98年12月7日(月)週刊金曜日掲示板 投稿者 :佐佐木嘉則
メールアドレス:Y.Sasaki@unsw.edu.au
ホームページ :http://www.coara.or.jp/~pwaaidgp/honda.html
件名 :投稿削除の理由をお教えください

(末尾掲載)に対する返答

 佐々木 嘉則様、書き込みありがとうございます。ご返事が年末ということで忙しく遅くなって申しわけありませんでした。

 この書き込みに対しての事実認識で異論があります。単に批判といわれますが、「本多勝一ファンへ」というこの状態はインターネットというメディアを使った宣伝攻撃だと認識しています。 

 先ず第一点として法律上の問題があります。どこかで論議しているのは最低限いいとしても、外部に出て公然と、事実を適示して非難、宣伝攻撃しては問題だと思うのです。それは刑法230条1項の名誉毀損に当たるからです。 

 ここで本多勝一さんが現在も事実をねじ曲げて流すとかしていたら、第230条の2によって有名人で新聞記者ですから、公共の利害に関するものとして特例が適用されるところです。しかしこれは当時書いた『カンボジアの旅』が、情報の不足と思いこみで判断を間違えた箇所、ポルポト派への高い評価と虐殺の否定を、その後の深刻な状態を知りその誤りを直したのに、その修正の事実を表示しないという新聞記者としては問題が多い、意地っ張りというか、そういう態度に対する攻撃になっているものだということです。 

 正直言って私もこれまでも感じていますが、本多勝一さんにはそういうところがあります。これは認めざるを得ないところでしょう。しかし当時聞いたものに対してすでに2年間答えないことで態度表明は行動でもって示しているわけです。しかしほめられたことではなくても、これは内心の自由に関するものだというところです。 こうして事実関係を載せるというのは私がこうしているのでもおわかりの通り何も問題ありません。しかし問題がかなりあってもそれを公然と非難、ましてや宣伝攻撃してはならないのです。 

 刑法だけでは体制優位に寄りかかっての論点と取られたら困りますので、第二点目に、この名誉(内心の自由も名誉の一部と考えます。)や信用に対して宣伝攻撃してはならないということが、普遍性を持つものであることを示したいと思います。

 それは名誉や内心の自由を攻撃することが人権侵害に当たるということです。私たちは名誉や内心の自由を攻撃してはならないのです。近代はメディアの時代です。それを活用して権力者やナチス、ソ連政府によって多くの私事や性格や態度に関しての攻撃が行われました。

 サハロフは西側指向で憧れを抱いている、とか。ユダヤ人が金を取り扱い金を儲けている。ソルジェニーツインは作家で金をたくさん儲け、いい車を何台も持ち豪華な生活を送っている。信心深いだけの宗教人間だ、とか。これにデマがくっついていくわけです。

 今年制定50周年を迎えた世界人権宣言は現代史の第二次世界大戦での人権侵害を踏まえて国連総会により採択され、その12条には、「何人も…その名誉及び信用に対する攻撃を受けることはない。」と、明記されています。しかしその後も前記したとおり多くの人権侵害が行われたし進行中です。

 特に現代はマスコミが数々の攻撃をしています。

 そしてごく最近私たちは個人がかなりの発進力を持ちメディア能力を持つインターネットを手に入れました。明らかに新しい時代へと入ったのです。そういう時代であるからこそインターネットに参加する者は権力から自律し、かなり自覚して自律的に絶えず自らの行動をチェックする必要があるのではないでしょうか。私たちは自由にインターネットを楽しむと共に、インターネットを地球市民ネット・ブレインとして育てていく責務を一方で負っているのだと感じています。

 佐々木さんはメディアのこういう問題に対して興味を持っておられるということです。それならなおさらのことではないでしょうか。無批判にこういうことをされるのは理解ができません。

 三点目としてまったく別の観点ですが、以上書いたことにもかかわらず、人権侵害にならない程度に権力側に対して戦うために解釈を緩和することがあります。つまり争うわけですね。しかし今回のこれは敵対矛盾で反権力の動きなのでしょうか。だいたい公然と争うものなのでしょうか。

 実は必ず反権力側の陣営から本来は反権力側のはずの人が、反権力の活動をしている人たちの矛盾を敵対矛盾として攻撃する人が出てきます。私が同時代で経験したものでも、80年代始め「マルクス葬送論」(今の私も含めたマルクス思想観と時代が違います。ちなみに私は社会主義を信じたことはただの1回もありません。)、吉本隆明「反核異論」など。

 これらは権力と戦うのが大変だから攻撃しても大した反撃ができない反権力側の矛盾を攻撃するという日和見の動きだと考えています。勘違いの権力と対峙できない人たちの行動なのです。

 ちなみに、私は本多勝一さんの大江健三郎氏への公然とした攻撃をおかしいと思っています。これは前記した日和見とは違い、理論的な教条主義に偏りすぎて純粋さを求めて同じ陣営の矛盾を許容できず敵対攻撃する動きで、一種の内ゲバです。

 同陣営ならば矛盾を批判の自由は保ちつつ、相互矛盾として包容していくべきなのです。あらゆる矛盾と生きていくためのずるさを許すことができないのなら、私も含めて「人民は全て人民の敵として攻撃し処刑しなければならないハメになってしまう」(という内容です。手元にないので厳密ではありません。)わけです。これは貧困なる精神でかつて本多勝一氏が書いたことです。

 だいたいこういう論理から導き出される社会というのは恐るべき社会であってスターリン主義社会に近いでしょう。こういうやり方をしていると自分は正しく純粋なんだという独善に陥るのです。佐々木さんのやり方もアプローチは違っても同質だと思います。本多勝一さんへの攻撃に対して本多勝一さんの一番悪い部分のやり方をしているわけです。

 私はよく山の頂上論と言います。山の頂上というのは案外広くて何人も立てますし、いろんなルートからそこに上ってこれます。中には何百人などという広いところもあります。日本で一番尖った日本アルプスの槍岳だけでも1人だけということはありません。槍は少なすぎるかな。

 私は平等と共生と連帯の社会が必要であると思っています。そういう社会変革でなければ変革などゴミ箱に行けばいいのです。ぜひ佐々木さんにもやり方についてお考え願いたいと思います。あまりに偏狭で私が耐えられないと感じたのも削除した理由の一つです。それもまた一つの意見にすぎないじゃないかと言われればそれはその通りですが。

 掲示板に以上のようなことは書いて無いじゃないかと言われそうですが、何もかも書くことは難しいと思いますし、管理人の裁量に任せていただき、問われれば答えるというこういう形もやむを得ないと判断しています。これも又完全ではないが自分のできる範囲で、できるだけ努力していることをおわかりいただきたいのです。またインターネットの掲示板は個人単位で差し止めもできず、日常的に書いているものを見張るわけでもありません。比較的に書き込みがオープンなものです。これは雑誌などの投書欄とは大きく違うものであり、選択できないものだということです。それならば事後的に削除権も認められるべきメディアであると認識しています。

 以上が私の意見です。


○刑法

230条(名誉毀損)

 公然と事実を適示し、人の名誉を毀損した者は、その事実の有無にかかわらず、三年以下の懲役若しくは禁固又は50万以下の罰金に処する。

第230条の2(公共の利害に関する場合の特例)

 前条第一項の行為が公共の利害に関する事実に係わり、かつその目的が専ら公益を図ることにあったと認める場合には、事実の真否を判断し、事実であることの証明があったときはこれを罰しない。

2 前項の規定の適用については、公訴が提起されるに至っていない人の犯罪行為に関する事実は、公共の利害に関する事実と見なす。

3 前条第一項の行為が公務員又は公選による公務員の候補者に関する事実に係わる場合には、事実の真否を判断し、事実であることの証明があったときは、これを罰しない。

○世界人権宣言

第12条

1 何人も、その私事、家族、家庭、若しくは通信に対する専断的な干渉又はその名誉及び信用に対する攻撃を受けることはない。何人もこの干渉又は攻撃に対して法の保護を受ける権利を有する。


先週の金曜日(1998年12月4日)に、
「本多勝一ファン必見!:『カンボジア大虐殺』は、“まぼろし”?!」と題する投稿をこちらの掲示板にした者です。投稿の内容は、市民としての知る権利がメディアを送り出すジャーナリスト自身によっておびやかされている事実を報告するもので、

http://www.jca.ax.apc.org/aml/9811/9941.html

にあるものとほぼ同主旨です。

日曜日(1998年12月6日)の夜に再度掲示板を拝見しますと、その投稿が全文削除されていました。投稿にあたっては「中傷や口汚い攻撃は止めてください」
という注意書きを遵守し、確認済みの事実に基づき煽情的な表現を避けて冷静・客観的な記述・報告を心がけたつもりですが、どの点がまずかったのでしょうか。

因みに岩波書店刊『広辞苑』第3版によりますと、「ちゅうしょう(中傷):無実のことを言って他人の名誉を傷つけること。」とあります。

もとより「週刊金曜日奈良読者会」ホームページは私人の立場で開設しておられるサイトですので、その運営方針に関して部外者たる私がとやかく指図がましいことを申し上げられる立場にないことは重々承知いたしております。ただ、今後の参考までに削除の理由をお教えいただければ幸いです。もし
“『週刊金曜日』およびその関係者に関わるメディア批判は、事実関係の如何を問わず一切まかりならぬ”
というのがこちらの不文律でしたら、今後はそのご方針に抵触すると思われる投稿はこちらの掲示板にはいたしませんので、よろしくご教示いただきますようお願い申し上げます。

佐佐木拝

追記
もしこの投稿も削除処分になさるのであれば、お手数ですがその旨をY.Sasaki@unsw.edu.au宛にご一報ねがいたく存じます。


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