[芸術とはなんぞや?]  [芸術と右脳]


    芸術とはなんぞや?

     私は芸術家ではないので、ユーザーの立場、つまり鑑賞する立場として考える。

     最近、なんでも「芸術的」と形容されてしまうが、芸術と職人芸との違いを確認しておく事で、「芸術とはなんぞや」に関する私の立場を明らかにしたい。芸術には創造する芸術(絵画、彫刻、作曲、文学など)と再現する芸術(演奏、演劇など)があるが、ここでは取りあえず創造する方を中心に書く。明記しておくが、芸術と職人芸を比較して優劣をつけようというのではない。両者の間に優劣は無い。偉大な職人芸は似非芸術にはるかに勝る。

     ゴッホはやむにやまれぬ内心の衝動に従って生き、自分の耳を切り落とし、絵を描いた。芸術家にとってはこの「内心の衝動に従ってXXした」というのが肝心で、その出来具合を見て、人が「感動」しようが、「高く買って」くれようが、あまり意味の無い事なのだ。芸術家にとって肝心なのは技術ではなく、「自分のために」という一点である。そういう意味では、客の注文に応じて肖像画を描くとき、その画家は職人である。

     職人は技術を磨く。それはなんのためかというと、お客に最高の満足を与えるため(ドラマ『ソムリエ』でよく聞いたセリフであるが、真実だ)、である。従って、むやみと辛党の料理人がいて、塩を一掴み入れたい、醤油をドバドバ入れたいと切に願っても、京都から来たお客にそんなものを出しては職人ではない。料理でも家具でもなんでもそうだが、どんなに出来がよく、「芸術的」に見えても、それはまず第一に「お客様」のために作られたものである、という点で芸術家の作品とは異なる。(もちろん、職人芸も究極までつきつめていけば、芸術に限りなく近づいていくだろう)

     例えば、芸術家が作る家具としては、故岡本太郎氏の「座る事を拒否する椅子」がある。職人は座れない椅子は作ってはいけない。

     もし職人が「おれの味がわからねぇなんざ、ヤボもいいとこだぜ。そんな客におれのそばがだせるかってんだ、べらぼうめ」などと言うなら、彼はすでに職人ではなく、似非芸術家に「成り下がっている」のである。バブルの頃のグルメ番組にそんな料理人がよく出てきたし、ある有名落語家もすでにコレになってしまっていると、私は見ている。

    芸術と右脳

     昔、初めてマンガを描き始めた頃(学生時分、私はしろうと漫画家だった)、いったいどうして自分には満足な絵が描けないのか、非常に疑問だった。技術の問題では無い事は明白だった。なぜなら、漫画家が描いている線と、自分が描いている線の間に、そう大差があるとは思えなかったからだ。同じ線を引っ張って、構成される絵にこれだけ違いがあるということは、技術的な問題以外になにか原因があるのだろう。しかし、それが分からない。

     ようするに「センス」や「才能」が無いのだ、と大方の人々は考えるだろうが、私はそうは考えなかった。私は手塚治虫や石ノ森章太郎や藤子不二雄になろうとしているのではない。ちょっとしたイラスト程度の絵が描けないのだ。これは納得がいかない。

       こんな風に考える、ということは、私は自分の能力によほど信頼を置いているのだろう。たぶん...

     『脳の右側で描け』という本にすべての答えが書かれていた。絵がうまくなりたい人は絶対に読むべきだ。

     当時の私(そして大部分の絵が描けない人)は、例えば「手」を描くときに「手の描き方」を考えていた。私は「手」を見ていなかったのだ。どうだろう。顔を描くときに、「顔」を見ているだろうか。真正面から見た「鼻」がどんなふうに見えるか、本当に「視た」ことはあるだろうか。そもそもどこまでがほっぺたで、どこからが鼻なのか? 区別する事はできるのか?

     「そのもの」を「視る」ことを学んでから、私の絵は爆発的に上達した。これが右脳で考える、イメージ思考を学んだ最初だった。もう十数年前のことだ。

     私の娘は幼稚園の頃から絵が好きで、よく「XXXの描き方はどうやるの?」と私に尋ねた。しかし、それを私は一度も教えてやった事が無い。というより「描き方」などというものは無いのだ。

    「手を描きたいときは、手を見なさい。顔を描きたいときは顔を見なさい。花を描きたいときは花を見なさい。なにかの描き方なんてものは無いんだよ」

    と答え、娘に不満な顔をさせた。

     家内は「教えてやればいいのに」と思っていたらしいが、私は自分の方針を貫いた。現在、娘は小学一年生だが、そのデッサン力は群を抜いている。


     数年前に私が描いたCG画である。何のきっかけでこんなのを描く事になったのか忘れた。手描きと違ってコンピュータで描くのはけっこう大変なので、作品は少ない。

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