良心的な外務員がいない理由

商品取引の問題点は、はたして外務員個人の責任でしょうか。誤ったルールの下では、良心的名な外務員は消え、悪辣な外務員のみが残るということになります。問題は、個人ではなく、制度システムにあります。「一部の悪質な外務員が問題」という発言は、主に制度システムを温存させたい人が主張します。

外務員と、顧客の間には、決定的な対立点があります。それは、外務員は、頻繁に売り買いをしてもらうと大変儲かるという点です。顧客は、売り買いごとに手数料を取られるので売り買いは少なければ少ないほどいいわけです。

ただそれをいうと「証券会社だって同じ」という反論がでます。しかし、そこのところは、少し違います。まず第一に株式市場と商品市場の規模の違いです。株式市場の規模は、大変大きく、参入者が多いために、情報もたくさんあります。

テレビを見てみるとわかることですが、お昼や晩のニュースで簡単ではありますが、株式市場の動向を伝えています。また、すべての新聞には、前日の株価が記載されています。また、本屋に行けば、株関連の本がいっぱいあります。

それに比べて、商品市場は、株式市場と似てはいますが、ずいぶんとその様相は違います。まずテレビでは、商品市況の報道はしていません。経済新聞を除けば、新聞にはちらりと出てはいるのですが、その扱いは非常に小さく限定的で値動きも把握できません。本屋ではどうでしょうか。商品先物被害の本はあっても、先物情報の本はまず見つけることはできないはずです。これらは、取りも直さず市場規模があまりに小さいこと、すなわち、顧客が少ないことの証明です。

こういった状況で売買を始めると、結局、外務員の情報に頼りきることになります。顧客の心理は、「外務員に売買の基本を教えてもらいながら、何年か後には、自分で売買の決断ができる人間になろう」というくらいなものです。

ところが、入金した数時間後には、「大変なことになりました。追証入れてください。追証入れないと権利が消えます」です。これは、オーバーなことをいっているわけではありません。2002年12月、多くの商品取引会社は、石油関連の買いに力を入れてきました。ところでガソリンや灯油は、面白いほど値が動きます。一日ごとにストップ高とストップ安の繰り返しです。ということは、目標を出資額の5割の利益とするならば、たった1回のストップ高で達成されます。逆もまた真なりで、たった1回のストップ安で追証です。この12月、果たしてどれくらいの悲喜劇があったでしょう。

ところで、この石油関連商品を勧めた外務員は、本当にここのところを説明していたのでしょうか。「ガソリンは、パチンコと同じ速度で勝ち負けが決まります。数時間です。実際には、ニューヨーク市場で決まるので、すべては夜に動きます。だから、夕方買いの注文を入れたら、次の朝は、上がるにしろ下がるにしろ、売りで決済しましょう。楽しみですね。出資額の5割が入ってくるか、それとも5割が消えるか。もしご希望があれば5日間ほおっておいてみますか。追証は、こちらで立て替えましょう。そうなると5日後は、運がよければ利益350%、運が悪ければ、損失350%となります。ですから、出資金の350%は、いつでも出せるようにしておいてください。ただ理論上は、商いが成立せずということも考えられますので、損失にここまでという金額はありません。でも、それは儲かるときも同じですから、あまり気になさらないように」

もちろんこんな説明をする外務員はいないですよね。実際の外務員は、「私を信じてください」とか言って、あとは、「買い」「買い」と叫んでいるだけです。

どんな業界でも、営業マンは自分の扱う商品の不利な点を説明する必要はないですよね。だから、具体的なリスクの説明もせず、気迫で契約をとればいいわけです。契約をとれば、あとは頻繁な売り買いです。顧客は、売りにしろ買いにしろ、注文の出し方さえわからないような相手なんだからどうにでもなりますよね。

ところで、このシステムは根本的におかしいということがおわかりでしょうか。外務員は、頻繁な売り買いをしたいわけです。その相手が情報を握っていて、その相手の話を聞いて売り買いをしようとしているのです。そして、他の場所からの情報の提供を持たず、下手したら値段さえ外務員から聞いているのです。これでは、トラブルが絶えません。

よいシステムは、情報と、売買をわけることです。まず、価格は、自分で調べる。上がるか下がるかの予想は、別の人に聞く。別の人に聞いた予想や、現在の価格をたまに外務員に聞いてみてもいいです。ただそれは、外務員を試しているだけで、決して外務員からの情報は聞かない。もしこちらが聞いてもないのに外務員が売り買いの指南をしようとすれば、「お前には、聞いていない。おれの注文だけを通せ。それがおまえの仕事だ」という。このようなシステムは、株式市場なら簡単です。それは低いレベルでは、前日の値動きはすべての新聞に出ているということも含めてですが。

ところで、これらはすべて、「どのようにすれば、自己責任が達成されるか」ということです。「あなたを信じて、あなたにお金を託した。後はよろしくお願いします」は、自己責任ではありません。信じたら裏切られます。

投資信託なら、信じて託していいです。なぜなら、過去にその投信がどんな売り買いをしたかというのは、公表されていますから。例えば、株式投資信託は、証券会社に売買手数料を稼がせるために無意味な売買を繰り返し、あっという間に元金を手数料に変えていくなんてことはできません。多くの人間がからんでいるから、そんなことしたら数万人規模の訴訟騒ぎになります。それに、投信はランキングが公表されていて、購入前に市場での評価が確認できます。それに対して、商品取引における外務員と顧客の関係は1対1です。外務員が不正を働かないかのチェックを顧客がたった一人で行わなくてはいけないのです。外務員の力量は誰にもわりません。それどころか目の前の外務員が、業界でも有名な客殺しのプロであっても、顧客にはわからないのです。そんな相手に売買を信じて託すというのは、狂気の沙汰です。なぜなら、その外務員が無意味な売買を繰り返し、顧客の金を巻き上げれば、会社に利益をもたらしたということになり、彼自身の評価は上がっていく世界なのですから。

「あまり客に損をさせると会社の評価がさがってしまうんじゃないか」などと思っている人がいるかもしれませんので、付け加えておきます。客が損をすることはトラブルではありません。客の損得なんか誰にもわからないんです。その証拠に顧客になる人は、どの会社がどれだけ客に常時儲けさせているかを確認して顧客になったわけではありません。他社との比較なんてゼロです。ただ、外務員のプッシュに圧倒されてその気になっただけです。だから、その後どのようなことがあろうと、会社は何の心配もないのです。

外務員は、投資のプロではありません。勧誘のプロです。勧誘のプロは勧誘のことしか知りません。それ以外に知っていることは、客の殺し方だけです。いかに合法的にお金を巻き上げるか、目先を変えて次々に注文をとることができるかといった能力を日夜磨いているプロなのです。

このようなシステムでは、いい外務員なんて存在しません。いたとしたら辞める前日の外務員です。いい外務員なんて、客殺しの通過点でみえる幻想です。

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