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1998年05月15日号 (No.187)


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NO.187> 大槻則一さんの『インド・レポート』
==== FROM THE EDIT.(NO.187,98/5/15) ===============================

 ◆大槻則一さんの『インド・レポート』

 ●核実験強行と重なりタイムりーな出版

 ジャーナリストの大槻則一さんが去る3月,昨年の『南アレポート』に次いで,
今年は『インド・レポート』をまとめた。

 これまで日本人のインドへの感心は低かった。
 「インド独立以来,社会主義的な手法による国内経済の復興に努め…外交的には
非同盟政策を採りながらも,対中国との関係から,旧ソ連との関係を強めていた。
こうした外交姿勢もあって,日本との関係も太いものはなかった」からだ。

 日本の広さ・人口と比較して,ともに約9倍というインドは,「東南アジアと中
東のちょうど中間に位置し,両方の世界を均等に見比べることのできる地理的な優
位性をもっている…この点を考えると,日本にとって,インドは外交的にも重要な
位置づけを行い,再評価する時点にきている」という。
 「核実験の強行」なども重なり,タイムリーな出版となった。

 ●「セポイの反乱」はなかった!

 大槻さんのレポートを手にして,われわれの周辺に溢れている著名な多くの歴史
書や教科書,それに基づいて形成されてきたわれわれの固定観念が,知らぬ間にど
れだけ英米などの「西洋中心主義的」で一方的な歴史観に汚されているかを改めて
思い知らされる。

 有名な大事件に「セポイの反乱」というのがある。大槻さんはインドではそのよ
うな表現は為されていないことを発見した。この指摘は大槻さんが初めてであろう。

 ご当地では単に「1857年大反乱」であり,「より国内の歴史過程での位置づけが
重視されていることがわかった」という。

 「セポイの反乱」は,イギリスの歴史書がひろめた事件名であった。レポートの
『歴史編』では,このあたりの研究成果が取り入れられ充実している。

 ちなみに,「1857年の大反乱を経過して後,直接的な英国植民地支配が始まり,
大規模,かつ組織的なインド収奪が始まった」。

 イギリスが「インドに対し何をやり,何をやらなかったか」を,欧米の「近代主
義史観」からではなく,植民地化された側から捉え直す必要性をこの『レポート』
は迫っている。

 「近代主義史観」に寄りかかってきたが故に,今日の「通貨戦争」を“単なる経
済現象”に矮小化したり,マネーが全権を掌握した時代の「植民地収奪戦争」であ
ることへのリアルな認識が欠け,激しく進行する圧倒的な現実の前で,「あきらめ
」や「無力感」,または逆に起きていることの「迎合・追認」が支配する結果にな
っている。

 さらに,『21世紀を展望する』という章で,「インド人がもっている死生観にも
注目する必要がある」と大槻さんは指摘する。

 行き詰まった“欧米的価値観”一辺倒を脱却し,「混迷した時代を乗り切るエネ
ルギー源のひとつ」として,インド独特の歴史哲学にも注目する必要性が感じられ
る。

 残念なのは,今回も市販するために作成されていないことだ。
 国会図書館などいくつかの図書館に寄贈するためのもので,多くの人の目に触れ
にくいことである。
 正式なタイトルは『インドにおける貿易・投資の促進及びインフラ整備等産業開
発に関する調査研究』となっている。■


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NO.187> 世界単一通貨の名前は決まっている
==== 通貨戦争  (NO.187,98/5/15) ====================================

 ◆世界単一通貨の名前は決まっている

 ●「ウェルナー・プラン」

 欧州単一通貨の名前は「ユーロ」だが,最終的な世界単一通貨の名前まですでに
決まっているということをご存知の方も多いであろう。
 その名は「モンド」と言い,「世界」という意味のフランス語だ。

 これほどのことを,われわれのあずかり知らないところでどこに諮ることなく勝
手に決めるのが,いかにも「西欧文明」流だ。

 だれが決めたのかというと,「ユーロの父」と言われる元ルクセンブルグの首相
ピエール・ウェルナー氏(84歳)で,『ウェルナー・プラン』と呼ばれる構想の中
で決められている。

 4月末から5月にかけて開かれた一連の『欧州連合(EU)』会議で「ユーロ発足
」が正式に決定し,ウェルナー氏はルクセンブルグ北部の自宅で友人達と祝杯を上
げ,「私の最大の政治的関心事の一つが実現する日に立ち会えることができ,うれ
しい」と語っている。

 『ウェルナー・プラン』では,「世界の通貨体制をドルとユーロが引っ張り,し
かる後にロシアを中心とするルーブルと中国・日本圏という少数の通貨圏をまとめ,
最終的に世界通貨『モンド』を導入する」となっている。

 それがいいのか悪いのかという議論は一切なく、良かろうが悪かろうが「これを
やる」ということなのだ。

 「単なる夢物語」と一笑にふすことなかれ。
 彼が現役首相であった1970年,「欧州統一通貨」を語った時,だれからももっぱ
ら「夢物語」で片づけられていたからだ。アメリカがベトナム戦争の泥沼にはまり,
ドルの価値がグラグラに揺らいでいた時期であった。

 ●地球支配のヨーロッパの意志

 「ユーロ」の背景に,「地球支配のヨーロッパの意志」があることはすでに多く
を語る必要はないであろう。
 「アジア金融危機」を目の当たりにした昨今,ましてや「ユーロ」発足のカウン
トダウンが始まった今となっては,「今日における西欧文明が生み出したもっとも
ダイナミックなシステムを伴う地球支配の道具がマネーである」などと言っても,
今や取り立てて違和感を感じる人は少ないであろう。

 単に欧州の統一通貨が必要であれば,これまで実際に行ってきたように,すでに
存在する便利な「国際通貨ドル」を有効活用すれば済む。しかし,「ドル」に決定
的に欠けているのが「地球支配のヨーロッパの意志」であろう。

 「国際通貨」とは,「力と支配の意志の形容である」と言ったとしても,「偏見
」でも「特定の思想的立場」の認識でもない。ただ単に,重要な歴史的事実を見落
としていないだけである。

 ●17世紀初までは中国銭が「国際通貨」

 17世紀初頭までの「アジア交易圏」では,中国冊封体制の下,中国銭が「国際通
貨」であった。
 それまで長い間,日本列島で流通してきた主要な通貨は,今風にいえば「メイド
イン・チャイナ」の貨幣で,主として『永楽銭』であった。

 名実ともに日本は,中国の先進文明の恩恵に浴すため,冊封体制に組み込まれて
きた。
 国産の通貨が流通するようになるのは,ようやく1636年(寛永13),徳川幕府の
『寛永通宝』の鋳造まで待たなければならなかった。

 日本列島で独自の通貨が鋳造されるようになったことの重大な意味を,どんな歴
史書や教科書もきちんと触れていない。
 独自に通貨を鋳造できるようになって初めて日本列島は,中国の冊封体制から離
脱することができた。

 実に,日本の「脱亜」はここに始まる。
 しかし,どんな教科書もその視点が欠落し,「西欧的歴史観」に揃えるため,「
脱亜」を明治維新まで待たせるという歪みを修正できないできた。

 そのかわり,「鎖国」などという19世紀初期に登場した「政治用語」を,その前
提抜きに使用するという過ちを犯し続けてきた。

 この過ちに染まったまま,今日の「開明派」をきどる「民主的」な知識人などが,
安易に「日本人の閉鎖性」をあげつらう根拠として「鎖国」を云々することになる。

 これではリアルな歴史像に迫れるはずがない。

 ●江戸時代,人々は生き生きしていた

 想像するに,「江戸時代」に生きた人々は,今よりもズット生き生きとしていた
のではないか。
 後の時代の人間が,「鎖国」などと勝手なことを言って,「停滞的な時代イメー
ジ」を作り上げたのだ。

 中国の冊封体制からの離脱が可能になったということは,その他の基本的な文物
を日本列島内部で生産し,供給することが可能になったことも意味した。今日,日
本が誇る工業テクノロジーの基盤が形成されたのも,このころであった。

 しかし,逆に中国を筆頭にアジアは日本の文物,特に金,銀,銅といった貨幣の
原料を必要とした。このため,幕府の「禁止令」にもかかわらず,それらが日本列
島から滔々と流出(交易)し続けた。
 その交易を幕府が阻止することに成功するのもようやく19世紀になってからであ
った。

 「東アジア交易圏」の活発な交易状況の実態から当時の日本列島を眺めれば,「
鎖国」などといった事実はどこにも存在せず,列島内では「脱亜」の懸命な営みが
様々な新しい産業を生み出していったことがよくわかる。

 ●イギリス産業革命も「脱亜」の所産

 同じ時期,イギリスを筆頭とするヨーロッパも日本と同様の「脱亜」に向けて邁
進した。
 それまで,文明的には後進的で,文化的なものが乏しかった中世ヨーロッパ諸国
(着る物といえば獣皮か羊毛くらいしかない)は,インドの綿,中国の絹,お茶,
陶器,日本の金,銀,銅,インドネシアのチョウジなどなどの,アジアのモノをは
じめ先進技術を必死になって求めてきた。

 イギリスの産業革命は,アジアの物産を自前で生産するための「脱亜」の所産で
あり,その帰結であった。
 話が大幅にそれたが,「ユーロ」に戻る。

 通貨統合など一体だれが必要としているのか。
 ヨーロッパの市井の人々はもちろん,アジアのどんな人々もそれを必要としたこ
となど一度もない。EU域内の「自由化」は進んでいるが,一方では地域の独立性を
望むヨーロッパの人々の意識も高まりを見せている。

 社会慣行や経済構造などの“古い体質”はアジアの専売特許ではない。
 ヨーロッパの“体質”も頑固な古さを存分に残していることは周知の事実である。
それはそれで放って置けばいいだけのことなのだが,それこそが「統合」にとって
厄介な問題なのだ。

 「西欧文明の奇形児」であり,冷戦の崩壊で最前線を失った「パックス・アメリ
カーナ」の行き詰まりはもはや覆うべくもない。“新大陸”アメリカの時代は終わ
った。

 これを受けて,「ヨーロッパの近代化」,すなわち“旧大陸”ヨーロッパを“新
生大陸”に脱皮させようというのが「ユーロ」誕生の希望であろう。

 そのためには,「上手くいくところだけが上手くいけば良く,取り残されるとこ
ろがでてきても構っちゃいられない」というのが本音であろう。

 ●欧州市場地図が激変

 フランクフルト,パリ両市場などは少しでも優位を確保しようと動き出している。
 ロンドンは「国際金融センター」としての地位を維持しようと躍起になっており,
今後は欧州域内の金融面での主導権争いが激化するのは必至だ。

 ドイツ連邦国債(10年物)は「ユーロの長期金利の指標銘柄」となることが確実
視されている。
 同国債はこれまで『ロンドン国際金融先物取引所』が他の市場を圧倒していた。
しかし昨年あたりから,『ドイツ先物取引所』が取引時間延長などで利用者確保に
乗り出し,今年に入ってついに取引高で首位の座を奪還した。

 また,『フランス国際金融先物取引所』もユーロ関連の商品開発を急ぎ,デリバ
ティブ分野での主導権を得ようと必死だ。

 ユーロ建て債権市場は,流動性が高くなることや,為替変動リスクが少なくなる
ことを追い風に,米ドル建て債券市場に匹敵する一大市場になる。

 一方,英国を含む15ヶ国の通貨が統合された場合,1日あたりのロンドンで取引
されているマネー取引の約10%分(460億ドル)が消滅するわけで,その他の外為市
場においても取引高は激減もしくは消滅することになる。

 これらはまったく新しい現象で,“新生大陸”への実験はすでに走り出している。
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NO.187> 東京の機能マヒに挑む国際ハッカー集団
==== WORLD  (NO.187,98/5/15) ======================================

 ◆東京の機能マヒに挑む国際ハッカー集団

 国際ハッカー集団が,米国防総省のネットワークから不法取得した機密ソフトを,
インターネット上に掲示するという事件が4月22日発生した。
 このハッカー集団は米,英,露のコンピュータ技術者15人によって構成されてい
るという。

 今回,同グループが公開したのは,国防総省のネットワーク上の機器を遠隔地か
ら管理,操作するためのソフトで,およそ半年前に入手したものだという。

 米軍関係者もこの事実を認めているが,現在はセキュリティー強化措置が取られ
ているものの,入手直後は国防総省のネットワーク機器を停止させ,ネットワーク
の機能を混乱させることも可能だったという。

 このハッカー集団は「自分たちの行為は単なる技術的な挑戦で,機密ソフトや情
報を悪用するつもりはない。米軍のネットワークに進入することを証明できたので,
現在は欧州やアジアのネットワークに挑戦中である」という。特に日本に強い関心
を示しており,「その気になれば,東京の都市機能をマヒさせることができること
を証明したい」としている。

 ◆世銀エコノミストが市場万能主義を反省

 日本やその他アジア諸国の経済をズタズタにする後押しをした後で,「何をいま
さら!」と腹立たしく思う発言が,世界銀行のエコノミストから飛び出した。

 「規制が多すぎたためではなく,少なすぎたためにアジア危機は起きた。われわ
れは今では,金融市場の過度の自由化は同様の結果を招く可能性が大きいことを承
知している」。さらに,市場の安定には「ある程度の介入も必要だ」というのだ。

 これは世銀主任エコノミストのジョゼフ・スティグリッツ氏が,ドイツの週刊誌
『ツァイト』に語ったもので,23日発売の同誌にインタビュー記事が掲載された。

 同氏は,「完璧に機能する市場が正しいとするイデオロギーのためにわれわれが
困難に陥ったということを,人々は認識しつつある」と語っている。

 また,東南アジアの一部政府当局者が,「海外投機筋が通貨暴落を招いた疑いが
ある」と主張してきたが,世銀は「危機のために国際資本市場の開放が阻害されて
はならない」との立場に固執した。これについては明確に,「行き過ぎだった可能
性がある」と答えている。

 今年1月,FRB議長グリーンスパンが発した,「アジア諸国の経済が破綻したこと
は,市場主義的欧米型資本主義が重商主義的アジア型資本主義に大勝利した」,そ
れは「社会主義国家崩壊を緩やかな形で再現したような出来事だった」とし,冷戦
崩壊に匹敵するとする「戦争」であったという“勝利の雄叫び”を思い出さずには
いられない。

 グリーンスパンの忠実な“子分”ルービン米財務長官は24日,シカゴで「昨年12
月の(危機)段階は過ぎた。多くの進歩がみられる」と語り,スティグリッツ氏の
「反省」などどこ吹く風。日本が発表した総合経済対策については「大規模な措置
」と歓迎しつつも,「迅速な実施と,さらなる規制撤廃や市場開放が必要だ」と注
文をつける始末だ。

 また,IMFのミスリードに引っかき回されて不要な「危機」におとしめられた韓国
については,「経済の軌道修正にはかなりの時間が必要。困難な状況が続こう」と
語り,他人事の姿勢に終始している。

 ◆日本へのひどい仕打ちは誤り

 「米国が日中両国と友好関係を培うことは重要だとしながらも,どちらの国が米
国にとって真の戦略パートナーであるかという点に留意することが同時に重要であ
る。

…中国は独裁制を維持し,世界における米国の影響力を弱めることに専念している
のに対し,日本は民主主義国として,ほとんどあらゆる局面で米国を支持してきた。

…日本は米国と目標を共有し,民主化推進,安全保障,貧困国の経済問題など,米
国が支援する政策に貢献してきた」。

 これは5月5日付『ワシントン・ポスト』の社説の抜粋である。
 同紙2日付で,「米国は,もはや日本をパートナーとはみなしていないことを伝
えるべきだ」とする,『ブルッキングズ研究所』のエドワード・リンカーン上級研
究員の論文を掲載したが,このような意見に否定的な見解を示した。

 ◆「世界競争力報告」が日本を18位に格下げ

 スイスに本部がある欧州の有力ビジネススクール『国際経営開発研究所』(IMD)
は,恒例の「世界競争力報告1998」を4月22日発表した。
 それによると,昨年9位であった日本は18位と大きく後退。

 調査は46カ国・地域を対象に,「国内経済」「国際性」「人的資源」など8部門,
259項目を審査するもので,5年前には総合で2位にランクされていた日本は,年々
ランクを落としており,部門別で見ると,「科学・技術」で2位を今なお堅持して
いるものの,株式市場のダイナミズム,銀行の効率性など「金融」で昨年5位から
23位に,企業行動,労働コストなど「管理」で7位から24位に,「国内経済」では
6位から15位に転落している。
 一方米国は,民営化,規制撤廃,労働市場の柔軟性のほか,技術革新分野への大
規模な投資が高く評価され,昨年に引き続きトップとなっている。

 2位と3位は昨年と同様シンガポール,香港の順となっており,以下オランダ(
6),フィンランド(4),ノルウェー(5),スイス(7),デンマーク(8),
ルクセンブルグ(12),カナダ(10)の順になっている(カッコ内は昨年の順位)。

 ◆華人圏のビジネスリスクが低下

 香港に本部がある『政治経済リスク・コンサルタンシー』(PERC)が,このほど
シンガポールで発表した調査報告によると,アジアでもっともビジネスリスクが低
いのはシンガポール,香港,日本で,逆にリスクが高いのはベトナム,インドネシ
ア,インドであるという。

 同報告は「華人圏のリスクが低下し,ASEAN加盟国のリスクが増大したのが最大の
変化だ」としている。

 ASEAN諸国は昨年半ばから経済危機に見舞われているが,「ファンダメンタルズの
強さでこれを克服したシンガポールが最もリスクの低い国」とされ,続いて香港,
日本,台湾,中国,マレーシア,韓国,フィリピン,タイ,インド,インドネシア,
ベトナムの順になっている。■


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NO.187> 外国企業の北京撤退が急増
==== CHINA  (NO.187,98/5/15) =======================================

 ◆外国企業の北京撤退が急増

 北京市における外国企業の撤退が昨年以来急増している。
 「昨年1年間で北京市に事務所登録した外国企業652社のうち,登録を取り消した
企業は437社に上り,今年1〜2月,さらに33社が取り消し,合計すると新規登録企
業の72%が取り消した」。

 これは,北京市対外経済貿易委員会の統計として,中国中央テレビが4月21日報
じたもので,東南アジア諸国や韓国などの企業が相次いで撤退していることから,
昨年からの「アジア金融危機」の余波が中国にも及んだものであろうが,中国の国
内投資環境が整っていないことも撤退に拍車をかけていると見られる。

 ◆マルチ・ビジネスを全面禁止

 アムウェイ,エイボン,メアリー・ケイ,タッパーウェア,サラ・リーといった
米大手の消費者直販(MLM)会社は,中国で独自の販売チャンネルに乗せるための商
品製造工場建設に1億5,000万ドル以上の投資を行い,年間20億ドルを超す売上げを
上げるまでに急成長してきた。また,これらの会社は数十万人の雇用を創出してい
るといわれている。

 ところが,中国国務院は4月22日付『政府公報』で,あらゆる形態のMLMビジネス
を中国国内にお 「て禁止することを通知した。そして,すでに事業を展開中の企業
に対して,10月31日までに同分野から撤退するよう通知した。

 この決定が公表されたのは,バシェフスキー米通商代表部代表が,中国側通商担
当者と,中国のWTO加盟問題,6月のクリントン訪中関連問題を協議するために北京
に向かう途上であった。

 北京に到着したバシェフスキーは24日,記者会見で,「直販企業は中国に1億2,00
0万ドル以上の投資を行っている。できるだけ早期にこれら企業の営業を再開させる
べきだ」と語った。

 さらに,このところ中国で横行している非合法なねずみ講まがいの商法とMLMビジ
ネスとを区別するよう中国国務院を説得するため,アムウェイなど3社が呉儀国務
委員と会談する予定であることを明らかにした。

 この無店舗販売禁止措置導入の結果,湖南省の張家界では28日,暴動事件が発生
した。
 無店舗販売会社に投資したおよそ100人が,転売目的で購入した商品を処分しきれ
ず,また商品の引き取りも拒否され,怒りをぶちまけた。

 ◆急増するコメ輸出と不吉な報告書

 北京の業界筋によると,中国のコメ生産高は昨年1億9,800万トン,今年は2億ト
ンと予想されている。現在の在庫量は3,000万トン以上と推定され,かなりの輸出余
力があるという。

 今年中国は,コメの輸出目標を200万トンとしている(昨年の輸出量は93万9,310
トン)が,国家税務総局が24日発表したところによると,今年1〜3月までのコメ
輸出は36万4,501トンとなり,前年同期比349%の急増となった。これは,主として
インドネシアとフィリピンからの需要増が背景にあったという。

 すでに4〜8月積みで,30万トンを超える輸出契約を結んでいることもあって,
今年の目標達成は可能であるとみられている。

 ところが,北京の業界筋が語る現状とは裏腹の不吉な報告書が22日発表された。
 「中国が都市部や工業地帯での水需要の飛躍的な増大から,慢性的な水不足に陥
っている。特に,工業に比べ生産性の低い農業には水が行き渡らない傾向が強く,
水不足による不作で中国が穀物輸入を増大させれば,穀物相場が上昇し,世界の穀
物輸入国の政治的安定にも影響を与えかねない」というもので,米有力シンクタン
クの『ワールドウオッチ研究所』が発表したもの。

 報告書によれば,「慢性的な水不足は需要の急増による河川の水や地下水の減少
が主因で,現在の617都市のうち約300都市が水不足となっている。しかも水需要は20
30年には住宅地帯で現在の約4.3倍,工業地帯で約5.2倍に増える」とみている。

 農業地帯の事態はより深刻で,同じ1,000トンの水が生産に必要な小麦1トンと工
業品の市場価格は,それぞれ約200ドル,1万4,000ドルと70倍の開きがある。

 このため農業分野への水の供給は慢性的に不足しており,これに干ばつが加われ
ば,穀物生産が大打撃を被る。

 しかし,仮に穀物輸入を増やしても,1日1ドル程度の所得で生活する多くの国
民には行き渡らない公算が大きい。

 このため,鉄鋼1トンの生産に,日・米の4〜9倍もの水を使っている工場での
水利用の非効率性を改善することや,水道料金引き上げによる都市部の水の浪費防
止などが必要になるという。

 ◆人民元切り下げ圧力が緩和?

 アジア地域の通貨下落の煽りで,中国の輸出と外国投資に悪影響がでるとの観測
から,人民元の「切り下げ」が云々されてきた。しかし,今のところその水準は維
持され,懸念された輸出は実際には堅調な伸びを示している。このため,当面は人
民元への切り下げ圧力は緩和されている。

 24日に発表された公式統計によれば,第1・四半期の輸出額は前年同期比13.2%
増の402億4,000万ドルで,輸入は同2.7%増にとどまり,貿易黒字は同59%増の100
億6,000万ドルとなっている。

 ◆銀行の不良債権整理に着手

 今年1月,中国の中央銀行である『人民銀行』の戴相竜行長(総裁)は,「期限
を過ぎた債権が,貸出総額の25%にのぼる」ことを明らかにした。それまで,中国
の銀行は「巨額の不良債権を抱えている」といわれてきたが,実際の資産状況は不
明であった。

 5月5日,広東省で開かれた会議で戴行長は,「各銀行に対する監査をまず5月
から7月にかけて広東省内で実施し,8月から全国に広げ,年内に終了する」と明
言した。これは,昨年末の『全国金融工作会議』で決定した,「3年以内に金融制
度を改革する方針」に基づく措置であった。

 中国の銀行ではこれまで融資の期限管理しか行っていなかったが,国際基準に沿
って金融資産を「正常,期限超過,滞留,焦げ付き」の4種類に分類し,融資先の
リスク管理を「正常,配慮,注意,危険,損失」の5段階に分類する新しい管理方
法を適用することになった。■


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NO.187> 殺人的16分音符の6連符フレーズ
==== 駅の発車音  (NO.187,98/5/15) ===================================

 ◆殺人的16分音符の6連符フレーズ

 普通,駅の発車音など,気にすることもなく流されてしまっているが,改めて耳
をそばだてみると,生活の中に様々な音が導入されていることがわかる。
 「導入の意図」の検討にまで遡る必要があるだろう。

 『週刊朝日』(5月1日付)の,「中央線で自殺多発は駅音楽のせい!?」という
記事はその後,他紙でも後追い記事が出て,すでにかなり詳しく報じられた。

 「耳に入ってくる音楽はすべて頭のなかで音符に置き換わる」という作曲家の玉
木宏樹さんが主張していることなのだが,玉木さんは駅の発車音を各駅で聞いて,
その場で5線紙に書き取っていた。以下は,玉木さんからうかがった話の要約。

 ●中央線沿線住民よ,怒れ!

 新宿と渋谷の出発音は,ちゃんとした作曲家が関与して作成されたものだけあっ
て,玉木さんの耳にも,新鮮でここちよく響く。
 それは5度調弦のバイオリンのアルペジオのような動きをしているのだが,なか
なか耳コピーができなかったユニークなものだ。

 今では両駅のフレーズは空んじてはいるが,強力な楽器用フレーズで,うたって
みろといってうたえるものではない。こういう個性あふれるサウンドロゴは両駅の
ステータスにもぴったりで,ああ,今,いちばん旬の街に来たのだなあという印象
を抱かせるものだ。

 恵比寿,目黒,五反田は,うるさい16分音符が暴れ回り,しかも変なところで変
拍子が入るため,なんでも楽譜化して聴いてしまう習性の自分に対しても非常に腹
立たしいフレーズで,特に五反田は突然半音上に移調する,これぞ音の暴力だ。

 最もひどいのが新橋で,中央線をゆうに凌駕するほどの殺人的16分音符の6連符
フレーズが「ソミレドレミソミレドレミラミレドレミラミレドレミ」と絶叫する様
は,死の直前のショパンの写真を思い出してしまうほど悲惨!
 後日,新橋で下車し,下の公園を歩いていてもその暴力性は容赦なかった。

 問題の中央線だが,東中野は4分音符で,「レミドソ レミドー」。ありふれて
いるが,落ち着いていて,チャイムはこの程度のメロディでいいのだ。中野は,時
間調整するために停車時間は長いのに,発車時間になってあの最悪の新橋状態が出
現する。まさに「中央線,地獄の音楽攻めの入り口」である。

 高円寺,阿佐ヶ谷は,トニックのコードがうるさくアルペジオをかき鳴らし始め
たと思った途端にブッツと中絶される。非常に不快。あんな短時間しか鳴らさない
のなら,絶対に音楽は必要ない。

 荻窪は五反田と同じ「地獄型」で,西荻窪は高円寺状態で無神経極まりない。吉
祥寺はかすかで判然としなかった。

 中央線,地獄の音楽の集大成が完成するのが,三鷹,特急「かいじ」通過,武蔵
境,小金井,国分寺,西国分寺,立川だ。

 単なる注意喚起音でなく,大音響で表にしゃしゃり出で音符が自己主張を開始す
る。それも音楽の振りをして。

 だれひとり,あの音の暴力を告発しないのか?
 中央線の住民よ,怒ってください。あれは精神にも体にも悪い音楽モドキなのだ
から。

 ●『純正律』を提唱する訳

 いまは,ヒーリングミュージックと称して「体によい音楽」の押しつけが激しい
一方,このような「体に悪い音楽」の追放がされていないなら,日本はますます荒
涼とした神経症国家になってしまうだろう。

 オウム事件以来の意味不明な殺人の増加にもその兆候は出ているともいえる。

 最近は「癒やしの音楽」という言葉が定着しつつあるが,日本のヒーリングミュ
ージック界は,アルファ波が出るといえば雪崩を打って我も我もとなるし,「アダ
ージョカラヤン」がヒットすれば,「アダージョ」なんて「ゆるやかに」という意
味のイタリア語に過ぎないのに,なんでもかんでも「アダージョ」になってしまう。

 いま,五感を通してのリラクセーションが盛んになりつつあるが,いちばん重要
な音楽には,スキームとマテリアルが欠如しているので,日本のヒーリングミュー
ジックには方法論が一切ない無政府状態である。重要なマテリアルとして,純正律
を提唱したいのである。■


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NO.187> 三井の円安誘導と農民の疲弊
==== 日本金融史  (NO.187,98/5/15) ===================================

◆三井の円安誘導と農民の疲弊

 ●団琢磨と「血盟団事件」

 石炭の存在は日本で何世紀も知られていたが,ペリー提督の石炭火力による黒船
の到来で初めてその力が理解された。

 九州の三井炭田には,厚さ約6メートルから8メートルの9層の炭脈が10万2,000
エーカーにわたって広がっていた。

 三井は政治取引によって,三菱やその他の財閥との入札競争に勝利し,明治政府
からこれらの炭田を買い上げた。

 団琢磨は貧しい士族の子として生まれたが,三井財閥にいた叔父の養子となった。
養父は琢磨の明晰な頭脳を見込んで彼が12歳の時,ボストンに留学させた。
 やがて琢磨はマサチューセッツ工科大学に進み,鉱山学と冶金学を学んだ。

 1884年に帰国し,官営三池炭坑に勤務した。
 その4年後,三井が鉱山を買収した時,琢磨も三井に移った。
 世界最大級の鉱山排水ポンプ・プラントを建設し,地中深くの炭層採掘を可能に
したことは琢磨の大きな業績のひとつであった。

 やがて琢磨は,三井財閥の最高ポストである三井合名会社の理事長に就任するこ
とになる。第1次世界大戦進行中の1915年であった。

 1927年,大手銀行の一つが破綻し,銀行パニックの連鎖反応を引き起こした。
 こうした混迷の時期,琢磨の三井財閥は政府の腐敗にも手を貸して繁栄を誇った。

 外国の造船業者の代理店として,三井財閥は金儲けになる軍艦建造契約を獲得す
るために,海軍の将官たちにワイロを贈った。しかし,相次いでスキャンダルが発
覚し,「三井」の名は汚されることになる。

 1930年,日本は金本位制に復帰した。しかし,琢磨はこれに強硬に反対した。「
輸出市場での円安の恩恵を受けていた」からである。

 琢磨は2つの計画を実行した。
 1つは金本位制を中止させるための「内閣の転覆」,もう1つは金本位制廃止に
伴う円安に備えて「ドルを買い占めること」であった。

 ついに1931年,三井の「現ナマ攻勢」は若槻内閣を総辞職に追い込むことに成功
する。
 犬養内閣が金本位制離脱を決定したとき,円は急落し,三井を初めとするその他
の財閥は1夜にして巨万の富を手にすることになる。

 円の急落は国内の物価高騰を招き,特に農民達の生活への打撃は甚大であるにも
かかわらず,肥料代や税金の取り立ては容赦なく,木の根を食べ,生活費の捻出の
ため娘が売春宿に売られることも少なくなかった。

 1932年3月5日,リボルバーを隠し持った農民出身の青年が三井本館の玄関前で
琢磨の到着を待っていた。午前11時半ごろ車から降りかけていた琢磨に銃弾は命中。
正午過ぎ,琢磨は絶命した。
 世に言う「血盟団事件」である。

 『血盟団』とは,井上日召(日蓮宗の僧侶)を首領とし,「暗殺による日本の浄
化,腐敗した政党政治の排除,天皇の権限回復」を図る秘密結社であった。

 ●「PKO」などなんの実効性もないバカげた行為

 しかし,資本家階級を非難して実際の権力を掌握したのは彼らではなく,軍部で
あった。
 軍部は銀行の数を減らし,金融規制を強化した。

 1931年当時,日本には700の銀行(生命保険会社は61社)が存在していたが,36年
には400行に,44年には72行(同21社)に激減している。
 損害保険会社も昭和初期に68社を数えたが,軍部の「集中合同政策」による合併
で第2次大戦末期には17社になっていた。

 軍部は系統立った金融システムを望んだ。産業能力と同様,金融力もすべて戦争
遂行に集中するためであった。

 この時に形成された金融の仕組みと慣習,メンタリティーなどが,今日の金融と
金融統制のあり方を決定づけた。
 昨今の日本政府の「プライス・キーピング・オペレーション」,すなわち「PKO」
などという株価維持策など,なんの実効性もないバカげた行為の淵源はここにあっ
た。■


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