235をカスタマイズ


その1 道具としてのパソコン

江戸時代の町人にとって,「読み・書き・そろばん」は必須の常識であった。江戸時代の日本社会は,たぐいまれなる「文書社会」だった。例えば,「三行半を突きつける」というのは,離縁状を渡すということだが,たったの三行半ではあるが,渡すための離縁状が書けなければ話にならない。つまり,読み書きそろばんが出来なければ人に頼らなければならない。そこには上下関係も出来れば,人任せになるために隙が出来ることになる。少し器用に,間違いがないように世の中を渡って行く為にも,これらの技を習得することは必要なことだったのである。これが日本の近代化に貢献した,なんていわれている。

読み書きそろばんのうち,最初に広く機械化されたのが「そろばん」即ち計算の分野であった。電卓の登場は革新的な変化をこの分野にもたらした。しかも,電卓は見る間にダウンサイジングを成し遂げ,軽量安価な電卓が国境を越えて世界中に普及した。後進国に電卓をお土産に持って行くと喜ばれるなんて言われたのも過去の話,いまでは後進国がその電卓の生産国である。

パソコンはマイコンと呼ばれた当初,「そろばん」の延長にあった。つまり,高度な演算の可能な計算機として位置づけられた。ところが,このパソコンが文字を書いたり読んだりする道具として利用できるようになると,「よみ」「かき」の分野を大きく変えることになったのである。パソコンは,「読み書きそろばん」の全ての分野をカバーする道具だ。そして,データを恐るべき速さで処理し,また恐るべき分量の蓄積もする道具である。高スペック化とならんで通信端末としての優位性が増大し,ダウンサイジングが急速に進むと,パソコンは「外部脳」としてその役割を益々多く期待されるようになっていった。この傾向は今後も深刻なエネルギーと資源の危機が起こるまで続くことだろう。

我々が文房具をあれこれと使い分けているのと同様,パソコンで行う仕事にも得手不得手があるから,その特性を知ることは大切だ。例えば,走り書きのメモや,大きく拡げた鳥瞰図,一覧,図面などを眺める作業は,パソコンを使わない方が便利だと言われることが多い。また,文字認識力と筆記力とは別種の能力に属することから,書く作業をあまりパソコンに移行しすぎることで,生じうる困難も想定される。何をどの程度パソコンに委ねて行くかは,今後我々が実社会の中で考えて行かねばならない事である。


その2 235のカスタマイズ

ThinkPad 235 は,持ち運びに便利な,拡張性豊かなパソコンである。その優位性を活かして,いろいろな事が出来るPCである。僕の場合は,これまで次のようにカスタマイズして使っている。なお,ここでいうカスタマイズとは,パソコンをねじ回しで開けて改造するという性格のものではない。それがいけないとは思わないが,安全に道具として使うことを考え,僕の能力を考え,そして仕事の内容を考えれば,改造の必要は今のところ感じられないだけである。

1)三種の神器

ワープロ・表計算・データベースの3つは,ビジネスソフトの「三種の神器」である。僕の場合は,Microsoft Office 97 の基本ソフトパッケージをインストールして使っている。そこにはMicrosoft Word 97,Microsoft Excel 97, Microsoft Access 97 の3つが入っている。これらは基本的に職場のソフトと連携できるものであるから,職場と家庭,職場と出先との間を結びつける道具である。

2)通信ソフト&PCカード

通信ソフトは,僕の場合,パソコン通信用の NifTerm と,インターネット用のものとしてWindows 98に同梱される Microsoft Internet Explorer Ver.4 があれば,ことが足りる。外部との通信にはPCカードを接続するが,モジュラーケーブル経由で接続する場合と携帯電話から接続する場合とがある。モジュラーケーブル用には,従来から使っている,MEGAHERTZ社のXジャック式のモデムカードが活躍する。Xジャックは10Jタイプのモジュラージャック(アメリカ・日本など広く使われている)に対応するもので,国内外での使用に耐えうる上,小電力設計である。他方,携帯電話用のカードには,SUNTAC社のデジタルデータ・ファクスカード(DS96CFZ)を使っている。このカードは,携帯電話の会社や機種をあまり選ばず,幅広く対応しているのが特長だが,反面,やや高価なのが難点だ。僕は契約電話会社の関係から,選択の余地が狭く,このカードを使うことになった。携帯電話のデータ通信速度は平成11年1月現在,9600bpsで,この速度でインターネットを使うことがあるとすれば,メールチェック以外なら,余程の緊急事態の場合だけだろう。日常,基本的に,235で通信をする機会は余りない。しかし,旅行に出かけた場合に,快適な通信を行えるのは有り難いことだ。なお,SUNTAC社のカードに同梱のFAXソフトも実用的で使い勝手がよいので,インストールしてある。

3)エディター

電車の中で文章を書く機会は結構多い。それは仕事の準備であったり,勉強であったり,単に旅行記を書くことだったりいろいろであるが,気軽に文章が打てる環境は具わっていた方が便利である。アイディアや断想とでもいうべき思考のかけらは,蓄積したいものである。ただ,ワードは使い慣れているものの,立ち上がりに要する時間も消費電力も大きく,移動中の使用にはリスクが伴う。アイディアはその間に雲消霧散してしまうかもしれない。そこで,軽便なエディターの導入をはかった。

選んだソフトはフリーウェア・ソフトの Story Editor Win95 Ver2.26(Motokazu Sekine氏作)である。これはいわゆるアウトラインプロセッサで,階層構造で文書を管理でき,階層構造の変更,移動,削除なども容易である。特に物語を作る場合を想定してつくられたもののようだ。フォントやフォントサイズの変更が出来,出来たファイルをプレーン・テキスト・ファイル,RTFフォーマット・ファイルとして書き出せるなど外部との連携がはかられているのが便利である。

このソフトを使うに際して,フォントは12ポイントにした。その方が目に優しいからである。そうやって思いつくままを書いて出来た幾つかのファイルは,いずれ体系だったまとめを要する場面で大きな助けになりそうである。

4)IMEとフォント

僕は中国語の文章も読み書きすることがある。そこで,中国語の入力環境と表示環境(フォント)を整えた。いずれもマイクロソフト社の配布するものであるが,Windows 98は多言語をサポートするので,あまり問題なく使えている。なおダウンロードしたフォントはインターネットエクスプローラのページにある多言語サポート・コンポーネントのうち,簡体字(大陸の文字)フォントと繁体字(台湾や香港の文字)フォント,IMEは,マイクロソフト社の「Microsoft Pinyin IME(中国語名,微軟pin音輸入法=大陸用のIME)」 だが,後者のIMEは,中国語版Windowsの為に開発されたものなので,日本でサポートされないのが難点である。

日本語のIMEは,MS-IMEをATOKライクにカスタマイズして使用している。僕にはジャストシステム社のATOKのほうが断然使いやすいが,MS-IMEも随分使い勝手がよくなった。MS-IMEの最大の難点は,変換を選択するウィンドウで,過去の変換が頻度順に表示されない事だと思う。

これで,中国語による読み書きが235で実現した。ワードやインターネットエクスプローラを中国語化したことで,多少の便利さが加わったのである。

なお,僕は従来から,大陸のGB(国標)コードで作成されたテキストファイルによる電子新聞の配布を受けている。今のところこれを出先で読む機会がないが,必要なら,在外中国人が開発した簡便なエディター或いはビューワを組み込む予定である。

5)圧縮&解凍ツール

ソフトの圧縮と解凍は必要に応じて出来るようにしてある。インストールに必要な場合も多いし,最近はメールにファイルが添付される場合,する必要がある場合も多くなったからである。

解凍ソフトは,LHa extractor "Lhasa" ver0.11(竹村嘉人=たけちん氏作成)を導入している。Lhasa(ラサ)は,LHA形式の圧縮ファイルに対応し,ドラッグ&ドロップで簡単に解凍してくれる便利なソフトである。また,圧縮ソフトとしては,「弥生 v2.5 Complete」(Unos氏作成)を使っている。このソフトはLZH 形式でのファイル圧縮専用ソフトで,LHA書庫の生成や自動解凍書庫の生成が簡単にできるのが特長であろう。

6)CPUクーラー

スペックの所でも触れているが,235は放熱のためのファンを持たないPCである。ビジネス・ソフトを使っている場合に,熱はあまり問題にならないが,CPUに負担を掛けると発熱量は結構馬鹿にならない(特にゲームソフトを使う場合には放熱量が相当になるらしい)。熱の拡散と冷却をはかるには,外部ファンをつけるのが最も効果的で,バード電子が開発したモーターファン搭載のアルミ製放熱器が最も評判がよくしかも235に対応している。しかしこのファンはマウスポートから電源を供給するので,移動中に使うことを第一に考えている僕の場合は必要が感じられない。

ところが最近,こういう外部電源によらず,ソフトでCPUの働きをコントロールするCPUクーラー・ソフトなるものがあるのを知った。しかも,CPUの動作をコントロールするのだから,バッテリーの持続時間も変化するという。この手のソフトとしては,Cpuidleというドイツ人が作ったソフト(http://www.stud.uni-hannover.de/~goetz),またこれ以外に,台湾人が開発したWaterfallとRain(いずれもYiHong Software Deveopment Corporation)の2つが知られている。CpuidleとWaterfallはシェアウェアだが,Rainはフリーウェアであり,ソフトのサイズも小さいので,目下これを使っている。ダウンロードサイトは,http://cpu.simplenet.com/files.htm である。またWaterfallの説明,或いはWaterfallとRainの比較などは,http://cpu.simplenet.com/leading_wintech/に集中している。

僕が使用しているのはRain 1.0 であるが,Rainは今後バージョンアップする予定がないようで,シェアウェアのWaterfallに統一されるように思われる。使用感として一つ気になるのが,IMEを使って日本語文を打っている場合に,文字を未変換のまま確定してしまうケースが見受けられることで,これは或いはRainによるCPU制御の影響ではないかと思われるが,はっきりしたらここに書いてみたいと思う。


以上,道具としてのパソコンについての考え方と,実際のカスタマイズについて記してみた。なお,プリントアウトについては,必要な場合にポータブルのプリンターを持ち出す場合もあるが,基本は,ファイルをフロッピーに落とし,自宅や職場のパソコンで利用するスタイルである。

お読みになって聊かでもご参考になれば,幸いである。


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