああいうものもありますね。慶応大学の榊原先生だと4割ぐらいが不良債権化していると言われています。鈴木先生、そのあたりの不平等感をどういうふうに払拭しながら年金問題を考えていけばいいのでしょうか。
 

 16 民主党案では高額所得者には基礎年金は給付しません(鈴木)

鈴木:あのですね、不平等感、悪平等感というのは積立の、グリーンピアやなんかに使っちゃって、不良債権を発生さしているという、その問題ではないんじゃないんですか、質問していらっしゃる方は。その問題はもちろん深刻な問題としてあるんですよ。結局、最終的にはこれは植草さん言われたように、「政策構想フォーラム」の言う通り、とりあえずは国債発行して先送りでもしないとどうにもならんですね。

この不良債権化したところはね。ただ悪平等といっているのは、あれですかね、高い収入を得ている65歳以上の人が、基礎年金を含めてばっちり厚生年金や共済年金をもらっているじゃないかと。年寄りの中には相当金持ちもいると。もらった年金を孫の小遣いにでも使っているんじゃないかと。そこじゃないですかね。そこだとすると、民主党案はそれに答えているんですね。つまり今は基礎年金も高額所得にはあげちゃうんだけども、民主党案は上げないわけですね。さっき書いたように、自分で積み立てた分では水準が低すぎる人にこうやってうめるんですから。だからたしかに悪平等なところがあると言われればそうじゃないですかね。そこは民主党案ではなおそうとしているということだと思います。
 

 17 民主党案の欠点は報酬比例の積立の基礎となる国民の所得の補足が困難なこと(鈴木)

 その悪平等じゃなくて僕は不平等な点を一つ指摘したいんですが、民主党案の欠点は、この報酬比例の積立のところで、これ所得を把握して、その所得に対してかかっていくわけですね。所得そんなに正確に把握出来るのと。さっき言ったように所得税が不公平でしょうと。それと同じ程度に民主党案のこの保険料を国民皆年金で国家が強制するとしたら、これ不公平じゃないかと。所得を誤魔化せる人が得しちゃう。所得を誤魔化したりする人は所得を誤魔化して国の保険制度の方を少なく払っておいて、それで誤魔化した分を自分でため込んで、民間の保険でも利用して老後に備えちゃうでしょうねと。だから民主党案をやるんだったら、しっかりと所得を把握しなきゃいけませんぞという議論があるんです。だもんですから民主党はこれを実行する時は、同時に背番号制を入れてきて、所得をしっかり掴まなきゃいけないということを口では言っているんです。だけど実際はかなり難しいとこありますね。
 

 民主党案のそこを回避しようと思った場合の一番極端な案というのは、もう報酬比例の積立は国はやるなと。そんなことは個人がやる問題で民間にまかしちゃえと。国はその最低保障年金だけやれと。それでその財源は消費税からとる。これが一番極端な対案になってくると思いますね。だけどそれをやると、さっきちょっと植草さんおっしゃったように、キリギリスがいるに違いないと。本当に自分で積み立てないで、困っちゃって、最低保障年金を求めてくる。だけど国としては、あなた最低保障年金には該当しませんよ、だってこんなに所得あったんだからなんていう話になっちゃう。そこのところの問題を割り切っちゃうのか、自己責任で、その人が悪いんだっていって割り切っちゃうのか、そういう人まで福祉年金的に救っていくんだと、ちょっと金掛かるね、みたいな話が出てくると思います。
 

 どっちの問題の方を大きく見るかですね。所得の把握が上手くいかないで不公平だよっていう方を大きく見ると私が言っている極端な方の案になりますね。だけどそうやって困っちゃう人をおっぽりだしておいていいのかね、いくら自由社会でもっていう方を重く見ると、強制加入の年金にしなきゃいけない。強制加入の年金で報酬比例をやろうとすると所得把握の問題が出ると。そういうことだと思いますね。それは国民の選択の問題ですね。最終的には。
 

 18 日本はスウェーデン型にすべきか、それともアメリカ型いいか(会場の声)

司会:わかりました。次に、ちょっと極端な質問がきていますので、質問させていただきます。先程これは植草さんが言われた国民がどっちを選ぶかということだと思うんですが、「日本の年金制度は、スウェーデン型の非常に手厚い福祉、年金という制度選ぶべきか、それともアメリカ型の401Kのようなもので自分でやるか、どっちを選択すべきか」というような質問がきているんですが、お二人にお伺いしたいんですが。
 

 19 日本は中庸を重んじる国「中福祉中負担が落ち着きどころか(植草)

植草:スウェーデン方式で、例えば民主党が言っているのは、ベースとしては完全積立方式の報酬比例年金と最低保障年金の組み合わせで、これは仕組みとしてはスウェーデン方式と言われてるものですけれども、ただその負担と給付の水準ということで言えば、この中にバリエイションがあって、その中で低福祉低負担という可能性と高福祉高負担と。北欧の場合には基本的には高福祉高負担という仕組みですけれども、アメリカは完全にこれ自助でありますから、国は基本的に関与しないと。日本とかドイツなどは、世界の社会保障、年金制度の累計で言いますとちょうど中間に値して、日本は社会保険という方式をとっているんですが、中福祉中負担のところを選択してきているんですね。ですからこれは日本人は中庸を好みますので、そのあたりが落ち着き所なのかなという気がします。完全に自助ということですと、先程の結局使い果たして、後は国に頼ろうということになってしまいますので、私はここはやはり皆年金で強制加入。ただ運用は完全積立方式にすればこれは民営化、民間委託も出来るというように思います。

 先程のその所得の補足の部分ですけれども、完全積立方式であれば損得は発生しないんですが、申告した部分を所得が少ないとして小さめのものを選ぶか大きめのものを選ぶかというのもありますけれども、ただその差によって所得の補足の差が税負担の差に繋がってくると。この税負担の不平等という、水平的平等が保たれない。つまり同じ税負担能力がありながら、給与所得者は完全に税負担して、自営業者などで所得をうまく補足されない人は税負担軽いという問題は、私はこれは税制の問題になると思うんですね。所得税中心の方式ですとそういう問題が発生するので、支出税という考え方、つまり支出の水準がその人の担税能力だと。消費課税に課税の中心を完全に移行すると、この支出の水準にだいたい比例的な税負担になってきますので、私はまあアメリカもそうですけれども、所得税の比率を下げて、まあ税率のフラット化を進める一方で、消費課税にかなりウエイトをかけると。ただ先程言いましたように逆進性の問題が生じるので、そこは非課税品目と、それから申告による消費税の還付ということで解消出来るのではないかなと思います。
 

 20 国民が低福祉低負担か中福祉中負担かを選択できる制度もあり得る(植草)

 制度としては完全積立方式の報酬比例。それから税の持ち出しによる一般財源からの資金が入る最低保障年金。で、そのどの程度の設計にするかは高福祉高負担か低福祉低負担か、これは選択の余地がありますが、低福祉低負担と、中福祉中負担の二者択一制ぐらいで、それは個人の自由で選べるぐらいの制度にすれば、私は合理的になるんじゃないかなと思います。
 

 21 所得の補足と消費税還付制度の問題(鈴木)

鈴木:ちょっと植草さんに。二つばかり、質問したいんですが。一つは所得の把握を誤魔化すことが出来た人は、民主党案では本当はもらう権利のない最低保障年金をもらっちゃうんですよ。だからやっぱり不公平が発生するの。ですから、民主党案の弱点はそこなんですね。所得を誤魔化した人が得するんですよ。

 それからもう一つね、消費税の還付ね。これは1年間自分が消費したもののレシートを全部とっとかないといけないという、ちょっと考えられないようなことですから、あんまり現実的じゃないんじゃないかと。その二点どうです。

植草:前者の点は問題として残ると思いますね。ただそれも、これ税制との関連ですけれども、消費課税中心の課税方式にしますと、所得を隠した人もかなり税は負担しなきゃならなくなりますので、そこで良いとこ取りはある程度補完出来ると思います。

 で、逆進性の問題は、まあ完全な税制ではないと思いますので、それなりに欠点はあると思うんですが、消費課税中心の課税がまあまあ合理性があると、ただその中でどうしても逆進性の問題があるという、これクレームが発生するわけですので、そういう方には若干そこの事務手続きはご負担いただくということをお願いすることは、まあ不可能ではないんじゃないかなという気はしますけれど。それは国民全体がそのことについてどう考えるかによると思いますけれど。ただそれが容易に行えるようにするためには、インボイス方式などで、例えばレシートの中で非常に簡単にですね、その課税などが計算されて、そえをもう、まあ共通の書式などを設定して、それを電算処理して、非常に技術的に簡単にそれが集計出来るようなシステムなどを導入するということが、ITの発展した現時点ではそれほど難しい話ではないかなという気はいたします。
 

 22 所得税は少な目にして、報酬比例の積立は民間に任せる、基礎年金は消費税で捻出を(鈴木)

鈴木:私の個人的な案というのは、わりと極端に割り切っているんです。まず一つの前提はね、どんなに頑張ったって所得はきちっと把握出来ないよと。公平に把握は出来ないよと。納税番号を入れたところで、納税番号を入れて把握出来るのは金融取引のところだけですよ。普通の取引で入ってくる所得を誤魔化すことが出来る自由業の人とか、それから何かわけのわからない農業とか、そういう人はね、番号を入れたって把握出来ないですね。だから僕は納税番号を入れれば解決するとは全然思っていない。

 そうするとね、出来るだけ所得にかける税金というのは少なめにした方が公平だし、従って皆がやる気をおこすだろうというふうに思うんですね。そうすると保険料っていうのも所得にかける税金と同じだとすると、じゃあなるべくやらない方がいいよと。ですから報酬比例の積立方式の保険を国がやるのはやめたがいいと。そして所得税も下げると。もう働いたら、あんまり税金とられないで、やっただけのものは貰えると。でもいくら所得を誤魔化しても、さっき言ったように消費の段階ではつかまりますから、消費税の方は今度は上げていった方が公平だよと。全部上げるのはダメですよ、今の案はみんな上がっちゃうんですけどね、自民党だと、今の与党案は。そうじゃない。所得税とか社会保険料、特に、年金の保険料、こっちはやめちゃう。

 だから二つ極端なこと言いますよ。ですから積立方式の年金は、報酬比例の年金は、みんな自分で努力してやりなさいと。これからの若い人自分でやりなさいと。それは401Kとよく言われるように、確定給付じゃなくて、確定拠出で、しかも持ち歩ける。職場がどんどん変わろうが何しようが持ち歩ける。それは民間だから、職場がかわろうと関係ないですね。だから確定拠出の報酬比例の年金制度というのを、民間で自己責任でやりなさいと。今度はこっちは消費税を使って、福祉目的税にして、基礎年金のところはばっちりやりますよ。
 

 23 年金問題の根本には高齢化社会の到来がある・だから高齢者医療と介護問題も重要(鈴木)

 私は消費税を使ってばっちりやるところは基礎年金だけじゃないと思うんですね。この議論をやる時に年金だけ議論しちゃいけない。基礎年金と高齢者の医療とそれから介護。この三つ。これはね、国民全体がね、もう日本のため働いてくださったお年寄り、ありがとうございましたという気持ちで消費をするたんびにその何%かを出すという福祉目的税でがっちり支えなきゃいけないと思うんですね。で、この税率上がりますよ。税率は10%超えてくるかもしれない。だけどその分は所得にかかる税金や保険料の方は下げちゃうということですね。そこは自己責任だと。一生懸命働いて儲けた人にガバッと税金は掛けませんよと。そのかわりそれでワア儲けた儲けたって使えば消費のところでガバッとかかりますよと。それが嫌なら自分の老後のために積み立てておきなさいと。民間の報酬比例の積立の年金。僕はどちらかと言えばその案なんですね。今の民主党案にはだからちょっと問題ありと。その福祉年金や高齢者医療のところがぬけちゃっているし、それから所得の把握率が問題だというところが抜けちゃっているというふうに思います。

 これはさっき植草さんがおっしゃったいわゆるスウェーデン方式の、高福祉高負担の系列なんですね。私はもうどちらかと言えば、報酬比例の子供なんていうのは自己責任だと、自分でやれという方です。一生懸命やったけれども老後あまりお金貯めることができなかった人に対する基礎年金は全員で支えようということです。

 それから高齢者医療もね、無理ですよ。年金と同じでね、保険方式でいったら、もう年とったらやっぱり医者へかかるんですから、医療の給付をじゃんじゃん受けるわけでしょう。それを支えるのは若い、働いている人で、数は減っていったらこれは無理なんで、高齢者医療のところは切り離しちゃう。そのかわり64歳以下の働き手の医療保険は国が保険制度でやっていいと思いますね。だけども高齢者はそこから離しちゃわなきゃ成り立たないというふうに思います。

 介護年金もね、今のような、今はやや残酷ですね。年金からとっていくんですから。その介護保険料をね、平気で上げたりするでしょう。あれはもう年金で細々と暮らしているお年寄りにとっては残酷な話ですよね。あれ生活設計が狂っちまうんですからね。これもよくない。介護保険料なんかとっちゃいけない。その財源はもう消費税、目的税化した消費税でやれと。これが僕の案なんですけれどね。
 

 24 基礎年金が先か・報酬比例年金が先か

司会:植草先生、今、鈴木先生から、まあ極端というふうに先生おっしゃいましたけれども、非常にずばり言っていただいたと思うんですが、そのあたり植草さんの考えからするとどうなんでしょうか。

植草:私が基礎年金の上に報酬比例をのせるのと、報酬比例をベースに最低保障年金。どちらも一長一短あると思います。これはただ大きなくくりとして言えば同じ考え方に属する分類が出来るのではないかと思いますので、まあ所得を隠して基礎年金、最低保障年金をもらおうという人がどれぐらい出てくるのかですね。まあそこによって全員一律基礎年金は一般財源でという方がいいのかどうか。まあそれは検討すべきだと思います。ただ考え方としては、このどちらか、こうした合理的な仕組みというのをベースにした新しい制度に移行していくということを考えるべきだと思います。
 

 25 社会保障財政の一般財政からの独立の提案(植草)

 ただその中で、今ご指摘のあった年金以外の医療と介護と、これがやはり社会保障制度の3本柱で、その部分を私も財源としては消費税をベースに行うべきだと思います。ただ問題はその財政の論議で、この社会保障が入っている財政の論議が一番難しいので、一般財政と社会保障財政を完全に区分して、社会保障財政を明確に費用負担になるんですね。する必要があると。一般財政と社会保障財政を完全に分ける。社会保障財政は基本的には移転支出だけなんですね。基本的には。集めたお金を誰かが利権で掠めるんではなしに、国民に医療、介護、年金という形で分配しますので、そこにはその一般財政の財政の無駄というのは含まれないので、社会保障財政を独立会計にするということも、これも本の中でも提案しております。ですからこの二点は鈴木先生の意見とまったくに賛成です。
 

 26 高齢者の生きがいを作る政策が医療費の低減に繋がる(植草)

 もう一つ申し上げたいのは、特に医療費の問題ですけれども、医療費を、まあ介護もそうなんですが、削減する一番の方法は、高齢者が元気でいると。これが一番の実は費用削減の方策なんですね。ところが今の日本のいろんな仕組みの中に、その部分が完全に欠落していると思います。私、大阪のある大学で非常勤で一コマ授業をもっておりまして、大学院の授業なんですが、学生が5人しかいなくてですね、聴講生を、講演会をした時に募りましたら、高齢者の方が全員なんですけれども、10人聴講と、科目等履修生という方が10人おられて、期末のレポート、ここにあるの全部その期末のレポートなんですけれども、非常に熱心な高齢者の方が沢山いてですね、非常に参考になる提案を色々と私もいただきましたけれども、その中の一人の方も、結局高齢でいろんな生き甲斐のある仕事をしたいと。それでハローワークにずいぶん行ったけれども、結局ですね、一度も面接もしてもらえずに、もう諦めたと。先程の失望者と言いましたけれども、まあそんな扱いだったということなんです。実際にそういう方、シルバー人材センターというようなところに行ったりしますけれども、私、高齢者の方が生き甲斐のある仕事、で、若干の所得と。こういう場を国がどんどん推進して作るべきだと思います。そのためにはNPO、NGOの支援というのが私は一番いいと思います。NPO、NGOにも如何わしい、怪しげなNPO、NGOもありますが、NPO、NGOに国が支援を、財政的な支援して、で、本当にやり甲斐のある、例えば最近は小さい子供が連れ去り事件なんか非常に多いんですね。ですからこういう小さな子供の行き帰りの安全確保なんていうことも、実はそのおじいちゃんおばあちゃんの世代が、それをNPO、NGOの活動として行って、その代わり若干の所得が入るようにすると。

 こういう社会に役立って、やり甲斐があって、ある程度の所得になるような場を設定することがやはり高齢者の方が活き活きと暮らしていける、非常に重要な点です。その部分の政策が今完全に抜け落ちていて、私は政治家の場合には高齢者でも頭が明晰で、十分政治家として活動出来る方がいらっしゃると思いますし、年が若くてもボケボケの政治家も沢山いると思いますので、まあそういう高齢の政治家の方には頑張っていただいた方がいいと思いますが、こう定年制などということでですね、総理の経験者まで議員の座を剥奪するなどという、こういう残酷な政策が行われていることになぜ日本高齢者の方は反旗を掲げてですね、打倒政権と動かないのか、私、非常に不思議でならないわけですけれども。

 そういう意味でその、これから高齢社会に入っていく中で、高齢の方が生き甲斐をもって働ける場を設定すると。そういう政策がないんですね。介護の制度も結局、介護認定が重ければ思いほど現物給付の金額が増えますから、どうしてもこれ経済合理性で言いますと、立てるのに立てないとかですね、動けるのに動けないと言った方が実はこの介護の現物給付増えるんです。その逆に、介護保険に入っていながら介護の給付を受けない人には、報奨金が出るような仕組みを作れば、これは元気でいる方にインセンティブが働くんですね。ですから元気で、生き甲斐をもって活動するという方向にインセンティブで働く政策ですね、これがこの高齢社会における非常に重要な部分で、今の仕組みだと、高齢者に本当に何かやりたくない仕事しか回らないような状況になってしまっていますので、そこの部分の政策が非常に今弱いと。これをちょっと最後に申し上げたい。
 

 27 高齢者差別のない社会の実現を急げ(鈴木)

鈴木:今の点は大賛成ですね。区別と差別は違うんです。もう本当にいいことを言っている。差別はいけません、区別はいいです。男女、やっぱり役割違うっていうある程度はいい。高齢者と若い人はやっぱり体力も違うんだから高齢者はそんなフルタイムで働けない、そういう区別はいい。しかしね、差別をしちゃいけませんよ。差別をしちゃ。今はやっぱり高齢者に対する差別がありますね。一定の年齢になったんだ。もう差別して、職を与えない。だけどもう本当に元気な高齢者沢山いるし、どんどん増えていくわけですからね。高齢者を差別をしないという今の植草さんの提案は大賛成ですね。
 

司会:先生方、ありがとうございました。お二人の話が丁度白熱したところで終わらせるのは本当に心苦しいんですが、時間が参りました。これからこの討論をベースにしまして、これを政策提言としてまとめたいと思っております。それを今後、国政選挙に立候補なさるような先生方に、我々「鈴木淑夫世田谷フォーラム」の提案として、ご呈示してみたいと思います。我々は年金問題をこのように考えているけれども、あなたはどんなお考えをお持ちですかと。

 今日がスタートですので、今後ますます面白いことをやっていきたいと思います。今日はお忙しい植草さんが、ボランティアで駆けつけていただいたんです。皆さま、最後に盛大な拍手でもって、植草先生をお送りしたいと思います。どうも有り難うございました。(拍手)
 


 
 最後に、今日の世田谷フォーラムの実行委員会の世話人代表の小堀の方からご挨拶をさせていただきます。
 

小堀:小堀でございます。ちょうど時間ではかりますと、150分、皆様方、ここでじいっと色々とお話を聞いて頂きました。大学の授業というのは90分でございますから、それをはるかに上回る時間を皆さん本当にご静聴頂きまして、またさらに非常に活発なご意見などをいただいた。これは第一回のこのフォーラムを企画いたしました、私も世話人の代表というよりは世話人の一人だけでございますけれども、大変嬉しいことでございます。

 今日のこの催物、さらに色々とまたどういうふうに発展させたらいいのかということをよく考えまして、出来るだけこういうものが積極的な政策提言のフォーラムとして育っていくように、我々も知恵を出したいと思います。同時にまた限られた知恵に対して、みなさま方のご支援、あるいは積極的に色々なそのお知恵をいただくというふうなことも、またあると思いますので、お礼と今後のことをよろしくお願いをしたいと思います。どうも有り難うございました。
 

司会:それでは本当に最後ですが、先生。先生の方から御礼の言葉を一つ述べていただきたいと思います。
 

鈴木: 今日は本当に有り難うございました。こんな大勢の方にですね、土曜日の午後、結構難しい議論をしたと思うんですが、きちっと聞いていただきまして有り難うございました。これはいけるなあと私は思っています。(拍手)有り難うございます。また私どもの力でですね、さっき佐藤さんが言ったように、今何かの選挙の時に、その候補者をここへひっぱってきて、テストしてやると、あそこの世田谷フォーラムのテストに合格しないと、これは厄介だぞと候補者が思うぐらいの存在になれればと思います。またこういう固い議論ばっかりでなくてですね、さっきちょっと申し上げましたが、女性のリーダーの方々にまたバスのツアーの企画とか、そういうものも交えてやっていただけると、一段と懇親も深まっていいんじゃないかと思っています。

 重ねて申し上げます。今日は本当に有り難うございました。お蔭様で自信がつきました。有り難うございます。


鈴木淑夫世田谷フォーラム

2004.3.13 世田谷区民会館集会室にて収録