商品取引市場の問題


前年度末の顧客は、1000人。そして、本年度新規の顧客は、1000人。なのに年末の顧客は、やっぱり1000人。ちなみに従業員は、400人

標準的な商品取引の業者の姿です。

でも、1年で去っていく1000人の顧客は、どうなったのでしょうか。努力して示談にまで持ち込んだのが30人。裁判の決着待ちが7人とすると、あと940人余りは・・・。

常時、裁判を抱えているというのもこの業界の姿です。

これらは、日商協が、ディスクロージャーで企業別に全部公表しています。

日商協   日商協のディスクロージャー

市場が小さいゆえに起こる問題

商品取引の問題といえば、無断売買や仕切り拒否、そして出金拒否です。でも何も知らない人がこの話を聞いたときに起こす反応は、「まさか、そんなことがあるわけないじゃないの」です。「自分のお金で始めた投資をやめたいと思ったときにやめさせてくれないなんて話があるわけない」というのです。でも仕切り拒否は、この世界の常識です。

では、その理由を考えて見ましょう。一言で言えば、外務員が暇だからです。外務員は、一人の客を取るために、1ヶ月間、電話をかけ続けたのです。そして、やっと一人の客にめぐり合えたのです。多くの客を抱えていたら、ぐずぐず言う客とは早く縁を切って、もっと息のあった客と仕事をしたいと思うかもしれません。でも、客は1人なのですから、簡単に手放すわけにはいかないのです。

皆さんの経験から、考えてみてください。あのテレコール。「無差別の電話攻撃ではたして客が取れるのだろうか」とみなさん不思議に思うでしょう。そうです。あのテレコールで客になってくれる人は、1〜2ヶ月に1人しかいないのです。

さて、顧客が「もうやめたい」と言うと、外務員は続けるよう説得します。この時、外務員は、だいたいどれくらいの時間をこの説得にあてることができるのでしょうか。大げさに言えば、1ヶ月間「だめだめ。絶対に止めちゃだめ」と説得できる時間があるのです。それに対して顧客は仕事があるし、話が2時間にも及ぶと、根負けして「もう少し続けてみようか」と思ってしまうのです。しかも、実際には、外務員一人と顧客一人というよりも、次々と外務員が変わり、気が付いたら何人もの外務員を相手にしていたというのが普通です。目の前の外務員を説得しても、都合が悪くなると次の外務員がやってきます。するとまた、同じ話を繰り返すことになって・・・。これが取引の実態です。

外務員は、顧客の「もうやめたい」とか「仕切ってくれ」という言葉に対して、何時間でも、何日でも説得を行います。時によっては交換条件を出します。「それじゃあ、とうもろこしを仕切って、今度は、ガソリンで行きましょう。いやガソリンなら、すぐ、損は取り戻せます」なんて言います。外務員は、「一度でも入金させたら、びた一文出金させないぞ」という気持ちなんです。ただそれで終わるなら損害はたいしたことありません。実際には、外務員は、ずるずると新たな入金を要請します。それが追証であったり、両建てであったり、枚数を増やしたり、別の商品だったり・・・。そしてこれら一連の入金は、いつのまにか自分の意思で行った売買ということになってしまうのです。

この業界では、仕切りにしても、出金にしても、毅然とした態度で臨まなくてはなりません。そうしないと、外務員は、こちらの気持ちをわかってくれません。ところで毅然とした注文の出し方を紹介します。まず、最初に電話機とカセットテープレコーダーをつなぐ「電話録音アダプタ」を買います(電話録音アダプタは、インターネットで調べると2000円前後で売っています)。そして、録音の準備ができたら、次のような電話を入れます。「担当がおらん?おもしろい冗談やなあ。お前は、誰や。この電話は、録音しよるさかいに、そのつもりで、よー聞いいてや。ええか、聞き漏らしたら、お前の弁済かもしれへんで。明日の朝一番に全部手仕舞いや。20枚、全部や。録音の都合があるんで今の時間を言っとくしな。今は、○月○日午後4時15分30秒や。それからファックスも送るで。内容証明付きの郵便は書いとるけど、まだ出さん。『抽選で売れませんでした』なんていう電話かけてきたら、即、消セン(消費者センター)と日商協に電話入れるしな。この年忙しい時期に、弁護士さんのやっかいになるのもお互いめんどうやしなあ。くれぐれも言うとくけど、『売れました』以外の電話は、いらん。ほなさいなら」と言って電話を一方的に切ります。これが、この業界での「毅然とした態度での注文」です。

会社の立場からいえば、ガソリン1枚の売り買いで7600円の手数料です。ガソリン20枚の売り買いで、152000円の手数料収入にしかなりません。一人の顧客で何人もの人件費を出さなけれなならないのですから、1ヶ月で2回や3回の売り買いでは、到底間に合いません。ということで、売買の回数は際限なく増えていきます。仮に10回の売買なら手数料は、152万円です。最初にガソリン20枚、210万円ではじめた顧客に対して、枚数(建玉)を増やさせるか、売買回数を増やすかの別はあっても、投資額とほぼ同額の手数料を期待しているのです。相場が安定していれば、2回に1回は利益がでるはずです。でも、結果的に入金がかさんでいくのは、この手数料に食われてるのです。

先物被害者が振り返って気が付くことは、「何のことはない。人気のない賭場だったんだ」という事実です。閑散とした賭場におびき寄せられて、賭け方も知らずにのほほんとしている顧客に対して、何人もの外務員が取り囲み、「大丈夫、今度こそは、私の言うとおりに賭ければ戻ってくるから、お金を持ってきなさい」と言われて、その意味もわからず、最初の200万を取り戻したいという、ただそれだけのためにずるずるお金を持っていっただけなのです。

この市場は、合法的な詐欺です。商品取引の会社がしていることは、合法的な詐欺です。外務員がしていることは、合法的な詐欺です。(時々、しっぽをつかまれて詐欺も立証されているみたいですが)

すべては、市場が小さいことに起因します。何に比べて小さいのでしょうか。それは、会社に対して、顧客が少なすぎるのです。外務員に対して顧客が少なすぎるのです。もう少しはっきり言えば、外務員が、そして、会社が多すぎるのです。

だって、、一ヶ月当たりになおしたら、顧客より、従業員が多いなんておかしいでしょう。

被害者の立場

人間の心理は、簡単です。自分の思考の範囲を超えていることには、無感動になるのです。昔の人が言いました。「人が10人死んだら悲劇だけど、1万人死んだら、統計の数字に過ぎなくなると」

私たちは、「2円安いガソリンを満タン入れたら、缶ジュース代が浮いた」とか、そういう精神世界に住んでいます。でも免許を取って、初めてガソリンを入れるときは、ガソリンスタンドへの入り方がわからず値段どころではありませんでした。そんなことを経験しながら現在の金銭感覚を身に着けたのです。要するに1万円以内の買い物には、結構うるさい。人によっては、10円や20円の高い安いには、非常に敏感。そんな普通の人は、「今月中に5割増える」といわれ、300万円入金したら、その数時間後に「150万円は消えました。追証ください」などと言われても、理解できないのです。まず最初に、時間的な感覚です。あまりに早い変化についていけない。次に額の大きさです。その瞬間にあるのは、パニックです。

ところで、パニックになると、自分では救いを求めていても、とんでもないことをしでかすということはよくあります。要するに精神的に海でおぼれている状態と考えて見ましょう。

この事態、「300万円が数時間で150万円になって、追証」という状態で、あなたを救ってあげるという人は、世の中にただ一人しかいません。それは、目の前の外務員です。こういう状態では、すがってしまうのです。

だから、100万、200万、時には、1000万、2000万というお金を右から左にひょいひょいと出すのは、当たり前なんです。「あまりにも短い時間にあまりにも多くの金が消えていく」という事態に追い込めば、誰もが思考停止になってしまうのです。これは、日ごろ10円や20円のお金に対してはきちんとしている人間ほど陥りやすいわなです。

被害者は、金に目がくらんだわけではありません。欲深かったわけではありません。思っていたのは、「攻撃は最大の防御なり」の言葉どおりに「安全に財産を守りたい。それだけ儲かるという話なら、儲からなくても損はしないだろう」くらいのことです。また、真摯な外務員の態度に打たれて、「これほど熱心に言うのだから、万に一つの間違いもないだろう」です。単に、「友達になりたい」と思っただけかもしれません。あまりに簡単で信じられないような手口で巨額の被害が出るのをどう解釈するかは、心理学の分野です。人は、小さな嘘には、だまされません。大きな嘘だからだまされるのです。そして、最初のボタンの掛け違いに気付かず、何とかしようと努力することで、とんでもないことになっていくのです。

決して、先物被害者は、特別な人間ではありません。

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