読書記録

    読書記録をつける。簡単なサマリー、感想など。  ?!  

     

    『卑弥呼の謎』 安本美典 著 講談社現代新書

     表題は邪馬台国の話しのように見えるが、実は歴史研究の手法に関する考察であり、古代の文献を統計的に研究する手法について詳細に述べられている。

     まず、『古事記』『日本書紀』に記述されている神武天皇以下の、「実在が疑問視されている天皇」について、実はこれらの天皇の非実在説こそ理論的根拠がない事を明らかにする。各天皇の在位期間、生存時期については信頼できないものの、これらの天皇が存在したと仮定する方が自然である事を示す。

     さらに各国、および我が国の王(皇帝・天皇)の在位期間を統計的に調べ、古代の王の平均在位期間を約10年と割り出す。

     これから考えて神武天皇は西暦紀元4世紀の天皇、さらにそれから五代前の天照大神はちょうど卑弥呼の時代の支配者であったと考えられる事を導き出す。卑弥呼は、政治的、というよりも宗教的支配者であったこと、女性であり、大陸までその名が知られた人物であったことなど人物像が天照大神と重なること、天の岩戸隠れの前後で天照大神の人物像が変化することなどから、「岩戸隠れ」は天照大神の死を意味し、邪馬台国で卑弥呼の死後「トヨ」という宗女が後を継いだことに相当する(つまり岩戸隠れ以前の天照大神は卑弥呼、岩戸隠れ以後の卑弥呼はトヨ)ことなどから、邪馬台国=高天ヶ原=北九州、卑弥呼=天照大神であり、邪馬台国が神武天皇の時代に東征して畿内に王権をひらいたのが大和朝廷の始まり、とする。

     邪馬台国論争は今や百花繚乱、なんでもありの状態であるが、統計学的に順序を立てて文献を考察していけば、これが一番自然で理論的な仮説である、と納得させられる本だった。

     

    『オーパーツ 奇跡の真相』 影山莠夫 著 ワニ文庫

     「超古代文明の不思議を解明する」と副題がついている。「超」古代文明の「超」は「古代文明より古い」という意味合いである。現在知られている古代文明で一番古いのは古代エジプト文明である。この文明、その発生の最初からかなり高度な社会体制や宗教観その他の文明を持っていたのだが、妙な事に時代が下るにつれ、その内容が雑で低級なものになっていく。そこで研究者の中には「古代エジプト文明はその先行文明から叡智を引き継いだのではないか」と考える人が出て、その先行文明を「超古代文明」と呼んだ、と考えていただきたい。また、オーパーツとは「Out Of Place Artificials ありうべからざるところに存在する人工物」という意味で、その大部分が「時代・年代が合わない」ものである。

     例えば、三葉虫や恐竜の化石は岩の間から見つかってもよい。古代の人間の足跡の化石が見つかることもあるだろう。しかし、三葉虫と人間の足跡、恐竜と人間の足跡の化石はいっしょに見つかっては困るのである。しかも、こともあろうにサンダル履きの足跡である。これは数千万年から数億年前にすでに人間が存在していたか、逆に恐竜や三葉虫は定説よりもはるかに後まで生存していたか、あるいは恐竜や三葉虫や人間の発生年代がすべて誤っているか...なんにせよアカデミズムを震撼させるに足る物証なのである。

     リーガルシューズよろしく、靴底の革をダブルステッチできっちり縫った足跡の化石(中生代三畳期 約二億年前)とか、二千年前の電池とかいろいろあるのだ。

     正統な科学者はこれを無視してかかり、そんなものは信じられない、と一蹴する。こういう態度は科学的でない。十万年前の足跡化石は信用できるけど、二億年前のは嘘だ、というのなら、「前者だけが信用できるというその根拠」を明らかにしなければ「科学」ではないからである。

     ところが、こういう時に、ちょっとイッてる研究者は「宇宙人だ」「タイムトラベラーだ」  ?!  と無茶を言って失笑を買い、化石の存在自体が笑い話になってしまう。

     どちらもバランスを欠いた態度だ。

     今回読んだこの本はそういう態度から一歩離れて、現象自体を受け入れつつ、筋の通った説明を探っている。読んでいて無理がなく楽しめる。

    『全天候型 史上最強のパズルランド』 芦ケ原伸之 著 ベネッセ

     これはすごい本だ。

     パズルとクイズの違いを端的に言うと、クイズが「知識」を試すものであるのに対し、パズルが「推理力・洞察力」を試すものである、ということだ。「1960年5月15日、岡山県倉敷市水島の三菱病院で産まれた男子を一人答えよ」これはクイズだ。知っていれば答えられる。私のことだ。知らなければ答えようがない。クイズとはそういうモノだ。どんなに頭が堅くても、推理力が貧困でも知っていれば答えられ、アインシュタインでもエジソンでも手塚治虫でも知らなければ答えられないのがクイズだ。ということは、クロスワードパズルは実際はクイズに近いものだということ。

     パズルはその逆だ。問題に関する知識が全く無くても、ゼロから考えて答えが出せるのがパズルだ。

     となると、われわれが目指さなければならないのはパズル名人、ということになる。パズルとクイズの比重は6:4から7:3でパズルに重点を置かねばならない(どんなに洞察力や推理力を磨いても、実際の仕事には「知識=情報」も必要だから、100%ってわけにゃいかないけどね)。

     というわけで、何冊か古本屋で一般のパズルや推理パズルの本を仕入れてきた。ところが、これがどうも困ったもので、例えば推理パズルといえば、「赤いブルゾン」と言えば「リバーシブル」、「壊れた時計」と言えば「犯行時間をごまかすインチキ」、「犯人は左利き」と言えば「昔は左利きだったが矯正したため両利き」と、あまりに類型的。一般のパズルも、パズルというよりは半分クイズのようなものや、五分で答えられるようなものがあまりにも多い。パズルの本は当たりはずれが極端なようだ。

     そういった中で、「これは違う!」と思わせられたものが、この『全天候型 史上最強のパズルランド』だ。著者はパズルの神様と異名をとる、日本のパズルの第一人者。数学者ピーター・フランクルの著書にも引用されている、世界に通じるパズル作家がパズルのエッセンスを紹介した本だ。

     ちなみに、ソフトバンクの『Cマガジン』誌に、パズルを解くプログラムを募集する記事が連載されている。今まであまり熱心に見ていなかったが、これから注目していこうと思っている。

     

    『勝つためのゲームの理論』 西山賢一 著 講談社ブルーバックス

     最近、ブルーバックスをやたら読んでいるが、この本も実に面白い。本自体もわかりやすく面白く書かれているのだが、それ以上にゲーム理論と適応戦略自体が面白いのだ。というより、実生活に役に立つのだ。

     「囚人のジレンマ」という問題があって、「ある事件に関して二人の犯人が捕まった。状況からみて二人が共犯であることは間違い無いのだが、決め手が欠けている。そこで、検事が個別に取り引きを持ち掛けた。もし二人とも黙秘を通した場合は、決め手が無いので罪の軽い別件で起訴するしかない。その場合、二人とも懲役二年程度になるだろう。もし一方が黙秘し、もう一方が自白した場合、自白した方は大幅に情状を酌量して執行猶予、黙秘した方は二十年の懲役刑になるだろう。ただ、もし双方が自白した場合は、まあ、自白したことを考慮して懲役十年といったところだ」というものだ。

     このように「相手を裏切ったら大きな利益が得られるかもしれないが、ゼロかもしれない。しかし、本当は両者が協調した方が安定した利益が得られる」という状況が繰返されることは実生活でも多々ある。そして、このような場合、結論から言うと、「先には裏切らない。相手が裏切ったらしっぺ返しとして一回裏切るが、次に相手が裏切らなかったらこちらも協調する」のが一番有利な選択なのだ。

     親子関係。子供が言うことをきかない。そこで、しかる。しかし、言うことを聞いたら誉める。たいして悪いことをしていないのに、気分次第でむやみと当たり散らしたり、悪いことをしているのにご機嫌をとったりしていてはいけないのだ。

     恋人関係。彼氏とデート。自分はちゃんと時間を守る。相手が遅刻したら、次のデートはお預けにする。彼氏が誠意を示したら許してやる。彼氏がルーズなのに、まったく文句一つ言わない、とか、自分もぐうたらで時間にルーズだとか、彼しが遅刻しても気分次第で怒ったり怒らなかったり、というのはまずい。

     国際関係。アメリカは普段は「日本は最重要同盟国」だと言っている。しかし、日本の貿易黒字が目に余る増加を示すと、とたんにしっぺ返しをしてくる。しかし、日本が努力して内需拡大・黒字減らしをすると、また「日本は最重要...」を繰返す。これはゲーム理論にかなっている。日本のように、何があってもニコニコしている外交も、常に高圧的な中国やロシアの外交も、常に非協調的・裏切り的な北朝鮮やイラクの外交もともに長期的には好ましくない結果を招く。

     そして、このようにゲーム理論に適った分子が、非協調的、裏切り的集団にたとえ少数派でも存在した場合(単独では勝ち残れない。複数いることが肝心)、その少数派は次第に勢力を伸ばし、やがて裏切り集団を凌駕し、駆逐していくことが示される。これがゲーム理論だ。

     ここだけの話しだが、うちの職場は、十年くらい前はまさに非協調的・裏切り的集団が幅を占めていて、実にギスギスした職場だった。しかし、そういう連中はいつのまにか一人去り、二人去り、だんだんと協調的でさわやかな職場に変化していった。その過程を現実に見てきただけに、この理論は説得力を持って、私に迫ってくる。

     意思決定のためのさまざまな理論が提示されているが、ゲーム理論はそのなかでも実に説得力に富み、実生活に活かせる理論だ。面白い。

    tingy@post.co.jp


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