『ドキュメントごみ工場』 『ごみ処分』 などの著作がある江戸っ子の
津川敬さん(浅草生まれの本当の江戸弁)から、近々に「ガス化溶融
炉」に関するブックレットを出されます。

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 津川敬・著(書名未定?)

第1章 ガス化溶融炉で「ダイオキシンゼロ」にはならない

 ガス化溶融とはごみを焼くのではなく、高温で「溶かす」技術である。
次世代型と呼ばれているように通産省は2010年頃、ガス化溶融炉が全国シェアの30%を占めるものと予想している。
 ガス化溶融炉の分野には現在20以上のメーカーが参入して熾烈な開発競争を展開しているが、すでに新日鐵の高温溶融炉は10以上の自治体で稼働している。
 ガス化溶融炉には大まかに言って新日鐵のようにコークスを使うタイプと、熱分解炉プラス溶融炉のタイプがある。後者は三井造船のようなキルン型と荏原製作所のような流動床炉型に分かれている。
 なお、高温で溶融する技術はすでに産業廃棄物処理の分野でいくつか稼働している。その中の一つが97年に住民投票をやって住民側が勝ったにもかかわらず、宮崎県が営業許可を出してしまった同県小林市である。
 
<ガス化溶融炉の特徴-メーカーの言い分>
1 ごみは高温(1300〜1500度)で溶融するので、ダイオキシンは、ほぼ分解する。

2 溶融スラグ(真っ赤に焼けたごみを急に冷やすとできる鉱さい)が路盤材や建設資材に再利用できるので、焼却灰を埋める最終処分場の心配がなくなる。

3 どんなごみでも受け入れ可能。可燃ごみだけでなく、不燃(分別)ごみや蛍光灯や乾電池などの有害ごみも溶融することができる。
 冷蔵庫など1時間で溶かしてしまう。

<ガス化溶融炉の何が問題か>
1 ダイオキシンは高温で分解すると言うが、バグフィルターが必要だし、プラントによってはその後に触媒反応塔(塩化水素やダイオキシンを分解する物質が入っている箱)をつける場合もある。焼却飛灰と異なり、溶融飛灰のダイオキシンはガス状で、バグフィルターを通り抜けてしまうためである。

2 そのためランニングコストがかさむ。20年前、新日鐵の炉を入れた釜石市ではかなりのコストがかかっているが、その分処分場の延命につながった、と自己評価している。

3 ガス化溶融炉は入るごみのカロリーが低いと順調に稼働しない。NHKの「クローズアップ現代」によると、久喜宮代衛生組合では分別が進んでいたためメーカーが予想したごみ質より低かったので「ガス化溶融炉になじまない」との結論になったようである。また容器包装リサイクル法の本格実施でその他プラスチックの分別が進めば問題はさらに全国化するであろう。

4 できたスラグが路盤材として利用できるというが、灰溶融を実施している自治体では使い道がなくて山積みになっているのが実状だ。
 また日本ではスラグに含まれる有害重金属類の規制が緩く、溶出試験のやり方が甘いことは国際的にも知られている。日本は欧米と異なり「有害物質を含んでいても溶け出さなければいい」という考えになっている。これに対しアメリカやオランダでは「現実に想定できる最も過酷な条件下で溶出しうる量」を検出するという姿勢をとっている。

5 何でも放り込める、というのはごみを減量する、分別を徹底しリサイクルを進めようという世の中の流れに逆行するのではないか。

<まとめ>
1 ごみの分別、資源化・減量化の流れや、景気の低迷により、ごみが減った結果、東京23区など大規模な焼却施設をつくったところではごみが入らなくて困っている。こんな状況の中で、いくらでもごみが出ることを前提としたガス化溶融炉のような技術は「大型資源消滅型技術」と呼ぶべきで、資源循環型社会システムとは相容れないものである。またいったん導入すればランニングコストは嵩む一方であり、
 まさに「税金浪費型技術」なのである。

2 また各メーカーが行っている実証試験はあくまでモデル(模型)である。自治体に納入するのはその10倍以上の実機であり、規模拡大(スケールアップ)に伴う安全性は未解明である。

3 ダイオキシンを減らすには発生を抑制することが重要であり、ガス化溶融炉などの大型施設を建設すれば済むというものではない。今のところ、自治体は厚生省の示す数値をどうやって達成するかで頭がいっぱいだから、メーカーの宣伝に乗せられているだけなのである。
 どんな技術でも本稼働から最低5年経ってみないとその真価は分からない。現実には自治体が大規模ビジネス戦略のターゲットにされているだけである。導入するか否かは住民も交えた十分な議論が必要だろう。

4 厚生省が1日処理量100トン未満の焼却炉には国庫補助金を出さないという方針をだしているが、これは「いやがらせ」以外のなにものでもない。自治体の身の丈にあった小さな炉(当然8時間か16時間運転)でもごみの徹底分別、バグフィルター、触媒の取り付けなどでダイオキシンは十分規制値をクリアできる。

5 日本のごみ政策は企業に甘く、市民や自治体に大きな負担を強いているのが現状である。ドイツでは政府が徹底的に企業と対決し、彼らの責任を追及した末に政令や法改正を行った。市民はその姿勢をみて細かい分別にも進んで協力している。

6 このところPFI(プライベート・ファイナンス・イニシアティブ)といって、行政の仕事を民間企業にやらせる、という動きが自民党を中心に活発化し、日本版PFI法案も通った。これは80年代のはじめ、イギリスのサッチャー政権が行政の赤字対策として進めたものだが、日本ではごみ事業をまるごと民間企業にまかせようとの計画が予想以上のピッチで進められている。その中核技術がガス化溶融炉だ。
 PFIでは産廃との混焼は必至となる。一廃の減量傾向が避けられないからだ。これは非常に危険な動きであり、今後私たち市民が厳重に監視していく必要がある。
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