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いづれの御時にか、女御更衣あまたさぶらひたまひける中に、いとやむごとなき際にはあらぬが、すぐれて時めきたまふありけり。

(源氏物語)

今年の反省(2006/12/31)
 

 今年の反省をしておきたいと思います。

 成績は日本株は-36.4%とTOPIX(+1.90%)に大きく負け、大きく下げたJASDAQ(-33.8%)にも負けました。私が機関投資家で人様のお金を運用していたら言い訳に追われ、解約が続出してファンドを解散ということにもなったでしょう。個人投資家なので、大きく下がっても自分が我慢していればいいということで済んだのは幸いでした。

 後から振り返ると、不動産流動化株ブームのバブル崩壊前に飛び降りればよかったということになると思いますが、結果としてできませんでした。ただ、ブームのピークを当てるのは難しいので、次回からはバブルのにおいを感じたらキャッシュポジションを上げていくということになるのかなと思います。

 

 アーバンコーポレイションの決算発表延期は予想していませんでした。IRに電話して、

 「監査会社と意見があわないのではないですか」

と聞きましたが、回答は

 「そのようには聞いていません」

ということでした。結果はご存じのように、私の懸念の通り、監査会社(トーマツ)と見解の相違があり、売り上げ時期の認識を繰り下げることになりました。いずれにしろ、このようなことが起こることを頭に入れて、安全余裕率を大きくとることに努めたいと思います。特に信用取引の利用は、あとで株価が戻ったとしても単に一時的に大きく下がったら退場になりかねませんから特に注意しなくてはいけないと思います。

 また、Kelly基準の周辺の検討からも過度のレバリッジは、長期の資産の増大に有害だということを認識できたので、信用取引の利用はほどほどにすべきということになります。

 のちにアーバンコーポレイションを売りました。結果論的には、業績は堅調のようなので、売ったのは(とくに、下がっていたときに売ったのは)間違いだったようです。

 

 一方、アメリカ株は大型株が堅調でかつLEAPSを買っていたこともあって+43.0%となり、S&P500の+13.6%を上回れました。

 ここで、

 「いやあキャピタルアロケーションのおかげで少し助かりました」

と書きたいところですが、はっきり言って、アメリカ大型株が今年あがるかどうかはわかりませんでした。いつかあがるだろうとは予想して、賭けていたわけですが、来年かもしれなかったですし、再来年かもしれなかったわけです。実際、商品価格、特に、原油価格の上昇で年央は下がっていました。それにアメリカ株に十分資産配分されていたかといえば、結果的には不十分でした。(現在はアメリカ株の上昇もあり、日本株:アメリカ株=約2:1になっています)

 

 今年のことは十分反省しつつ、しかしながら、vividness bias(最近の出来事に強く影響されるバイアス)にとらわれていないか検討しながら、来年からの意志決定をしたいと思っています。

 それではみなさまよいお年をお迎えください。

 #早くしないと来年になってしまうので、急いでアップロードします(笑)

 

低PBR戦略を補強する複合戦略(2006/12/24)
 

  低PBR戦略を補強する方法論につながる論文が最近また発表されたようです。

 低PBR戦略を補強する方法論は、KAPPAさん(サイト)の本東大卒医師が教える科学的「株」投資術に2つ紹介されています。この2つは、Joseph D. Piotroskiの論文”Value Investing:  The Use of Historical Financial Information to Separate Winners from Losers"とPartha S. Mohanramの論文”Is Fundamental Analysis Effective for Growth Stocks?”に基づいています。前者は好財務の条件を入れるとリターンがよりよくなることを示し、後者は成長性を示すような条件を入れるとリターンがよくなることを示しています。これについては後述します。

 さて、最近発表されたのは、Bali, Demirtas, Hovakimianによる"Corporate Financing Activities and Contrarian Investment "という論文です。

低PBRで自社株買いをしている会社を買いなさい(ついでに高PBRで公募増資をしている会社を空売りしなさい)

ということのようです。論文要旨をまとめておきます。

  1. 自社株買いを行う割安(value)株(低PBR、低PCFR、低PER)の株を買い、公募増資をする割高(growth)株(高PBR、高PCFR、高PER)の株を売ると、単に割安株を買い、 割高株を売るという戦略よりもよいリターンが得られる。
  2. たとえば、低PBR株を買い、高PBRの株を空売りするとした場合の4年間の(時価総額について補正した)年平均リターンは、5.2%であるが、自社株買いを行う低PBR株を買い、公募増資をする高PBR株を 空売りした場合は、9.4%であった。
  3. さまざまなリスク尺度に基づくと、自社株買い割安株は公募増資割高株よりもリスクは低いことがわかった
  4. 自社株買い割安株、公募増資割安株、自社株買い割高株、公募増資割高株に分類すると、自社株買い割安株は、将来の成長率が最も増加していた一方、公募増資割高株は将来の成長率が最も減少した。
  5. 得られた結果は、割安株の超過リターン(市場リターンを超えるリターン分)は、リスクをとったためであるという説明よりも市場が割安株の価格付けを誤ったためであるという説明と整合的である。

 

 さて、さきほど書いたように、低PBR戦略を補強する方法論は、KAPPAさんの本東大卒医師が教える科学的「株」投資術に2つ紹介されています。この2つは、Joseph D. Piotroskiの論文とPartha S. Mohanramの論文に基づいています。

 詳しくは、KAPPAさんの本や上の原論文を見ていただくとして、論文の要旨にしたがって簡単に紹介しておきます。

 

 Joseph D. Piotroskiの論文は、

  1. 低PBR(高book-to-market)でかつ好財務の会社に絞ると、すくなくとも単に低PBRの会社を選んだ場合に比べ、少なくとも7.5%リターンをさらによくすることができる
  2. 1976年-1996年のデータを用いて、勝者と期待される会社群を買い、敗者と期待される会社群を空売りするというヘッジポートフォリオを組むと、年平均23%のリターンが得られた
  3. 低PBRに好財務の条件を付け加えることの効果は、中小型株に集中している
  4. 投資時に明らかにされている財務情報とその後の株価上昇や四半期の利益のアナウンスメントに対する反応に正の相関があることから、市場は過去の財務情報に適切に十分反応していないようだ。

 この論文は、"The Little Book that Beats the Market"(日本語訳「株デビューする前に知っておくべき「魔法の公式」 ハラハラドキドキな嫌いな小心者のための投資入門」)でGreenblattが引用しています(p.151)。(赤字は私)

 最近シカゴ大学のPiotroskiによって行われた重要な研究成果は、低PBR分析を一歩進めたものである。Piotroskiによると、低PBR株を買うという低PBR戦略は全体として市場平均を上回る成績をあげるが、実際には、この低PBR株の半分以上は市場平均を下回っている。Piotroskiは簡単ですぐ使える会計尺度を用いて単純な低PBR戦略を改善できないかと考え、財務の健全性を示す9つの指標を用いて、低PBR順に並べて20%に入る株をランク付けした。9つの指標には、収益性、事業効率性、貸借対照表のよさが含まれている。調査の行われた21年間の結果はすばらしいものである。...一つの例外を除いては。

なお、一つの例外とは、大型株については成り立たないということで、上の要約の3.に当たっています。

 私の驚いた点は、赤字で書いたように、なんと低PBR株の半分以上はダメ株だということです。すでに多くのバリュー投資家がされているように、財務をみることが大事だということです。

 あともう一つ驚くのは、この論文が発表されたのは2000年ということで、つい最近まで(実務の世界にいて感づいていた人は多かったと思いますが、少なくとも学者たちには)「わかっていない」ことだったということです。

 

 Partha S. Mohanramの論文自体は低PBR株でなく、高PBR株のリターン改善法を示したものです。KAPPAさんの本によると、この改善法は、「サザエさんと株価の関係―行動ファイナンス入門」の吉野貴晶さんによって、低PBR株にも有効なことが示されているようです。

 さて、内容ですが、

  1. 利益・キャッシュフローという伝統的なファンダメンタルズと利益・成長の安定性や研究開発費(R&D)、設備投資費(capital expenditure)、広告宣伝費といった尺度を組み合わせたG_SCOREという指標を提案した。
  2. G_SCOREの高い会社群を買い、G_SCOREの低い会社群を売るという戦略で、有意に市場を上回るリターン(超過リターン)を得られた。
  3. 結果は、会社サイズ、株価、アナリストのカバーの多寡、上場している市場、過去の株価によらず成り立つものであった。また、IPOの会社を含めるか否かによらず、成立した。
  4. 超過リターンは、モーメンタム、PBR、アクルーアル、時価総額などのリスクやアノーマリ因子を補正しても残った。
  5. 上記2の戦略により、1979-1999のどの年でも正のリターンが得られたこと、リスクが低いと思われる会社群へのリターンがよかったことから、PBRの高低 によるリターンの違いをリスクの大小に求めるのは正しくない

 

 こうして見ると、割安株を単に買うというだけでなく、さらに財務をみたり、自社株買いをしているかどうかみたり、G_SCOREを調べたりすることにより、割安株投資のリターンをさらによくすることができそうです。

 *****

 シェアーズさんのフージャースに関する分析は、ブログからもメールマガジンのバックナンバーからも削除されて読めなくなっています。また、この削除の経緯についての山口さんの説明は、空色さんのブログで取り上げられていますので読まれるとよいと思います。

 

あるフージャース の分析に対する反論(2006/12/02)
 

 (12/24) シェアーズさんの分析はメールマガジンのバックナンバーからも削除されていますので、その点について更新しました。

 (12/8) シェアーズさんのブログから、元の分析が削除されていますので、その点について更新しました。また、「いろいろと」さんのコメントの論点の一つを落としていたので、訂正しました。

 (12/3) AKIさんのブログのコメント欄での批判について追加しました。

 

 シェアーズさんがフージャースの分析をしています 。この分析は「実践! 企業価値評価フージャース」と題した、主に財務諸表の分析からの評価の結果に基づいているようです。

現在、ブログは分析の部分が削除されて、エンロンに関する文章のみになっています 。メールマガジンのバックナンバーに残っていましたが、他のバックナンバーも含めて削除されていますので、現在はキャッシュなどに残っているほかは見ることができません。この削除の経緯についての説明は、空色さんのブログで取り上げられています。

 

 さて、シェアーズさんは

フージャースについてなんら意見を表明するつもりはありません

とのことですが、読んだ限りではかなりネガティブな印象を与えるものに私には思えましたので、フージャースをたくさん買い込んでいる個人投資家として少し反論しておきます。もちろんこれは、

「シェアーズについてなんら意見を表明するつもりはありません」(笑)

のでご了解ください。

 

 シェアーズの分析についての批判・反論は、他にもあるようで、会員制のエンジュクの割安・成長株研究会でもされているそうですが、誰でも見られるところとしては、

 AKIさんのブログの11/29コメント欄のいろいろとさん

を見つけましたので、そちらもご覧ください。いろいろとさんの批判は、主に財務諸表の見方の立場から、私の批判より短く本質をついていると思います。あとで見てみたいと思います。



  さて、シェアーズさんの分析の結果を見てまず思ったのは、

  1. 表面的な数字(失礼!)の分析を過信しているのではないか。同じ在庫でも販売不動産と仕掛販売不動産を分けて考えるべきだろう。
  2. 成長する会社はフリーキャッシュフローがマイナスになることがあることに言及しないのはいかがなものか。
  3. 「フージャースにとって高株価の維持が大事」「急成長の源泉(の一つは)高株価の維持」とあるが、私の実感として、現在高株価でないし、過去高株価といえるほどPERが高かったことはないし、高株価を演出するような会社ではない。

ということです。

 

 以下、引用しつつ私の意見(主に反論)を書いていきます。 (引用は青字で段落を下げています。)

確かに、フージャースの利益は急成長しています。

しかし、現状はそれ以上に資産(特に在庫)が膨張しているため、フリーキャッシュフローはマイナスです。

 その通りです。成長している不動産会社は往々にしてそういうものです。そういう意味で、売り切れないときに大きなリスクが生じるということには常に注意しなくてはいけないのであり、難しい投資対象であることは確かです。

 

 ただし、在庫の中身を見てほしいと思います。フージャースの在庫のほとんどは仕掛販売用不動産で、建設中のものです。

フージャースの在庫内訳

 フージャースの在庫内訳 H17年3月 H18年3月
金額(千円) 割合 金額(千円) 割合
販売用不動産(完成在庫) 8,701 0.07% 791,451 2.91%
仕掛販売用不動産(仕込み中) 12,428,902 99.93% 26,385,949 97.09%
合計(在庫全体) 12,437,603 100.00% 27,177,400 100.00%

(平成18年3月決算短信 p.11より)。 在庫全体は実践! 企業価値評価フージャースの「B/S&P/L」の値に一致しています。

 

 なお、成長株のフリーキャッシュフローはマイナスになることは不動産業でなくてもあります。たとえば、テイクアンドギブニーズのフリーキャッシュフローを見てください。 (不動産業と違って、営業キャッシュフローは正です。)MSNマネーから数値を引用しますが、2002年から2006年にかけて営業利益は大きく伸びています(こちら)。この間のうち、フリーキャッシュフロー(こちらから算出)は2006年 を除いて負です。

テイクアンドギブニーズの営業利益成長とフリーキャッシュフロー(FCF)(単位百万円)

テイクアンドギブニーズ 2006 2005 2004 2003 2002
営業利益(1) 4,887 3,452 1,446 439 255
営業活動によるキャッシュフロー(2) 4,278 4,737 2,155 794 247
有形固定資産の取得による支出(3) -1,329 -3,367 -4,016 -3,134 -276
その他の投資活動によるキャッシュフロー(主に新店舗出店のための敷金保証金の差し入れ)(4)
-1,616
-1,522 -2,404 -378 -126
FCF((2)-(3)-(4)) 1,333 -152 -4,265 -2,718 -155

(※)ここでは、FCFは「営業キャッシュフロー」から「有形固定資産の取得 による支出」と「その他の投資活動によるキャッシュフロー」による支出を引いて求めています。 「その他の投資活動によるキャッシュフロー」が主に新店舗出店のための敷金保証金の差し入れで構成されているため、有形固定資産の取得と同様、事業のための支出と考え、営業キャッシュフローから引いて便宜的にFCFとしています。「営業活動によるキャッシュフロー」から「投資キャッシュフロー」を単に引くよりもFCFの趣旨に近いと考えています。

 フリーキャッシュフローの範囲内で設備投資をしている安全域の高い会社のみを投資対象とするという考えを否定はしませんが、成長株を逃すこともあることにも言及してほしいものです。

 

 フージャースのバランスシートに対する懸念が表明されています。

バランスシートを見るとよくわかるのですが、資産のほとんどが在庫です。

 たしかにその通りです。でも、繰り返しになりますが、真の在庫(完成在庫、販売用不動産)はわずかしかなく、ほとんどが仕込みによる在庫(仕掛販売用不動産)です。
 

 財務分析(ROIC)で確認すると、その肝心の在庫は、3年前まで6ヶ月で一回転していましたが、今は、一回転するのに1年ほどかかっているようです。

 つまり、在庫がはけてキャッシュになるまでの期間がやや遅くなっているということです。

 利益率が上がって、回転率の低下を補って、ROICは上がっていることにも注目してもらえるとありがたいですね。

 

 キャッシュフローがマイナスのため、手元のキャッシュは、借入と増資でまかなっています。

 成長のため、借り入れが大きく、増資を過去にしたことも事実ですが、それ以上の利益成長(と株価上昇)を実現してきましたし、これからはそうそう増資をしなくてもいいはずでしょう。

 借り入れについてもIRの方によると、銀行が並んで貸したがっているそうです。よい貸出先と認められているということでしょう。

したがって、フージャースにとって高い株価を維持するのはとても重要なことです。

(フージャースのウェブサイトでは、トップページに株価をのせています)

 一般論として、増資をバンバンしたい会社にとって高株価の維持は確かに大事です。

 しかし、そもそも、フージャースが高株価を維持していたと言えるのでしょうか。結論から言うと、フージャースはソフトバンクのような高株価政策+増資で成長してきたとは言えないと思います。 また、アメリカでもそうですが、高株価の会社は、プレスリリースを乱発して会社の実態よりよく見せようとしますが、そういう様子はないです(ここは主観的なものなので、異論はあると思います)。もちろん、そういう点で私の好みの会社です。

 

 さて、「高株価」かどうか、まず現在の状況を見てみましょう。

 東証一部の値と比較するため、11/30の値を使います。フージャースは市場PERよりかなり低く評価されているということです。

フージャースのPERと東証一部PERの比較

2006年11月末時点 実績PER 予想PER
フージャース 16.3(※) 13.2(※)
東証一部 25.0(東証 20.26(ゴールデンチャート

今週末11/30の株価は151,000円(直近の12/1は155,000円)。実績EPS(決算短信p.1)は27,745円で、株式分割1:3を考慮して、9,248円。実績PERは151,000/9,248=16.3倍。中間決算短信p.1による最新の会社予想によれば、EPSは11,750円。予想PERは11,750/151,000=12.9倍(12/1では11,750/155,000=13.2倍)。

 少なくとも現在のPERは実績も予想も市場の約65%であり、3割以上割安ということになります。

 

 過去はどうだったでしょうか。過去の時期すべてで調べるのがいいのでしょうが、大雑把につかむために直近の平成18年3月期の有価証券報告書のp.2を見てみます。

フージャースの過去のPER

  2003(H15)年3月 2004(H16)年3月 2005(H17)年3月 2006(H18)年3月
連結PER - 15.6 18.4 17.7
単独PER 3.5 16.3 19.7 19.3

平成18年3月期の有価証券報告書のp.2による

 このPERは予想PERだと思われますが、この数値を見れば、(投資家としてはちょっと残念なところもありますけれど)過去においても高株価を維持していたとはお世辞にも言えないでしょう。

 実際、ゴールデンチャートで2003年1月から2006年3月までの東証一部の(予想)PERをしらべると、最大値は2005/5/7の63.73、最小値は2005/6/9の16.85ですから、せいぜいが市場平均程度のPERです。 (おかげで高値で売り払おうという誘惑に駆られることもほとんど起こりませんでした。)

 

 さて、分析のまとめを見てみましょう。

 まとめると、フージャースの急成長の源泉は、資産膨張による利益の創出、それをベースとした高株価の維持。

 そして増資による新たな資金調達というサイクルにあります。

  1. 資産膨張は仕込み(仕掛販売用不動産)によるもので、不良在庫ではない
  2. 現在、高株価を維持しているとも、過去高株価だったともとても言えない
  3. 銀行借り入れに問題がなく、株主持ち分比率が維持できている間は増資する可能性は低い

 ことに再度言及しておきたいと思います。(利益の創出自体は問題ありませんね?)

 増資については、可能性はないとは言えないと思いますが、そのときはそれに見合う成長を見せてくれると思います。
 


現在はキャッシュを産めていませんが、早く本業のキャッシュフローで回せる形になるといいですね。

 えーと、それは成長が止まるか緩やかになったときですね、たぶん(笑)。そうしたら、配当性向を高めてくれると信じています。



 「実践! 企業価値評価フージャース」 のキャッシュフロー分析のところで、営業キャッシュフローと投資キャッシュフローを横軸と縦軸にとって、その変化を追っています。フージャースのほか、アセットマネジャーズとアーバンコーポレイションが分析されています。3社ともこの分析では、「破綻期」に入ってしまっている(!)ことに注意してください。

 そのような高成長株はリスクが高いこともあるので、そのような株への投資については議論の分かれるところですが、3社とも早期に投資した投資家に何倍ものリターンをもたらしてきたのも事実です。

 そういう意味では、成長する不動産(関連)会社に対しては、この分析は有効でないことを残念ながら示していると言えるでしょう。 そのことに何も言及しないのはいかがなものかと思います。

 (もちろん、製造業など多くの業種で、このような分析は妥当だとは思います。)

 

 さて、シェアーズの分析では、財務分析の結果(定量分析)が中心ですが、私は定量分析の好指標は定性分析(=アート)で担保されるのが望ましいと思っています。なぜなら、たとえば、高ROEの事業はおいしいので、他の会社もどっと参入してきてたちまち低ROEの魅力のない事業になり、かつ、投資先の株価が下落するということがあっても不思議ではないからです。

 そこで、強み(Buffettのいう「持続的な競争優位性」)が必要です。

 私は、フージャースの強みとして(いろいろなところですでに多くの人が書いていますが)

  1. 駅から遠いバス便の土地を安く仕入れる
  2. 安く仕入れているので他社より安く売れる
  3. 女性を活用し、住居の購入の決定権を持っている主婦に訴求するインテリアなどを整える

を挙げることができると思っています。このようなことを背景にして他社との競争において優位性を保っていると考えています。


 こうして見てくると、

  1. 財務分析はその産業に対して妥当かどうか検討する必要があると思われる。(その産業自体が危険と考えるのであれば別)
  2. 表面的な数字(フージャースの場合では、在庫)をみただけでは見えないことがある。
  3. 成長株はFCFが負になることがあるが、それだけで投資不適格の烙印を押すのはいいとは思えない。
  4. 3.から考えて、成長株ではアートも大事にしないといけない。

ということを最後に言っておきたいと思っています。

 (今年の成績が悪いので、説得力ないかもしれませんが。それに私はいつ株価が上がるのかわかりませんし。でもこういうときに耐えたり買い増ししないといけないはずなので、そうしています)

 

 (12/3追記)

 AKIさんのブログの11/29コメント欄のいろいろとさんの批判の論点は4点です (すみません、以前は、最後の論点を漏らしていました)。

  1. [資産が膨張する]→[フリーキャッシュフローはマイナスになる]は間違い
  2. [キャシュフローがマイナス]→[借入と増資でまかなう]というのは、現象の流れとしては逆
  3. 利益の源泉は、売上の膨張によるものであり、資産の膨張よるとは限らない
  4. 問題なのは、回転率の低下ではなく、まだ売上に結びつかず資産に計上されているものが将来売上に結びつくものなのかどうかを一つはB/Sなどから読み取ることである

ということで、私のある意味で漫然とした批判よりコンパクトで、本質を突いていると思いますので、是非読んでいただきたいと思います。  

 *****

 ポートフォリオはこちら(更新しました)。まあ、日本株はしばらく我慢でしょう。(しつこいですが、いつまでかはわかりません)。一方、アメリカ株(+LEAPS)は短期的に下がってもおかしくないと思っています。

 

長期投資−若きBill Millerのエピソード(2006/11/26)
 

 Legg MasonのファンドマネージャーであるBill Millerが若いとき、ボストンの機関投資家のファンドマネージャーを訪ねた時の話"Patience can find a virtue in market inefficiency"(忍耐がないと市場の非効率性の価値はわか らない)をTilsonがFT.comで6/9に紹介しています。何度か紹介していますが、Bill Millerの運用するLegg Mason Value Trustは15年続けてS&P500を上回っています(こちら)。また、Tilsonは最近、FT.comに頻繁に寄稿しているようです。実はこの話は、Value Investor Insightの昨年6/19号で読んでいていい話だと思っていたのですが、誰でも読めるところに書かれ ているのを見つけたので紹介します。

 

 若きBill MillerはPER4倍で売買されていたR. J. Reynoldsの株をそのファンドマネージャに推奨したそうです。以下、Millerの回想です。

 私がしゃべり終わると、その最高投資責任者は言いました。

 「実に説得力のある話だが、当ファンドではその株を買うわけにはいかない。君はその株が今後9ヶ月の間に市場を上回る株価上昇が期待できる理由を言わなかったからだ。」

 私は言いました。

「9ヶ月後までにどうなるかは私にはわからないけれど、今後3年から5年の期間を考えればとても儲かることになると思う」

 その最高投資責任者は言いました。

「君はこの業界に何年いるんだい。運用成績に関するプレッシャーはすごいものがある。これから3年間とか5年間とかの運用成績がどうかなどこの業界では役に立たない。そのときには失業しているからな。顧客は今すぐの結果を求めているんだよ。」

 そこで私は言いました。

「失礼ですが、あなたの運用成績はどうだったのですか。」

「ひどいものだよ。だから、当ファンドは運用成績に関するプレッシャーにさらされているんだよ。」

「3年前にもしR. J. Reynoldsのような株を買ったのなら、あなたの成績は今もっとよかったでしょう。あなたが今R. J. Reynoldsを買えば、今後3年間の運用成績はよくなるでしょう。」

 Tilsonは言います。「全然上がらなかったりする株価を見ているときの苦痛や口うるさい顧客からの圧力を考えると、短期的な思考に陥るのが投資家として普通のことだろう。しかし、このこと自体が、長期 の視点からみる能力と忍耐力のある投資家に機会を作るのだ。」

 Millerは説明します。「市場における短期のアノーマリーのデータが豊富にあり、そのことをうまく利用しようとする人々ばかりなので、短期には市場はひじょうに効率的である。非効率性はたとえば12ヶ月以上を見通したときに起こりうものだ。」

 再びTilsonです。

 「私のお気に入りの投資の一つは事業はうまく行っていて1,2年後にはもっとうまくいくことが明白であるが、短期的な株価上昇のきっかけがないような会社への投資だ。」

 「大部分の投資家は資金の塩漬けを避けようとしてうまくやろうとするあまり、いいニュースが明らかになるまでそのような会社の株には寄りつかない。しかし、そのようなニュースが出るまでにはみんながその株を買って しまい、たいていはもう安くはなくなってしまっている。割安株があるときに他の投資家がいつそのことに注目しだすかを予測しようとするのは愚かなことだ。」

 このあと、Tilsonは当時(今年の6月)割安だった株、Wendy's, Microsoft, Tycoを紹介しています。(現在、私はMicrosoftのLEAPSのコールを買っています)

 *****

 さて、昨年末から今年の初めの株価上昇時に市場に参加した人たちも多いと思います。株はどんどんあがるものと思った人も多いでしょう。 実際はどのようであるかをちょっと見てみましょう。

 ですが、市場平均としては上昇率は、一年あたり(一月とかではありません)7-10%くらいです。毎年40%もあがるというのは あまりないことです。昨年のTOPIXの上昇率は43.5%で、 日経平均は40.2%、JASDAQは44.2%でした(こちらこちら) 。しかし、たとえば、日経平均で調べると、40%を超える成績だったのは年間の結果のある1950年から2005年の56年のうち、去年を含めて7回です。

40%以上日経平均が上昇した年

上昇率
1951 62.9%
1952 118.3%
1958 40.5%
1960 55.1%
1972 91.9%
1986 42.6%
2005 40.2%

 平均すると8年に1回ということになります。 昨年の前は19年前の1986年です。その上、2年連続で40%以上上がったのは、1951年と1952年と戦後株式市場が再開して日が浅いときのことで最近はありません。

 今年は昨年度末と比べると上がっていません(下がっています)。さらに、新興市場などひどい下落です。11/24までのTOPIXは昨年末に比べ-6.8%、 日経平均は-2.3%、JASDAQは-36.7%です。

 

 これから株式市場がどうなるかは私にはわかりません。

 景気上昇の最終局面にさしかかっているらしいので、新興市場の株は下がり続け、国際優良株(トヨタ、キャノン、松下電器)に代表されるような大型株やディフェンシブの薬品株などがこれからあがるのかもしれません。 有料サイトにしかたぶんデータがないのでしょうが、Wall Street Journal(これも有料)によると、9/30現在での東証マザーズの予想PERは125.3だそうです。日経ジャスダック平均の予想PERは37.3だそうです。

 予想利益が変わらないとして、9月末の予想PERと指数値、11/24時点での指数値を用い、現在の予想PERを推算してみます。東証一部、東証二部、日経ジャスダック平均、東証マザーズについて計算(注)し、日経平均は 推計値ではなく、日経のサイトから直接とりました。日経平均の予想PER値と比較すると、若干大きめの値になっているので、一割程度過大に推算しているかもしれませんが、東証上場の大型株とジャスダックや東証マザーズとの比較には十分でしょう。

各市場の予想PER

予想PER(9/30) 推算予想PER(11/24)
日経平均 18.17(こちら
東証一部 20.8 20
東証ニ部 23.7 22
日経ジャスダック平均 37.3 35
東証マザーズ 125.3 111

 記事によると、3年前投資家たちの間で小型株に人気が出る前は、ジャスダック平均、マザーズのPERはそれぞれ25,100だったそうです。そうすると、市場全体としてはこれからさらに下がる可能性も十分あると思われます。もとのレベルより下がることさえあ リうると思います。少なくとも新興市場の高PERの株は十分気をつけて買うべきだと思われます。

 

 ともかく基本は、国際優良株にしろ、新興市場の株にしろ、個別の株が割安なときに買いに入り、辛抱強く持ち続けるのが長期の株式投資で成功する道の一つでしょう。

 

 もちろん、市場の地合が悪いのだからということで短期投資に向かう人もいるでしょう。短期投資で成功すれば、すぐに天国に行ける可能性があるのは確かです。ただ、うまくいく確率はそう高くありません。台湾でのデイトレーダーに関する調査では、1995-1999の期間で、6ヶ月という期間でみたときにデイトレーダーの80%が損失を被っているそうです。 この種の日本での調査は知りませんが、同様なものだと思います。

 なお、公平を期しておきますと、この間、ここここによれば、1995年1月5日に7,051.49だった 台湾の加権指数(Taiwan Stock Exchange Corp. Taiwan Stock Exchange Capitalization Weighted Stock Index (TSEC TAIEX)) は1999年末には8,448.84になっているので、この5年間で19.8%(8,448.84/7,051.49-1=0.19816)の上昇、年率では3.7%((1.19816)^(1/5)-1=0.0368)の上昇でした。あまり市場全体があがっていないので、そういう意味で、デイトレーダーに厳しめの統計データ になっているかもしれません。またある6ヶ月間にいい成績をあげたデイトレーダーが次の6ヶ月にもいい成績を残すらしい証拠もあるようです(ただし、この件については、個人を追跡したのではなく、グループを追跡したもののようです)。

 (注) 20.8×1538.04/1610.73=19.8、23.7×3974.17/4202.28=22.4、37.3×2045.16/2,197.15=34.7、125.3×1074.49/1214.90=110.8となります。

 *****

 一番売れる投資信託は過去12ヶ月間の成績の良いもの らしいので、その伝でいくと、今年の成績の悪い私が長期投資を継続した方がいいのではと言っても説得力ないですな。(成績が復活してから言った方が説得力あるでしょうね。でもそのときには株価があがってしまって割安なものが 減ってしまっているのですよ、たぶん。)

 ところで成績が復活するのはいつの日か...。総資産的には、アメリカ株の好調に若干助けられてはいますが。

 

ファンドの保有するフージャースの持ち株(続報)(2006/11/7)

 

 (11/12 外資系ファンドをもう少し調べておきました)

 (11/8 大変失礼しました。フージャースが1:3の株式分割を行ったことを考慮していませんでした。アホ丸出しでした。)

 Okenzumoさんのブログに 触発されてフージャースを保有するファンドOppenheimer International Small Company Fundの持ち株についての続報です。 ブログのコメント欄に書こうと思ったのですが、リンクが多いのでこちらに書いておきます。

 会社四季報の「J.P.モルガンチェースオッペンハイマーF.J.」(J. P. Morgan Chase Oppenheimer Funds JASDEC account(注))というのは3/23にも書いたようにこのファンドの持ち株だと考えられますが、

  • 会社四季報
  • ファンドの半期報告書(2/28付)
  • ファンドの年次報告書(8/31付)
  • フージャースのHP(9/30現在)

の情報を合わせると、このファンドの持ち株数は、

報告時 分割考慮後保有株数 報告保有株数 出典
05/09/30 6,000 2,000 (会社四季報 2006年1集)
06/02/28 12,000 4,000 ファンド半期報告書
06/03/31 13,500 4,500 (会社四季報 2006年3集)
06/6/30 株式分割 プレスリリース
06/08/31 16,000 16,000 (ファンド年次報告書
06/09/30 16,000 16,000 フージャースのHP

と変化していると考えられます。4-8月に分割考慮後の株数で2,500株買った ことになります。若干増えただけですね(当初は株式分割を考慮せず、かなり増えたと書いてしまいました。すみません)。

 このファンドはMorningstarで5つ星を獲得しています(こちら)。

 (注)JASDEC accountは証券保険振替機構の口座という意味と思われます(こちら)。J. P. MorganがOppenheimer Fundsのために証券保険振替機構に持っている口座というところでしょうか。

 

 さらにもう少し外資系ファンドだけ調べてみました。(11/12)

 まず、大株主を見ておきます。外資系ファンドと関係ありそうな株主を黄色で、日本のファンドと関係ある株主を水色で示しています。

大株主(の推移)

順位

氏名または名称

所有株式数(株)

発行済み株式総数に対する所有有株式数の割合(%)

2006.9 2006.3 2005.9
1 廣岡 哲也 107,936 33.1% 34.0% 34.0%
2 株式会社ティ・エイチ・ワン 30,000 9.2% 9.1% 9.1%
3 ジェーピーモルガンチェースオッペンハイマーファンズジャスデックアカウント 16,000 4.9% 4.1% 1.8%
4 日本トラスティ・サービス信託銀行株式会社(信託口) 12,067 3.7% 2.8% 2.6%
5 日本マスタートラスト信託銀行株式会社(信託口) 9,795 3.0% 1.3% 1.8%
6 バンクオブニューヨークジーシーエムクライアントアカウンツイーアイエスジー 6,851 2.1% 1.6%
7 野村信託銀行株式会社(信託口) 6,371 2.0% 1.8%
8 フージャース社員持株会 5,991 1.8% 1.9% 2.0%
9 ビーエヌピーパリバセキュリティーズサービス
ルクセンブルグジャスデックセキュリティーズ
4,950 1.5% 1.5%
10 モルガンスタンレーアンドカンパニーインク 4,876 1.5%

フージャースのHPと会社四季報より

 3,6,9,10位が外資系ファンドと思われます。結論を書くと、3位と9位に対応するファンドはわかりました。

 

 インターネットを検索して判明した、フージャースを保有する外資系ファンドをまとめておきます。

判明したフージャースを保有する外資系ファンド

報告時点 ファンド名 保有株数 組み入れ比率 (最終)信託先 備考
2006/8/31 Oppenheimer International Small Company Fund 16,000 $21,262T/$1,845,676T=1.15% J. P. Morgan Chase Bank ファンド年次報告書
2006/9/30 BNP Paribas PARVEST JAPAN SMALL CAP 4,697(*1) \779.74M/\57,333.88M=1.36%(*1) BNP Paribas Securities Services, Luxembourg branch Latest Factsheet
2006/6/30 Allianz RCM Global Small-Cap Fund 1,155 $1,763T/$215,248T=0.82% State Street Bank & Trust Co. Annual Report
2006/6/30 Allianz NACM PACIFIC RIM FUND 1,011 $1,543T/$239,962T=0.64% State Street Bank & Trust Co. Annual Report

(*1) \57,333.88M*0.0136=\779.74M, \779.74M/\166,000(9/30)=4,697

 16,000株保有しているOppenheimer International Small Company Fund、大株主のリストで3位のやはり16,000株保有しているジェーピーモルガンチェースオッペンハイマーファンズジャスデックアカウント に対応していると思います。

 BNP Paribas PARVEST JAPAN SMALL CAPの保有株数を逆算すると、4,697株であり、信託先がBNP Paribas証券サービスのルクセンブルグ支店になっているので、フージャースのHPの大株主の大株主 で9位の4,950株保有しているビーエヌピーパリバセキュリティーズサービス ルクセンブルグジャスデックセキュリティーズの大部分に対応していると思われます。残りはBNP Paribasの他のファンドで所有しているのではないかと思います。

  なお、このファンドは、ここによると、「リッパー ファンド アワード 2006(スイス、フランス、オーストリア、オランダ、イタリア、イギリス、スペイン)」を「Equity Japan Small and Mid Caps [評価期間3年及び5年]」で受賞しているようです。リッパーモーニングスター同様、ファンドの評価会社ですが、世界各国でさまざまなファンドジャンルで賞を出しているようです。ですから、スイス、フランス、オーストリア、オランダ、イタリア、イギリス、スペインのそれぞれの国で、Equity Japan Small and Mid Caps [評価期間3年及び5年]」の範疇で選ばれたということのようです。そういう意味では、有り難みはそれほどではないかもしれません。

 

 残念ながら、他の2つの外資系ファンドと思われる大株主

バンクオブニューヨークジーシーエムクライアントアカウンツイーアイエスジー

モルガンスタンレーアンドカンパニーインク

はわかりませんでした。ヘッジファンドだと思いますが。必ずしも外資系でないかもしれません。

 

Dellの「粉飾」とつまづき(2006/11/5)
 

 Dellが9/15付けでNasdaqから上場廃止を警告されています(たとえば、ここ)。ご存じのように、ソニー製のリチウム電池が発火してリコールしたり 、Hewlett-Packardにパソコン売り上げ世界首位を奪われたりと散々の状態です。ほかにも、こちらの記事によると、過去5四半期の決算で、業績見通しを何回も達成できず期待外れに終わり、顧客サービスの低下、従業員の規則違反もあるようです。

 私は、リコールの翌日暴落しようとしたら買おうとしたら、株価が上昇したのでびっくりし、もう売る人はあまりいなくなったらしいということで、上場廃止の警告のニュースが出たところで、LEAPSのコールを買うことにしましたが、もちろん、上場廃止の可能性が完全に消えたわけではありません。

 

 さて、その頃、TilsonがValue Investor Insightの毎週の特典号(bonus issue)として、The Motley Foolに載せるはずで載せられなかったコラムを送ってきました。それは、今から約5年前の2001年の12月に公表するはずのコラムでした。Dell内部のかなり高い地位の管理職からの内部告発を中心とした記事で、驚くべき事実がそこには書かれていました。

 最近、またTilsonからメールが送られてきました。「やっと載せてもらえるところが見つかった」と10/6付けのFT.comの記事がついたメールでした。FT.comはもちろん、イギリスのピンク色の経済新聞Financial Timesのサイトです。元のコラムよりはるかに短くなってしまっているのは残念ですが、要点は当然書かれており、十分驚くべき内容です。

 (米)証券委員会がDellの決算報告に疑義を抱いていることが発覚したが、驚いていない。

と始まっていますが、それは、すでに5年前に、会社の上部の信頼すべき情報源2カ所から、Dellが財務的な健康状態をいかに巧妙によく見せようとしていたかの情報を得ていたからだというわけです。

 Dellはキャッシュコンバージョンサイクル(cash conversion cycle、CCC)がマイナスということで有名でした(たとえば、ここ)。

 CCCは

CCC  = (売上債権回転期間)+(棚卸資産回転期間)−(仕入債務回転期間)

で定義され、対象となる資産負債が売上高の何日分あるのかを示すもので、事業の効率性を示す指標の一つです。CCCがマイナスということは、低コスト小売りであるDellの、高い事業効率性を示す一つの証とされてきたわけです。

 

 しかし、毎四半期に、在庫、売掛金、買掛金を実際よりよく見せようと「不自然な行為」をしていたということなので、CCCがマイナスという話は怪しいということになります。(ただ、Dellはどんな規則も破っていたわけではないそうです。その意味でタイトルを「粉飾」とカッコ付きにしています)

 記事によると、四半期末の在庫をできるだけ少なくするためにDellは、各四半期の最後の5日間の生産量と出荷量を決めて、その生産に必要なだけの在庫分を供給元に配達させていました。また、Dellの工場の近くの「集配場」に二週間分の在庫を置いておくように要求していました。売掛金を一時的に少なくするために、四半期末ごとに集金を強化し、買掛金を増やすためには供給元への支払いを3週間程度待ってもらうのが常態化していました。告発者の一人の調達担当責任者は言います。「私に言わせると、われわれに部品などを供給する業者の多くとの長期にわたる関係を損ねていた。」

 以上のようなカラクリがマイナスのCCCにはあったことになります。

 Dellの広報は、2001年当時、 「顧客に対するサービスの能力、ライバル社の何倍ものスピードで成長を続けていることからもご理解いただけるとおり、供給元とはいい関係を維持している。」「 (会計については)標準的な会計基準に従っている」「当社と独立の外部の会計士に監査を受けている」などとこのことを否定していたそうです。今でも、「以前のコメントに付け加えることは ない」と言っているそうです。

 

 このことから、Tilsonは2つの教訓を導いています。一つには、企業には、自社の財務の報告に関して大きな裁量の余地があり、米国一般会計原則(GAAP)のもとであっても業績を実際よりもよく見せることができるということです。もう一つは、このような企業の行動は5年前より少なくなったかもしれないとはいえ、稀ではないということです。

 投資家がどうしたらよいかについては、「ウォール街におもねらず、会計が保守的だという評判が昔からあるような会社に投資せよ。」と言っています。具体的には、Berkshire Hathaway, McDonald, Microsoftを挙げています。(あとの二つには、過去ダメなところがあったと留保を付けていますが)

 最後にTilsonは次のように結んでいます。

 信頼のおける財務諸表は資本市場の基本の一つだ。この信頼が広く損なわれれば、重大なことである。多くの場合、見つけるのは難しいかもしれないが、企業の財務報告の振る舞いに投資家が信賞必罰の態度で臨むかどうかで、状況は良くもなれば悪くもなるという意味で、投資家の態度は重要だ。

 

 さて、この記事が5年前にMotley Foolに掲載してもらえなかったことも私は重要だと思っています。普通に考えると、内部告発を含んでいること、しかし、表立っては不正が行われていなかったこと(GAAPに反していないこと)が大きく関係していたと思われます。日本においてもこのような記事を載せてもらえるかどうかはかなり疑問です。つまり、会社は会計原則に引っかからない範囲でさえ、業績をかなり「粉飾」できる可能性があるということです。(もちろん、会計を専門にされている方には常識的なことでしょうが)

 いずれにしろ、日本においても信頼すべき経営陣のいる会社に投資することは、特に長期投資において重要だということを再認識させられる出来事でした。

  *****

 Value Investor Insightの今月号にとうとうGreenblattが登場しています。ただ記事は、Greenblattたちの主宰しているValue Investors Clubの話が主体です。先月号では、Tweedy, Browne社が取り上げられていました(あくまでも紹介ですので、興味のある方は、ご自分でFree Trialを申し込むなどなさってください。)

 また、TilsonのTilson Focus Fundが19.98%のリターンで、2006年9月末の一年間で833のMulticap Core Fundの中で1位、3,785のlarge cap and multicap fundsでも一位だったそうです。LEAPSを組み入れていることも大きく寄与していると思われます。(もちろん、一年間の成績だけでファンドの成績を論じるのには慎重であるべきですし、ある期間一位になるよりも長期間でトップ10に入ったりする方が重要でしょうが、これからもがんばってほしいと思っています。)

 *****

 私のポートフォリオはこちら。アメリカ株(とそのLEAPS)はまあまあ、日本株は低迷中です。

 

KAPPAさんの「東大卒医師が教える科学的株投資術」(2006/10/17)
 

 (2006/10/20 「最後に」を追加しましたほか、少し加筆・修正しました)

 KAPPAさんの本「東大卒医師が教える科学的株投資術」を読みました。

 (1ヶ月以上前に書き始めたのですが、途中中断して、今やっとまとめたので、すっかり季節外れになってしまいました)

 

 とにかく資料の多さは圧巻です。基本的には、KAPPAさんのサイトのEBIの基礎と実践をより掘り下げてまとめたものという 位置づけになると思います。

 行動ファイナンスに触れたあと、各種の統計的なエビデンス(Evidence,証拠)をとりあげ、その証拠に基づいた投資基準を提唱していきます。

  • バリュー系ファクター(PER、PCFR、PBR、EV/EBITDAなど)
  • 財務・収益性ファクター(ROD、ROE・ROA・ROIC、売り上げ純利益率、アクルーアル)
  • 業績修正情報
  • 低PBR銘柄群の精度を補強するファクター(F_SCORE、G_SCORE)

に関する統計データが紹介されています。また、そのデータの出典がきちんと挙げられ、疑問に思ったときに確認できるようにしてある点もよい点です。

 KAPPAさんは、エビデンスから、今期、来期などの将来のPERなどが重要として予測値を使うことを勧めています。一方、Greenblattの魔法の公式では、株価益回り(実は、EBIT/EV)とROCを使ってスクリーニングを行いますが、そこで使っているのは、実績値です。

 本では、PERなどの絶対値を用いた基準があげられ、そのような基準を使って銘柄選択することを提唱しています。

 本は統計数字が並んでいて一見難しく、また、KAPPAさん信念で個別株が挙げられていないので、親しみにくく感じる人も多いかもしれませんが、前回のジム・クレーマーの本の方法よりは習得しやすく、そういう意味で「易しい」手法です。

 

 個人的には、2000年のPiotroskiの論文の概略がわかってよかったです。この論文は、Greenblattの新しい方の本"The Little Book that Beat the Market"(「株デビューする前に知っておくべき『魔法の公式』  ハラハラドキドキな嫌いな小心者のための投資入門」)でも引用されていたもので、AlphaSeeker.comというサイトのここで読めますが、要約のところだけ読んで中身を読んでいませんでした。

 

 データ集としての使い方

 本で提唱されている基準を使ってスクリーニングを行うのが一義的な使い方ですが、その他にも使い方が考えられると思います。何と言っても、データが豊富です。日本株、アメリカ株のデータがよくまとまっています。

 日本株の投資に役立ちそうな指標についてのさまざまな統計データが載っているものとしては、吉野貴晶さんの本「株式投資のための定量分析入門」があ ります。少し脱線しますが、この本の不満は検証期間が10年程度であることです。日本のデータを収集するのが大変なのかもしれませんが、データの豊富さはアメリカの市場にかないません。 (日本株のデータはアメリカ株のデータに比べるとまだまだという現状です。)

 (吉野貴晶さんは、最近「サザエさんと株価の関係―行動ファイナンス入門」を出版しています。)

 

 定性分析のヒント

 比較的明白な定量的な指標が投資の基準としてあげられていましたが、エビデンスから定性的な分析のヒントも得られると思います。

 「大胆者」の推奨のリターンがいいことが述べられています。うまく大胆者を探し出せれば、その人たちのレポートを集中的に読むことにより、いい投資アイデアが得られる可能性があります。

 

科学的投資のためのちょっとした「コツ」

 科学的投資のためのコツが本の最後の方であげられています。これについては、KAPPAさんの投資哲学を語ったもので、現在のところ、エビデンス に基づいたものではない(あるいは、肯定的にも否定的にも結論を出すのが難しい)と思われるので、参考にとどめるべきと思っています。

  1. マネー雑誌は読まない

  2. 自分の特異な分野に投資しない

  3. 実際に足を運んで「観察」しない

  4. 個人投資家のコミュニティと距離を置く

  5. 他の個人投資家と決して競争しない

  6. 本業に専念する

 統計的事実に基づいた投資となると、1-4は統計的事実と反する「エピソード」に影響されないようにするための「コツ」なのだと思います。他の個人投資家と競争しないというのも、冷静に行動するという面で大切でしょう。

 私は株式投資の「アート」の面もある程度取り入れているという立場だと思いますが、4.の「他の個人投資家と決して競争しない」は私も大切だと思っています。投資に取れる時間、投資期間、性格、取れるリスクは個々人で違うので、自ずから投資法が違ってくるのは当然です。例えば、投資にほとんど時間が取れないけれども、退職後に向けて資産形成をある程度しておきたいとすれば、インデックスファンドや(バリュー投資を 指向する)投資信託がいいでしょう。ある程度時間をとれるのであれば、KAPPAさんの提唱するようなエビデンスに基づく方法でスクリーニングなりがいいでしょう。株漬けの生活も構わなければ、 バフェットやジム・クレイマーやジム・ロジャーズやグリーンブラットのような方法で高いリターンを目指す、といったことになるでしょう。

 あるいは、才覚があれば、生活を賭けて、デイトレードなどの短期売買の方法は、賭けの機会が多い分、天国に早く行けるでしょう。

 一方、4.以外の点では、私はマネー雑誌は読むし、できれば、自分の得意な分野で投資したいですし、実際に足を運んで観察したいですし、優れた個人投資家とはお友達になって話を聞きたいです。私が集中投資派で、銘柄のリスクを大きく取っているのに対し、KAPPAさんが分散投資派であり、銘柄リスクをあまりとらない立場なので、その点が違っているのだと思います。

 

統計について

 KAPPAさんの本で「科学的」というのは、統計的事実に基づいて考える、銘柄選択をするというわけですが、一方で、統計が嫌いという人がいます。 ここでは、統計の利用について考えていきます。

 まず、数字が嫌いというのがあると思いますが、ここではそれは置いておきます。

 第二に、統計を故意に自分の理論なりに有利になるように取っていたりすることがあります。「数字は人を騙さないが、数字を使う人は人を騙す」とかいう類の話です。残念ながら、一般には広く行われているように思われます。ときには、疑ってかかることも必要でしょう。

 第三に、単に注意不足で誤った統計の取り方で誤った結果を導いてしまうこともあるでしょう。これは、投資の統計でも「残存者バイアス」などがそれにあたると思います。これは、Point of Time(その時点で利用可能なデータ)などの整備で、改善されてきていると思います。

 

 第四に、統計のあり方として、どうしても、個別の事実を捨象して平均した全体像をとらえているという意味で限界があります。

 私がまだ学生のとき、物理学科を出たあと医学部に入り直した友人が、(たぶん医師の書いた)ある記事を見せて、「おまえもそう思わないか」と言ってきたことがあります。 その記事の細かいことは忘れましたが、ある病気になる確率が統計的に低いと言われても、病気になってしまったらその人にとっては確率1で起こっていることなのだ、というようなことだったと思います。(彼はそのとき 比較的稀な難病を患っていたので、そんなことを言い出したのでしょう。その後、残念ながら、その病気が原因で数年後に亡くなりました)

 統計的な事実と個別的な事実に齟齬が生じるのは以下の2種類です。

  1. 確率が低いけれど、たまたまそうなってしまった
  2. 確率が高いけれど、たまたまそうならないですんだ

 上の事例は、1.の場合です。一方、KAPPAさんの本で引用されている「おれはたばこを何年も吸っているけれど、ガンになっていない」と いうのは、2.の場合です。どちらもそのようなことがあるからといって、統計の威力を否定するものではないわけです 。しかし、病気などの不幸なことの場合、1.の場合の方が本人にとってはもちろん深刻です。(実際、そうでした)

 さて、投資の話に戻りますと、割り切れない感じがあるのは認めるとしても、結局のところ、上の1.や2.の例があるからという理由で、統計的事実を否定するのはやはりまずいと思います。そして、統計的事実に基づくのであれば、その母集団の性質を生かさなくてはいけないわけですから、KAPPAさんの本で勧められているように、(母集団の性質を生かせるような十分な標本をとってくるという意味で)分散投資になることになります。

 しかし、一方で、個別株投資という点に注目すれば、統計的事実に反している場合にも、よく調べて勝つ確率が高く、期待値もこれまた高い場合は大きく賭けるべきだと 思われます。(このときは集中投資になることになります。また、そういうチャンスは統計的事実に反しているという意味で、めったにないことはつねに肝に銘じるべきでしょう。自戒をこめて

 

注文など

 少し注文を付けさせていただくと、エビデンス(証拠)と示されているデータは、たとえば、「相対的な低PER株のリターンの良さ」ですが、実践での基準は「絶対的な低PERの値」です。もちろん、これは相対的な低PER株のスクリーニングのデータを個人投資家が得にくいという事情を反映してのことだと思いますが、そのことについての言及はほしかったところです。 (すでにAKIさんがこちらに書かれていますが。)

 あくまでも相対的な指標がエビデンスであるという立場からは、相場状況によって、基準値を柔軟に変更するということになると思います。つまり、市場のPERが高い(低い)ときは、基準値を高い(低い)PERに変更して、基準を満たす銘柄数の上場銘柄数の全体に対する数をほぼ一定に保つ、などということをすることになると思います。KAPPAさんが、「不景気時はPER10倍以下、好景気時はPER15倍以下」と書いているのは好意的に取れば、この点について言及しているのだと思います。ただ、AKIさんが書いているように、景気という言葉はあまりよくなかったかもしれません。

 

  「リスクが長期投資で増えていく」(p.178)については、リスクをリターンのばらつきで考えるとその通りですが、値下がりリスクと考えると 。株式投資では減っていくというエビデンスが日本、アメリカであるのは、2006/8/3に書いたとおりです。

 

 「標準偏差」を本の中で定義せずに用いていたような気がしますが、工学部(文学部や経済学部ではありません)の一年生にテストの結果を発表し、平均点と標準偏差を黒板に書いたら、

「標準偏差って何ですか」

と聞かれた私の経験からすると、標準偏差などについての用語集が巻末などにあるとよかったと思いました。

 

最後に

 KAPPAさんの本業の医学の「証拠に基づいた医学(Evidence Based Medicine)」の考え方から、統計的な証拠を重視したアプローチ で、株式投資を提唱しています。株式投資には、「アート(芸術)」と「科学」の側面があるわけですが、科学の側面を突き詰めた手法ということになります。

 こういう本は、経済学か経営学の学者がまとめるべきなのではないかと思うのですが、アメリカの機械的投資の一つの頂点である"What Works on Wall Street"(「ウォール街で勝つ法則 - 株式投資で最高の収益を上げるために」)を書いたJames P. O'Shaughnessyも学者でなく、現在、証券会社"Bear Stearns Asset Management"の人です。そういう意味では「実用的な」本は学者は出してはいけないことになっているのかもしれません。

 本業の傍ら、個人投資家として統計的事実を集め、本を出された努力に敬意を表したいと思います。

 *****

 ダウ(Dow Jones工業株30種平均)が上がってきたおかげで、私のアメリカ株ポートフォリオも上がってきました。上昇率が高いのは、LEAPSを持っているからで、ある意味当然なので、自慢のできることではありません。

 一方、日本株は低迷中です。長期的には、また、市場平均を上回れるようにしたいものです。(ポートフォリオはこちら

 

ジム・クレイマーの株式投資大作戦(2006/9/2)

 

(2006/9/10追記 論文"Trading Is Hazardous to Your Wealth: The Common Stock Investment Performance of Individual Investors"について、ジム・クレイマーの主張を少し汲む形でのコメントを追加しました。)

 

 山崎元さんのお勧めの「全米No.1投資指南役ジム・クレイマーの株式投資大作戦(原題"Real Money: Sane Investing in an Insane World")を読みました。ちなみに原題のReal Moneyは著者主宰のサイト、TheStreet.comの有料サイトの部分の名称でもあります。

 全般的な感想としては、他の本と違っていて、おもしろいのでお勧めです。しかし、劇薬なので、すごく効く可能性がありますけれども、十分注意して使いましょう、というところでしょう か。つまり、私の個人的見解を言ってしまえば、万人向きではないだろうということです。上級者向きです。

 まあ、あんまり水を差してもいけませんから、上級者向きだということに注意して進んでいきましょう。

 

 著者は、TheStreet.comという投資サイトを主宰しています。紹介文によると、ファンドマネージャーとして、1987年から2000年までの13年間、報酬・手数料差し引き後で年率24%の成績だったそうです(とすると、手数料差し引き前は、24/(1-0.2)=30%くらい?)。ファンドマネージャーであった1996年にTheStreet.comを立ち上げています。CNBCのテレビ番組"Mad Money" 、全国ネットのCBSラジオ番組"RealMoney Radio"の司会(ラジオの方は「パーソナリティ」といわれているものに近いと思います)をしています。

 特筆すべきは、NASDAQ総合指数は約5,000でピークを打った2000年3月の直前に株からの撤退を宣言しています(現在、NASDAQ総合指数は約2,100とそのときのピークの半分以下です。チャート参照)。神降臨ですな。

 プロローグで、「株式投資はアートだ!」と宣言しているように、株式投資には、科学とアートの面があるとおもいますが、そのアートの面を極限まで突き詰めろということなのだと思います。これは、やはり最近出版された「東大卒医師が教える科学的「株」投資術」のKAPPAさんの立場とは対極をなすものでしょう。

 

 supさんも書いていますが、この本では(p.49)「実際、私が愚かにも信じていた金科玉条は、以下の三つに要約できる」として、

  1. 株式はバイアンドホールドすべし.それが一番儲かる方法だから。
  2. トレーディング(短期売買)は間違い.長期保有が正解。
  3. 投機は悪の極み。

を挙げています。これだけでもこの本が十分特異な本だということが伺えます。

 

  まず、1.を考えてみましょう。 いろいろな投資戦略がバイアンドホールドと比較されて、ほとんどが同程度か負ける結果に終わっているようです。統計的には、売買回数が多くなるにつれてリターンが悪くなることが知られています (例えば、論文"Trading Is Hazardous to Your Wealth: The Common Stock Investment Performance of Individual Investors")

  公平のために付け加えますと、この論文を少し読んでみたら、手数料の安いディスカウントブローカーに口座を持つ個人投資家に対する調査ではありますが、手数料と売りと買いの価格差(bid ask spread)を考慮したあと(税金は考慮されていない)では、売買が多いとリターンが悪いことが示される一方で、考慮する前では、売買の多い少ないとリターンはほぼ無関係らしいことがわかりました。とすると、ジム・クレイマーが本の中で主張している「現在は全くゲームの性格が変わってしまった。(中略)今ではディスカウントブローカーを使えば七ドルですんでしまう。さらに、(中略)株価の小数点かが実現してからは、ほとんどの銘柄の流動性が格段に高まった。(中略)今では売買するたびに利益が大きく食いつぶされることはない。」(p.52)ということにある程度の論拠はあると思います。(2006/9/10追記)

 バフェットは、多くの投資家に、インデックスファンドを勧めています。インデックスファンドも基本的に売買するものではないですから、この場合もバイアンドホールド することになるでしょう。

 そういう意味で、「それが一番儲かる方法だから」というのは、(投資信託の成績などから見て)正確には、「大部分の人にとって、それが一番儲かる方法だから」

 ジム・クレイマーは「バイアンドホールド」ではなく、「バイアンドホームワーク」(買っても、会社の調査を継続せよ)を提唱しています。この点は、賛成です。個別銘柄を買う以上は当然そうすべきでしょう。一週間、一銘柄あたり 少なくとも一時間のホームワークをせよと言っています。インターネット時代で、情報公開も平等だから、やる気のある個人投資家にも可能であるとしています。 「個人投資家が管理できるポートフォリオの適正規模は5から10銘柄程度」(p.263)だそうですから、5銘柄でも週に5時間以上、10銘柄なら、週に10時間以上調べ物をしないといけないことになります。 となると、平日は株から離れるとしたら、土日のうち一日は投資活動にとっておかないといけないでしょう。(まずい、私はしていないな(汗)。)

 

 2.については、先ほども述べましたが、統計的には、売買回数が多くなるにつれてリターンが悪くなることが知られています。したがって、これも「大部分の人 は、短期売買で成功できない。」

 これについては、セクターローテンションをしたりして投資効率を高めようということのようです。後述するように、そううまくいかないのではと思いますが。

 

 3.もバブルの形成にうまく乗って、頂上付近で飛び降りられたり、短期の株価の変化を読めれば、オプションを使って大きなリターンが得られることは論を俟たないでしょう。しかし、 行動ファイナンスが明らかにしているように、人間は自信過剰でバブルの頂点でうまく逃げることができると思っていますが、実際には難しいものです(これについては、統計を知らないので、間違っているかもしれません) 。だから、万人向きの投資法を指向したグレアムは、投機を避けよと言っているのでしょう。

 ということで、大部分の人がうまく行っていない道をあえてとってみよということらしいのです。

 

 ジム・クレイマーのイチオシのお薦め本は、株式関連の本でなく、(この本が出るまでは)競馬コラムニストのアンディ・ベイヤーによる"Picking Winners"という競馬の順位予想法の本だそうです(邦訳はたぶん「勝ち馬を探せ!」だと思われます。現在は手に入らないようですが 。これは旧版でしょうか。現在7,000円ですから、プレミアムがついているようです)。

 お薦めが競馬の本というのも特異ですが、内容は十分投資に通じるものと思います。

  1. もし過去の失敗から学ぶなら、それを二度と繰り返すことはないだろう。
  2. 勝ちたければ、強いプレーヤーがあまり多くいないトラックに行くべきだ。
  3. 完全な確信がある時にだけ賭けるべきだ。

 2.と3.はグリーンブラットも「グリーンブラット投資法」で同じようなことを言っています。第二章「いくつかの基本原則の4番目「勝負する場所を選ぼう」(p.27)は、2.と同じことですし、実際、競馬の話を出して(太字は私)

 競馬で最も成功する人は(私に言わせれば損の一番少ない人)、レースごとに賭けたりせず、はっきりと確信が持てるレースにだけ賭ける人だ。投資も投資環境に十分知識があり、確信が持てるときにのみに投資するのが理屈にかなっているし、そんなときの成功率は非常に高くなる。(p.28)

 ジム・ロジャーズ(同じジムですが、世界一周を2回した投資家)も「マーケットの魔術師」で

投資にあたって誰もが学ぶべきルールは、そうでない(絶対の確信があるのでない)のなら何もしないことだ。(p.281)

と言っています。

 バフェットの「投資に見逃しのストライクはない」「自分の打てる球が来るのを待て」などの言葉は3.と同じようなことを言っていると思います。

 

 資金は、老後のための資金と余裕資金に分け、老後のための資金は債券を含めた安定運用をすべきと言っていますが、余裕資金についてはその20%を投機にまわせと言っています。そして、投機のためのルールと思われる「トレーディングのための10のルール」を提唱しています。

 個人的には、トレーダーの奥様(本の中で「相場の女神」と呼ばれています)に、トレーディングの本を書いてもらいたいなと思いました。ジム・クレイマーがパニックに陥っているときに「あなたがパニックに陥っているくらいなら買いよ」と尻を叩いて買わせて、その後大儲けしています。 奥様、なかなか胆力のある人のようです。

 

 投機のためのルールだけでなく、もちろん、長期投資のためのルールも25箇条提唱しています(英語ですが、Amazon.comの書評で引用されてしまっています 。ここでは、引用しないでおきますが)。分散投資を勧めたりとこれは標準的なものと思いました。一方では、下調べ(ホームワーク)を重視しているので、たくさん持ちすぎると調べられなくなるということで、持ちすぎるのも戒めています。

 

 他の本と違うと思ったのは、今までと重複しますが、

  1. オプションの利用を含めた投機のすすめ
  2. 天井と底の予測の重視
  3. 相場サイクルを観測・予測して、セクターローテーションを行う
  4. 金利予測の重視

でしょうか。

 

 投機でリターンを大きくするために、オプションの利用を薦めています。売りは取り上げられていないので、買いのみです。

 ジム・クレイマーは得難いチャンスを生かしてオプションを買って大成功をしています。私の覚えているのは2回です。

 まず、学生時代にガルフ・オイル(Gulf Oil)(この会社、今は、本にあるように、シェブロン(Chevron)に買収されています)のコールオプション(株をある価格で購入する権利)の買いで、2,000ドルを25,000ドルと12.5倍にしています。これで、通っていた法科大学院の授業料と学部時代の奨学ローンを完済し、無借金で卒業しています。(p.59)(アメリカでは、ローンを組んで学費にあて、卒業してから返済していくことが多いようです。)

 さらに、ゴールドマン・サックスに在籍当時、画期的なコレステロール降下剤を開発したメルク(Merck)のコールオプションを80,000ドル分買って、10倍にしています。その資金を元手にして会社を辞めてヘッジファンドを始めています(p.410-416)。

 以上のような大きな成功を背景として投機も勧めているのだと思われます。

 

 予測が外れるとオプション(の買い)はたいてい紙くずですが、確信のあるときは、使ってみよということでしょう。

 ただ、日本ではどうも個別株オプションを扱っている会社が見あたりませんでした。All Aboutによると、日本でも、個別株のオプションの売買が東証、大証で行われているらしいですが、こちらの説明によると、私が口座をもっているイートレイド証券では扱っていないようですし、ちょっと探しても個別株オプションを扱っている会社は見あたりませんでした。個別株オプションは機関投資家向けでしょうか。売り出し証券会社が株価操縦していたと悪名高かったEB債には使われていたと思いますが。

 一方、アメリカでは、個別株オプションもネット証券で扱っていて、個人も売買できます。(私も満期までの期間の長いLEAPSを買っています。)

 

  なお、ジム・ロジャーズは、やはり、「マーケットの魔術師」で

SECの調査によれば、90パーセント以上のオプション(の買い)が損で満期を迎えている(p.286)

と言っているように、オプションの買いの勝率は低いので注意しましょう。(勝率より大事な期待値がわかるといいのですが、たぶん、平均としてはマイナスでしょうね。)

 

 空売りは踏み上げに遭うことがあるので、あまりお勧めではないようです。空売りするなら、プット(株をある価格で売却する権利)を買えということらしいです。空売りしていることが他のヘッジファンドのファンドマネージャーに知られて、どんどん買われ て、高値で買い戻したという目にあったそうです。(ジム・クレイマーは自分でやられただけでなく、他人にもしたと述懐しています。やはり、市場は怖いところです。)

 

 2番目の天井の予測、底の予測ですが、これができれば、単なる「バイアンドホールド(アホールド)」よりはるかに高いリターンが得られます。天井の予測、底の予測には、それぞれ一章が割り当てられ、力が入っています。NASDAQがピークを打った2000年3月の直前に株からの撤退を宣言した実績と自信からでしょうか。ただし、正確に当てることは難しいとも書いています。

 

 3番目の相場サイクルによるトレーディング戦略(セクターローテーション)については、図入りで説明されています(p.175)。

 (でもたいてい今相場サイクルのどこにいるのか正確にわからないのですよね...。図のようなきれいな相場サイクルになるとは限らないし。しばしば、完全な確信のないまま、銘柄の入れ替えをすることになる羽目になりそうです。)

 

 最後に、金利予測も重視しています。バフェットの「連銀議長が来て金利を耳打ちしても投資判断は変わらない」というような態度とは対局です。

 

 「投資とは予想がすべてなのだ」が第5章のタイトルになっており、以上のように予想を重視しているわけですが、私の個人的見解ですが、セクターローテーション・金利の予測は実際にはかなり難しいでしょう。セクターローテーション・金利の予測は失敗すれば、当然、市場リターンに対するアンダーパフォーマンスが待っています し、明白な場合はたいてい株価に織り込まれてしまっていると思われます。

 「ピーターリンチの株式投資の法則」という本 の中で、ピーターリンチは、1982年の前半、高金利だったので、利回り13-14%の長期国債がマゼランファンドで最も大きなポジションだったと述べています(p.130)。また、「私自身の循環株との相性はまずまず」(p.261)というように、セクターローテーションをしたりした形跡があります 。しかし、20の黄金則の16番目「正確に金利、経済、株式市場を予測できる者はいない。そのような予測は忘れ去って、投資した企業に何が起こっているかに注意を払うべきである」(p.316。)と言っており、ジム ・クレイマーとは対照的です。

 つまりは、バフェットやリンチのしようとしなかったことを敢えてして、大儲けをしようということのようです。 やはり、ヘッジファンドにいたジム・ロジャーズと近い立場だと思います。

 

 エキサイティングな本で、読後には、ワクワクするかもしれません。しかし、結論的には、やはり、かなり上級者向きと思います。安易に真似ると大怪我しかねません 。

 ちょっと皮肉な見方で恐縮ですが、ありうる展開として、自信過剰でよく理解もせずに真似した読者から

「おまえが投機を勧めるからやってみたが、大損した!」(だから、グレアムは投機を避けろと言っているでしょう

「本で勧められてオプションを買ってみたが、紙くずになった」(90%以上はまず紙くずになりますよ)

などと苦情が殺到したりすることです。(なお、(青字)は私の陰の声です^^;)

 うまく行けば、賭け金が短期間で10倍になったりするわけですが、多くの場合、統計的には不利なことを十分認識のうえ、徹底的に調べ抜いてから確信のあるときのみ賭けることが必要だと思われます。(あと、自分が自信過剰でないかをいつも点検しながら)

 

 本のエピローグにある、本人の戒めの言葉で終わっておきます。

 株式投資は簡単だとは決して言わない。投資する前には、まず十分なホームワークをこなさなければいけない。また自分のポートフォリオを、常に完全に掌握していなければいけない。もし自分で銘柄選択までやろうというのであれば、本格的に取り組まなければいけない。(p.433)

 (次回は、KAPPAさんの本「東大卒医師が教える科学的「株」投資術」の感想の予定です)

 *****

 ポートフォリオはこちら。アメリカ株はCisco SystemsとMicrosoftががんばってくれたおかげでとんとんくらいになりました。日本株は低迷中です。アーバンコーポレイションなどを売っています。

株式長期投資ではやはりリスクは減少する(2006/8/3)

 

  山崎元さんが楽天証券でホンネの投資教室という記事を連載しています。いろいろなことに気づかせてくれる連載で、大変気に入っています。 ただ、今回は本当にそうだろうかということがあったので自分なりに調べてみました。

 直近の「第三十四回 資金運用における短期と長期について」で山崎さんは

 長期投資でもリスクは減少しない。リスクに対する態度が一定の場合、運用期間によって、適切なリスク資産への配分比率は決まらない。リスクをどれだけ取れるかを決める最大のファクターは、投資家の財務的な強さ。

と記しています。長期投資だとリスクが減るというのをよく聞きますが、そうではない、誤解であると山崎さんは言っているわけです。

 どうもそういう結論でいいのだろうかと疑問なので、ここで考えてみたいと思います。結局、

 現代投資論の枠組みで考えれば、山崎さんの仰るとおり。しかし、リスクを値下がりリスクと考えると、株の場合、やはり長期ではリスクが減少すると考えられる。

というのがここでの結論です。

 

 今も書いたように、山崎さんの話はリスクを現代投資論の定義で捉えています。すなわち、リスクをリターン(収益率)の標準偏差でとらえているということです。しかし、リスクを値下がりリスクと考えたら、どうでしょうか。山崎さん自身の書いているように、

 実的には、運用のリスクを負担する必要がある資産は、期待リターンが、リスクの無い資産よりも大きい場合が多い。こうした場合、運用期間の長期化によるリスクの拡大は、同時に、運用期間の長期化による期待運用資産額の増大によってカバーされる。

という意味で、値下がりリスクは減るのです。為替などでは、期待リターンをゼロと見なさないといけないでしょうから、値下がりリスクも時とともに増えていくと考えていいでしょうが、株の場合は、株価がランダムウォークすると考えても、運用期間がM倍になると、期待リターンはM倍になり、一方でリターンの標準偏差はM^(1/2)倍にしかならないので、値下がりリスクは結果として時とともに小さくなるわけです。

 以下、実際の過去の株価も調べつつ、次のような順にみていくことにします。

  1. 年次リターンの標準偏差(「リスク」)は長期投資で減少する
  2. 長期の累計リターンの標準偏差(「リスク」)は長期投資で増加する
  3. 長期で考えると、リターンが負になる確率が減る
  4. 投資期間が長くなると、最悪リターンは初め悪化していくが、あるところで底をうち、投資期間20年ほどではついに正になる

 

1.年次リターンの標準偏差は長期投資で減少する

 山崎さんは

たとえば、計算を簡単にするために、リターンの期待値がゼロでリターンの標準偏差が10%で、リターンはランダムに発生し、正規分布するとする。この場合、「たとえば、2年間の運用の年率リターンの標準偏差は10%×(√2)÷2≒10%×1.414・・・÷2=7.07%となり、1年間の運用よりもリスクが縮小している。4年間の運用のリスクを同様に計算すると、10%×(√4)÷4=5%と、1年間の運用の半分になっている。同様に、運用期間が長くなれば長くなるほど、リスクは縮小するのだ」というものだ。

という話を出しています。

 一般的に、現代投資論では、株価はランダムウォークし、その結果、年次リターンなどは正規分布に従うとしています。この正規分布の平均をμ、標準偏差をσとすれば、N(μ,σ)に従う と表します(上の例では、μ=0, σ=10%)。標準偏差は平均値の回りのバラツキの目安です。その際、ある年のリターンを得ることは、その正規分布N(μ,σ)からサンプル(標本)を 一つ取ることに対応しています。

 そのように考えていいのかと疑問に思う方は、たとえば、2005/9/24のこのグラフを見てもらうといいと思います。棒グラフがだいたい曲線に合っていることでわかると思います。これは、市場リターンがだいたい正規分布に従うということを示しています。

 ただし、私が検定すると、正規分布でないという結論になりました(こちら)。

 にもかかわらず、ここでは、現代投資論でよく行われているように株式のリターンは正規分布すると考えてよいとして、話を進めます。そう考えて話を進めても、「リスクを値下がりリスクと考えると、株の場合、やはり長期ではリスクが減少する 」と考えられます。また、市場の実際のリターンからも同じ結論に達することも見ていきます。

 

 さて、各年のリターンは独立だと考えます。 実際は長期で平均への回帰があるのですが、短期的には独立と考えてよいと思われます。

 下にある年とその次の年の対数リターンの関係(左)とある月とその次の月の対数リターンの関係(右)を示しました。 もちろん、無理に回帰直線をひくことができますが、検定すれば、相関が有意でないことが示せます。(今の場合、左の年次の対数リターンを対象にします。)

 

 さて、年次リターンは独立として、年次リターンが正規分布N(μ,σ)に従うとき、M年分のリターンを調べて平均 m=(x1+x2+ ... + xM)/M を求めます。(これは正規分布N(μ, σ)に従う母集団からM個の標本をとって平均をとることに相当しています。)そのとき、年次リターンの平均(標本平均)は、平均μ, 標準偏差 σ/M1/2 の正規分布N(μ, σ/M1/2)に従うこと がわかっています(たとえば、こちら)。つまり、標本平均である一年あたりのリターンの標準偏差は1/M1/2 の割合で減っていくということです。これは、「リスク(この場合、リターンの標準偏差)が減少する」と言ってよさそうです。

 (上の例では、μ=0,σ=10%なので、標本平均の平均は0, 標準偏差は(10/M1/2)%となります。たとえば、M=4(4年の場合)では、標準偏差は10/41/2=5%となるというわけです。)

 

 このことを市場リターンで見てみましょう。1950年5月末から2006年6月末までの日経平均の月次データを用いました。正規分布でなく、対数正規分布を使います。今回も日経新聞さんに感謝いたします。

 ここで、対数正規分布を使うのは、リターンが(正でも負でも)大きくなるときは、単なる正規分布よりも取り扱いが正確になるからです。月次リターンが対数正規分布に従うと仮定したときの平均値と標準偏差を下の表の黄色の部分に示します。括弧の中は対数正規分布から、実際のリターンの平均値と標準偏差にあたる換算値です。なお、正規分布を仮定した場合の平均値と標準偏差も下表で示しています。

  対数正規分布 正規分布
月次リターン平均値 0.00653(0.655%) 0.827%
月次リターン標準偏差 0.05857(6.032%) 5.849%

(対数正規分布の( )内は、月次リターン平均値と標準偏差の換算値)

 さて、月次データから、1年間(12ヶ月)、2年間(24ヶ月)、...、25年間(600ヶ月)の期間をとり、年次リターンの平均()と標準偏差()を調べました(注1)。また、上で求まった、月次リターンの平均と標準偏差を用いて、月次リターンが対数正規分布に従うと仮定したときの年次リターンの平均(水色)と標準偏差(桃色)も求めました。

図1 年次対数リターンの平均と標準偏差の投資年数による変化

 まず、(株価がランダムウォークするとして)対数正規分布に従う場合、平均(水色)は変化しません。上の表に示した0.00653で一定です。一方、ここで注目したいのは、リスクを表すと言われる標準偏差(桃色)です。これは0.05857/(12×M)1/2=0.01613/M1/2となり、減少していきます。

 なお、対数正規分布を仮定しない場合の年次リターンの標準偏差()も、対数正規分布を仮定した場合と同様に減少していること、平均()も厳密に一定ではありませんが、だいたい一定であることが見て取れます。

 山崎さんはこの年次リターン(一年あたりのリターン)が標準偏差(「リスク」)が投資年数の増加にしたがって減ることをもって「投資期間が長くなることでリスクが減る」と考えるのは誤りだと言っているわけです。私もここ がよくわかっていませんでしたが、山崎さんの言うとおりです。

 山崎さんが冒頭で

 運用における「長期」と「短期」に関する誤解で、おそらく最も広く普及していて、かつその影響が深刻なのは、「長期投資では、リスクが縮小するので、投資期間が長い場合には、大きなリスクを取ることが出来る」という考えだろう。これは、投資教育のテキストにも堂々と載っていることがあるし、新聞・雑誌のマネー運用特集にも、ご丁寧にもデータのグラフ付きで(見せ方を誤ったグラフなのだが)載っていることがある。投資教育のテキストにも堂々と載っていることがあるし、新聞・雑誌のマネー運用特集にも、ご丁寧にもデータのグラフ付きで(見せ方を誤ったグラフなのだが)載っていることがある

と書いている長期投資有利とする「見せ方を誤ったグラフ」の一つが上のグラフのまたは桃色の線ということになると思います。

 こちらにあるグラフがよく使われているグラフだと思われます。ここでも、山崎さん同様、これをもってリスクが減少するというのは誤りだとはっきり書いてあり、正確です。きちんとわかっている人の書いた文章を読みましょうということですね。

 

2.長期の累計リターンの標準偏差は長期投資で増加する

 さて、投資期間が長くなると標準偏差(「リスク」)が実際には大きくなっていることを見ていきます。

 山崎さんの言うように、リターンの前後の相関関係がほぼゼロと見なせる場合(株式市場の場合そう思ってよい)、サンプルした標本(つまりある年のリターン)どうしは独立と考えていいということですから、 正規分布に従う確率変数の定数倍も正規分布になり、平均、分散は定数倍になります(たとえば、こちら)から、M年間のリターンの平均Y=(X1+X2+ ... + XM)/Mは正規分布N(μ, σ/M1/2)に従いますから、そのM倍である、M年間のリターンの和も正規分布に従い、平均はM×μ=Mμ、標準偏差はM×σ/M1/2=M1/2σとなります。つまり、M年間のリターンの和は正規分布N(Mμ, M1/2σ)に従うことになります。したがって、

「リスク(リターンの標準偏差)」は1年分は√M(M1/2)で減る が、M年分だから、結局√Mで増える

ということになります。山崎さんの文章では

富の額のばらつきは、2年間の運用だと、1年間の運用の約1.414倍だし、4年間の運用だと2倍になる。つまり、先に仮定した条件で、それぞれ−1標準偏差レベルの不運に見舞われたときに、初期運用額100万円が、1年間運用すると90万円、2年間の運用だと約85万8千円、4年間運用すると80万円になってしまうということだ。

ということに対応します。ちなみに、標準偏差×(-1)と標準偏差×(+1)の間に68%程度入りますから、3回に1回程度は「−1標準偏差レベル以上の不運」(資産価値の下落)に見舞われ、ここで 挙げられた例以上に、資産を減らしてしまうことになります。( この例で言うと、4年間運用するということを繰り返し行うと、3回に1回程度は、(4年運用しているのに)100万円が80万以下になってしまう不運に見舞われるということです)

 (上の例では、2年間の運用だと、ばらつきは21/2=1.414倍、4年間だと41/2=2倍となり、σ=10%なので、M=2だと21/2×σ=14.1%、M=4だと41/2×σ=20%で、−1標準偏差レベルの不運に見舞われると、M=1のとき、100万×(1-10/100)=90万, M=2のとき、100万×(1-14.14/100)=85.86万、M=4のとき、100×(1-20/100)=80万ということになります)

 現代投資論に則ったリスクの考え方(リスク=リターンの標準偏差)では、上の通りです。山崎さんの議論に間違いはありません。

 

 さて、ここでも市場データで見てみましょう。

 先ほどと同様、月次データから、1年間(12ヶ月)、2年間(24ヶ月)、...、25年間(600ヶ月)の期間をとり、累計リターンの平均()と標準偏差()を調べました(注1)。 ここで、累計リターンとは、1年間なら、1年間の全体としてのリターンのことをいっています。また、上で求まった、月次リターンの平均と標準偏差を用いて、月次リターンが対数正規分布に従うと仮定したときの年次リターンの平均(水色)と標準偏差(桃色)も求めました。

図2 期間累計対数リターンの平均と標準偏差の投資年数による変化

 まず、対数正規分布に従う場合、リスクを表すと言われる標準偏差(桃色)は、0.05857×(12×M)1/2=0.01613×M1/2となり、投資年数の平方根で増えていきます。

 なお、対数正規分布を仮定しない場合の年次リターンの標準偏差()も、対数正規分布を仮定した場合には、増加が頭打ちになりつつもおおむね増加していることがわかります。(細かく見ると、減ることもありますが、全体的には、調べた25年までの投資期間で増加しています)

 このように、投資期間が長くなると、累計リターンの標準偏差が増加していくことがわかります。現代投資論では、リスクをリターンの標準偏差と見なしていますから、その観点からは、「リスクは長期投資で増大する」ということになります。

 

3.長期で考えると、リターンが負になる確率が減る

 それでは、ここからいわゆる現代投資論のリスクの考え方ではなく、値下がりリスクの観点で以上のことを見てみましょう。 強調したいのは、上の結果が変わるわけではなく、見方を変えるだけでも結論が違ってくるということです。

 先ほど見たように、M年間のリターンの分布は正規分布N(Mμ, M1/2σ)に従うことになります。

 リターンがマイナスになる場合を考えると、この正規分布において

Mμ + ZM1/2σ < 0

なる領域の面積を考えることになります(全体の面積は1)。 ここで、Zはリターンがちょうど0になる点での正規分布のZの値(平均から標準偏差の何倍離れているか)を表しています(前と同様、Nは投資年数、μとσは1年あたりのリターンとリターンの標準偏差です)。この式を解くと、

Z < -μM1/2

となり、投資年数が増えるに従って、リターンがマイナスになるZ値が小さくなることがわかります。Zが小さいということはそのZより左側の面積が小さくなるということですから、リターンがマイナスになる確率は小さくなります。つまり、リターンがマイナスになる確率は投資年数が増えるにつれて減っていくということです。これは山崎さんの青字の文章にあるとおりですが、これは投資年数が増えるに従って、値下がりリスクが減るということを示しています。文章の後半を再掲します。

運用期間の長期化によるリスクの拡大は、同時に、運用期間の長期化による期待運用資産額の増大によってカバーされる。

 この文章の述べていることを先ほどの図2でみます。

 先ほど述べたように、対数正規分布(ランダムウォーク)を仮定すると、リスクを表すと言われる標準偏差(桃色)は、投資年数をMとして、0.01613×M1/2と、投資年数の平方根で増えていきます。一方で、リターンの平均(水色)は0.00653Mと投資年数に比例して増えていきます。したがって、増え方は図2に見るとおり、平均 (水色)のほうが標準偏差(桃色)より大きいです。このように、長期投資では、リターンの標準偏差(「リスク」)は確かに大きくなるが、リターンの平均(「期待運用資産額の増大」)の方が大きくなり方が速いので、投資期間全体でリターンが負になる確率は減少するのです。

  なお、実際の1年間、2年間のリターンを調べた場合にも、年次リターンの標準偏差()の増加に比べて、累計平均リターン()の増加が大きく、同様に、投資期間全体でリターンが負になる確率は減少することになります(実際のリターンの分布は平均値を中心とした左右対称ではありませんので、標準偏差だけで議論できませんが、大雑把には、標準偏差で話をしてよいと思います)。

 

 具体的に、リターンが負になる場合をグラフに表してみてみましょう。その期間で負のリターンとなった割合を赤線で表しました。

図3 負リターンの割合の投資年数による変化

 グラフからはちょっとわかりにくいですが、22年(264ヶ月)以上の期間にわたる場合、434期間あった、どの252ヶ月をとろうとも、リターンが負になることはありませんでした。 (21年(252ヶ月)以上の期間の場合、調べた中で1993年4月末から2005年4月末までの1回のみが負リターンでした)

 以上は日本のデータですが、アメリカの場合はどうでしょうか。

 アメリカにおけるデータを調べた結果が"Stocks for the Long Run"「株式投資 長期投資で成功するための完全ガイド 」に載っています。私の持っている第2版では、1802年から1997年のデータを調べており、20年以上の期間では株のリターンが負にならないことが図2-1に示されています。 本文によると、17年で正のリターンになるそうです(原著第二版p.26)。先ほどの日経平均の結果はだいたいアメリカでのデータに一致しているので、日本でもアメリカでも約20年株式市場にいれば、途中不運に見舞われてもリターンが正になるということだと思います。

 (ただし、長期投資といえども、20年はあまりに長いかもしれません。最近、長期投資というときの「長期」の期間が短くなっているようにも感じます。ただ、年金制度が今後も現状で持続ができないと思われる状況で、老後のために投資をするのであれば、20年というのは多くの人にとって十分だと思います。)

 また、日本では、バブルの頂点を1989年12月に迎えていますが、それから17年足らずしか経っていないので、ひょっとするとこれから5年後でもバブルの頂点を上回らなければ、「日経平均に22年以上投資してもマイナスリターンが 起こり得た」ということになるかもしれません。

 次に、リターンがランダムとして、対数正規分布を仮定した場合に比べてどうかを調べてみました。今の月次のデータから、対数正規分布を用いて、理論的な「負リターンの割合」を求め、黒線で示しました。この場合でも、投資期間が長くなるにつれて、リターンがマイナスになる確率が減っていく様子が見て取れます。

 3年以上19年以下で、実際の日経平均のリターンが負になる割合は理論値より上回っています。この期間では、株価がランダムに動くと考えたときよりも実際は、株式市場で損をしやすいようだということになります。

 

4.投資期間が長くなると、最悪リターンは初め悪化していくが、あるところで底をうち、投資期間20年ほどではついに正になる

 次に、最悪リターンもグラフにしてみました。Stocks for the Long Runには、年当たりの最悪リターンが投資期間1,2,5,10,20,30年について記してありますので、それから累計リターンも求めて、一緒のグラフにしてみました。計算法が少し違うことに注意してください(注2)。参考のため、1年当たりのリターンのグラフも載せています。(思うようにグラフが描けずに別のソフトウェアをつかったので、グラフの見た目が他のものと違っています)

 日本()では、13年目で累計最悪リターンは最悪になりますが、それ以降はだんだんとよくなっています。 先ほど見たように22年目に正になります。

 (なお、この最悪リターンを与えている13年間(正確には、13×24=312ヶ月)は、バブルの頂点の1989年12月末から2002年12月末に対応しています。バブルからの長期下落がとても大きなものだったことがわかります。)

 アメリカ()では、3-4年間のデータがないのでわかりませんが、2年目で底を打って、5年目では最悪を脱しています。少なくとも2-4年で底を打ち、5年目には最悪リターンを脱しているということになります。

 つまり、

 日本でもアメリカでも最悪リターンは最初の間悪くなり続けるが、あるところで底(日本では13年、アメリカでは2-4年)を打ち、ついには (日本で21年、アメリカで17年かかって)正になる

ということです。(ただし、日本では前に書いたようにバブルから17年も経っていないので、負のリターンの期間の21年間という記録は更新されるかもしれません)

 

 さらに、補足ですが、"Stocks for the Long Run"には、さらに投資年数によって効率的フロンティアが変化する様子が載っています(第2版、図2-6)。ここでは引用しませんが、図では、株と債券からなるポートフォリオを考えています。

  効率的フロンティアとは、雑に言うと、同じリターンなら最もリスクが少なく、同じリスクなら最もリターンが大きいような点の集まり(実際には曲線になる)で、その意味では「効率的」であり、フロンティアというのは前線 とか境界という意味ですから、効率を高めていったぎりぎり(の最高)のところくらいの意味だと思います。

 効率的フロンティアは、株価がランダムウォークだとすると、投資年数に依りません。山崎さんの言葉では、

リスクに対する態度が一定の場合、運用期間によって、適切なリスク資産への配分比率は決まらない。

ということに対応します。

 "Stocks for the Long Run"の図に戻ると、投資年数が増加するに従って、効率的フロンティアは左へ移動しています。長期投資になるに従って、同じリスク(リターンの変動)をとればよりよいリターンを、同じリターンを要求したときにはリスクは減ることになります。 株価がランダムウォークだと考えた場合は運用期間によって、適切なリスク資産への配分比率は変わらないのですが、実際のデータを使うと、運用期間によって、最適な資産配分のしかたが変わることになります。

 この効率的フロンティアの変化の原因を、本では株のリターンが平均へ回帰(mean reversion)する性質があるからだと説明しています。

 

まとめ

 以上、

  1. 年次リターンの標準偏差(「リスク」)は長期投資で減少するが、それをリスクの減少ととらえるのは誤り
  2. 現代投資論の立場によるリスク(投資リターンのばらつき)という観点で見ると、投資期間が長くなるとリスクは増大する 。(株価がランダムに変化するとしても、過去のデータからも)
  3. 値下がりリスクという観点で見ると、投資期間が長くなると、リターンがマイナスになる確率が減少するという意味でリスクは減少する(株価がランダムに変化するとしても、過去の日経平均のデータからも)
  4. 投資期間が長くなると、最悪リターンは初め悪化していくが、あるところで底をうち、投資期間20年ほどではついに正になる

ということです。

 行動ファイナンスが、数式ベースではまだまだよちよち歩きである以上、現代投資論が完全に葬り去られるのはかなり先で、それまでは、考える道具として現代投資論を使えるところは使うのはいい (使うしかない?)と思われますが、リスクを普通と違う意味でとっていることには常に注意を払わなくてはいけないと思います。

 

 最後にGreenblattの言葉を引用して終わりにしましょう。「グリーンブラット投資法」p.34-35(赤字は私)

 リスクというとき、人が最も心配するのは損失のリスクではないのか? 投資による損失のリスクと潜在的な利益の比較が投資というものだ。(中略)

 ある株式が儲かるか損するかの判断はきわめて主観的に行われるので、リスクを客観的に計る必要性のある投資のプロや学者には、リスクを株価変動性(ボラティリティ)のような概念に置き換えて指標にするほうがほかの手段で計るよりも便利なのだろう。みんながこんな常識外れなことをする理由とは、何かを物差しとして、株式がどのくらい上下するかを推定しなければならないからだ。(中略)

 リスク/収益の関係をよいものにする方法は、大きな安全域のある状況で投資することによって、値下がりのリスクにしっかり歯止めをかけるることだ。

 *****

1)具体的には、たとえば、1年間のデータをとるのに、1950年5月〜1951年5月、1950年6月〜1951年6月、...、2005年6月〜2006年6月の674期間を調べるというようなことをしています。) 本来は、独立な期間での結果を使うべきでしょうが、長期の場合、データが少なくなりすぎるので、便宜的にこのような方法をとっています。もっとよい方法をご存じの方はゲストブックでお教えくださると幸いです。

注2)日本のデータは月次データから、連続する12ヶ月間のデータを1年として、最悪リターンを調べています。一方、アメリカのデータはStocks for the Long Runからとっており、1年なら、(たぶん)各年(前年の12/31から当該年の12/31までのリターン)のうち、最悪のリターンを求めていると思われ、定義が違っていますが、一緒のグラフにしています。

 *****

 持ち株は相変わらず低迷中です。

 成績はこちら

 

Buffettの寄付(2006/7/14)

(7/15追記 Buffettの年あたりの寄付額だけでなく、寄付総額のことも含めるよう書き直し、説明不足のところなどを加筆しました。)

(7/16追記 B株の議決権はなしではなく、1/200でしたので訂正しました。)

 

 最近、いろいろ書きたいことがあるのですが、忙しくてなかなか書けませんでした。

 

 今日は遅ればせながら、Buffettの寄付のことです。

 このことはTilsonからの6/26のメールで初めて知りました。

 Tilsonは私が師匠と思っている一人で、私も購読しているValue Investor Insightを発行しているほか、投資信託(Tilson Mutual Funds)やヘッジファンドも運用しています。たぶん、私の日記で触れたことはないと思いますが、実はTilsonは子供のときのかなりの時間をアフリカで過ごしています。Tilsonの両親は平和部隊で知り合って結婚しており、アフリカで生まれているからのようです。両親は今でもアフリカで活動しています。両親を訪ねたときのエチオピアの悲惨な状況にMotley Foolで触れていたことがあります。ということで、慈善活動について普段から考えている人のせいか、幾分興奮気味のメールでした。(これもいいメールなので、少し紹介したいところですが、無断で紹介するのもまずいですし、またの機会にします)

 

 さて、Buffettの寄付の話に戻ります。たとえば、日経ニュースによると、

「米投資会社バークシャー・ハザウェイを率いるウォーレン・バフェット氏(75)は25日、保有する同社株370億ドル(4兆3000億円)相当を、マイクロソフト会長のビル・ゲイツ氏(50)の財団などに譲渡すると発表した。慈善事業への個人の寄付総額としては米国最大になる。」

とあります。また、別の日経ニュースによれば、

「300億ドル分をゲイツ氏が運営する財団が譲り受ける。資産は現在の300億ドルから倍増する。」

とあります。

 

 しかし、

  1. Buffettの寄付金額は370億ドル(4兆3000億円)とされているが、Buffettが長生きすればこの金額をかなり上回る可能性が高い
  2. Bill Gatesの財団の資産が実際に今、倍になるということはない。
  3. Buffettは若いうちから寄付を考えていたらしいが、資産を大きく複利で増やせる者はすぐに寄付すべきでなく、増やした時点で寄付をすべきと考えていたらしい
  4. 財団が寄付された株を売り払ったときの株価の影響は少ないとBuffettは考えている

ということが私の知る限り(日本では)あまり触れられていないのでそのことについて記しておきたいと思います。(すでに、一部naganodaihyoさんのまじめに投資で触れられていることを 知りました。こちら

 

 報道というのは、エッセンスを伝えざるを得ないので、少々不正確にならざるを得ないので致し方ないとは思いますが、370億ドルとは、Berkshire Hathawayの株の譲渡分(正確に言うと、取り分け分)の時価総額分でしかありません。BerkshireのホームページにあるBill & Melinda Gates 財団への手紙Fortuneの記事を読めばわかりますが、Buffettは初年度にあたる今年2006年にBerkshireのB株を500,000株、Bill & Melinda Gates財団に寄付し、その後、Buffettの生きている限り、寄付する株数を5%ずつ減らしていくことになっています。(毎年株数は減っていきますが、これはあとで述べるように毎年額が減ることにはまずなりません。)

 

 ここで先に進む前にまず基本のおさらいです。

 BerkshireはA株とB株を発行しています。A株はB株30株に相当しています。Yahoo! Financeによれば、発表のあった2006/6/26現在でA株は91,500ドル、B株は3,043ドルです。(7/12現在では少し下がって、それぞれ90,450ドル、3,015ドルです)従って、3,043×500,000≒1,500,000ドル相当となります。元々は今で言うA株しか発行しておらず、株式分割もせずに来ましたが、『Berkshire株の低価格のクローン』だと称して、実は手数料の高い会社型投信が発行されたことに対抗して、議決権 が1/200のB株を発行しました(バフェットからの手紙p.237)。Buffett自身はA株を持っているので、毎年の寄付にあたってはB株に転換して寄付することになります。

 今回、Gates財団に寄付株数の約5/6をあてるという決断をしたわけですが、Buffettが妻より先になくなっていたら、蓄積した富を妻がSusan Thompson Buffett財団 を通じて社会に還元していくはずでした。蓄積した富をどうするかについて大きな変更を行ったわけです。形としては、世界で二番目の富豪であるBuffettが一番の富豪Bill Gatesの財団に寄付するということになります。

 株を贈与される財団は5つで、Bill Gatesとその妻Melindaの財団の他は、2004年に亡くなった妻Susan、長男Howard、長女Susan、次男Peterのそれぞれの財団です。

 それぞれの財団へ寄付する株数(Fortuneの記事Buffettの各財団への手紙)(正確には、寄付のために取り分けておく株数) と、その現時点での時価総額は

財団 関係者

取り分け株数

時価総額
Bill & Melinda Gates 財団 Gates夫妻 10,000,000 $30,430,000,000
Susan Thompson Buffett財団 妻Susan(故人) 1,000,000 $3,043,000,000
Howard G. Buffett財団 長男Howard 350,000 $1,065,050,000
Susan A. Buffett財団 長女Susan 350,000 $1,065,050,000
NoVo財団 次男Peter 350,000 $1,065,050,000
合計 12,050,000 $36,668,150,000

となっています。合計の時価総額は約367億ドルで、これで、「370億ドル寄付」ということに合致します。現在BuffettはA株を474,998株持っているので、B株12,050,000株は12,050,000/(474,998×30)=84.56%にあたり、日経ニュースなどの報道の85%という数に合致します。

 なお、残りの15%程の株の財産についても生前または死後に寄付する意向のようです(このFortuneの記事)。

 

 ところが話には先があります。

今年は取り分け株数から5%にあたる株数を寄付し、翌年以降は残りの株数の5%を寄付するということを繰り返す

ということです。

 これを30年目まで表にすると、以下のようになります。Berkshireの株価が毎年6%,10%,15%それぞれ上昇したと仮定したときの各年の寄付額と累積寄付額(額は100万ドル単位)も一緒に表にしておきます。

(寄付割合は、寄付する総株数12,050,000株を1としたときの割合です。また、株数については、正確には株数の小数点以下の処理をきちんとしなくてはいけませんが、面倒なのでそのままにしてい ますので細かいところは実際と少しずれると思います)

年目 西暦 Buffettの年齢 寄付株数 総寄付株数 寄付割合 株価一定 株価6%増加 株価10%増加 株価15%増加
年寄付額 総寄付額 年寄付額 総寄付額 年寄付額 総寄付額 年寄付額 総寄付額
1 2006 76 602,500 602,500 5.0% $1,833 $1,833 $1,833 $1,833 $1,833 $1,833 $1,833 $1,833
2 2007 77 572,375 1,174,875 9.8% $1,742 $3,575 $1,846 $3,680 $1,916 $3,749 $2,003 $3,836
3 2008 78 543,756 1,718,631 14.3% $1,655 $5,230 $1,859 $5,539 $2,002 $5,751 $2,188 $6,025
4 2009 79 516,568 2,235,200 18.5% $1,572 $6,802 $1,872 $7,411 $2,092 $7,844 $2,391 $8,415
5 2010 80 490,740 2,725,940 22.6% $1,493 $8,295 $1,885 $9,296 $2,186 $10,030 $2,612 $11,027
6 2011 81 466,203 3,192,143 26.5% $1,419 $9,714 $1,898 $11,195 $2,285 $12,315 $2,853 $13,881
7 2012 82 442,893 3,635,036 30.2% $1,348 $11,061 $1,912 $13,107 $2,388 $14,702 $3,117 $16,998
8 2013 83 420,748 4,055,784 33.7% $1,280 $12,342 $1,925 $15,032 $2,495 $17,197 $3,406 $20,404
9 2014 84 399,711 4,455,495 37.0% $1,216 $13,558 $1,939 $16,970 $2,607 $19,805 $3,721 $24,124
10 2015 85 379,725 4,835,220 40.1% $1,156 $14,714 $1,952 $18,923 $2,725 $22,529 $4,065 $28,189
11 2016 86 360,739 5,195,959 43.1% $1,098 $15,811 $1,966 $20,888 $2,847 $25,377 $4,441 $32,630
12 2017 87 342,702 5,538,661 46.0% $1,043 $16,854 $1,980 $22,868 $2,975 $28,352 $4,852 $37,482
13 2018 88 325,567 5,864,228 48.7% $991 $17,845 $1,993 $24,861 $3,109 $31,461 $5,300 $42,783
14 2019 89 309,289 6,173,517 51.2% $941 $18,786 $2,007 $26,869 $3,249 $34,710 $5,791 $48,573
15 2020 90 293,824 6,467,341 53.7% $894 $19,680 $2,021 $28,890 $3,395 $38,106 $6,326 $54,900
16 2021 91 279,133 6,746,474 56.0% $849 $20,530 $2,036 $30,926 $3,548 $41,654 $6,912 $61,811
17 2022 92 265,176 7,011,650 58.2% $807 $21,336 $2,050 $32,976 $3,708 $45,362 $7,551 $69,362
18 2023 93 251,918 7,263,567 60.3% $767 $22,103 $2,064 $35,040 $3,875 $49,236 $8,249 $77,612
19 2024 94 239,322 7,502,889 62.3% $728 $22,831 $2,079 $37,119 $4,049 $53,285 $9,012 $86,624
20 2025 95 227,356 7,730,245 64.2% $692 $23,523 $2,093 $39,212 $4,231 $57,517 $9,846 $96,470
30 2035 105 136,126 9,463,603 78.5% $414 $28,798 $2,244 $60,968 $6,571 $111,851 $23,850 $261,862

    (寄付額は100万ドル単位)

 

 寄付を初めて10年め、Buffettは85歳ですが、寄付の完了した株は全体の約40%にしかなっていません。20年目95歳のとき、やっと残り約65%で、30年目、105歳のとき 約80%です。

 また見ての通り、株価が今後上がらないとすれば、年当たりの寄付額は減少していきますが、1年にBerkshireの株が6%でもあがるとすれば、寄付額は年々増加していきます(注 1)。このことはBuffett自身が言及しています。Buffettは、毎年寄付額が実質的に増えるような仕掛けを用意していることになります。

 もちろん、毎年平均して上がるわけではないので、寄付相当額も毎年変わりますが、おおむね増えていくと考えてよいと思います。 年率10%というのは、市場平均に近い値です。市場平均としても20年後には1年当たりの寄付額は2.3倍、30年後には3.6倍になる勘定です。

 実際には、現在まで、Berkshireは簿価を年率21.5%増やしてきている実績(2005年年次報告書p.4)から考えると、Berkshireの株価は 市場平均約10%をかなり上回る率で(平均して)今後も上昇する可能性が極めて高いと思われます。その意味で株価が年率15%上がる場合を考えています。(15%という数字も控えめかもしれませんが)

 寄付(相当)総額をみると、たとえば、株価が6%上がった場合(橙色)、19年目に寄付総額は、現在の寄付 (相当)時価総額368億ドルを超え、371億ドルになります(赤字)。10%上がった場合(緑色)には15年目、15%上がった場合(水色)には12年目にそれぞれ超えます。(直線的に株価があがらないので、あくまでも目安で考えてください)

 このように考えると、Buffettの寄付金額は370億ドル(4兆3000億円)とされているが、Buffettが長生きすればこの金額をかなり上回る可能性が高いということになります。

 

 今見てきたように、いきなり全株が寄付されるわけではありません。 したがって、実際には資産規模が今倍増することも ありませんし、将来的にもそういう瞬間はないでしょう。たとえば、今年に限って言えば、15億ドルが加えられるだけです。 「Gates財団の現有の300億ドルに、Buffettの寄付分300億ドル分が仮に即時すべて現在行われたら、倍増することにあたる」ということです。

 さらに、2009年以降、毎年の寄付相当額分を使ってしまうことを寄付の条件として課しています(注2)ので、その意味でも実際に倍増することはないように思います。 (ただし、Fortuneの インタビュー記事によると、Berkshireの株を売ることを必ずしも求めていません)

 

 Fortuneの インタビュー記事によると、2004年に亡くなった妻はもっと早く寄付行為を行うべきだと言っていたらしいですが、

 「私に関しては、慈善行為は今も重要だが、一般的に言って、1年後、10年後、20年後、それ以降も同様に重要だと考えていた。

 高率で資金を増やすことができる人の場合には、20年後の慈善事業を担当するのがよいと私は思った。一方、あまり資金を増やすことができない人は今の慈善事業を考えるのが理にかなっている。」

 このあと「その理屈は自分のしたかったことと、たまたま合致していたわけですね」と問われて、

「(激しく笑って)とってもね。そのことに疑問の余地はない。私は自分のしていることを過去も現在も楽しんでいる。」

 赤字の部分は、ちょっと傲慢に聞こえて日本では非難されそうですね。(アメリカでもかな)

 

 寄付した株を財団が売って株価が下がるのでは、という疑問については

 「現在のBerkshire株の回転率は年に15%だが、寄付した株全部を財団が売り払っても年に17%にしかならないから、これで株価が下がると考えるのはばかげている

 実際のところ、財団が株を売却すれば、株の流動性があがり、そのことによって、たぶんS&P500に加えられることになるだろう。

 このことははっきりしておきたい。『Berkshireの株主に害になるようだったら寄付を決めなかったろう。実際、害にならない』。」

 と答えています。Berkshire Hathawayは利益規模、時価総額などからはS&P500に組み入れられて当然ですが、たぶん流動性が足りないなどの理由で、現在のところ、組み入れられていません。(S&P500の採用基準はこちらの"Criteria for Additions to and Deletions from a U.S. Index"をクリックしてください)

 

 当初、Buffettは死後、Susan Thompson Buffett財団 を通じて、富の社会への還元をするはずでしたが、大部分がGates財団に贈与するように考えを変えたことについては、自分たちよりもうまく慈善活動をしてくれるからだと考えているようです。

 「Bill Gatesと妻のMelindaと知り合って時間を一緒に過ごすことにより、Gates夫妻が自分たちの財団を通じて行っていることを実にいいことだと思うようになったからだ」「二人が財団の仕事に捧げる熱意、エネルギーに感心した。」

 「Billは医学や援助のあり方の進歩に追いつくため、毎年何千ページの文献を読んでいる。Melindaは世界中を旅して、どうしたら善意がよい結果につながるかを見て回っている。世界では文字通り数十億の人々がひどい生活をおくっており、Gates夫妻は自分たちのできる限り、その不平等をなくそうと努力している」

 「自分のしたいことが何であろうと、誰かが自分よりうまくできる誰かを見つける以上に合理的なことはあるだろうか。賭け金の高いゴルフゲームがあるとし たら、誰だって自分の代わりにTiger Woods(タイガー・ウッズ)を出そうとするのではないだろうか。私は自分の資産の使い道の決定について、それと同じように考えている。

 どなたかが指摘していましたが、Bill GatesはMicrosoftを経営していた時と同様な熱心さで慈善活動に取り組んでいるようです。

 

 Buffettは、自分のあとに続いて、自分で一々財団を立ち上げるよりも、むしろ、いい財団を探して寄付してほしいことの期待をにじましています。

「率直に言って、慈善について考えている非常に豊かな他の人たちが、私の行いを見て、必ずしも自分たちの財団を立ち上げる必要がないと納得し、自分たちの富を扱ってくれる最善の財団を探すようになることを期待している。」

「投資においては、人々はいつも同じようなことをしている。自分たちのお金を自分たちよりもうまく回せる人にお金を託す。その考えを自分の蓄積した富にも適用すれば、死後に自分の仕事上の知り合いや社員などに任せることになって、結局、その人たちの勝手にさせるようなことになるよりもずっといい。

 10億ドル(約1,000億円)以上の資産を残してこの世を去ることになる人々の何割かが、自分自身で慈善活動を行うのはかまわないと思う。一つの問題は、富んだ人々の多くが年寄りであるために、同世代には活発に慈善活動できるような知り合いがおらず、残された時間もあまりないことだ。自分より若い人々に慈善を引き継いでもらえるという意味で、私は恵まれていると思う。」

 TilsonがBuffettは寄付に当たってMelinda & Bill財団に自分の名前を載せろと言えば言えたのに言わなかったのは大変いいと書いていたのですが、金持ちの人は自分の名前を冠した財団をつくって名誉を残したい人が多いのだと想像します。

 

 最後に、若いときからBuffettが寄付を考えていたことについて、Fortuneの記事から引用します。この部分についてはTilsonが一番気に入った部分だと言っていました。

 「1952年に結婚したとき、妻のSusanに私は金持ちになるよと言いました。それは、私の徳によるものではなく、一生懸命働くからでもなく、いいときにいい場所にいい才能をもって生まれたからなんだと

 私は生まれながらに資本配分(capital allocation)の才に恵まれ、幸運なことに私の周りの人々--親、教師、妻--がその才能を最大限に引き出してくれたのだと。

 ともかく、私達が金持ちになるという話を聞いても妻はあまり喜びませんでした。どうでもいいと思っていたか私のことを信じていなかったか、たぶんその両方だと思います。しかし、私たちが蓄えた富についてどうするかについては妻と私は一致していました。つまり、自分たちの富を社会に還元するということです。

 その点について、鉄鋼王のアンドリュー・カーネギー(Andrew Carnegie)と同意見です。彼は社会から得た巨富は社会に返すべきだと言ったのです。資本配分に関する私の能力は、ある特別な状況の下でしか役に立ちません。それは、人口の多くて富んだ国に住んでいて、そこの市場で大量に証券が売買され、その証券がときどきばかげたような値段を付けるということが起こるような状況です。私にとって幸いなことに、前世紀後半のアメリカの状況がそれだったわけです。

 妻も私も、巨額の資産を子供達に相続させるべきでないと確信しています。子供達は確かにすばらしいです。しかし、わたしはよく言ったものです。子供達が育ち方や(家で学ぶことを含めて)教育を受ける機会において人より恵まれた立場にいるのに、お金に溺れさせるのは正しいことでも合理的なことでもない、と。

 実力主義を標榜する社会で、私の子供たちは実質的にとても有利なスタートラインに立てました。もし、過去の王朝の王子達が相続したような巨富を私たちの子供達に相続させでもしたら、平等を目指すべき競争の場を台無しにしてしまうでしょう。」

 まったく謙虚ですばらしいことだと思います。

 株で財をなした人の中には、自分はとりわけ優れていて、特別な人間だと勘違いしている人も残念ながらいて、いやな気持ちになることがありますが、Buffettを見習って謙虚な気持ちを失わないようにしたいものです。

 

 この寄付に関するFortuneの記事にリンクをまとめておきます。

Warren Buffett gives away his fortune(カバー記事)

A conversation with Warren Buffett(インタビュー記事)

How the giveaway will work(寄付の詳細)

The global force called the Gates Foundation(Gates財団について)

Letters from Buffett on gifts of Berkshire stock(Buffettの各財団への手紙の要約)

 寄付に関する各財団への手紙(Berkshireのサイト)は以下からたどれます。

Letters from Buffett on gifts of Berkshire stock

 

 (注1)年率(1/0.95-1=)5.26%以上で平均して株価が上昇すれば、寄付相当額は増えていくことになります。

株価の上昇率をa、当初寄付相当額をM、n年目の寄付額はM×0.95^n×(1+a)^(n-1)=M[0.95(1+a)]^(n-1)となり、毎年の増加率は0.95(1+a)-1となりますので、株価上昇率と寄付相当額の毎年の増加率の関係を表にしておくと、以下のようになります。

株価上昇率 寄付相当額の毎年の増加率
0% -5%
5.26% 0%
6% 0.7%
10% 4.5%
15% 9.25%

 (注2Bill & Melinda Gates 財団への手紙で、寄付を続ける条件として3つ挙げています。

  1. Gates夫妻のどちらかが存命で、現役で財団の運営にかかわること
  2. 私の寄付分分が課税されたりすることなく慈善に使えるような法的要求をこれから満たすこと
  3. 私の毎年の寄付額分は財団の純資産の最低5%の支出分に上乗せされること(この条件については、2年間の猶予を与えるので、実際には2009年から)

 「純資産の最低5%の支出分」ですが、Gates財団が非課税対象になるための最低線を指しているようです(週刊東洋経済2006/7/15号(p.16)によると、「米連邦法は非課税対象の慈善団体に対して、毎年基金規模の5%を社会還元するように義務づけている」)。この非課税慈善団体資格の最低線に加えて、Buffettの寄付額分を2009年以降はその年のうちに使い切ることを求めていることになります。

 *****

 ほかに、

  1. 山崎さんの最近のコラムの「長期投資はリスクを軽減するは誤り」
  2. Greenblattの魔法の公式の日本への適用
  3. Legg MasonのストラテジストMaubossinの出した本"More Than You Know: Finding Finacial Wisdom in Unconventional Places"

などについても書きたかったのですが、またの機会にしたいと思います。(書かないかもしれません)

 *****

 株は相変わらず低迷しています。こちらをご覧ください。

 

MKタクシー(2006/6/3)

 

 数式が続いて嫌気が差している方も多いと思いますので、今回は軽く会社の話です。そのうえ、非上場ですが。

 

 先日、両親が訪ねて来るというのでどうやって案内するか考えたのですが、観光バスは疲れるだろうということで、贅沢ですが、結局ハイヤーにしました。それで私のお気に入りのMKタクシーにお願いすることにしました。

 観光案内も満足するものでしたが、私にとってとても興味深かったのは、雑談で出てきたMKタクシーに対する苦情に関する話でした。

「うちの会社はサービス業だということを徹底しているので、対応が悪いという苦情はないのですが、一番多いのは、道を知らないことという苦情です。ですから、新人は最初に『新人ドライバーで道が不案内ですが、よろしくお願いします』と 言うように教育しています。」

「運転手が何もしゃべらなくて愛想がないという苦情はございませんが、喋りすぎだという苦情が来ます」

「東京に進出したとき、研修期間の3ヶ月があるうち、1ヶ月で他社から移ってきたドライバーはすべて辞めたそうです。残ったのは他業種のサービス業からの人たちでした」

 私はとても驚きました。まず、タクシードライバーが道を知らないような会社は普通に考えたら失格です。また、同業他社のドライバーが研修期間の途中で辞めたくなるということは今までの業界の常識を突き崩していることを感じさせるものです。つまり、MKタクシーはタクシー業はサービス業だととらえて徹底した社員教育をし、道路を知る(あるいは、知っていればいい)ということは最優先ではないとしていることで、他社と違った戦略を とっているということです。そして、安い料金でサービスを提供する(やはり、消費者にとって低価格はひじょうに大事なことです)ということです。

 しかし、残念ながら、MKタクシーは上場していません。上場したら、投資したい会社の一つです。

 上場した場合の投資リスクとしては、タクシー業が許認可事業の性格が強く、今後政策が変わって規制強化=競争の抑制が行われ、MKタクシーの強みが行かせなくなる可能性があることです。大きな規制緩和の流れでMKタクシーの優位性は揺るがないとは思いますが 、こればかりはわかりません。

#他のタクシー業者の方から苦情がきそうだなあ。

 *****

 株は順調に(?)下がっています。昨日は一時期、阿鼻叫喚の巷と化したようですが、幸運にも株価を見ていませんでした。ずいぶん下がった株や配当で下値を支えられそうな株を買ったつもりでしたが、まだまだ下がっています。 不動産株はなるべく避けるつもりがまたも買ってしまいました。いずれにしろ、忍耐が試されそうです。今年中はプラス復活は難しそうです。

 アメリカ株も低迷中ですが、大型優良株は割安のようなので、こちらも我慢です。

 成績はこちら

 

Kelly基準とその周辺の意味するもの(2006/5/3)

 

Kelly基準とは、もともと、ギャンブルなどで賭け金を決める方法です。

たとえば、勝てば賭け金の2倍の利益(払戻金は3倍)、負ければ没収という賭けを考えたときに、所持金のどのくらいの割合を賭ければいいのかという基準です。

Kelly基準は、「十分多くの回数ゲームを行うなら、ケリー基準がいかなる戦略よりも資金を増加させる」という意味で最適戦略になっているようですが、一方、問題点もいろいろあるようです(こちら)。

――と偉そうに書いていますが、最近知りました(^^;)

きっかけは、Legg MasonのストラテジストであるMauboussin解説記事です。Mauboussinの解説記事はLegg Masonのサイトに載せられています(ここ)。ここで登録すると、発行のたびにメールで送られてきます。毎度洞察の得られる記事がタダで読めるので、私には驚きです。(私の理解では、ストラテジストというのは、株式市場の動向を予想したりする人なのですが、こんな記事を書きつつ、相場の予想もしているのでしょうか)

Legg Masonはもちろん、Bill MillerLegg Mason Value Trustなどを運用している投資信託(mutual fund)会社です。このファンドは現在のところ、過去15年連続でS&P500に勝っています。

賭けをするという要素が投資や投機にありますから、Kelly基準は投資や投機にも利用できそうということになります。賭けでどれくらいの賭け金にするかというのは、投資では、所持している資産のどれだけの割合を投資にするかを決めることになります。ここで、この所持金のうち、どれだけ投資に用いるかを「投資比率」とよぶことにします。

Kelly基準についていろいろ調べてみると、どうやら、短期売買をしている方たちには周知のことのようです。投資苑やらラリーウイリアムズの本などには取り上げられているようです。ただし、Kelly基準という言葉ではなく、Optimal f(オプティマルエフ、最適 f 値?)と呼ばれているようです。Optimal fというのは、Ralph Vince(ラルフ・ビンス)いう人が用いている言葉のようです。Ralph VinceはKelly基準の相場への応用に関する本を3冊書いているようです(こちら)。

 

もうすでに何度も引用していますが、¥∞さんのサイトケリー基準のページが大変参考になりました。感謝いたします。このサイトがなければここまで私の考察が深まったかどうかきわめてあやしいです。(数学が得意な方は、ケリー基準のページを先に読んでいただけるとよいと思います。とてもよく書けていると思います)

 ¥∞さんによると、

私自身は、相場でケリー基準を使うのは無理なんじゃないかと思っています

ということなのですが、たぶんそうなのだと私も思います。(先ほどの問題点を述べたページを参照してください。Kelly基準の使用上、理論上の問題点が論じられています。)

 

では、なぜここで取り上げるのかというと、Kelly基準自体が使えなくても、Kelly基準について考えてみることにより現れてくることが投資にも役立つと思われるからです。

なお、¥∞さんによると

知的所有権(?)はケリーに帰属するべきで、ラルフ・ビンスの功績は普及面ですよ

ということ(こちら)なので、私もここでは、Optimal fでなく、Kelly基準と呼ぶことにします。

 

 それでいろいろ驚くべきことがわかりました。

  1. 期待値が正の賭けでも、大きく賭けすぎると(長期には)負けたり、破産したりすることがある
  2. 株価が短期では変動するが、長期では変化がないような株に投資しても儲けられる
  3. 株価が変動しながら下がり続ける株に投資しても儲かることがある
  4. 日経平均が約100倍になっている間に、仮にKelly基準で投資してみると約1,000倍になっていた
  5. 過度のリバレッジはたとえ追い証にならないとしてもリターンに有害のうえ、株価変動を高めるという意味でリスクを高める。ひどい場合は株価が上がっていても資産を減らしたり、破産したりする

  

 (えっ、周知の事実でしたか? その場合はお許しください^^;

  私にとって重要だったのは、5.で今後のリバレッジの取り方の一つの大きな指針になると思います。

 2.と3.では、仮想的な株を考え、株価は完全にランダムに変動するとしています。(2.については 、Chiroさんに教えていただきました。ありがとうございました)

 それで、普通ですと、このあと、くどくどと続くのですが、数式や図を入れて、ジオシティーズのホームページに載せようとすると、いろいろ 技術的に面倒なこと(*)があることがわかりましたので、pdfファイルにしました。現在のところ、pdfファイルのダウンロードは無料です(笑)ので、興味のある方は読んでください(こちら)。

 (将来にわたっても、カネを払ってまで見たい人はゼロでなくても、たぶん数人なのではないかと思われます 。その上、そういう方達の多くはこちらからお金を払ってでもコメントをしていただきたい方と思われるので、まあ、将来にわたっても無料です、たぶん。)

 

 (*)ページに埋め込んだ図などのファイルができる*.filesといったフォルダーがたぶん、フォルダー名の制約で転送できず、もExcelのグラフファイル*.emzもJavaの実行ファイルと勘違いされているらしく転送できない

 *****

 日本株も不調ですが、アメリカ株もMicrosoftがWall Streetの期待に添わない決算を出し、これからの成長に向けて大きな投資をすると言ったので、 (投資が収益を圧迫し、短期的な収益の成長が見込めないとと思われたらしく)10%以上一日で下げ、こちらも不調です(こちら)。まあ、とりあえず気長に待つことにします。

 
今週の週刊ダイヤモンド(2006/4/19)
 

 すでにパーシャルオーナーの角山さんも書かれていますが、今週(2006/4/22号)の週刊ダイヤモンド(目次が見られます)はとてもいいと思います。おなじダイヤモンド社のZAiが今日私の手元に届きましたが、少なくともZAi今月号と今週号の週刊ダイヤモンドが並んでいてどちらかを買うとなったら、今週号の週刊ダイヤモンドを買うのがいいと思います。

 「あとで泣かないための丸ごと一冊『運用』入門」という特集は、株投資編 と金融商品編に分かれ、株投資編は「株投資の失敗編」「失敗に学ぶ株投資術編」「株式市場の裏側編」の3つのパートからなって おり、金融商品編も「金融商品の失敗編」「失敗に学ぶ運用術編」と失敗に重点を置いています。

 まず、株価が昨年40%以上上がった現時点で、このように失敗について多く語っているのがいい と思います。なぜなら、投資でまず大切なのは、損をしないことだからです(と、今年損をしている私が言っても説得力がありませんが)。株価が大きく上がったあとは、人々の期待リターンも上がっています。しかし、過去の (日経平均)データからすると、今年の期待リターンは(も)9%程度です。この値に基づくと、年末の日経平均の値は17,612円です。まあ、それほど変な値ではないですね(注)。でも、昨年上がったからもっと上がると思っている人も多いのではないでしょうか。投資信託の新規設定が多いのも、これからもっと上がるから買おうと思っている人が多いと運用会社に思われているからでしょう。

 さて、特集の「株主市場の裏側編」では、業績予想が信用ならない会社がランキングされていますし、 「決算書の裏から浮かび上がる企業の実像」でも、実際の会社名があげられて注意すべき点が述べられています。 株主資本が厚い会社はつぶれにくさを示すので、優良会社の指標の一つですが、「株主のカネを”食いつぶした会社”」のランキングでは、株主資本は厚いが、その株主資本を株主の犠牲で積み上げた要注意会社がリストアップされています。

 また、「金融商品編」でも買ってはならない金融商品をこれまた運用専門家が覆面対談で 指摘しています。この記事は初心者の方にも大変役立つと思います。最近人気のある金融商品についても名指しで批判されています。「(持っている人は)優良納税者」「国益にはかなう商品」 だそうです。「株投資の失敗編」の証券外務員ぶちまけ座談会も読んでおくと、カモになる要素をいくつか減らせると思います。

 と、褒めちぎりましたが、ちょっと注文しておくと、「公開しない銘柄選び」での議論の展開が、現代投資論に立脚していることです。よく出てくることですが、リスクのことです。

 ”リスク"は投資の世界で使う特殊な用語で、一般的な意味の「危険」や「損すること」は指していない。リスクとは「将来損することも得することもありうるが、それがどの程度不確実であるか」を表す考え方である。

 もちろん、これは現代投資論の考え方です。リターンの変動(標準偏差)をリスクと考えてしまうわけです。リスクのある部分を取り入れているとは思いますが、値上がりすることはリスクとは言わないでしょう。バリュー投資の立場から言えば、「リスク」と言ったら「値下がりリスク」であり、損する可能性のことです。つまり、一般的な意味と同じ使い方だと思います。

 また、東証33業種別の株価指数の相関係数をあげて分散投資を勧めているのも現代投資論的な立場です。こちらは過去のデータが未来にも成立するなら、ある程度意味があると私は思っています。

 まあ、とは言うものの、全体としてはとてもいいと思いますので、お勧めいたします。

 #もちろん、私はダイヤモンド社とは一切関係ありません。

 

 (注)  日経平均を1点でなく、幅で予想してみます。ぶれが大きくなるので、対数リターンの期待リターンと標準偏差から見積もることにします。

 1949年末から2005年末までのデータを使い、対数リターンの平均値と標準偏差を求め、m-2σからm+2σにあたる値を求め、その値から通常のリターン値に戻します。正規分布を仮定すると、年次リターンの値がm-2σとm+2σの間に約95%の確率で、入ることになります。

  対数リターン リターン 年末日経平均
平均値(m) 0.0891 9.32% -
標準偏差(σ) 0.240 27.2% -
m-2σ -0.392 -32.4% 10,891
m-σ -0.151 -14.0% 13,849
m 0.089 9.32% 17,612
m+σ 0.329 39.01% 22,396
m+2σ 0.570 76.78% 28,481

 上の表からわかるように、正規分布を仮定して、今年のリターンを95%の確率で当てるためには、 なんとリターンは-32%〜77%の範囲であると予測しなくてはならないことになります。昨年末の日経平均が16,111円ですので、 年末の日経平均の予想値は10,900円〜28,500円というとてつもない幅になります。これでは、普通には、とても予測とはいえないものになってしまいます。たとえば、

「95%の確率で今年のリターンは-32%〜77%で 、したがって、今年2006年末の予測は10,900円から28,500円の間です。」

などと昨年末か今年初めに出版された雑誌などに書いあったりしたら、いい加減にしろと思うでしょう。ですが、これが過去のデータからの「予測」です。

 その上、正規分布を仮定しても20回に1回は外れ、なおかつ、実際のリターンは正規分布よりも極端な値が出やすいこともわかっているわけです...。

 (ところで、私も「いい加減にしろ」と思ってしまうに違いありません。 リターンの幅がこれほど広くなるということは計算してみればわかるのですが、にわかには信じられません。こういった人間心理のバイアス があるので、このような人間心理に基づく、いろいろなアノーマリが今後も残っていくことでしょう。)

Buffettによる、市場インデックスのプットの引き受け(2006/4/16)

 Bloomberg Canadaによると、「Buffettが、世界の株式市場が下落しないほうに140億ドルを賭けている」そうです(こちら)。他でも報道されています。

 4月3日付けの報道ですが、3月7日付のSECへの提出書類(こちら)に基づくものだそうです。

 実は、これは2005年のAnnual Report(年次報告書)です。この日記でも触れたように、このAnnual Reportは3/4時点でBerkshireのサイトに載せられていました。何で今更と思いました。

 ところがよく読まないとわからないようです。2004年のAnnual Reportと比べてみると違いがわかります。

 2005年のAnnual Reportでは、p.72からp.73(pdfファイルでは、p.73-74)にEquity price riskが載っていますが、Foreign Currency Riskの直前の段落に該当の記述があります(あとで書きます)。

 一方、2004年のAnnual Reportでは、p.71(pdfファイルでは、p.72)にEquity price riskが載っていて、p.72からForeign Currency Riskが始まっています。2005年のAnnual Reportにある、該当箇所がないことがわかります。したがって、2005年にこのプットオプションの引き受け(売り)を行ったことがわかります。

 だれかAnnual Reportを精読して一年前のものと比較した人が気づいたのでしょう。(私は全く気づきませんでした(汗))

 さて、該当箇所は、

Berkshire is also subject to equity price risk with respect to certain long duration equity index put contracts.Berkshire’s maximum  with respect to such contracts is approximately $14 billion at December 31, 2005. These contracts generally expire 15 to 20 years from inception. Outstanding contracts at December 31, 2005, have been written on four major equity indexes including three foreign. Berkshire’s potential exposure with respect to these contracts is directly correlated to the movement of the underlying stock index between contract inception date and expiration. Thus, if the overall value at December 31, 2005 of the underlying indices decline 30%, Berkshire would incur a pre-tax loss of approximately $900 million.

以上からわかるのは、

  1. 株式市場インデックスに関する(複数の)長期プットを引き受けている(プットの売りです)。

  2. 2005年12月31日時点で、バークシャーは最大で約140億ドルの損害を被る可能性がある。

  3. 契約期間は15-20年と長期のものである。(普通のオプションは数ヶ月、LEAPSですら、1-2年です)

  4. 2005年12月31日時点で、主要な4株式市場(アメリカ1市場と外国3市場)の市場インデックスのプットを引き受けている。

  5. 仮に、当該4市場インデックスが、2005年12月31日時点で総価値が30%下落すると、バークシャーは約9億ドルの税引き前損害を被ることになる。

ということです。プットの売りは、原資産(この場合、市場インデックス)が下がらない方に賭けることになります。最大損失が記述してあるところをみると、普通のプットの売りと違って損失無限大ではないようですね。

 本質的にはオプションの売りは、Berkshireの子会社のいくつかがかかわっている保険契約と同じではあります。一方、Bloombergの記事にも触れられているように、Buffettはかつて

デリバティブはファイナンスの大量破壊兵器である

と言い、子会社としたGeneral Reのデリバティブ取引を解消してきました(2002年Annual Reportのp.15(pdfだとp.16))。2003/5/17に私の日記でも触れています。それでちょっとびっくりしました。ただ記事を読むと、いままでもBuffettは2002年にS&P500のプットを買ったり、今回もクレジットデフォールトスワップを売ったりもしているようです。それに、最近行ってきたドル売りも、為替の先物を使っていますから、デリバティブです。

 記事でも議論されているように株式市場は長期で上がっていることが多いので、この「賭け」に勝つ可能性が高いのですが、やはり大胆だと思います。まあ、市場動向もよく熟慮しての上なのだと思います。

 このオプションの買い手は明らかにされていないわけですが、記事では「年金ファンドか保険会社だろう」という推測がされていました。

 −−まあ、というわけで、私もリスクに気を付けつつ、いい機会があればまたLEAPSを買ってみたいと思います。(ただ、買いは売りに比べて、少なくとも勝率的にはかなり不利です。)

株式譲渡益税率の変更時期(2006/4/13)
 

  ※KONさんより、根拠になる法律と条文について教えていただきましたので、追記しました。KONさんありがとうございます。(4/15)

 ゲストブックにて、「税金おたく」さんから、株式譲渡益税率が20%になるのは、来年(2007年)の売却分からではないかとご指摘がありました。

 結論を先に書くと、現在のところ、2007年中の売却分に関しては、税率は10%であり、2008年からの売却分から20%になるという回答を最寄りの税務署から得ました。

 

 ゲストブックにも少し書きましたが、国税庁のホームページによると、タックスアンサーNo.1463によると、

申告分離課税となる株式等を譲渡したときの税率の表
譲渡の形態
 
期間
 
税率
 
証券業者を通じた上場株式等の譲渡
 
平成15年1月から平成19年末まで
 
10%(所得税7%、住民税3%)
 
同上
 
平成20年以降
 
20%(所得税15%、住民税5%)
 
上記以外の譲渡
 
平成15年1月から平成15年末まで
 
26%(所得税20%、住民税6%)
 
同上
 
平成16年以降
 
20%(所得税15%、住民税5%)
 

となっており、これを見ると証券会社で売買した場合、平成15年1月から平成19年末までは税率が10%と読めます。 やはり国税庁の「個人の方が上場株式等を売却した場合の株式等譲渡益課税について」というパンフレットにおいても同様です。

 問題は、ここで出てくる「期間」です。この期間が申告の行われた期間であれば、平成20年申告分(つまり、平成19年中売却分)は20%になるのであれば、さすがに税務署も 誤解のないようにそう書くだろうと思いました。また、パンフレットで、これに続く「平成13年9月30日以前に取得した上場株式等の取得費の特例」などで用いられている期間は、取得や売却の時期に関するもので申告時期に関するものではないので、私は譲渡(売却)時がこの「期間」にあたる場合と思いました 。

 しかし、さらに「税金おたく」さんから

「期限に示されてるより、20%になるのは実質は一年早いいうのを何度も聞いたような気がします」

というコメントをいただきましたので、この点などについて、念のため、最寄りの税務署に電話で聞きました。回答の概略は以下の通りです。

 ホームページなどにある「期間」とは譲渡のあった時を指している。したがって現在のところ平成19年末まで税率は10%となる。

 ただし、税制はころころ変わるので、景気回復などを考慮したりして、今後平成19年の税率が20%になることはあり得ないことではない。

 申告がH19年の2-3月に行われるので、もし変更があれば、税務署に連絡があるのは今年の年末くらいであろう。

 今後の変更については税務署としても新聞などから情報を手に入れているに過ぎない。

したがって、今後のことを注視しつつも、現在のところ、来年(2007年)中に株を売った場合は、税率が10%と考えてよさそうです。

 なお、インターネットで少し検索しましたが、来年の売却分から税率を引き上げる動きがある旨の新聞記事などは見つけられませんでした。たとえば、こちら(「株式譲渡益 税率見直し」で検索した結果)とかこちら(「株式譲渡益 税率改正」で検索した結果)。日経ネットでも検索しましたが、ヒットしませんでした(こちらで「税率見直し 株式」で検索)。(もし、見つけた方がおられたらゲストブックでお知らせください。)

 いずれにしろ、何事も自分で確認することが大事であることを再確認しました。情報をお寄せくださるのはありがたいですが、伝聞ではなく、参照できるものを添えてお寄せくださるとありがたく思います。

 追記

 KONさんより、根拠になる法律と条文を教えていただきました。検索すると、ネット上にあります。租税特別措置法の第三十七条の十一です。あまりに長くて、括弧が二重に使ってあったりしてきわめて読みにくいです(赤字だけ読んでください)。

居住者又は国内に恒久的施設を有する非居住者が、平成十五年一月一日から平成十九年十二月三十一日までの間に第三十七条の十第二項に規定する株式等(証券取引所に上場されているものその他これに類するものとして政令で定めるもの並びに同条第四項に規定する株式等証券投資信託でその設定に係る受益証券の募集が公募(証券取引法第二条第三項 に規定する勧誘のうち同項第一号 に掲げる場合に該当するものとして政令で定めるものをいう。)により行われたものの受益証券及び特定投資法人(その規約に投資信託及び投資法人に関する法律第二条第二十三項 に規定する投資主の請求により同条第二十一項 に規定する投資口の払戻しをする旨が定められており、かつ、その設立の際の同項 に規定する投資口に係る証券取引法第二条第三項 に規定する有価証券の募集が同項 に規定する勧誘であつて同号 に掲げる場合に該当するものとして政令で定めるものにより行われた投資信託及び投資法人に関する法律第二条第十九項 に規定する投資法人をいう。)の同法第二条第二十一項 に規定する投資口に限る。以下この条から第三十七条の十一の四まで及び第三十七条の十二の二において「上場株式等」という。)の譲渡のうち次に掲げる上場株式等の譲渡をした場合には、当該上場株式等のこれらの譲渡による事業所得、譲渡所得及び雑所得(第三十二条第二項の規定に該当する譲渡所得を除く。)については、第三十七条の十第一項前段の規定により株式等に係る譲渡所得等の金額のうち当該上場株式等のこれらの譲渡に係る事業所得の金額、譲渡所得の金額及び雑所得の金額として政令で定めるところにより計算した金額(以下この項において「上場株式等に係る譲渡所得等の金額」という。)に対し課する所得税の額は、同条第一項前段の規定にかかわらず、上場株式等に係る課税譲渡所得等の金額(上場株式等に係る譲渡所得等の金額(第三項の規定により読み替えられた所得税法第七十二条 から第八十七条 までの規定の適用がある場合には、その適用後の金額)をいう。)の百分の七に相当する額とする

税率について、「100分の7」とありますが、この条文は国税に関するものだからでしょう。地方税がさらに3%分かかるはずなので、税率は全体で10%になるはずです。

しかし、法律文はすごい日本語ですね。英語で法律用語をlegaleseというらしいですが、日本語でも「法律語」とか「法律弁」とか言ったほうがよさそうです。

 

長期で持つ予定の株を税率上昇前に一旦利益確定すべきか (2006/4/1)
 

 (※計算間違いがありましたので、全面的に直しました。申し訳ありません。4/4)

 

 okaさんから税率の変更に伴って、税率が安いうちに一度売るのがいいのか、そのまま保有していてから最後に売るのがいいのか質問されましたので、考えてみました。

 結論から言うと、これからもっと上がる(今の値段から2.25倍以上)と思うのであれば、売らない方が得で、それほど上がらないと思うのあれば、一旦売って買い直すのが得ということです。

 基本的には、

  1. 一般的に、ちょこちょこ利益確定して税金を払うよりも、なるべく利益確定を延ばして最後に税金を払う方がいい
  2. 将来税率が上がってたくさん税金を取られる

という2つのことの兼ね合いで上の結果になると考えればよいと思います。

 なお、株式の譲渡税率が現在の10%から20%に変わるのは、来年からではなく、東証のページ(こちら「税率」)にあるように、再来年、2008年1月からです。

 

 それでは、税率の変更を控えて、1度売って利益を確定した方がよいかどうか考えてみましょう。以下では売買手数料を無視します。最近では、売買手数料はだいぶ安いので、無視したとしても、それほど間違った結論にはなっていないと思います。

 買値pから現在までa倍、さらにこれからb倍になるとします(最終的にab倍)。株価、株価の変化、売却時の税率(譲渡税率)は次のようにまとめられます。

  購入時   現時点   将来
株価 p pa pab
株価変化   a倍   b倍  
売却時税率   10%   20%

 株価は負にならないので、a>0, b>0ですが、現在までに買値より下がっている場合は、損失確定して売ればいいだけですから、除外して考えます。つまり、aについては

a>1     (1)

とします。bについては、

b>0     (2)

です。

  1. 買値からa倍になった現時点では売らずにずっと保持して、最終的に買値からab倍になってから売り、20%の税金を払う(「ずっと保持」)
  2. 買値からa倍になった現時点で一旦売って10%の税金を払ってから、買い直してb倍になってから最終的にもう一度売る(「一旦売却」)

のどちらが有利か調べます。

 説明にあるように考えると、「ずっと持っていて最後に売る方が一旦売るよりよい」という条件は

(8ab+2)p/10 > (9a+1)(8b+2)p/100     (3)

となり、これを整理すると、買値pは消えてしまいます。これは、買値から現在、現在から最終売却時までの株価の変化が重要で、元の買値は関係ないからです。最終的に、

b > 9/4     (4)

すなわち、

b > 2.25     (4)'

となります。

 単純に見ると、これから2.25倍以上になると思えば、一旦利益確定するようなことはせず、我慢して3倍なり4倍なりになるまで待つべきということになります。

 また、式に a が含まれていないので、今までに買値から何倍になったかは関係ないということになります。

 したがって、今までに何倍になっているかに関係なく、これから2.25倍以上になると思えば、売らないで保持、そこまではあがらないと考えれば、一旦売却して買い直すということです。

 (※以前、もっと複雑な式になっていましたが、計算間違いでした。申し訳ありません。今回は検算を前より様々な角度から行ったので、間違いはないと思いますが、あれば、ゲストブックでご指摘ください)

 

 また、0<b<1のときは、これから株価が下がるということに対応しますので、一旦利益確定というよりは、売却後買い直しすべきではないということになります。

 

 なお、1,000万までの非課税枠を使うのであれば、有効な売却期限2007年12月まで(こちらの「緊急投資優遇措置」参照)のなるべく高くなったときに一旦売って買い直すのが最適だと思います。買い直したときの株価と将来(再)売却するときの株価の差が課税対象になるので、買い直しの株価が高ければ高いほどいいことになります。

 

 説明

 まず、株が買値pのm倍になったとします。元の値段は買値のpですから、税引き前の利益は、

mp-p=p(m-1)     (a1)

です。そのときの税率をrとすると、税引き後の利益は

p(m-1)(1-r)     (a2)

これに買値のpを足したものが、税引き後の所持金です。

p(m-1)(1-r)+p=p[(1-r)m+r]     (a3)

2007年12月まではr=0.1ですので、税引き後の所持金は、

p[(1-0.1)m+0.1]=p(0.9m+0.1)=(9m+1)p/10     (a4)

2008年1月以降はr=0.2ですので、税引き後の所持金は、

p[(1-0.2)m+0.2]=p(0.8m+0.2)=(8m+2)p/10     (a5)

となります。

 さて、購入時から2007年12月以前のある時点まで株がa倍、その後売却時までにさらにb倍になったとします。(途中で売らない場合、初めのab倍になります)

まずは、途中で売らないでab倍になり、2008年1月以降の税率20%を適用されたとします。式(a5)にm=abを代入して、

(8ab+2)p/10     (a6)

次に、一度売った場合を考えます。税率が10%のときに売るとすると、そのときにa倍になっていますから、式(a4)にm=aを代入して、

(9a+1)p/10     (a7)

上の所持金を出発点として、さらにb倍になって、税率20%を適用すると、式(a7)全体を式(a5)のpに代入し、m=bとして、

(8b+2)×[(9a+1)p/10]/10=(9a+1)(8b+2)p/100     (a8)

となり、これが一度売った場合の売却時の所持金になります。したがって、式(a6)と式(a8)を比べればいいことになります。

 「ずっと持っている方が一旦売るよりよい」という条件は、

(8ab+2)p/10 > (9a+1)(8b+2)p/100     (a9)

となります。これが、式(3)です。整理すると、

10(8ab+2) > 72ab+8b+18a+2

8ab-8b-18a+18 > 0

最終的に、

4(a-1)b > 9(a-1)   (a10)

a>1なので、a-1>0ですから、a-1で両辺を割っても不等号の向きは変わらず、

b >9/4   (a11)

となります。これが式(4)です。

 

 なお、もっと一般に、現在の税率がr (0<r<1), 将来の税率がs(0<s<1)として考えてみます。すると、「ずっと保持」が有利の条件は、

(1-s)ab+s > [(1-r)a+r] [(1-s)b+s]  (a12)

となり、これから、

r(1-s)(a-1)b > s(1-r)(a-1)    (a13)

が得られ、a-1>0, r>0, 1-s>0より、bについて解くと、

b > [s(1-r)]/[r(1-s)]    (a14)

となります。つまり、税率が一般的な場合にも、現在まで何倍になったかには関係せず、現在の税率と将来の税率から決まるある値より、これから値上がりするのであれば、一旦売却せずに保持した方がいいことになります。

 さて、この式(a14)にr=0.1, s=0.2を代入すると、

b > [0.2×0.9] / [0.1×0.8] = 9/4    (a15)

と確かに式(4)が得られます。

*****

 アーネストワンとパシフィックマネージメントは売り、フージャースとアーバンコーポレイションに絞りました。現在のところ、裏目に出ています(汗)。

 シノケンを2月に若干買いましたが、上がってしまったので、3/31の保有銘柄からわかるように売却済みです。転換価格修正条項付きの転換社債(MSCB)を発行して下げていましたが、第三四半期がそれなりによかったので買ってみましたが、転換社債の転換が進むにつれて株価が上がってしまいました。

 もう一銘柄買いましたが、そちらはIRの対応が悪かったので、すぐに売却しました。

 アメリカ株はWal-Mart(WMT)とそのLEAPSのコールなどを買っています (こちら)。

 

フージャースを保有するファンド (2006/3/23)

 

 ※5%ルールで登場した法人について確認・訂正しました。(3/26)

 ※Oppenheimer International Small Company Fundの持ち株数とそれに関連する記述について訂正しました。また、Allianz RCM Global Small-Cap Fundによる保有を確認しましたので、追加し、記述を修正しました。(3/24)

 ※大幅に加筆・書き直しましたので、日付も3/23に直しました。(3/23)

 *****

 幸せな投資家さんによると、モーニングスターで検索すると、フージャースを保有しているファンドが見つからないようです。こちらを見てください。フージャースを保有しているファンドがあれば、表示されるはずですが、一つも表示されません。

 しかし、昨年(2005)12/26付けで提出された第12期半期報告書をEDINETで見てみると、どうも機関投資家の持っていると思われる分もかなりあるように思います。そこで以下で調べてみました。

 結論的には、やはりファンドは、全くではないが、あまり買っていないということだと思います。ですから、フージャースの将来を信じるなら、今のうちに買い込んでおいて、投資信託に買い上げてもらって株価の上昇を楽しむというのがいいと思います。

 

 さて、「フージャース」でpdfファイルを検索すると、いくつか日本のファンドも引っかかってきました。pdfファイルで検索したのは運用報告書がpdfファイルで提供されることが多いと思ったからです。

 また、"Hoosiers Corp"や"Hoosiers corporation"で検索すると、やはり今度は外国のファンドが引っかかってきました。

 あとでわかるようにすべてを網羅しているわけでは全然ないのですが、表にしてまとめてみました。(黄色がアクティブファンド、白がインデックスファンド(パッシブファンド)、灰色はすでにフージャースを売却済みのファンドです)。保有株数、ファンドへの組み入れ比率、(最終)信託先を調べました。ファンドへの組み入れ比率はファンドの総資金のどれだけがフージャースに投資されているかを示しています。また、信託先は、「大株主の状況」などで、この名前で現れることが多いので調べました。

 

表1 フージャースを保有しているファンドと過去保有していたファンド

(報告時点の新しい順 ※網羅はたぶん全然されていません)

報告時点 ファンド名 保有株数 組み入れ比率 (最終)信託先 備考
2006/1/31 Allianz NACM PACIFIC RIM FUND 333 0.84% State Street Bank & Trust Co 持ち株リスト p.1
Allianz RCM Global Small-Cap Fund 222 0.60% State Street Bank & Trust Co. 持ち株リスト p.1
2005/12/31 三井住友アセットマネジメント中小型バリュー・オープン 52
(*1)
1.03%
(*1)
日本トラスティ・サービス信託銀行 マンスリーレポート(2006/1/31)
ICON advisers International Equity Fund 67
(*2)
0.58% State Street Bank & Trust Co.(?) 持ち株リスト Fact Sheet(2005/12/31)
Investment Update p.36
Newzealand Superannuation Fund 44
(*3)
0.004%
(*4)

?

持ち株リスト成績とポートフォリオ(2005/12/31)
2005/12/14 新世代成長株ファンド(ダイワ大輔) 930 0.87%
(*5)
日本トラスティ・サービス信託銀行 投資信託説明書p.17
第6期運用報告書p.13
2005/11/12 住信国内株式インデックスマザーファンド (グローバルインカム&プラスが投資) 20 0.011%(*6) 日本トラスティ・サービス信託銀行 インデックスファンド
投資信託説明書p.50
2005/10/26 日興アセットマネジメント 日本株式インデックストピックスマザーファンド(アセットナビゲーションファンドが投資) 1 0.014%(*7) 日興シティ信託銀行 インデックスファンド
運用報告書p.34
2005/10/13 野村 TOPIX連動型上場投資信託(ETF) 1 0.006%(*8) 東洋信託銀行

インデックスファンド
TOPIX連動型上場投資信託に関する日々の開示事項
p.23

2005/9/30 ICON Asian Pacific Region Fund 37 0.28%
(*9)

?

Investment Update p.16
2005/9/29 野村アセットマネジメント トピックスインデックスマザーファンド(トピックスインデックスオープンが投資) 14 0.011%(*10) 野村信託銀行 インデックスファンド 運用報告書p.18
2005/9/20 ノムラ日本戦略ファンド 500 0.058%(*11) 野村信託銀行 投資信託説明書p.18
2005/9/14 三菱UFJ トピックスマザーファンド(トピックスオープンなどが投資) 1 0.008%(*12) 日本トラスティ・サービス信託銀行 インデックスファンド 投資信託説明書p.77
2005/9/12 SG日本小型株マザーファンド
(りそな小型株ファンドが投資)
207 1.65%(*13) 日本トラスティ・サービス信託銀行 運用報告書p.12
2005/8/31 Oppenheimer International Small Company Fund 2,000 1.00%
(*14)
J. P. Morgan Chase Bank 追加情報(2005/12/28)p.83 FACTS
2005/8/10 プラザアセットマネジメント コロンブスオープン 40 1.29%(*15) みずほ信託銀行 運用報告書p.6
2005/6/30 Driehaus International Discovery Fund 122     2005/9/30時点で売却済み 半期報告書p.5、第3四半期報告書
Gatmore Funds GVIT Small Company Fund 59     2005/9/30時点で売却済み 半期報告書,p.12 第三四半期報告書
2005/6/10 DKAトピックスマザーファンド
DKA TOPIXファンドが投資)
2 0.025%(*16) みずほ信託銀行株式会社 インデックスファンド 投資信託説明書p.45
2005/5/30 すみしん日本株式インデックスオープン 20 0.011%(*17) 日本トラスティ・サービス信託銀行 インデックスファンド 投資信託説明書p.45
2005/5/30 Dreyfus Founders Passport Fund 301     2005/6/30時点で売却済み (こちらこちら
2005/5/10 野村 国内株式マザーファンド(国内株式インデックスファンドTOPIXなどが投資) 9 0.011%(*18) 野村信託銀行 インデックスファンド 投資信託説明書p.69
2005/4/26 DKAジャパンオープン 110 0.49%(*19) 日本トラスティ・サービス信託銀行 運用報告書p.7
2005/4/22 三井住友株式アナライザーオープン 298     2005/10/24時点で売却済み運用報告書p.10
2005/2/15 日興アセットマネジメント スーパーインデックスファンド 4 0.013%(*20) 日本マスタートラスト信託銀行 インデックスファンド 目論見書p.73
2005/1/25 ベアリング・ジャパン・オープン 68     2006/1/25時点で売却済み 運用報告書p.7
2005/1/20 興銀第一ライフアセットマネジメント DIAM成長株オープン(出世株) 123     2006/1/20時点で売却済み 運用報告書p.15
(2004/12/31) Liechtensteinische Landes Bank AG LLB Portfolio Invest Japanese Equities 40     2004年内に購入、2004/12/31時点ですでに売却済み 年次報告書、p.33

(*1) 前月末(2005年12月31日)における株数をnとする。(ファンドへの資金の流出入を無視できるとする)

(フージャースの基準価額増加に対する寄与7円)/(前期末の基準価額)=(フージャース保有分の資産額の減少)/(前期末の純資産総額)がおおむね成り立つはず。

フージャースの基準価額増加に対する寄与=-7円、前期末の基準価額=15,629-895=14,734円、(フージャース保有分の資産額の減少)=(株数)×((1月末の株価)−(前年12月末の株価))、前期末の純資産額=(2,883-32)百万円、(フージャースの2005年12月末株価 566,000円、2006年1月末の株価 540,000円)

したがって、

-7/(15,629-895)=(540,000-566,000)×n/[(2883-32)×10^6]

より、n=52.095

また、この値を使って、フージャースの組み込み比率は566,000×52/[(2883-32)×10^6]×100=1.032(%)

(*2) Fact sheetを見ると、この時点で、ファンドの資産が55.5百万ドルです。12/31の為替を調べると、117.8680円、12/30のフージャースの株価が566,000円なので、67株(55.5mil×117.8660×0.58/100/566,000=67.03)と思われます。

(*3) 2005/12/31時点でNZ$309,813だけ持っています。このときの為替がNZ$1=80.30360円、フージャースの株価が566,000円なので、309,813×80.30360/566,000=43.95株となります。

(*4) 成績とポートフォリオ(2005/12/31)より、ファンドの純資産総額がNZ$8406.4×10^6 309,813/8406.4×10^6×100=0.0036%

(*5) 474,000×930/50,711,708,000×100=0.869(%)

(*6) 10,600,000/94,891,562,075×100=0.0111(%)

(*7) 510千/3,620百万×100=0.014(%)

(*8) 2005/10/13の終値が461,000円なので、461,000×1/738,152,961,889×100=0.0062(%)

(*9)143,749/48,720,902×100=0.276(%)

(*10) 6,188千/55,855,374千×100=0.0110(%)

(*11) 277,000/3,563,615,821×100=0.00777(%)

(*12) 229,000,000/390,534,410,102×100=0.058(%)

(*13) 87,147/5,282,523×100=1.649(%)

(*14) HoosiersのValueをp.85のNet Assetで割って、7,395,472/734,186,723×100==1.00(%)

(*15) 16,720,000/1,300,776,000×100=1.285(%)

(*16) 838,000/3,415,359,723×100=0.0245(%)

(*17) 7,660,000/67,141,030,664×100=0.0114(%)

(*18) 3,276千/29,594,882千×100=0.011(%)

(*19) 35,640/7,224,096×100=0.493(%)

(*20) 1,104,000/8,591,130,000×100=0.0128(%)

 アクティブファンド

 インデックスを超える収益率を求めるのが黄色で示したアクティブファンドです。

 現在の発行済み株数は、Yahoo! Financeによれば、108,705株ですから、見つかった中で最も保有株数の多いOppenheimer International Small Company Fundは、発行済み株式総数の2,000/108,705=1.84%を保有していることになりますね。

 (※3/23時点では、Quote.comのLipperの情報に基づいて、2.33%保有しているという情報を書いていましたが、消されていますし、ファンドのホームページによる2006/2/28時点での情報(フージャースが 持ち株上位20位までに現れていません)と整合性がないので、以前の情報は採用するのをやめ、ファンドの2005/8/31付けの追加情報に基づく情報を採用します

 なお、2/28のファンド総額16億ドル、為替 1$=116.3060円、フージャース株価 499,000円からすると、20位に現れる1.5%を保持しているとして1.6×10^9×1.5%×116.3060/499,000=5,594株となります。したがって、2/28時点では、保有していないか、または、保有しているとしても約5,600株以下となります。この情報からは、8/31時点の保有株数をそのまま保持しているかいないか判断できないので、8/31時点での情報を採用しました。

 Fund Documentsにおいてある2005/10/31発行のAnnual Reportに2005/8/31付けの持ち株が記してあったので、もし、Semi-annual Reportが出れば、6ヶ月後の2006/2/28時点の全持ち株が記されると思われます。発行は、Annual Reportと同じとすれば、2ヶ月後の4月末と思われます。)

 このファンドは、ここにあるように、Morningstarで5つ星(最高)、Lipperというやはりファンドの比較会社でも1年間で75社中4位(上位6%)、5年間で55社中4位(上位8%)ということで、優れたファンドであるようです。このようなファンドに持ってもらうことはいいことだと思います。

 あとで見ますが、このOppenheimer International Small Company Fundは、直近の半期報告書(2005/9/30時点)の大株主で5番目(2,000株所有)に対応しているようです。前期の有価証券報告書を見ると、2005年3月時点では、3,500株を保有していました。その後、2005年9月30時点までに2,000株に減らしたということになります。

 

 報告時点が違うので一律な比較はできませんが、保有数の順位で並べ直すと、次のようになります。(発行済み株式総数に対する所有株式数の割合は、現在も保有株数が変わらないとして、現在の発行済み株式総数で割って求めました。 一方、表1にもあった、ファンドへの組み入れ比率はファンド純資産に対するフージャース組み入れの割合です。)

表2 保有の判明した投資信託のうち、フージャース保有数上位5位

保有数順位 保有株数 発行済み株式総数に対する所有株式数の割合(%) ファンド名 ファンドへの
組み入れ比率
報告時点
1 2,000

1.84%

Oppenheimer International Small Company Fund 1.00% 2006/3/21
2 930

0.86%

新世代成長株ファンド(ダイワ大輔) 0.87% 2005/12/14
3 500

0.46%

ノムラ日本戦略ファンド

0.058%

2005/9/20
4 333 0.31% Allianz NACM PACIFIC RIM FUND

0.84%

2006/1/31
5 222 0.21% Allianz RCM Global Small-Cap Fund

0.60%

2006/1/31

 こう見てみると、個人投資家でも500株程度持っている人はいると思えるので、ファンドらしい買いを入れているのは、保有順位1位のOppenheimer International Small Company Fundくらいでしょうか。Wall Street JournalBarron'sで'Hoosiers Corp'で検索しても見つからない中、よく調べて買ってくれましたというところでしょうか。

 また、外国の投資信託が上位5つ中、3つで健闘しています。内需株なので、日本の投資信託にもっとお買い上げいただきたいものです。

 

 

インデックスファンド

 次にインデックスファンドについてです。見つかったのはどれもTOPIXに投資するインデックスファンドです。

 フージャースは、東証第一部に2004年9月に指定替えになっています(こちら)。したがって、その時点でTOPIXのインデックスファンドに組み込まれています。

 TOPIXのインデックスファンドの持ち株比率はDKAトピックスマザーファンド(0.025%)を除いて0.006-0.014%で、だいたい0.01%程度になっています。このことを確認するために、フージャースの時価総額がTOPIXに占める割合を見積もってみます。

 フージャースのTOPIXに占める割合は、本当は、現在は浮動株比率を考慮するので複雑ですが、とりあえずそれを無視して計算すると、

フージャースの時価総額/東証一部時価総額(2006/3/22)=53,048百万円/536867.102十億円=0.00988%

と約0.01%になりますので、確かにインデックスファンドの持ち分はこの程度になることがわかります。Newzealand Superannuation Fundを除けば、アクティブファンドはどれもTOPIX比率よりも高い比率で保有しています。これはインデックスを超えようとしているので当然のことでしょう。

 確か、TOPIXの時価総額の3-4%がインデックスファンドに組み込まれていたと思います。発行株数が108,705株ですから、3-4%は3,200-4,300株にあたります。昨年9月30日時点では、浮動株の調整が始まっていないので、その程度の株がインデックスに組み込まれていたと思われます。

 ところが上の表に現れたインデックスファンドの持ち分を合計しても72株にしかなりません。TOPIXのファンド組み込み比率を3%と見積もっても3,200株ですから、全然足りません。したがって、インターネット検索で見つかったファンドはインデックスファンドを含めてごくわずかであると思われます

 (一体、相当の時間をかけた意味があったのかとも思ったりします。)

 TOPIXが浮動株基準にうつりつつあるわけですが、フージャースは最終的な浮動株比率が0.4とされています(こちら、p.23)。3段階で徐々に修正するわけですが、それぞれ、(1-0.4)/3=0.2ずつ比率が減少することになりますので、640-840株(3,200×0.2=640、4,300×0.2=840)がそれぞれの修正時(昨年10月末、今年2月末)に売られたことになります。

 チャートをみると、2回の修正時にとくに株価が下落している様子はないので、浮動株基準への移行による影響は小さいようです。

 現在は浮動株比率0.6で計算しているそうです。したがって、最終の修正時である6月末にまた640-840株売られることになります。

 

 その他のインデックス組み入れについて調べてみると、以下のようになりました。とは言っても、漏れは当然あると思います。

表3 フージャースを組み入れているインデックス

日付

組み入れインデックス

備考

2004/9/1 TOPIX こちら
2004/9/20 FTSE Global Equity Index Series
Developed Market Category
こちら p.32
2004/10/28 TOPIX small こちら p.4
2005/5/12 MSCI small cap こちら p.3
2006/1/30 TOPIX 1000 こちら p.4

 見た限り、TOPIX smallとTOPIX 1000のインデックスファンドはないようでした。MSCI small capはMSCIインデックスを構成しています(ここ参照)が、MSCIのインデックスファンドがどれだけ組み込んでいるのかはわかりませんでした(調査中です)。2005/5/12付近で株価が特に上がったわけでもないようです。

 

大株主

 次に、大株主を見てみましょう。水色がファンド関係だと思われます。

 

 表4 2005/9/30現在大株主 

(「第12期半期報告書」 大株主の状況より 住所は除いてあります)

順位

氏名または名称

所有株式数(株)

発行済み株式総数に対する所有株式数の割合(%)
廣岡 哲也 36,796 34.01%
株式会社ティ・エイチ・ワン 10.000 9.20%
日本トラスティ・サービス信託銀行株式会社(信託口) 2,870 2.64%
フージャース社員持株会 2,217 2.04%
ジェーピーモルガンチェースオッペンハイマーファンズジャスデックアカウント 2,000 1.84%
日本マスタートラスト信託銀行株式会社(信託口) 1,952 1.80%
大島企業情報株式会社 1,847 1.70%
ゴールドマンサックスインターナショナル 1,833 1.69%
バンクオブニューヨークジーシーエムクライアントアカウンツイーアイエスジー 1,745 1.60%
10 ザチェースマンハッタンバンクエヌエイロンドンエスエルオムニバスアカウント 1,731 1.59%
  63,171 58.11%

(注) 上記の所有株式数のうち、信託業務に係る株式数は次のとおりであります。

日本トラスティ・サービス信託銀行株式会社 2,870株

日本マスタートラスト信託銀行株式会社 1,952株

 まず、ファンドらしき株主以外を調べます。

 持ち株1位は廣岡社長、2位は廣岡社長の資産管理会社です。

 4位は持株会ですね。一般には、持株会で資産の大半を運用することは、会社に何かあったときに給与を失い、資産も失うので勧められませんが、従業員の会社への将来性への信頼が高いという意味で(株主から見たら)よいことです。

 7位の大島企業情報株式会社はフージャース株主友の会長okenzumoさんのブログにあるように「元山一證券の人が立ち上げた会社で、会社が小さい時はいろいろとアドバイスを頂いた」そうです。出資もしていただき、大株主欄にいるというわけです。この会社も機関投資家といえばそうだと思いますが、投資信託などのファンドとは性格が違うと思うので、ここでは除外したいと思います。

 

 ということで、残りは、3位、5位、6位、8-10位の5社で、これがファンド関係かもしれないと思われます。

 3位と6位の日本トラスティ・サービス信託銀行と日本マスタートラスト信託銀行の持ち株数は欄外の信託業務にかかわる株式数と一致していますので、何らかの日本の投資信託の持ち株だと思います。実際、表1にその2つが何度も現れています。

 なお、それぞれのホームページを調べると、以下のような株主なので、登場した株主に関連した会社が運用しているファンドは、ファンドの関連の信託銀行を通じて、日本トラスティ・サービス信託銀行と日本マスタートラスト信託銀行で株式を保管しているようです。

表5 日本トラスティ・サービス信託銀行と日本マスタートラスト信託銀行 の株主

ファンドの受託者(株式保管) 株主
日本トラスティ・サービス信託銀行 りそな銀行
住友信託銀行
三井トラスト・ホールディングス
日本マスタートラスト信託銀行 三菱UFJ信託銀行
日本生命保険
明治安田生命保険
農中信託銀行

 表1では日本トラスティ・サービス信託銀行で保管されているのは全部で1,340株ですが、表4では、2,870株です。

 表1で、ネットで調べたファンドで日本マスタートラスト信託銀行が受託者になっているのはたったの1ファンドで預けられているのはたった4株だけです。表 4からすると、日本マスタートラスト信託銀行に保管されているのは1,952株です。

 したがって、株数が時期により変化するとはいえ、やはり、ネットで見つかったよりももっとたくさんのファンドがフージャースを持っていなければなりません。

 

 5位のジェイピーモルガンチェースオッペンハイマーファンズジャスデックアカウントですが、JP Morganが開いたOppenheimer Fundsのための口座くらいの意味でしょう。これが、さきほど保有株数第一位だったOppenheimer International Small Company Fund (OSMAX)が2005.8.31現在で2,000株保有しています(こちらのp.83)。これは、上の表の所有株式数2,000(9.30付け)に一致していいます。

 

 8位にGoldman Sachs Internationalが1,833株(1.69%)保有しています。この会社はアメリカの証券会社Goldman Sachsのイギリスでの子会社です(Annual Report p.101参照)。

 ソニーの大株主の状況の説明で、

Goldman Sachs International (注3)
The Chase Manhattan Bank, N.A. London (注3)
State Street Bank and Trust Company 505103 (注3)
State Street Bank and Trust Company (注3)
Societe Generale Paris SGOP/DAI Paris 6Z (注3) 8,739 - 8,739 0.9

(注3) 主として欧米の機関投資家の所有する株式の保管業務を行うとともに、当該機関投資家の株式名義人となっています。

とあとに出てくるChase Manhattan Bank, N.A. Londonとともに「欧米の機関投資家の株式名義人」と説明されています。

 以下に出てくるaccount(口座)もそうですが、株式保管先が株式名義人として現れるのは、ファンドとしては都合がいいと思われます。発行株式数の5%以上を保有した場合に報告をしなければならない5%ルールに引っかかればファンドの名前が出てしまうのは如何ともしがたいですが、それより少ない場合にも一々名前が出ていれば、有名なファンドであればあるほど動きづらくなってしまいますから。

 ここにあるように、Goldman Sachs International分はタワー投資顧問の持ち株を含んでいる可能性があります。タワー投資顧問はアーネストワンや飯田産業などの不動産株を手がけていること、タワーのファンドマネージャーの清原部長が創業社長が好きなことを考えていると可能性は十分あると思っています。

 あとは、ゴールドマンサックスの日本株ファンド(牛若丸やら一寸法師やら)が買っている分の可能性もあるかもしれません。

 

 9位にBank of New York GCM Client accounts EISGは、検索してみると、ミサワホーム、ベルパーク、ディーアンドエムホールディングスなどなど、様々な会社の株主として登場しています(こちら)。これは、10位に登場するChase Manhattan Bank NA Londonと同様、機関投資家の証券預かり口座であると考えられます。また、日本株しかひっかからないので、日本株専門の(私募ファンドを含む)ファンドの保管先かもしれません。

 また、2005年10月21日付けの卑弥呼のプレスリリースなどに

尚、当該株主である「バンクオブニューヨークジーシーエムクライアントアカウンツイーアイエスジー」及び「ゴールドマン・サックス・インターナショナル」は、実質保有株主であるタワー投資顧問株式会社が運営する投資ファンドの株主名簿上の名義となっております

とはっきり書いており、タワー投資顧問だけではないでしょうが、(私募)ファンドの名義上の株主の可能性があります。

 

 10位のChase Manhattan Bank NA Londonについては、Wikipediaに説明が見つかりました(ここ

The Chase Manhattan Bank, N.A. Londonは機関投資家の証券預かり口座である

とあります。

 また、住友商事の事業報告書(ここp.17)に

主として欧米の機関投資家の所有する株式の保管業務を行うとともに、当該機関投資家の株式名義人となっております

とあります。

 したがって、これもファンドの証券を預かっている口座だと思われます。 実際、Chase Manhattan SLで検索すると、大日本印刷、住友三井銀行など多くの株主として登場しています(こちら)。

 

 まとめ

 以上、見てきましたが、モーニングスターの検索結果はだいぶ漏れがあるように思われます。

 それでも、フージャースはやはり日本の投資信託にはあまり保有されていないようです。成績のいいアメリカの投資信託(mutual fund)であるOppenheimer International Small Company Fundに保有してもらっているのは結構ですが。

 外国籍の口座を使っている日本籍の私募ファンド(ヘッジファンド)もだいぶ混じっている可能性もありますが、5%ルールに引っかかるほどお買い上げいただかないと表には出てきません。

 フージャースは日本の不動産業という内需関連の会社なのですから、事情をよく調べられる日本のファンド(私募ファンドも含めて)が5%ルールに載るほどの大株主として出てきてもいいような気がするのですが、そうなっていませんね。過去の分をEDINETで調べても5%ルールで出てくるのは、廣岡社長とその資産管理会社だけでした。

※「タカラレーベンが5%ルールの報告書で出てきた」と書いていましたが、再確認したら、勘違いでした(6/26)

 ただ、日本の投資信託の買いがほとんどない現状は、個人投資家にとっては悲観的なことではないと思います。フージャースが今後も業績を向上させ、時価総額が大きくなれば、数々のファンドがもっと買ってくれるでしょう。フージャースの業績の向上を信じるのであれば、日本の投資信託の買いがあまり入っていない今のうちに買っておくのがいいと思います。(もちろん、短期間のうちに株価が上がるかどうかはわかりません)

 ※しつこいですが、投資は自己責任でお願いいたします。

 *****

 ドルコスト平均法と等株投資法の比較ですが、期間を等しくせず、投資額を一定にすると、等株投資法のほうが有利になることがあることがわかりました。(supさん、ありがとうございました)。ただ、現状では、

 1.期間を同じにすると、ドルコスト平均法は等株投資法よりつねに利益率が高いか等しい

 2.期間を同じくせず、投資額を一定にすると、ドルコスト平均法は等株投資法に負けることがある

という認識なので、依然として、ドルコスト平均法のほうが等株投資法より概ね優れているという結論です。

 
Berkshire Hathawayの株主への手紙        (2006/3/6)
 

 3/4(土)にBuffettがCEOを務めるBerkshire HathawayのAnnual Reportの2005年版がサイトに掲載されたようです(こちら)。(株主への手紙はp.23まで)Buffettに何かあったときの後継者も決定したそうですが、公開はしないそうです。

  1. 持ち株
  2. 投資リターンを最小にするには
  3. 経営者の報酬について

 を順にみます。

1.持ち株

 Buffettは最近株価が高いということで、株を買うことよりも会社を丸ごと買い取るアプローチを重視しており、5社の買収について述べています。その5社はMeical Protective Company, Forest River, Business Wire, Applied Underwriters, PacifiCorpです。

 さて、投資について見てみます。p.15(pdfファイルでは14ページめ)

American Express Company
Ameriprise Financial, Inc
Anheuser-Busch Cos., Inc
The Coca-Cola Company
M&T Bank Corporation
Moody’s Corporation
PetroChina “H” shares (or equivalents)
The Procter & Gamble Company(P&G)
Wal-Mart Stores, Inc
The Washington Post Company
Wells Fargo & Company
White Mountains Insurance

 去年と比べて変わったところがp.15に解説してありますが、GilletteがP&Gに買収されたので、Gilletteが消えて、P&Gが現れています。また、American Express(AMP)がAmeriprise Financial(AMF)をスピンオフしたので、それが反映されています。Ameriprise Financialを売却しなかったということですが、スピンオフ投資がお得だということで売らなかったということでしょうか。

 また、Wells Fargoをかなり買い増しし、Budweiserの会社Anheuser-Buschと世界最大の小売り会社Wal-Martを新たに買い入れています。

 このポートフォリオについて次のように述べています。

 われわれの株式ポートフォリオに奇跡を期待しないでほしい。われわれは、いくつもの高利益をあげる強い会社の株を大量に所有しているが、その持ち株にバーゲン価格がついているわけではない。全体として考えれば、10年後に価値が倍になるかもしれない。一株当たり利益が全体として10年間で6-8%成長するというところだろう。株価もその成長にだいたい見合う上昇をするだろう。(もちろん、投資先の経営者たちは私の期待は控えめすぎだと思うだろう。私は経営者たちが正しいと期待したいが)

 また、外貨のポジションを縮小して、外国株を買うようにしている旨が書いてありました。

 

 

 2.投資リターンを最小化するには

 "How to Minimize Investment Returns"(「投資リターンを最小化するには」)というセクションが儲けられていて、アメリカ人の株式リターンが減ってしまっていることを、喩え話で論じています。(p.18-19)

投資家は、(全体的に言って会社の儲けの分をその持ち分に応じて儲けるはずだが)「摩擦」コストのため、自分の投資先の会社が儲けているほど儲けられない。ここが私の言いたい点である。この摩擦コストが、以前とは比べものにならないくらい増えている。

 アメリカの会社全体を所有する家族(Gotrocks)を助ける4種の人々(Helpers)によって減らされているという喩え話でしています。4種の助けてくれる人々は

  1. 証券会社(Broker-Helpers)

  2. ファンドマネージャー(Manager-Helpers)

  3. フィナンシャルプランナーとコンサルタント(Consultant-Helpers)
  4. ヘッジファンドや私募ファンド(Hyper-Helpers)

です。証券会社には手数料を取られ、お金をプロの運用に任せれば、ファンドに運用手数料をとられ、コンサルタントにどのファンドを選べばいいかを聞けばコンサルタント料をとられる。最近は、ヘッジファンドがたくさん出てきて、運用を任せれば、上手なのか運が良いのかわからないが、儲けがあがるとその20%も取るくせに、下手なのか運が悪いかして損が生じると、投資家が損を負った上に高い固定手数料までとられる、といった具合です。

別の言い方をすれば、全体として考えると、「助けてくれる人々」にお金を払わないといけないために、アメリカ株に投資している人々は、(何もせず)静かに座って誰の言うことも聞かなかったときに比べ、たった80%の利益しかあげていない。

大昔、アイザック・ニュートン(Isaac Newton)卿が運動に関する3つの法則を示した。これは天才にしかなしえない業績である。しかし、ニュートンの才能は投資には生かされなかった。南海泡沫事件で大金を失ったのである。のちに、ニュートンは「私は星々の運行を計算することはできるが、人間の狂気は計算できない。」と釈明した。ニュートンにとってこの損失がトラウマになっていなかったら運動の第4法則を見つけていたかもしれない。「投資家にとって、運動を増すにつれてリターンが減少する」

 この場合の運動とは株を売買したり、プロに任せたり、コンサルタントに相談したり、ヘッジファンドに頼んだりということですね。

 大量の売買をうまくこなし、短期間で莫大な投資リターンをあげている方もおられ、そういう方を個人的にも知っていますが、統計的には、売買が多くなると、その投資家のリターンが減ることが知られていると思います。売買がうまくないと自覚したら、なるべく売買回数を減らすように心懸けるべきでしょう。

 

 3.経営者の報酬について

 GilletteのCEOであるJim Kiltsはよくやったので報酬の高さは大目に見るが、一般的に言って、経営者の実績にくらべて報酬がばかみたいに高すぎると述べています。この不満は例年のことです。(p.16-17)

 今年は10年間の行使価格の固定されたストックオプションの例をあげています。「さえない」(Stagnant)社の社長、「ボンクラ」氏(Futile)が登場して、発行済み株式の1%のストックオプションを毎年10年間にわたって権利行使ができるとします。ぼんくら氏がどうするば私腹を肥やせるかは明らかだとしています。「配当を完全にやめ、利益のすべてを使って自社株買いをする」ことだそうです。

 さえない社は自己資本100億ドルで10億ドルの利益をあげており、1億株を発行していおり、株価は10ドルです。(私はまだ完全に理解し切れていないのですが)Buffettの説明によると、株がPER10倍で常に取引されているとすると、ストックオプションの付与期間の終わる10年後には株価は2.58倍になるそうです。これは、自社株買いにより、1億株発行されていた株が387万株に減少するためです。したがって、株価は25.8ドルになります。株主から利益を奪うことにより、事業自体はまったく改善されないのにもかかわらず、ボンクラ氏は1億5,800万ドル儲けることになります。たとえ、さえない社の利益が10年間のうちに20%減少してもぼんくら氏は1億ドル儲けられるそうです。

 ボンクラ氏は配当を出さず、上がってきた利益をさまざまな利益のあまり上がらない事業やつまらない買収に使うこともできます。もし、このことで、5%のリターンしか上がらない(注:もともとは10%のROE)としても、大金を手に入れられます。さえない社のPERが10倍に保たれていれば、ストックオプションによって6,300万ドルが手に入ります。「ボンクラ氏がオプションを発行したときには『経営者が株主と利益を共にする』ためということになっていたのに一体どうなったかと思うであろう」

 「通常」の配当政策(配当性向が約1/3)の元でそこまで極端なことはできないが、依然何もしない経営者に多額の報酬をだすことが可能であるそうです。

 CEO(最高経営責任者)たちはこのからくりを知っており、利益が配当として支払われてしまうと発行済みのオプションの価値が低くなることを知っている。しかし、この経営者と株主の利益相反について、固定価格のストックオプションの承認を議題とする株主総会の招待状に書いてあったのを見たことがない。CEOたちは資本はコストなしに調達できないと社内では言って聞かせているくせに、どうしたものか、固定価格のストックオプションが経営者にタダの資本を与えていることを株主に伝えることを忘れているのである。

 また、以上のトリックを防ぐために、内部保留された利益に応じて行使価格を修正するストックオプションを設計することも簡単にできるはずなのに、経営者に優しいストックオプションのことは何でも知っている報酬の「専門家」は知らないようだと皮肉っています。

 さらに、

クビになる日はCEOにとっては特に実りある支払日である。実際、CEOは自分の机のものを片付けるだけで、アメリカの労働者が一生トイレを清掃して得られる報酬以上のカネが得られるのである。 「成功が成功をよぶ(nothing succeeding like success)」という古い諺は忘れた方がいい。最近、経営者の間で蔓延している諺は、「失敗が成功をよぶ(nothing succeeding like failure)」である。

 ("nothing succeeding like success","nothing succeeding like failure"の訳は、invest_freak さんの「成功が成功をよぶ」「失敗は成功をよぶ」の訳が元の分にも対応していていいと思いますので使わせていただきました。invest_freak さんに感謝いたします。

 Buffettは上場会社20社の社外取締役を務めてきたそうですが、報酬委員会に入れてもらえたのは1回だけだそうです。

 4.最後に

 p.24に21歳のBuffettがGEICOについて書いた記事が載っています(写真も若いです。おおー)。

 Berkshire Hathawayの年次報告書または株主への手紙については、「バークシャーAR翻訳研究会」で、翻訳・議論が行われています。有料ですが、興味のある方は、こちらに直接お問い合わせください。

 *****

 ドルコスト平均法(2006/3/1)に関連して、等株数投資法との比較を加筆しました。

 現時点で次のことが証明できたと思っています。(余裕があれば、アップして皆様のご意見・ご批判を受けたいと思います)

  1. ドルコスト平均法では、証券1単位に支払う平均コストは、つねにその証券の平均市場価格を超えない。なお、平均コストが平均市場価格と等しくなるのは、買い付けの際に常に株価が同じ場合に限られ、その他の場合は、平均コストは平均市場コストを超えない。
  2. ドルコスト平均法と等株数投資法を比べると、利益率ではつねにドルコスト平均法が有利か同じ。同じになるときは、買い付け株価がつねに等しくなる場合に限られ、それ以外の場合には、ドルコスト平均法が有利。
  3. (2'として)ドルコスト平均法(等金額投資)と等株数投資とでは、全体として投資金額が等しくなる場合、ドルコスト平均法が利益額でもつねに有利か同じ。

ということで、上のことを反映して少し3/1分の分をさらに書き直しました。

 どうも、

 全額初期投資 > ドルコスト平均法 > 等株数投資

とくに、

 全額初期投資 > ドルコスト平均法 (統計的に)

  ドルコスト平均法 > 等株数投資 (つねに)

ということが明確になってきたと個人的には思っています。つまり、ドルコスト平均法と等株数投資を比べて、等株数投資にもメリットがあるという記述はほとんどマヤカシだということです。

 

ドルコスト平均法        (2006/3/1)

 

※3/22に修正しました。投資額を等しくして、期間をそろえないと等株投資法がドルコスト平均法より利益率で有利になることがあるます。(supさんに感謝いたします)

※3/6に修正・加筆しました。等株数投資についてさらに厳しい記述になりました。

※3/4に修正・加筆しました 。魔法の公式のポートフォリオの構築のしかたの書き方が正確でなかった(KAPPAさん、ありがとうございます)ので直したほか、ドルコスト平均法と等株数投資との比較を独立させ、まとめを付け加えました。 また、ドルコスト平均法と等株数投資の比較に関する考察を深めました。

 "The Little Book That Beats the Markets"の魔法の公式では、ポートフォリオをつくるのに、2-3ヶ月ごとに3-5回に分けて購入して段階的に20-30銘柄のポートフォリオを作成せよ、とGreenblattは勧めています。ただ、1度で作った場合と3回なら3回で分けた場合のパフォーマンスの比較の結果が提示されて、だから、3回に分けて購入したらどうかと言っているわけではありません。

 この件については、ドルコスト平均法的な時間分散を図るからだという見方もできますが、あとで見るように(まとめおまけ)そのような見方には無理があります。買い付け時期をずらすことにより、

  1. 魔法の公式で順番の高い株を組み込むのがよいと考える。つまり、1回に20株を買い込んで、魔法の公式で1位から20位の株を買うより、3回でそれぞれ1-7位の7銘柄を買う方がいい、と考える。
  2. 時期によって割安になる株は変化するので、時期を分散することによって、セクター等の分散をする

ということなのかもしれません。ただ、先ほど書いたようにGreenblattは本では理由を書いていません。

 

 前々から、ドルコスト平均法については気になっていたので、これを機会に、以下では、ドルコスト平均法に関して考えてみます。

  1. ドルコスト平均法と全額初期投資の比較
  2. ドルコスト平均法と等株数投資の比較
  3. ドルコスト平均法に関するサイトの記述
  4. まとめ
  5. (おまけ)

 その結果、

  1. お金が貯まったら、そのときに投資するのがドルコスト平均法よりも一般に有利である
  2. ドルコスト平均法は等株数投資より必ず有利である
  3. ドルコスト平均法についての記述については書き手の利害がかかわっている

ことなどを見ていきます。(おまけ)はドルコスト平均法と全額初期投資をそれぞれ1年したあと、10年間置いておくとどうなるかを考えています。これは「魔法の公式」を実際に適用した状況に近いときどうなのかを見るためです。ドルコスト平均法に関する結論は基本的に変わりませんでした。

 

 1.ドルコスト平均法と全額初期投資の比較

 それでは、あるときにまとまってお金ができて、これから投資しようというとき、

  1. 全部を一度に投資する(全額初期投資)
  2. これから1年間に毎月12回に分けて投資する(ドルコスト平均法)

では、どちらがいいのでしょうか。

 詳しくはこれから述べますが、一言で述べると、全額初期投資のほうがドルコスト平均法より一般に有利です。

 

 インターネットで探すと、moneychimpというサイトにS&P500を使って、上の2通りについて計$10,000を投資して1年後どうなっているかを調べられるようにしています(ここ)。

 このサイトによると、(赤字は私)

ドルコスト平均法は、全額初期投資におよそ3回に2回は負けるという意味で、統計的には負ける。

もちろん、ドルコスト平均法は(ブラックマンデーのあった)1987年10月のような急落の直前に始めた場合や1年間株価が冴えなかった期間の初めに始めた場合(2000年の大半)は勝つ。しかし、このような下落をあらかじめ予測できない限りは、ドルコスト平均法の方がいいと信じる科学的理由はない

それでは、なぜこの使い古されたドルコスト平均法がうまくいくと多くの人が信じ続けているのだろうか。これは、心理的なものかもしれない。市場が下がれば、ドルコスト平均法で得をするし、市場が上がってしまえば、どうであれ嬉しいのだから。

ということです。「統計的に負ける」というのは、たとえば、「低PBR株への投資は高PBR株への投資に負ける」というときの意味合いと同じです。高PBR株のほうが低PBR株よりもパフォーマンスがいい時期というのがあるわけですが、長期的にならして考えると、低PBR株への投資のほうが高PBR株への投資よりもリターンがよいということです。

 ただ、ここでは、リターンの期待値が論じられていません。負けの割合が多くても(勝率が低くても)期待値が大きければ魅力的な賭けになりますから、リターンの期待値も調べてほしいところです。

 

 以上の話はアメリカ株のことでしたので、日本株でどうかを調べてみました。以前に日経平均の月次データをとっていますので、それに基づいて、全額初期投資とドルコスト平均法とで1年間の期間で比較してみました。具体的には、1年の初めに(たとえば10,000円)全額を投資した場合の1年後のリターンと、12ヶ月に(たとえば、10,000/12円)ずつ投資して投資開始から1年後のリターンを比較しました。

 

ドルコスト平均法と全額初期投資(1年間)

ドルコスト平均法の勝率:36.6%

 ドルコスト平均法 全額初期投資
リターン平均5.99% 11.29%
リターン標準偏差14.47% 25.87%
元本割れの割合34.2% 34.5%

期間は1949/6-2005/8。最近のデータが入っていないが、以前の基礎データを使った考察ができるので、そのまま用いた。

 ドルコスト平均法が勝つのは約37%でS&P500に対する結果と同様になりました。

 さて、勝率より重要なリターンの期待値ですが、全額初期投資した場合の方が平均して約5%ほどリターンが良くなっています。まあ、分散したので当たり前ですが、リターンの標準偏差はだいぶ小さくなっています。そういう意味で「リターンの変動を押さえるという意味でドルコスト平均法はリスクを小さくする」といってよいでしょう。しかし、もちろん、人が普通に考えているリスクは下落リスクのことなので、あまり意味がないでしょう。

 一方、元本割れの割合はわずかにドルコスト平均法のほうが小さいですが、ほとんど変わりません。したがって、「ドルコスト平均法は元本割れのリスクをほとんど小さくしない」ということです。これは、株価が1年間下落してしまえば、ドルコスト平均法を使っても当然損失を被るということを反映していると思います。

 まとめると、

  1. 日本でもアメリカでも1年という期間で調べると、全額初期投資したほうがドルコスト平均法より統計的に有利である。ドルコスト平均法が勝てるのは日本でもアメリカでも3度に1度程度である。 また、勝率より重要なリターンの期待値も全額初期投資のほうが高い。
  2. ドルコスト平均法は全額初期投資した場合と比べて、元本割れリスクをほとんど減らさない。
  3. ドルコスト平均法はリターンの期待値の分布を狭めるという効果がある。(これは現代投資論でのリスクを減らすということで、「リスクを減らす」と述べられていることがあ る)

 全額初期投資がドルコスト平均法に3度に2度勝つのは、たぶん市場が長期で考えると右肩上がりであるからなのだと思うのですが、1年間の株価の変動がそれほどでもないということも関係しているかもしれません。個別株には市場全体よりも価格変動が大きいものがありますから、そのような株についてはドルコスト平均法の勝率はあがるかもしれません。

 以上からすると、定期的にキャッシュフローがある場合(月給の一部を投資に振り向けるなど)にもキャッシュフローがあったらすぐ投資するのが確率的にはよい、ということになります。(もちろん、これから株価の下落を予想している場合は別ですが、短期の株価の予測は難しいとだけ述べておきます。)

 (おまけに、この1年間の投資のあと、10年間寝かしたときの結果がどうなるかを述べました)

 

2. ドルコスト平均法と等株数投資の比較

 それでは、次に、ドルコスト平均法と等株数投資を比較してみます。ただ、等株数投資は株価がひどくあがってしまうと続けられなくなるので、想定としていいものとは私には思えませんが。

 ともかく、最初の月にある株数を買ったあと、

  1. ドルコスト平均法で最初に買った月と同じ金額だけ買い付け続ける
  2. 最初の月と同じ株数だけ値段がいくらになっても買い付ける(等株数投資)

のとどちらがいいのかを考えてみます。

 これについても一言で言うと、ドルコスト平均法が等株数投資より有利です。

 投資期間は1年間として同じ期間で比べました。上の条件から、総投資金額は、ドルコスト平均法と等株投資で当然異なってきます。

ドルコスト平均法と等株数投資(1年間)

ドルコスト平均法の勝率:100%

  ドルコスト平均法 等株投資法
リターン平均 5.99% 5.11%
リターン標準偏差 14.47% 13.91%
元本割れの割合 34.2% 34.9%

期間は1949/6-2005/8。

 見てわかるように、ここで考えた条件では、ドルコスト平均法が必ず等株数投資法に勝ちます。このことは一般的に示せます。つまり、

 利益率を考えると、ドルコスト平均法は等株数投資法のを上回るか等しい。等しくなるのは、株価が買い付けの時点でいつも等しいときである。

また、投資総額が等しいときには、利益率が利益額にも反映されるので、

 投資総額が等しいとき、利益額もドルコスト平均法の等株数投資法を上回るか等しい。等しくなるのは、やはり、株価が買い付けの時点でいつも等しいときである。

ということも示せます。

ただし、リターン平均の違いは約0.9%とわずかですし、元本割りの割合の違いもわずかですが。

 さらに、さきほど書いたことを繰り返すと、給料からの天引き投資などを考えると、等金額投資(ドルコスト平均法)は可能ですが、株価が上がってしまった場合、等株数投資したくても必要な株数を購入する資金が調達できなくなる状況はいくらでもありえるので、等金額投資という想定はあまり現実的ではないと思います。

 

 ただし、投資期間を同じにせず、投資金額を一定にすると、投資期間中に株価が上がり続けた場合、等株投資法がドルコスト平均法より利益率で有利になるということが起こります。

 現状では、依然、ドルコスト平均法のほうが概して等株投資法より有利だと思いますが、条件により、「つねに」ということではないということがわかりました。

 

3. ドルコスト平均法に関するサイトの記述

 ドルコスト平均法については、肯定的なサイト、否定的なサイト、中立的なサイトといろいろです。

 まずは、楽天証券経済研究所客員研究員の山崎元さんの言い分(「ホンネの投資教室」)を聞きたいと思います。 (太字は原文、赤字は私)

 大まかにいって、ドルコスト平均法はそれ自体としては「有利でも不利でもない」のだ。(注:厳密には時系列リターンの自己相関が正負で有利・不利が変わるが、これを予測すること自体が困難だ)気休めとしての効用も役に立つといえなくもないのだが、ひとつ注意して欲しい点がある。

 気をつけて欲しいのはリスクの集中だ。ドルコスト平均法が有利だと信じて、同じ投資対象のリスクを集中させることは明らかに分散投資の原則に逆行する。 ドルコスト平均法の投資対象になりやすいものとして、外貨預金、金投資、自社株(勤務先の株式)への投資などがあげられるが、何れも同じものに対するリスクをため込むことは良くない。

 ドルコスト平均法に関する説明も、投資の入門書の著者が投資を分かっているか否か、或いは良心的であるか否かをテストする良いリトマス試験紙なので試してみて欲しい。

とのことです。

 「大まかにいって、ドルコスト平均法はそれ自体としては『有利でも不利でもない』」と控えめに書いてありますが、時系列リターンの自己相関は、株価(正確には、市場平均株価)の場合、長期には右肩上がりという傾向があるので、ドルコスト平均法は不利になるということだと思います。

 たしかに定期的に買うことによってある投資対象に投資が集中するのはリスクがあります。ドルコスト平均法で定期的に買い付ける場合でも投資対象のことをよく調べておくというのは必須でしょう。

 そして、ドルコスト平均法の説明がそのサイトの良否を示しているとのもよく納得できます。たとえば、比較的肯定的に書かれているサイトは、たとえば、「個人投資家のための投信資料館」「Vanguard」「メイヤーアセットマネジメント」です。いずれも投資信託関係のサイトです。定期的に投資家からの資金の流入のあるドルコスト平均法は会社にとって好ましいはずです。山崎さんが

金融機関にとっては積立投資の勧誘に好都合なこともあり、日本でも米国でもしばしば「有利な方法」として推奨される。

と書いていますが、どうもその通りの結果になっているようです。

 

 3.1 肯定的なサイト

 「個人投資家のための投信資料館」では、

定期的(例えば1ヵ月に1度のように)に同じ投資信託を同じ金額だけ購入してゆくと、購入する投資信託の基準価額が高い時には少しだけ、基準価額が安い時にはより多くの投資信託を購入することになり、平均買付けコストを引き下げる効果があります。

一度に全ての投資を行なうのではなく、一定金額ずつ積み増してゆくことで、時間の分散を図り、購入コストを下げるというリスク低減の方法です。

とあります。Vanguard投信では、

投資を行う金額はいつでも一定ですから、証券の価格が低いときにはより多く購入できますし、価格が高いときには少ししか購入できないことになります。結果として、証券1単位に支払う平均コストは、常にその証券の平均市場価格よりも低くなります。これは魔法でもなんでもなく、簡単な算数を使っただけのことです。

ここで、平均コストは、購入株価の調和平均になりますので、相加平均である平均市場価格をいつも上回らないことが証明できます。(引用文中で「低くなります」というのは、正確には、「超え ません」です。ちょっと起こりにくいですが、買い付け価格がいつもたまたま同じだったら、平均コスト(この場合、買い付け価格)は平均市場価格に等しくなります。 原文は英文だと思いますが、たぶん原文は正確に書いてあると思います。)

 Vanguard投信では、ドルコスト平均法の利点として、「投資リスクの減少」と「定期的な投資」 をあげています。「投資リスクの減少」は株価のピークで全額投資してしまうことを避ける例があげられています。また、但書きとして、

ただし、ドルコスト平均法は利益を約束するものでも、マーケットの下落時に損失を防いでくれるものでもないということを覚えておいてください。また、自分はマーケットが下がっているときにも継続して投資できるのかどうかということもよく考える必要があります。

とありますので比較的良心的でしょうか。なお、Vanguard投信は、多くのファンドが市場平均を上回れないということに基づいて、インデックスファンドを初めて作ったところで 、少なくともその点の功績は大です。「ウォール街のランダムウォーカー」でそのことが紹介されていたと思います。

 メイヤーアセットマネジメントさんのサイトでは、株価が上昇、下降、下がって上がるの3種類のシナリオについて論じ、 (赤字・注は私)

定数口購入によって毎年10ユニットを購入し続けた場合のものと比較します。
以下の3つの比較からも分かるように、どんなマーケットの状況であっても、一定口 (注:同じ株数だけ買う等株数投資)で購入するより1ユニット当たりの購入価格は平均法により割安になっています。

としています。 さきほどにも触れましたが、言っていることは正しいですが、実際の投資で一定口購入(等株数投資)は想定しにくいので、あまり比べてもと思います。

 それはともかく、この件について、山崎さんは赤字青字は私)

ドルコスト平均法では平均買い付け単価が等株数投資よりも低くなるので、買値からの「勝ち負け」を意識する投資家にとっては勝率が良くなるように見えて、ある意味では気休めになりやすいというだけのことなのだ。しかし、値下がりし続けた時の損が大きいし、値上がりし続けた時の儲けは小さい。

と、勝率がよくなるように見えて、等株数投資よりも値下がりし続けたときの損が大きいこと、値上がりし続けたときの儲けが小さくなることを警告しています。 青字のところが、さきほど私が出した月次データを使って出した「常にドルコスト平均法が有利」という結果と違っているように見えますが、どうなっているのでしょう。(結論を先に書くと、3つの意味で注意が必要です。)

 さて、等株数投資とドルコスト平均法の比較については、All aboutのこの記事が詳しいです。この記事では、

  1. 株価が変動しながら上下する場合、ドルコスト平均法(等金額投資)と等株数投資とでは、全体として投資金額が等しくなる場合、ドルコスト平均法が有利。(こううまく投資金額が等しくはならないと思いますが...)
  2. ずっと右肩上がりだと等株数投資の方が投資金額が多くなるが、その場合、等株数投資が利益額が大きくなるが、利益率はドルコスト平均法が有利
  3. ずっと右肩下がりだと等株数投資の方が投資金額が少なくなるが、その場合も、等株数投資は損失額が小さくなるが、損失率はドルコスト平均法が有利

となることが述べられています。さきほど述べたように、一般論としても、利益率で比べると「常にドルコスト平均法が有利」です。赤字の部分はそのことに対応しています。1.に関して言うと、投資額が等しいので、一般論としても、利益額としてもドルコスト平均法が有利です。

 一方、2.と3の青字の部分がが山崎さんの文の 青字にに対応していると思われます。投資で考えるべきは、利益(損失)金額ではなく、利益(損失)率であるはずですから、 私の理解が正しければ、まずこの点でちょっと公平さを欠いていると言わざるを得なくなると思います。

 さらに調べてみると、株価が右肩上がり(右肩下がり)であろうと、等株数投資の利益額が大きくなる(損失額が小さくなる)とは限らないことがわかります(おまけ5.2参照)。 つまり、All aboutの2.と3.の青字のことは一概には言えないということです。 山崎さんの文の青字の部分も利益額のことを言っているとしても間違いとまでは言えないですが、注意が必要です。まあ、利益額でもドルコスト平均法が有利になるのは、株価が右肩上がり(右肩下がり)の場合は、買い付け時に比べ上昇(下落)幅が小さいときに起こ る(これもおまけ5.2参照)ので、好意的に解釈すると、「上がり続ける」「下がり続ける 」という文章から上昇(下落)幅が大きいことも入っているということなのでしょう。

 ドルコスト平均法と等株数投資法の比較についてまとめます。

  1. そもそも等株数投資は、株価が上昇してしまうと投入金額が増えてしまって現実的に行えなくなることがありうる。
  2. 利益率を考えると、常にドルコスト平均法が等株数投資が有利である
  3. 株価が右肩上がりのときであろうと、右肩下がりのときであろうと、ドルコスト平均法は利益額でも上回ることがある。株価の上昇または下落が 小さいときに成り立ち、上昇・下落が大きいときは利益額では等株数投資法が有利になる。

という、等株数投資にとっては残念な結果になります。

 なお、山崎さんの青字の部分は、たとえば、次のように留保をつけないといけないはずです。

 (ドルコスト平均法は等株数投資に比べ)値下がりし続けた時の損が大きいし、値上がりし続けた時の儲けは小さい。

(ドルコスト平均法は等株数投資に比べ)買い付け時の株価からの値下がり幅が大きいときには、相対的に損失額が大き くなるし、値上がり幅が大きいときには、相対的に儲け額が小さくなる。ただし、利益率 のほうが重要であり、その利益率ではドルコスト平均法がいつでも有利である。 また、総投資額が等しいときは、ドルコスト平均法が等株数投資法に比べて利益額(損失額)で見ても有利である。

 さきほど「3つの意味で注意が必要」と書いたのは

  1. 利益額でなく、利益率を考えるべきこと
  2. 利益額についても一概には言えない。もっと言うと、投資額が等しいという公平な条件では、ドルコスト平均法が有利である。
  3. 「ドルコスト平均法」が全額を一度に投資すること(全額初期投資)に比べて「気休め」だというのならわかるが、等株数投資と比べての「気休め」というのは適切でない

ということです。

 All aboutの青字についても

 ずっと右肩上がりだと等株数投資の方が投資金額が多くなるが、その場合、等株数投資が利益額が大きくなるが、利益率はドルコスト平均法が有利

ずっと右肩上がりだと等株数投資の方が投資金額が多くなるが、その場合、等株数投資が利益額が大きくなる ことがあるが、利益率はドルコスト平均法がいつでも有利

などとなると思います。

 

 3.2 否定的なサイト

 さて、いろいろ調べたサイトの中で、かなり否定的に思えるのが、 http://finance.nifty.com/event/semi/invest/13.jspです。山崎さんの言っていることに近いです。山崎さんの本の読者でしょうか。(太字橙字は原文、赤字は私です。)

ドルコスト平均法は、しばしば「有効な投資手法だ」と紹介されることが多いのですが、この方法自体が期待リターンを高めるわけでもなく、ただ定期的に買い続けること、という以上の特別な効果はありません(残念ながら…)。

 しかし、これほど普及した方法が本当に有効だとしたら、世の中はお金持ちばかりになっていることでしょう。実際は、そうでもありません。ドルコスト平均法で自社株を買い付けていたために、会社がつぶれて資産の大半を失ってしまったり、結局、株価が下がったことで大損するというような例があります。

ドルコスト平均法の利用により、資産の中で、特定商品や銘柄への集中が進むきらいがあることは要注意です。これ自体が、リターンを高めるような特別な手法ではないということを理解することが重要です。要するに、定期的に買いつけるということ以外の意味はないのです。

これについては、山崎さんも言及していて「リスクの集中」を避けるべきだと言っています。まあ、定期積み立てでも投資先をよく調べましょう、ということを私からももう一度言っておきましょう。そして、投資先が思わしくないという結論に達したら「いままでお金をつぎ込んできたから」と思わず売却することでしょう。

ドルコスト平均法が有効だとか有利だと主張する専門家は、投資のことが良くわかっていないのかもしれないことを、確かめられる絶好の方法・機会といえます。ドルコスト平均法自体は、自己規律的に証券貯蓄を奨励するための手法であって、投資手法として特別にありがたい効果のあるものではないことを、理解しておきましょう。

これも赤字のところが山崎さんと同じようなことを言っていますね。ただ、山崎さんより言い方がきつめです。

 少し話が脱線しますが、「自己規律的に証券貯蓄を奨励する」のは実は私は結構大切だと思います。「私の財産告白」の本多静六さんのように、給料の1/4を投資に回すくらいすれば、早く金持ちになれるでしょう。ただ、「ドルコスト平均法はオトクだから」というセールストークは確かにいけませんね。

 「同じ金額を買い続ければ、平均買付コストを下げられます!」という切り口だが、下がってしまえば損は損なので要注意! ! 相場が下がり気味の時や上昇相場のピークで、よくセールストークとして用いられる。

このことは覚えておいて損はありません。相場の天井や底はあらかじめわからないわけですが、たとえば、いくら何でも高すぎるといったときにはセールスパーソンがなんと言おうと売って現金化するか他のもっと割安な投資に振り向けるのがよいでしょう。

 

 3.3 その他

 あともう一つ、ドルコスト平均法の不利を知った上で、利用を勧めているAll aboutのこちらの記事はおもしろかったです。著者は、ドルコスト平均法を等株数投資と比較したさきほどのこの記事と同じ人です。デメリットは承知の上で、「気休めも必要」とすら書いています。

「欲と恐れ」が邪魔をする、価格変動商品への投資の場合には、やはり、頼りになるツール

と割り切って使う手もあると思います。天井で買ったり、パニックで売ったりする(私のことか...)ような人は、ドルコスト平均法の欠点を承知しつつ利用するのもいいと思われます。

 資産を築くには、合理的な投資を繰り返していくことが必要です。しかし、その前に、少々不合理なことをしたとしても、投資をすることにより、全く投資をしないことよりよほどよいことが多いと思われます。これは、銀行預金にずっと預けているよりは、市場に負けるような株式投信を買った方がいいという意味です。(もちろん、「信用でライブドア一点買い」のようなことをしていれば、全財産を失って借金まで作ってしまいますが。)

 そういうことを考えると、「ドルコスト平均法」に少々不合理があるにしても、気休めの効果で投資が続けられるのなら、その方がいいかもしれないと思ったりもします。(もちろん、合理的な投資ができるのなら、パフォーマンスを落とす確率の高いドルコスト平均法を利用する必要はないでしょう)

 

4. まとめ

 私なりの現時点でのまとめです。

  1. ドルコスト平均法と全額初期投資を比べると、統計的に全額初期投資が有利である

  2.  

    ドルコスト平均法は全額初期投資に比べ、元本割れのリスクが下がったりするわけではない

  3.  

    ドルコスト平均法と等株数投資を比べると、必ずドルコスト平均法が有利である

  4.  

    ドルコスト平均法は必ずしも有利というわけではないが、定期的な投資を可能にすると言う点、「欲と恐れ」の邪魔を逃れると言う点では頼りになる

  5.  

    ドルコスト平均法を心理的なツールとして利用するにしても、投資先のことを調べるのは損失回避のために重要

 以上のようにまとめて、私もドルコスト平均法がかなりわかったような気になりました。理論的には、ドルコスト平均法が不利と言われていても何となくすっきりしないものがあったのですが、だいぶすっきりしました。ただ、株価の変動がリターンに比べて大きくなったときにドルコスト平均法の有利性があがるのかどうかは今後の課題かなと思っています。

 

 5.(おまけ

 5.1 全額初期投資とドルコスト平均法の比較(1年間+10年間そのまま)

 さて、Greenblattは1年間かけてポートフォリオをつくったあとは(1年ごとの銘柄入れ替えをおこないながら)長期の投資を行います。そこで、上で考えた2通りの投資で1年間を経たあとさらに10年間放置したときのリターンを調べてみました。(パーセントで書くとかえってわかりにくいので、100円を投資したときのリターンで書いています)

全額初期投資とドルコスト平均法(1年間+10年間そのまま)

ドルコスト平均法の勝率:31.4%

 ドルコスト平均法 全額初期投資
リターン平均316.77 335.59
リターン標準偏差250.53 272.97
元本割れの割合17.8% 17.6%

期間は1949/6-2005/8。

 ドルコスト平均法の勝率が少し落ちていますが、約1/3というのは変わりません。10年たってもリターンの標準偏差はドルコスト平均法のほうが小さいですが、あまり変わらなくなっています。最初の一年間の時間分散の効果がそののちの10年間の同一の市場環境のせいであまり変わらなくなったということだと思います。元本割れの割合は(市場が右肩上がりの傾向が一般にあるため)どちらも下がっていますが、やはりあまり変わりません。

  5.2 右肩上がりまたは右肩下がりの条件で、ドルコスト平均法と比較して等株数投資の利益額(損失額)がいつも多いと言えるか

 まず、ドルコスト平均法と等株数投資を比較すると、利益はつねにドルコスト平均法に軍配があがることを押さえておいて、利益がどうかを考えます。

 ドルコスト平均法と等株数投資の比較で「右肩上がり・等株数投資の方が投資金額が多くなる場合」を考えます。

 さきほどのAll aboutのこちらの<C表>の例では、下表のような2つの投資を比較して、

値上がりしているわけですから、投資金額の多い、等株数投資の方が利益の金額は多い

としています。

<C表>に対応            
           
投資法 買い付け 1回目 2回目 3回目 合計 平均購入価格
900 1,100 1,300 株数
等株数投資法 毎月100株 100 100 100 300 1,100.0
90,000 110,000 130,000 330,000
ドルコスト平均法 毎月10万円 111.1 90.9 76.9 278.9 1,075.5
100,000 100,000 100,000 300,000
           
評価額 1500 評価額 買い付け額 利益額    
等株数投資法 毎月100株 450,000 330,000 120,000    
ドルコスト平均法 毎月10万円 418,415 300,000 118,415    

 しかし、株価が1,400円にしかならなかったときのことを考えると、

評価額 1400 評価額 買い付け額 利益額   境界
等株数投資法 毎月100株 420,000 330,000 90,000   1424.7
ドルコスト平均法 毎月10万円 390,521 300,000 90,521    

と、ドルコスト平均法のほうが利益額も上回ることがわかります。境目はどこかを調べるために、等株数投資の利益額がドルコスト平均法を上回る条件を考えると、

( x - 1100 )×300 > ( x - 1075.5 )×278.9

を解けばいいことになります。これを解くと、x > 1424.7となりますから、株価が1,424.7円以上に上がるときには等株数投資の利益額がドルコスト平均法より大きく、株価があがってもそこまで上がらなければ、利益額でもドルコスト平均法が有利ということになります。

 同様に、株価が右肩下がりの<D表>に対応する場合にも株価が500円まで下がった場合は、等株数投資法のほうが損失額が小さくなりますが、株価が670円までしか下がらない場合はドルコスト平均法のほうが損失額においても有利になります。

 等株数投資法のほうが有利な条件は、

( x - 900 )×300 > ( x - 869.9 )×344.9 つまり x < 668.5

ということで、668.5円より下がれば、等株数投資の損失額のほうが小さく、そこまで下がらなければドルコスト平均法の損失額のほうが小さくなります。(もちろん、損失率についてはつねにドルコスト平均法のほうが有利です)

投資法 買い付け 1回目 2回目 3回目 合計 平均購入価格
1,100 900 700 株数
等株数投資法 毎月100株 100 100 100 300 900.0
110,000 90,000 70,000 270,000
ドルコスト平均法 毎月10万円 90.9 111.1 142.9 344.9 869.9
100,000 100,000 100,000 300,000
           
評価額 500 評価額 買い付け額 利益額    
等株数投資法 毎月100株 150,000 270,000 -120,000    
ドルコスト平均法 毎月10万円 172,439 300,000 -127,561    
           
評価額 670 評価額 買い付け額 利益額   境界
等株数投資法 毎月100株 201,000 270,000 -69,000   668.5
ドルコスト平均法 毎月10万円 231,068 300,000 -68,932    

 まとめると、

  1. 株価が右肩上がりのとき、株価の上昇幅が大きいときには利益額は等株数投資のほうが大きく、有利である。株価の上昇幅が小さいときにはドルコスト平均法の利益額のほうが大きい。(利益率はつねにドルコスト平均法のほうが大きく有利)
  2. 株価が右肩下がりのとき、株価の下落幅が大きいときの損失額は等株数投資のほうが小さく、有利である。株価の下落幅が小さいときにはドルコスト平均法の損失額のほうが小さい。(損失率はつねにドルコスト平均法のほうが小さく有利)

 *****

 今月の成績はまたのちほどに更新しますが、日本株は約-26%、アメリカ株は約+11%となりそうです。一回暴落しているので、しばらくは人があまり寄りつかず上がらないように思われるので、たぶん今年は日本株は市場に負けると思います。不動産関係以外にも投資機会を求めていきたいと思いますが、割安さに疑問が出てこない限りは、私はうまく動けないので、短期であちこちに動かさない予定です。(もちろん、投資判断は断りなく変わりますので、ご了承ください)

 

アンダーパフォーマンス        (2006/2/16)
 
 日経平均やTOPIXは昨年末より若干下がっているだけですが、私のポートフォリオは23.5%下がっています。

  2005/12/31-2006/2/16
私のポートフォリオ -23.51%
TOPIX -1.11%
日経平均 -0.42%
JASDAQ -8.78%
 

 値動きの激しい株を保持しており、昨年12月に上昇しすぎでしたので、やむを得ないと思っています。ですが、この状況のまま行くと今年は市場平均を大きく下回りそうです。

 ただ、手持ちの株について、会社予想と株価から現在の予想PERを計算してみると、

銘柄 予想PER
アーバンコーポレイション(8868) 25.2
アーネストワン(8895) 12.5
パシフィックマネジメント(8902) 26.1
フージャース(8907) 18.1

となります。アーバンコーポレイションとパシフィックマネジメントは20倍台ですが、成長の割には割高とまでは言えないので、成長が続きそうな限りは保持したいと思っています。もちろん、一番いいのは高いときに売っておき、今のように安くなったときに買うことでしたが、結局保持しているだけでした。短期にうまく立ち回れればいいのですが、どうもうまく立ち回れません。

 最近新しい株を2銘柄購入したのですが、そちらもかなり下がっており、タイミング的には失敗している状況です。まあ、タイミングをとるのはもともとうまくないので仕方ないのですが。

 どちらの会社もIRに質問をしました。一社は電話してすぐ回答が得られました。

 もう一社の方は、有価証券報告書の結構細かいことを聞きたかったので、会社のサイトの質問フォームから入れました。すると、字数制限ではねられ、メールで訊くことにしました。すると、メールでは返事をせず文書で回答するとのことでした。ー週間たっても返事が来ないので、再度問い合わせると、弁護士のところを通しているので時間がかかっているとのことで、回答は来週になるそうです。(待っている間に1割くらい下げてしまいましたが)

 今書いていていやなことを思い出したのですが、Gravityにメールで質問をしたときもメールでは答えず、電話で回答があってそのあとすぐ下方修正ということがありました。ちょっと気をつけた方がいいのかもしれません。

 ポートフォリオはこちら

 

魔法の公式        (2006/1/22)

 年末・年始の休みに、"The Little Book That Beats the Markets" 、「株式投資の未来」("The Future for Investors")を読みました。まず、今回は、"The Little Book That Beats the Markets"について考えてみたいと思います。

 

 この本については、昨年の11/23の日記で取り上げています(ここ)が、読んだ結果をふまえてもう一度考えてみたいと思います。

  1. どんな方法で株を選ぶか
  2. 成績はどうか
  3. 方法の欠点・限界

について順に見ていきたいと思います。

 

  1. どんな方法で株を選ぶか

 まず、以前の繰り返しになりますが、ある基準による機械的投資を提唱しています。これは自分の子供たちにもできるようにというところから来ていると思います。

 グレアム(Benjamin Graham)は、「賢明なる投資家」で、スクリーニング法を挙げていますが、そこでは、会社の資産に対して割安な株(割安資産株)を選ぶことに重点があ ります。一方、魔法の公式で選ばれるのは割安成長株のようです。このことについてまず考えてみます。

 どのような会社を選んでくるかということですが、「安くて良い」会社ということになります。その選択の基準として「魔法の公式」を提唱しています。基本は、(修正された)株式益回り(PERの逆数)で「安さ」を測り、資本収益率(ROC)で「良さ」を測っています。(本では、補遺(Appendix)にROCと修正株価収益率の具体的な計算法が載っていますが、たぶんここは重要点で書くと怒られそうですから、ここでは書かないことにしておきます。)指標としては、ROCや収益率の計算には直近の過去データ(実績データ)を使い、予想データは使いません。

 ROCがよければ、かけたお金に対する収益率が高いということですから、上がってきた収益をまたその収益率の高い事業に再投資することができれば(成長余地があれば)収益は伸びていくことになります。つまり、そのような会社の株は(すくなくとも潜在的な)成長株ということになります。

 つまり、

  1. 魔法の公式を使うと、成長株を割安に買うことになる確率が高い(ただし、成長の終わって割安に評価されている株を買っ たり、市況関連株を株価のピークで買ってしまう可能性もある)
  2. 魔法の公式はスクリーニングに修正株式益回りと資本収益率を用いる2パラメータモデルである

ということです。

 Greenblattは自分の無料サイトhttp://www.magicformulainvesting.com/でスクリーニングができるようにしています。この基準でスクリーニングした会社に対して20-30社への分散投資を提唱しています。

  1. 成績はどうか

 それでは、魔法の公式の成績を見ていきたいと思います。あとで、Robert Haugenの方法、"What Works on Wall Street"(邦訳「ウォール街で勝つ法則」)の方法との比較も紹介・検討したいと思います。

 時価総額の大きい3,500社、2,500社、1,000社(電気・ガス会社などの公益企業株、金融株、流動性の低い株を除く)のうちから魔法の公式に基づいて、年初に上位30社を選んでポートフォリオをつくり、一年間保有します。このポートフォリオの1988-2004年の17年間分の運用成績は以下のようになったそうです。

 

    表1 魔法の公式の成績

会社数(N) 魔法の公式 N社の等重率ポートフォリオ S&P500 N社のうち最小の時価総額の会社 備考
3,500社 30.8% 12.3% 12.4% 5,000万ドル(約50億円) 表6.1
2,500社 23.7% 12.4% 2億ドル(約200億円) p.60
1,000社 22.9% 11.7% 10億ドル(約1,000億円) 表7.1

 

 昨年の日本の株式市場(TOPIX)は43.5%上昇していますから、大したことはないと思う人が多いでしょう。しかし、日本でもアメリカでも長期の株式市場の1年あたりの上昇率は平均して7-10%程度ですから、機械的な投資法としてはとても優れていると思われます。

 3,500社と1,000社については、各年のデータが表に示されているので、あとで"What Works on Wall Street"で調べられている戦略との比較のために、表から標準偏差(対数標準偏差から求めたもの)とそれに基づくシャープレシオとを計算して、リターンとともにまとめておきます。シャープレシオは、平均リターンから無リスク資産(国債)の利回りを引き、その値をリターンの標準偏差で割ったもので、「リスク補正したリターン」の尺度の一つです。リスクのもう一つの尺度として、全体17年のうちマイナスになった年の割合も示しました。

 

表2 魔法の公式と市場平均との比較

1988-2004年 平均年リターン 年リターンの標準偏差 シャープレシオ(*1) マイナスになった年の割合
魔法の公式 3,500社から30社抽出 30.8% 19.7% 1.17 5.9%
1,000社から30社抽出 22.9% 21.0% 1.23 11.8%
等重率ポートフォリオ 3.500社 12.3% 23.0% 0.42 29.4%
1,000社 11.7% 18.9% 0.46 23.5%
S&P500 12.4% 18.1% 0.52 23.5%

(*1)シャープレシオの計算に無リスク資産の利回りの値が必要ですが、財務省証券(Treasury Bill)の利回りの値を"What Works on Wall Street"の本(第二版と第三版)から取りました。2004年については、本に値がなかったので、各週の終値の平均値で見積もりました。

 

 魔法の公式を使うと、シャープレシオが1を超えていますが、私はシャープレシオが1を超える株式の機械的投資戦略は初めて知りました。 また、小型株を含む3,500社から抽出したときのリターンがよいですが、この期間では大型株の方がパフォーマンスがよかったので、いわゆる「小型株効果」ではなく、小型株の方がアナリストにカバーされることがなく、良くて安い会社の見つかる割合が多いからということのようです。

 

 2.1 Haugenのモデルとの比較

 本の補遺でHaugenの71パラメータモデルとの比較が議論されています(Haugenのホームページはこちら)。2004年時点で10億ドル以上の時価総額の会社についての比較です。Haugenのモデルは1ヶ月ごとの入れ替えを前提にしている点で、毎月入れ替えの場合も比較しています。

表3 魔法の公式とHaugenのモデルとの比較

2004時点で10億ドル以上(1994.2-2004.11)

上位1割 下位1割
毎年入替え 魔法の公式 18.43% 1.49%
Haugen 12.55% 6.92%
毎月入替え 魔法の公式 24.25% -7.91%
Haugen 22.98% -6.91%
等重率ポートフォリオ 9.38%

 驚くべきことに、このように大型株については、そのモデルよりも2パラメータモデルの魔法の公式の結果は良いという結果になっています。

 ただ、この比較はもともと大型株についても魔法の公式が使えるということを示すためのものであることに注意しないといけないとは思います。Haugenのホームページにあるこのアメリカの割安株に関する成績を見ると、ベンチマークが5.2%しか上がっていない期間(1998-2005)で、上位3割の株の平均リターンが30.8%ということなので、(1ヶ月入れ替えという点は実用性に欠けていますが、)かなり良いモデルであるのだと思います。

 

 2.2 "What Works on Wall Street"の手法との比較

 さて、機械的投資と言えば、"What Works on Wall Street"が有名でしょう。この本は現在第三版が出ています(pdf)。結果を比べてみます。こちらは1964-2003年の結果です。また、母集団に用いている会社数、会社を選択する基準も違っているのでいずれにしろ直接的な比較はできないことに注意してください。

 しかし、結論的には、魔法の公式よりも条件数は多いのに、単純リターンでもリスク修正済みリターンでも及ばないということのようです。

 それでは見てみましょう。

 (第ニ版では、それぞれの戦略に関する各年のリターンが載っていたので、それを利用して同じ期間に対する比較をしたかったのですが、第三版では各年のリターンが載っていないので、それはできませんでした。)

 

表4 What Works on Wall Streetの手法との比較

1964-2003年 平均リターン リターンの標準偏差 シャープレシオ
1年間のRS(*1)で上位25社
(時価総額$2,500万〜2億5,000万ドル、PSR<1) (*2)
24.32% 36.35% 0.67
改良Cornerstone Growth25社(*3) 21.08% 32.55% 0.62
低PBR(*4) 50社 15.66% 19.51% 0.47
低PSR(*2) 50社 15.38% 23.7% 0.52
多重割安50社(*5) 17.69% 18.38% 0.75
母集団(約3,000社?)(*6) 12.02% 20.23% 0.40
S&P500 10.61% 16.82% 0.37

(*1)RS: relative strength、相対価格上昇度。価格上昇のモーメンタムをしめす。テクニカルな指標。

(*2)PSR: price-to-sales, 株価売上高倍率

(*3)改良Cornerstone Growthとは、次の条件を満たす株

  1. 時価総額がインフレ調整後2億ドル以上
  2. PSR(price-to-sales, 株価売上高倍率)が1.5未満
  3. 利益が前年より増加
  4. 3ヶ月間の株価上昇が母集団の平均値よりも大(RS>0.5)
  5. 6ヶ月間の株価上昇が母集団の平均値よりも大(RS>0.5)
  6. 上の条件を満たすものから、1年間の相対価格上昇度で上から50株

(*4)PBR: price-to-book, 株価純資産倍率

(*5)多重割安(value decile intersection)とは、次の条件を満たす割安株

  1. PSR(price-to-sales, 株価売上高倍率)が下位30%
  2. PCFR(price-to-cashflow, 株価キャッシュフロー倍率)が下位30%
  3. 配当利回りで上位30%
  4. 以上で50株を上回る株が残ったら、1年間の相対価格上昇度で上から50株

(*6) 母集団は、インフレ率で補正して1994年末時点で1億5,000万ドルの時価総額に相当する会社すべてです。2003年時点では、時価総額が約1億8,500万ドル以上の会社で、この時点で、会社数はS&P Compustatデータベース上の8,178社から時価総額が基準に満たない4,867社を引いた3,311社と思われます。)

 

 期間中のS&P500の上昇率を見てみると、魔法の公式の検証期間(1988-2004)が12.4%に対し、What Works on Wall Streetでは10.6%(1964-2003)なので、少しWhat Works on Wall Streetの方が不利のようです。

 まず、リターンが最良の戦略は、「時価総額$2,500万〜2億5,000万ドル、PSR<1の集合の中から、1年間の相対的な株価上昇率(RS)が高いものを上から25社選ぶ」というもので、年率24.3%でした(表3の水色)。次にリターンの高い別の戦略は「改良Cornerstone戦略」だそうです。それぞれ3条件、6条件によるものです。

 第二に、基準を一つだけ用いたときに最良な戦略は、1964-2003年の期間では、「PBRの小さい順に50株を選ぶ」という戦略でリターンが15.7%で最も良いようです(表3の緑色)。ただし、この第3版においても、低PSRがよいという結論がより長い期間(1952-2003)については得られており、この点では、第2版(1952-1996の期間)と同じ結論になっています。

 第三に、シャープレシオが最も大きい戦略は、割安条件を組み合わせて求めた50社で、シャープレシオは0.75となっていました(表3の)。

 さて、"What Works on Wall Street"のデータは、"The Little Book That Beats the Markets"の期間より長くとっており、その期間でS&P500の上昇率は若干小さくなっており、ポートフォリオを組んでいる株数も違っていますから、単純な比較はできないですが、ざっと表2と表3を比較してみると、単純リターンもリスク補正後リターンも魔法の公式によるもののほうが"What Works on Wall Street"のいずれの戦略よりも優れているように思われます

 さらに、日本株への応用を視野に入れると、"What Works on Wall Street"で良いリターンを与えている、高RSと低PSRについては日本株についてはあまりいい指標ではないことがわかっています。そういう意味では、直接日本株には応用できそうにありません。(もちろん、魔法の公式の方も、日本株に対して応用可能かどうかは検証しないといけませんが)

 まず、RSについてですが、日本では、モーメンタムの効果が観察されていません(たぶん、ごく短期で失われてしまう)ので、モーメンタムの効果を現すRSはあまり良い指標にはならないと考えられます。日本では、リターンリバーサルの方が強く観察されているようです。(たとえば、KAPPAさんのこちらを参照してください。こちらでは、1ヶ月という期間でもモーメンタムでなく、リターンリバーサルが現れることが示されています。)

 また、日本では、低PSR戦略はあまり有効でないことが示されています。低PBR、低PER、低PCFRなどの戦略の方が低PSR戦略よりリターンが大きくなるようです。(こちらの図表2。ただし、調査期間が短いことには注意すべきでしょう。長くとれば、違う結論になるかもしれません)

 

  1. 方法の欠点・限界

 魔法の公式の欠点あるいは限界について考えてみましょう。

 まず、収益として過去12ヶ月の実績の値を使っていることでしょうか。予想がうまく行けば、予想の収益を使えば、よりよい株価予想が可能でしょう。実際の利用に際して、20-30株への分散を勧めているのは、中には、実績が良くても将来の業績がいいとは限らない会社がどうしても含まれてしまうからでしょう。いわば、成長の止まった割安株を拾う可能性があります。また、市況関連株を業績や株価のピークで買ってしまう可能性もあります。ただ、実績値を用いることにした背景には、アナリストの予想があまりアテにならないこと、小型株ではそもそもアナリストがカバーしていないことなどがあると思いますし、魔法の公式を設計するにあたって、あいまいさを排除するという原則があったのでしょう。そうでないと誰もが使えるものになりませんから。

 第二に、市場にどの程度負けることがあるかを議論したいと思います。

 どのような戦略でも市場に負ける期間があるものですが、魔法の公式の過去17年の実績からすると、

  1. 通算36ヶ月(3年間)負け続けることがある
  2. 12ヶ月のうち5ヶ月は負けている
  3. 12ヶ月という期間をとると、4回に1回は負けている

(p.70)とあります。ただ、このことはむしろ利点だと論じられています。常にうまく行く戦略は、みんなが使ってしまって、有効性がなくなってしまうのに対して、うまく行かない期間がこのように長期にわたると短期志向の投資家には採用されず、有効性が保たれるという理屈です。この論証の一例として、ベストセラーの投資本の著者のことがあげられています。(たぶん、"What Works on Wall Street"の著者のJames P. O'Shaughnessy のことだと思われます。)

 その本の著者は一番うまくいった方法に基づく投資信託を始めましたが、最初の3年間のうち2年間市場に負け、そのうち、1年は市場に25%も負けたそうです。それでその人はその運用会社を他人に売却したそうです。ところが、売ってもらった人は、全く同じ方法で運用を続け、その3年後、その投信は(最初の3年間のひどい成績の時期を通算しても)トップクラスの成績を挙げる投信になったそうです。

 もう一つ、Greenblattの友人の優秀なファンドマネージャーの話があります。このファンドマネージャーは自分のスクリーニング法で上位の株から選んでポートフォリオを組んで、ある会社で10年間うまく運用してきたそうです。そこで、9年前に独立して自分の運用会社を設立して運用を開始したそうなのですが、最初の3-4年は、他のファンドマネージャーや市場平均に負けたそうです。そのファンドマネージャー自身は自分の手法を信じて続けたそうですが、大部分の顧客は解約してしまったそうです。その後、そのファンドは(最初の3-4年の悪い時期も通算して)ウォール街の数千社の投資会社のトップの5本の指に入る成績を収めているそうです。

 以上のように、うまく行かない期間がある程度長いことがあるために、みんなが採用せず、それが故に、この魔法の公式の有効性は残っていくという議論です。この点は反対の意見がある人もいるかもしれませんね。

 第三に、日本株に対してはどうかということは現時点ではわかりません。誰も検証していないので(検証された方はお知らせください(^^;)。魔法の公式や"What Works on Wall Street"の検証では、Standard and Poor'sのCompustatが使われていますが、Compustatには世界市場について調べたCompustat Globalなるものがあるようですね(ここ)。これを使えば、検証可能でしょうね。(たぶん、個人では払えないくらい高い料金を払わないといけないでしょうね。)日本の市場に特化したデータベースもあるのかもしれませんが、私は知りません(汗)。

 私のいい加減な直感では、魔法の公式は割安成長株を見つける可能性が高く、割安成長株の成績は私の実感としてはよかったので、日本でも魔法の公式はうまく働くような気がしています。

 (なお、Haugenは日本株に対しても自分たちの方法が有効であることを示している(ここ)一方で、"What Works on Wall Street"でトップの成績を収めたスクリーニング法は上述のように日本株にそのままでは適用が難しそうです。)

 

  1. 最後に

 Greenblattは、The Motley FoolのHidden Gem(有料です)のインタビューで40種類の式を試したと話していますが、その結果としても、たったの2パラメータで表2のような、いい結果が得られるのは私には驚きです。もちろん、「長期的には株価が企業業績を反映する」と考えれば、成長可能性のある株を安く買うという戦略(割安成長株戦略と言っていいでしょう)は良いリターンをもたらすのは当然と思いますが。インタビューはここでも聴けます(聞き手はThe Motley Foolを主宰している二人のうちの一人David Gardner)が、Hidden Gemのインタビュー(聞き手はBill Mannという人です)ではもう少し詳しく聞いています。

 

 最終章(13章)のかこみでGreenblattは投資で稼いだお金の使い道を論じています。公教育への投資です。

 「自分の回りの人々、愛する人々たちのために使ったあとのお金の使い途はいろいろある。医学研究への拠出、恵まれない人々への援助、社会正義の実現を助けるなど、自分が価値あると信じるものにお金を投じるのもいいだろう。しかし、この本が資本収益率の高い投資を提唱しているので、もう一つあなたに選択肢として考えていただきたいことがある」

 「起業家、科学者、エンジニアなどの質の高い労働力はアメリカの経済の成長力・繁栄の原動力であるが、そのような人々を育てるのが教育システムである。長期的には、株式市場の成績はアメリカの経済の成長を反映することになる。しかし、われわれの将来の潜在力の多くが無駄になっているのは明白だ。アメリカの大都市のほとんどで中三生の半分だけが高校を卒業するに過ぎない」

 この後、公教育では、資本主義の原理、「ダメな会社(教師、学校)が淘汰される」ということがないと論じ、この問題の解決策を講じないといけないとして、いくつかのサイトを紹介しています。

 日本はアメリカに比べて資源もなく、人的資源をアメリカ以上に大切にしないといけないはずです。われわれも考慮する必要があるでしょう。

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 ライブドアショックで株が下がりました。来週はどうなるかわかりませんが、冷静に対処したいものです。

 昨年末の成績はこちらです。12月に上がりすぎました。引き続き1月も上がっていましたから、何かのきっかけ(今回はライブドアショック)で下がるのは致し方ないところでしょう。

 

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