イスラム銀行とは何か?

イスラム銀行とは、リバー(利子)を禁じたコーランの教え(イスラム法)に
基づいて、利子を取らない、または請求しない金融商品を提供する銀行です。

問題はこのリバー(利子)とは何か?ということになります。いまだイスラム
法学上の議論は90年代でも見解の対立が続いているほどで、簡単に答を出す
と怒られるかもしれませんが、簡単に言うと「融資と利子はいかんが、投資と
利潤(もうけ)はOK」という発想に立って、イスラム銀行は商いをやってい
るのです。これで無利子でも「やっていける」訳がわかりましたね。

 もう少し詳しく。ポイントは融資と投資は違うということです。
 世界を席巻したイスラム商人を生み出したイスラム教が利潤(もうけ)を禁
じている訳がありません。禁じているのは、アラビア語で「自己増殖する」と
の言葉から派生した「リバー」です。持っているだけで、何もしないで安穏と
してても儲かる、というのは許せないという発想です。
 融資と投資の違いを説明する場合、たいていはシェイクスピアの『ベニスの
商人』を引き合いに出すもの、と相場が決まってます(マルクスだってそうし
ました)。ご存じの通り、『ベニスの商人』では、商船に投資した富豪が、船
が沈没したため一夜にして巨額の債務者に転落します(これは《投資》で
す)。そして、その元富豪に《融資》した高利貸しのシャイロックが「担保」
として「お前の肉〇〇ポンドをよこせ」と要求する訳です。
 これは、投資と融資のギャップをめぐる話です。投資の方にはリスクがあ
り、儲かるかも知れませんが(つまり配当です)、大損するかもしれません。
対して融資は、かならず見返りがあります(これが利子です)。

 イスラム銀行は、リスクの負担のない「融資」をやりません。貸し手(銀
行)が元利を保証をされる一方で、借り手(事業者)だけがすべてリスクを負
うことは、イスラーム的公正の観念に反するからです。この意味で、イスラム
銀行はリバー(利子)をとらないのです。では、どうするか? 無利子金融で
は、共同事業の契約に関する法規定を活用します。資本提供者(銀行)と事業
者(借り手)を共同事業者です。事業が成功すれば、資本提供者は元本を回収
したうえ、儲けを事業者との間で、例えば折半します。失敗して損失が出た場
合は、資本提供者の配分もゼロで、元本さえ保証されません。リスクも両方が
負う訳です。

 元々は、キャラバン通商というリスクのあるイスラム商売について、7世紀
当時のアラビア半島のへジャス地方における商習慣の内容を神の名において定
式化したものです。イスラム教をはじめたムハマンド自身が、このキャラバン
頭をやってました(ちなみに彼の最初の奥さんは、その出資者でした)。

 イスラム銀行が流行る理由は2つ考えられます。ひとつは、イスラム世界に
はこれまで元本保証の融資と利子を嫌って、普通の銀行と取引しなかった人・
取引されなかったお金がかなりあったということ。もうひとつは、融資と投資
のギャップという金融システムがかかえる根本的問題を(貸し倒れや不良債
権、債権放棄など、あらゆる金融危機はこのギャップに由来します)、イスラ
ム銀行が最初からクリアーしていることです。このため非イスラム圏でも、こ
の仕組みが広範な支持と関心を集めているようです。
 

(追伸:こうした考えが基本とはなってはいますが、そこはそれ、現代のイス
ラーム金融では「零細資金提供者の資金元本だけは保証する」、「事業者から
はある程度の担保を取る」といった解釈が行われているようです。サウジアラ
ビアのイスラーム金融なんかは、事業が失敗して損失を生じたときは、その元
金のみの返済を求め、提供資金のコストと期待利益の回収は断念するという方
式が採用されています。また、投下資本の利潤が確定して初めて利率が計算で
きるという建前を取っているので、年度末に利率を決めることになっています
が、実際には予測と称して事前に利率を知らせることもあります。)

 
 

> 共同事業者として他人に喜捨する?という建前なんでしょうか。

「共同事業者」というのは、建前以上の意味があるみたいです。
なんとなれば、イスラム銀行は相手を(普通の意味では融資先を)
選ぶからです。

わかりやすい例だと、イスラムだから、養豚場にはお金を出さない(笑)。
いや、ほんとです。もうひとつ、利子を取ってるやつ(たとえば、
あるとすれば、サラ金なんか)には、やっぱりお金を出さない訳です。

ただ単にお金を渡しておまかせ、ではトンネル会社だったりして、
イスラム的には不本意なところに金が回ってしまうかも知れません。
「共同事業者」なれば、そうはいかない。

もう少し具体的な例でいうと、
ある会社が航空会社をやりたい。普通はその会社が銀行からお金を借りて、
元金+利子を返します。イスラム銀行の場合は、お金を渡すのではなしに、
イスラム銀行がかわりに飛行機をかって、それを会社にリースする(笑)。
つまり、極端に言うとモノで貸す訳ですね。
モノだから、ただ置いておいても自己増殖して増えたりしない。
きちんとモノを使って労働して、それで利益が出る。
儲からないかも知れないけど、そしたらしょうがない。
儲かったら払ってくれ、という感じです。

この「モノをからめる」というのと、「関係あってのお金」というのが、
地域通貨マインドっぽくて、その方面でも注目されているのです。
 

> イスラム銀行というシステムのもとでは
> ヘッジファンドのような“マネーゲーム”は起きないのですかね。
> そのへん実際的にはどうなんでしょうか。

すくなくとも、あらゆる金貸しがイスラム銀行になると、
マネーゲームはできなくなるのだと思います。
マネーゲームやるところにはイスラム銀行は金を渡さないし、
第一、金の形で渡さないので(笑)。

いわゆるマネーゲームの発端が、
イスラム諸国のオイル・ダラーが、ヨーロッパの銀行に流れ込んだことだと
思うと、とっても皮肉なことですが。

あるとき、金融先進地ロンドンのシティの金融当局者は
「イスラム・バンクのように相手を見て金を貸す、貸さないというのはだめだ。
それはウェスタン・バンク(西洋諸国の銀行)の基準に合わない」と文句を付けました。
何年かもめたあと、とあるサウジアラビアのイスラム銀行は、
お金を預金者に全部返してさっさと撤退してしまいました(笑)。
しかし、ただでは転ばぬイスラム銀行。それならば、とウェスタン・バンクを買収して、
これをイスラム風に変えてしまおうとしているそうです。
その会議をレバノンあたりでやっていて、そこにはエジプト、スーダンなどから
イスラムの賢者が集まって侃々諤々やってるのだそうです。