SURVIVAL

「マーケット・サバイバル」

ディーラー・投資家のために


 
 
 
はじめに
 
  バブル全盛のころは、株式投資など経験したこともない主婦とか学生までもが、いきな
  
り証券会社の店頭で株式を購入するといったように国民総投機家のような様相を呈しまし
 
た。確かにそれまでは土地も株式も上昇をし続け、誰がどこで買っても儲かるという状況
 
でした。
 
  しかし、バブルが弾けると、この反動で多くの者が多大な損失を被りました。プロ中の
 
プロの投資家とも言うべき銀行ですら、あのような不良債権を抱える始末ですから、一般
 
の方はさもありなんという状態です。確かにバブルというのは数十年に一回あるかないか
 
の事態かも知れません。しかし、これを相場の例外とするわけにはいきません。規模は違
 
っても相場には乱高下はつきものなのです。そこで利益を稼ぎ出すのは実は容易な事では
 
ない事も確かです。
 
  株式や債券、為替の動きをコンピューターに入力してシステマチックに売買益を得よう
 
とする試みはこれまでにも数多く行われていました。元NASAの技術者や物理・数学の
 
博士号を所得した者も含めて現代の錬金術に挑戦しましたが、これをを完成したという話
 
は残念ながら聞きません。しかし、そうは言いましても工夫次第ではこの相場の世界に長
 
く生き残り、安定収益を稼ぎ出すことは可能です。それにはまず経験と努力、そして自分
 
を制御できる精神力が必要です。ここでは相場に生き残りそして収益を獲得するためのノ
 
ウハウのいくつかを紹介してみたいと思います。
 
 
第1章.プロも一般人?
 
  私もこれまで10年近く相場の世界で仕事をします。そして、いろいろな相場の参加者
 
を直接、間接に見てきました。日々動いている相場という世界では、常に生き残りをかけ
 
てサバイバル戦が演じられていると言えます。会社の資金で相場を張るディーラーなどは
 
収益を揚げられないと「異動」という形で姿を消すだけですが、自らの資金で投資を行う
 
個人投資家などはまさに死活問題といえます(死活問題となるほど相場にのめり込むのも
 
どうかと思いますが)。
 
  確かに、この世界で生き続けてゆくのは容易な事ではありません。ディーラーなどにも
 
ほんの一部ながら長島や羽生のような「相場の天才」がおり、毎年毎年、多大なる収益を
 
稼いでいます。しかし、このような相場に対し天性の分がある者は、ディーラーという専
 
門職のなかでも百人に一人いるかいないかです。大多数の相場参加者は私も含めて、”一
 
般”の人間といえます。この一般の人間が相場の世界で生き残っていくためにはそれ相応
 
の努力や創意工夫が必要である事は確かです。そして、努力工夫次第では安定的な収益を
 
揚げる事も可能になります。
 
  ディーラーにも様々なタイプの人間がおります。何事にも向き不向きというものがあり
 
ます。まず、こういうタイプは相場には向かないといった例をいくつかあげてみたいと思
 
います。
 
  良く相場は博打と同じといった見方がされます。確かに相場で収益を稼ごうとするディ
 
ーラーにとって取引所は大義の公営ギャンブル場と言っても良いかもしれません。投資と
 
投機は違うと良くいわれますが、目的は相場で利益を得るということであれば同意と言っ
 
ても良いと私は考えます。ところで、丁半博打ではありませんが、相場も売るか買うかの
 
二つに一つに勝負をかけます。現物投資では通常は買いからしか入れませんが、今は先物
 
とかオプションとかのデリバティブが日本でも発達しつつあります。デリバティブでした
 
ら売りからでも入れます。ここでは、売りからも入れるという事を前提にしてお話します。
 
  勝率だけから言うと、相場に入り儲かるかどうかの確率は五分五分といえます。問題は
 
この五割という確率にあるといえるのです。もし、余程ひどい相場勘をもっているディー
 
ラーがいてかなりの確率で損をするならこの人間こそ別な意味で「天才」であり、他の人
 
間はその者の逆をやればよいといえます。大和銀行事件の当事者、井口氏もその著書で勝
 
率は20%程度だったとか述べていましたが、通常こういう状態はありえません。よほど
 
異常な状態で相場を張っていたことが伺い知れます。しかし、彼の相場の逆を張ることが
 
できたらいったいいくら儲けられたでしょうね。
 
  話はそれましたがどのような人間でも五割の確率で儲かるということです。そして儲か
 
った時にそれを確率の問題ではなく自分の才能であると勘違いしてしまうタイプの人間が
 
いるのです。前にも言いましたが天性の勘をもつものはほんの小数です。その他の者はな
 
んらかの努力が必要とされます。結局、この思い上がりタイプのディーラーは一様に自滅
 
してしまう事が多いようです。儲かった自分を拡大解釈しまうため、損切りすべきときに
 
せずに不必要なナンピン(買い下がりや売り上がりのこと)を繰り返してポジションを大
 
きく膨らせてしまいます。それは結局、リスクをより大きく高める事になるのです。結局
 
こういったディーラーは儲かった分の掃き出しにすまされず、大きな損失を発生させてし
 
まいます。意外とこのタイプのディーラーは見受けられます。
 
  逆バリという売買手法があります。自分でレンジを想定して、大きく下がってレンジの
 
下値に来たと思ったときに買い、逆に上昇し上値レンジにきたとき売ろうとする方法です
 
。これは、相場は安い時に買い高い時に売るのが常識であるためにあたりまえの手法と思
 
われますが、問題はレンジの上下を自分で決めつけてしまうことにあります。コンピュー
 
ターを駆使しても具体的なレンジを想定することは不可能に近いのに、高値や安値を適格
 
に判断するのには無理があると思われます。
 
  しかし、自分のレンジを信じきってしまうとそのレンジをさらに下回ったり上回ったり
 
した時にやはり切るチャンスを逃すどころか、ポジションを余計ふくらましてリスクをさ
 
らに高めてしまう可能性もあるのです。もしトレンドが変化したときなどこのレンジを想
 
定しての売買は非常に危険なものとなってしまいます。安いところで買って高いところで
 
売るというのは理想ではありますがそういう意味でたいへん難しい方法でもあるのです。
 
  日本のディーラーとかファンドマネージャーとかは主としてサラリーマンです。横並び
 
意識も強いようです。このために損失をしても身銭がなくなるわけではなく、自社内もし
 
くは他社の人間より多少でも儲かっていれば良いと考えてしまいがちです。典型的な例と
 
して、株式で言うと日経平均のパフォーマンスさえ上回っていれば、たとえ損失を被って
 
もいたしかたがないと認識してしまうような風潮があると言えます。生き残りをかけての
 
相場の世界なのです。相場がどうあれ損失を出さないことが一番重要であることを忘れて
 
はならないと思われます。人より損失が少ないからいいやと傷をなめあっているディーラ
 
ーもいずれ消え去る運命といえます。  
 
  以上のようにいくつか相場に不向きなタイプをあげてきたましたが、こういったなかで
 
も最悪のディーラーは、上司とかまわりの目を気にしたり社内の自分の立場を守ろうとし
 
て損の責任を他に押し付けたり、損失を他に付け替えをするとか粉飾したりする人間であ
 
るといえます。もしあなたがディーラーでしたらまわりにもそのような例は大なり小なり
 
みられると思います。極端になると昨年の大和銀行やベアリング、そして住友商事のよう
 
な事件となってしまうのです。このような事件はディーラーとしては最悪の人間が行った
 
ものともいえます。もちろん管理体制にも問題はあったのですが、適正を見抜けなかった
 
ことも問題といえます。
 
  しかし、どのようなタイプの人間が相場にむいているか判断はむずかしい事も確かです
 
。血液型が人間の性格を決定するとはいえませんが、大相場の時、例えばバブルまっさか
 
りのような時は0型のタイプ、つまり多少おおざっぱでも、いいやいいや買ってしまえと
 
いったタイプが儲かったといわれました。しかし、このタイプはバブルの消滅とともに姿
 
を消しました。そして恐竜の絶滅の後にでてきた哺乳類のように、とって変わってでてき
 
たのが堅実なA型タイプでした。地道だがこつこつ儲けるというタイプです。どうやら相
 
場に生き残っていくにはこのようなある意味で地道なタイプではないかとも考えられます
 
。
 
 
第2章.やはり勝率が重要
 

225

先物

債券

先物

損益

勝ち

負け

勝率

損益

勝ち

負け

勝率

1991

-5,760

108

134

45%

3.40

119

117

50%

1992

-7,540

114

129

47%

2.06

114

124

8%

1993

-2,710

108

130

45%

4.32

136

104

57%

1994

1,070

116

118

50%

-4.35

114

126

48%

1995

-1,580

113

131

46%

5.22

138

103

57%

1996

-3,180

121

119

50%

4.86

121

118

51%

  左記の表を見ていただきたい。この表は日経225先物と債券先物、そしてユーロ円金
 
融先物をそれぞれ毎日、寄付で買って、引けで売ったとして一年間の収益と勝率を出した
 
ものです。注目していただきたいのは勝率と収益の相関関係です。勝率が55%以上のも
 
のは買いから入った場合、100%収益を揚げているといえます。また、勝率が45%以
 
下のものも売りから入れば同様に100%稼いでいます。この表はほんの一例ですが勝率
 
が高ければ収益が上がるということはこれからもおわかりいただけると思います。あたり
 
まえだとおっしゃる方もいるかもしれません。しかし、実際相場に入ると一発儲けりゃい
 
いといった事を言われる方も多いのも確かなのです。では、伺います、もしいったん大き
 
く儲かったらそこでやめられますか。
 
  日々、売買を繰り返すディーラーはもちろんのことですが、年に何度か売買を行う投資
 
家も勝率を高めることによって、安定した収益があげることができると思われます。もち
 
ろん、先程のように一度大儲けしてやめれば良いという方もあるかもしれませんが、そん
 
なにタイミング良く儲けられる方などほどんどいないでしょう。とにかく、特に恒常的に
 
売買を繰り返す者は、勝率をアップすることを念頭に置く必要があるのです。これは相場
 
を職業とするディーラーなどはもちろんですが、それほど頻繁に売買を繰り替えさない方
 
にも言えることと思われます。。
 
  上の表の損益には必要経費が含まれておりません。このため、経費を抜くと収益がマイ
 
ナスとなる恐れも確かにあります。そのため、勝率もできれば60%、6割程度まで引き
 
上げておけば、まずそこそこの利益はあがると思われます。ここでギャンブルの例をだす
 
のもどうかと思われますが、麻雀でも勝っていくためには9勝6敗の勝率が必要と麻雀放
 
浪記などに書かれておりました。やはり相場でも同様の事が言えるのではないでしょうか
 
。たとえ大きな損失をだしたとしても勝率さえしっかりしていれば年を通じて利益を出す
 
ことができるはずです。もし、勝率など関係ないと言われる方があれば、御自分の儲かっ
 
た年の勝率を算出してみると良いと思います。おそらく勝率も高いものとなっているはず
 
です。
 
 
資格試験
 
  ちかごろ流行っているものに資格を取るという事があります。資格をとるには資格試験
 
というものがあります。インターネット時代となり、情報処理技術者とか英語検定とか勉
 
強されている方も多いのではないでしょうか。証券界には証券アナリスト検定試験といっ
 
たものもあります。
 
  実はこの資格のための勉強法が相場にも生かされるのではないかと思われるのです。資
 
格試験は入学試験などとは異なり、一定割合の点数をとれば合格となるものが多いと思わ
 
れます。六割とか七割とか取れば合格する決まりとなっているものです。そうとすれば自
 
ずと勉強法も入学試験などとはとは多少違ったものとなります。つまり、ピンポイント攻
 
撃が有効となるのです。過去の問題をさかのぼり、出そうなところを重点的に勉強し、ポ
 
イントを絞った学習が必要となるのです。理屈はとにかく要するにAならばBとなること
 
を丸暗記してしまう事がてっとり早く合格するこつです。重点を絞ればなんとなく理屈も
 
わかるようになってきます。試験でもし勉強しなかった問題がでたとしても、その部分は
 
捨てる覚悟で望めばよく、重点をおいて勉強したところさえしっかりできれは実際三割や
 
四割はできなくとも合格できるのです
 
  相場の世界でも同様なことがいえると思われます。マーケットで生きつづけるには、勝
 
率を重視すべきと述べてきましたが、そこで、この資格試験の勉強法が生きて来ると思わ
 
れます。実際に相場を張っているうちに得意なパターンがだんだんとつかめてきます。大
 
方のディーラーは順ばり型(前述の逆張り型と反対で上がれば買い下がれば売る)である
 
ため、大きく動いたときに儲けられるという者が多いと思います。こういった自分に得意
 
なパターンが出た時にしっかり儲けられるようにすれば良いのです。自分が負けるパター
 
ンというものも認識する事によって、そのような相場のときは早めに手を引くなり相場を
 
休むなりして勝率を上げるよう努力することによって自ずから収益はあがってきます
 
  このパターン分析は大変重要であると思われます。チャートと呼ばれる相場の居所を示
 
すグラフがあります。このチャートをみてもわかりますがひとつとしてまったく同じ値動
 
きをしているものはありません。これはどのような投資対象についても言えます。そうは
 
言いましても人間がやっている以上、実は似通ったパターンは随所にみられるのです。江
 
戸時代からの米相場や為替・株・債券・商品市況など対象物は異なってもみな似通ったチ
 
ャートをつくることが良くあると言われています。この習性を身につけることによっても
 
勝率をあげることは可能となります。しかし、それにはある程度の経験が必要となります
 
。少なくともこういった形のチャートの時は休むに限るということがわかっているだけで
 
も勝率は上がるはずです。
 
  このように、相場においても常に勝率ということを念頭に置いて、4割程度は負けても
 
しょうがないということを認識する必要があります。つい、意地や過信から切るものも切
 
れずのままにしてしまう場合がありますが、負けは負けとして早く処理することが大事な
 
のです。得意な相場で勝ち越して、乗り切れないもしくは自分の考えと相場の方向が逆の
 
時(良くあります)はやけを起こさず、ポジションを軽くして自分のパターンを待つだけ
 
の余裕があれば勝てると思われます。
 
  勝率を上げる良い方法の一つとして、相場の達人をみつけその手法を盗み取るという方
 
法もあります。我々ディーラーというのもひとつの職人芸に近いものがありまして、親方
 
のやり方を見よう見まねで盗んで自分の芸を磨く必要があります(良い親方がいればの話
 
ですが)。しかし、実損益が直接からむため、自社内の人間で儲けているディーラーほど
 
あまりそのノウハウを明らかにしようとしないかもしれません。たとえ、教えようとして
 
もある程度勘にたよる部分が強いために具体的に口に表せないということもあるかもしれ
 
ません。
 
  その点、コミュニケーションが取り易いのは自分の損益が直接影響しない他社・他行の
 
同業者であると言えます。ひとつまちがうと愚痴のこぼし合いとなってしまいますが、付
 
き合い次第では現在のポジションとか、これから入るタイミングとか明らかにしてくれる
 
ことがあります。会話を交わしているうちに相手が相場の動きを掴むのがうまいとわかっ
 
たらしめたものです。儲かっているディーラーの動きが学びとれるのわけです。もちろん
 
口だけの方もいますが相場はシビアーです。こういった方はすぐにぼろがでてしまいます
 
。このように、達人をみつけ彼らのスタンスとか考え方とか学びんで自分のディーリング
 
の参考にする事ははたいへん良い方法であると思われます。
 
  それでは、回りにそのような達人がいない場合はどうしたらよいのでしょうか。例えば
 
個人投資家などの場合です。まず避けなければならない事は、人の言いなりにならない事
 
です。その人が相場の天才か勝率が高い投資家であれば良いのですが、勧める方が5割程
 
度の勝率しかない、つまり一般人ならば大きく損失する可能性が強いといえるのです。そ
 
れというのも、人に勧めようとする物はチャートなどから、一目見て上がっている事が多
 
くなるはずです。必然的に高値を買うはめになる確率が高くなります。勝率は5割でも、
 
益は少なく損は多いという結果になりかねないのです。
 
  こういった事を避けるためには、株式なら自分で購入したい銘柄をいくつか選定し、チ
 
ャートをつけて下から上放れたような銘柄を買うといった防衛手段をとれば上値掴みとな
 
る可能性は少ないはずです。「あなただけに教えますが」といったインサイダー情報なと
 
簡単に手に入るはずはなく入ったとしてもそれをもとに売買すると罰せられます。そんな
 
ことより日々の値動きを睨みながら今後の動きを推測してゆくのが早道といわざるを得ま
 
せん。従って、チャートの見方を学んだり、評論家ではない、実際に相場の世界にいる達
 
人の書いた相場に関する本など読み漁るのも一考と思われます。
 
  そして毎日値動きには注意してください。経験を積むと上がりそうなパターンとか切ら
 
なければならないパターンとかがでてくるのです。個人の方が株式を購入されるのは通常
 
は投資てしょうが、下がったなら持ち続ければ良いやというのも考え物です。頻繁に売買
 
する事はありませんが、自分で損切りルールを儲ける必要があると思われます。繰り返す
 
ようですが相場には努力と自制心が必要なのです。
 
 
第3章.相場に立ち向かうためには
 
 
パターン
 
  ここではまず相場の分析手法についてコメントしたいと思います。ディーリングに携わ
 
っている人達にとって最も重視されると思われるのが前にも少し述べましたがパターン分
 
析と呼ばれるものです。まずこのパターン分析についてもう少し見てみましょう。
 
  1995年がケインズ没後50年ということで久しぶりにこの天才経済学者に脚光が浴
 
びせられました。ケインズ政策についてはすでに時代錯誤との見方もありますが、ケイン
 
ズ経済学の考え方はまだまだ通じるものがあると思います。そのケインズでよく引き合い
 
に出されるものに「相場は美人投票である」というものがあります。もちろんケインズは
 
経済学者としても功績を残していますが実際に株式相場や商品取引でも財をなしたといわ
 
れているだけになかなか相場の心理面を言い当てている言葉と思われます。
 
  この「美人投票」の意味は、美人コンテストでは自分が美人であると思う人物に投票す
 
るのではなく、ほかの人達がこの人こそ最も美人であると考えるであろう人物を選出する
 
というものです。相場も同様に自分は上がると思っていても他の多くのものが下がると考
 
えていれば売りに一票投じなければ儲からないということなのです。
 
  株式市場などでも、ある材料に対する反応はその時々の環境、言い換えれば相場に携わ
 
っている人達の心理状態が大きく影響します。良く「材料出尽し」などと言われることが
 
ありますが、ある企業がどんなに好決算となってもすでに相場が発表まえに大きく買われ
 
ているときなど、利食い売りで急落するようなケースがあるのです。実はこういったケー
 
スは相場では頻繁に起こりえます。相場は多くの参加者が先行きをどう読んでどのような
 
行動をとるかによって動くのです。相場参加者の心理が強気弱気に傾いている時、材料に
 
よっては過剰反応することもあります。おなじような材料なのに相場の心理状態により反
 
応が異なるケースもあるのです。
 
  相場に一時方程式はあてはまらないと言われます。各種の関数をおりこんでゆかなけれ
 
ばならす、その比重も状況により異なります。相場の推測がどんな演算処理能力を持った
 
コンピューターでも無理なのは当然扱くといえます。最近では生物進化の秘密が徐々に明
 
らかにされていますが、生物は進化する上でその場その場の状況に応じた遺伝子組み替え
 
を行うと言われています。相場も同様にいろいろな要素がからみあい価格を形成していま
 
す。一部の要素の変化により状況も変化します。ただ、単純に為替がいくら動くと株がこ
 
れだけ動くという方程式はないのです。その場その場の状況に応じて価格が決定される以
 
上、これをアルゴリズム化するのは難しそうです。しかし、生物はそれをひとりでにこな
 
しています。遺伝子の働きがよりはっきりしてくると意外に相場に対して新しい分析手法
 
がでてくるかも知れません。
 
  話は飛んでしまいましたが、我々ディーラーや投資家はこのような相場のなかで収益を
 
上げてゆかねばならないのです。それでは新しい理論が発見されてない現在ではどうやっ
 
て相場を分析するのが良いのでしょう。ここでもう一度考えてもらいたいのは、相場は人
 
間の推測で動くということです。つまり、人間の行動は社会学や心理学を持出すまでもな
 
くある一定のパターンを描くことが確認されています。相場もしかりです。収益をあげて
 
いるディーラーは実はこのパターン分析に優れているといえます。これには天才型ディー
 
ラーを除いて一般のディーラーはある程度の経験が必要となります。毎日毎日、値動きを
 
ウォッチしているうちにこのパターンは自然に身についてくると思われます。また、四本
 
値やポイントアンドフィギュア、ストキャスティックスなどといった、これまで考えられ
 
てきた相場分析ツールをみてゆくうちにこれらの動きのくせなどが見えてくるのです。
 
  「相場は相場に聞け」という名言(迷言)がありますがこの言葉はまさに相場の心理面
 
を言い当てているといえます。ファンダメンタル分
 
析は過去の数値を基としている点も注意する必要があります。景気を示す指標も数ヵ月遅
 
れとなっています。相場は先をみて動く生き物である以上、過去の数値は参考にはなりま
 
すが相場変動の一要素にすぎないということを認識しておかねばなりません。そうは言い
 
ましても、無論、チャート等を基にするテクニカル分析が絶対に良いというわけでもあり
 
ません。しかし、相場という生き物の行動パターンを分析するほうが、勝率を高める上で
 
はてっとり早く有用であることは疑いのない事実と思われます。
 
 
感性  
 
  昨年亡くなられた司馬遼太郎氏の代表作に「坂の上の雲」があります。このなかで主人
 
公の一人秋山真之が、「海戦をするのに本を見ながらはできない」と話をしている場面が
 
ありました。市場という戦場のなかでディーリングを行うにも、いちいちテキストなど読
 
んでいる暇はありません。戦況はつねに変化します。そしてこの戦況が変化した時に適格
 
に対応するには日頃の鍛練と経験が必要となります。最後にはこの経験に基づいた勘が働
 
くかどうかが勝敗を分けるといえます。瞬時の判断が常に求められるディーラーはこの勘
 
を磨き上げて、感性(この場合勘性というべきか)と言われるものを身に付けなければな
 
らないと思われます。
 
  実際のところこの感性は訓練とか練習とかでは身につかないものです。シミュレーショ
 
ンで売買を行うのと実際に売買を行うには気持ちの持ちようが異なります。実際に数千万
 
円の損が発生するのと、計算上の損失とは当然心理的に大きく異なるものなのです。心理
 
的に追い込まれたとき適切に判断が下されるかどうか実際の経験から学んでゆかざるをえ
 
ないのです。損失がでたときにそれを取り戻そうとあせるとますます深みにはまるという
 
ことも良くあります。私自身もこの心理的に不安定となる状態は年中経験しています。そ
 
のため、日計りでもロスカットルールをつくり一定額の損失がでたときにはひとまず損切
 
りをして冷却期間を設けるようにしています。
 
  また、相場に望むにあたってポジションを持っている状態と持っていない状態でも相場
 
に対する見方が異なることも注意しなければなりません。ポジションを持つと、人からの
 
意見にしろ、通信社からの情報にしろ、自分のポジションを正当化する情報にばかり目が
 
いくようになってしまいます。これでは普段の冷静な見方ができなくなる恐れが強くなり
 
ます。ポジションに左右されない冷静な目を養う必要性があるのですが、なかなかそれが
 
できないのも事実ではありますが。
 
  では、その冷静さを保つにはどうしたらよいでしょうか。もちろん、自分の相場勘が当
 
たり、評価益が膨らんでいる状態では、利食いゾーンを模索するため冷静さは保てるので
 
すが、問題は評価損が膨らんでいる場合です。ここで必要なのはやはり先ほども述べまし
 
たが損切り、つまりロスカットルールを設けることだと思います。これはディーラーばか
 
りではなく一般の投資家の方にも適用できるかと思います。
 
 
ロスカット
 
 それではそのロスカットルールはどういう基準で設けるべきでしょうか。相場に生き残
 
りたいならば、ロスカットをするべしというのが私の信条とも言えます。勝率を上げたう
 
えで損失額を限定させれば当然収益はあがるはずです。また、前述のようにポジションを
 
切ることによって、ポジションを持ったことを正当化しようとすることがなくなり自分の
 
思い込みから開放され冷静な目で相場を見られるということ胆の命ずる必要があります。
 
  私は主に債券なかでも国債のディーラーですが、債券先物の日計りで10銭程度のロス
 
カット・ルールーを設けています。目先の流れを追うデイトレードでは、10銭以上逆に
 
いった場合、相場の流れを読み違えたと私は考えているためです。むろん、スタンスを長
 
めにする時は、例えばオーバー・ナイト(1日以上持つ事)の場合は1円程度としていま
 
す。これはあまりロングタームで相場を張る方とか投資家の方はもうすこしレンジを大き
 
くしていらっしゃるとは思いますが、ロスカットルールを持つこと自体は絶対に必要です
 
。損失を限定するという作用はむろんですが、あせりなどから日頃の冷静さが欠けた状態
 
で相場が儲かるはずはありません。ナンピンはリスクを増大させるだけで心理状態を改善
 
させる処置ではありません。
 
  相場はだれでも入ることは確かにできます。しかし、最終的に相場の世界で生き残ると
 
いうことを考えると最後は切り方そして利食い方がポイントとなります。どんなに信念を
 
もって相場に望んでも、状況は変化するのです。こんなことはこれまでなかったなどとい
 
う言い訳は通用しません。自分の意見に固執しないためにも、機械的に切ることは絶対に
 
重要であり、相場に生き残るには必要不可欠であると認識する必要があると思います。
 
  「多少やられてもいずれは戻るよ。」と悠長にかまえているのはいいが、トレンドが完
 
全に変化してしまったり戻ることはもどっても、時間がかかり、途中の収益チャンスを逸
 
脱したりと、ろくなことはないはずであると思います。
 
 この世界から消えてしまったディーラーの多くは、一時的に稼いだ自分を信用するあま
 
り、やられたときに損切りのチャンスをなくして、ずるずると損失をふくらましてしまい
 
そのため自滅してしまったケースが多いとも言われます。損を出すことは確かにいやです
 
。しかし、何度もいうようですが、仮に勝率6割で優秀なディーラーであるということは
 
、4割は負けることを意味しているのです。負けた時の損失をいかに押さえるか、それは
 
大変重要な課題です。
 
 
勢い
 
 以前自宅のビデオデッキが壊れたことがありました。特売日に買った安売り商品でした
 
が、日本を代表するAV機器メーカーのものだっただけにまさか壊れるとは思ってもみま
 
せんでした。結局、初期不良らしく交換してもらいました。別にこのメーカーを非難する
 
わけでないのですが、このビデオが壊れたときの自分の対応が問題だったのです。
 
  何故か、テープを入れるとすぐに戻ってしまうと奥方にいわれ、3人娘をおとなしくさ
 
せる「最終兵器」を修理すべく自称ホームエンジニアの私がデッキにむかったのです。し
 
かし、何度、電源スイッチを入れなおしても、何度、テープを押し込んでも無駄でした。
 
メカ好きの末娘が、テープの代わりにせんべいでも入れたかと思ったのでしたが、デッキ
 
の中には何も入っていませんでした。とにかく、壊れたというより壊したと思っていたた
 
め、押せるスイッチをすべて押してみたりしました。結局、前述のごとく交換してもらっ
 
たわけですが、考えてみれば昔の電気製品と異なり最近のメカは叩くなどして、はずみで
 
直ることはほとんどないと思います。同じスイッチを何度押しても同じことです。(これ
 
ってわかっていてもやってしまうんですよね)あとで冷静になると、自分は何していたの
 
か!ということになります。できないことは何度繰り返してもできないのです。
 
  相場においても同じようなことがいえることがあります。相場に流れ、つまり勢いがつ
 
いたときに自分の相場感が逆だった場合、やられてもやられても自分の相場感を信じるあ
 
まり流れにさからう商いをしてしまうケースがあります。相場の「勢」を早く見切って、
 
無理に逆らう事なく流れに乗れば、楽して儲かるとも言えます。「善く戦う者は、これを
 
勢に求めて、人に責めず」孫子の言葉です。まさに、「勢」を利用すれば楽して利は得ら
 
れるといえます。 相場の「勢」には、短期的なものと長期的なものがあります。大きな
 
トレンドを意識しながら、ディーラーは短期のトレンドを掴んで儲けてゆかねばなりませ
 
ん。自分が経験したなかで言うと、例えば、買いたい時にできそうな指し値を入れてもで
 
きず、さらに上を指してもできない、さらに上を指してもできないというとき、相場は本
 
当に強い。早く気付いて成り行きにしなければならないのですが、買ったときはすでにか
 
なり上昇してしまい、儲かるどころかそこから反落してしまうこともよくあります。
 
  また、買いなら買いで、10銭程度のやられが繰り替えされた時、相場の方向性つまり
 
流れを読み違えているといえます。すぐに方向転換するか、自分の頭がついていけない時
 
、納得できないときは休んで冷静にならなければいけません。
 
  流れを見方にするなり、流れを早く見きって相場を張ればおのずと利が出てきます。し
 
かし、なかなかそうもいかないことも確かです。ビデオの例で言えば、がちがちスイッチ
 
を押してる内に壊れてしまうことすらあるのです。妻子の前でかっこつけようとするあま
 
りに、冷静さを失っている自分を深く反省しなければ。
 
 
運
 
  朝、駅の改札は一番左を通る。ここのキオスクで新聞は買わない。青いネクタイは締め
 
ない。相場の世界に従事するものは特に、験(げん)を担いでいる人が多いのではないか
 
と思います。スポーツの世界でも、あるプロ野球の監督のように勝っているときは下着を
 
変えないという方もいらっしゃるようです。傍から見ればなにをばからしいとおっしゃる
 
かもしれませんが当人は真剣なのだと思います。実際、験を担いでいるものを何かのはず
 
みで破ってしまったときなど気が気でないことは確かです。これがプレッシャーになるの
 
か、実際損してしまう場合も多いような気もします。
 
  最後は当人の気の持ちようなのであろうかと思われますが、しかし、カラスが頭の上を
 
通過したり、黒猫が自分の前を横切るようなことがあると、本日の損失はこのせいだとど
 
うしても思い込んだりしてしまいます。でも、そんな時でも、もし儲かった時は実力が優
 
ったのよとかってに解釈してしまうようですが。
 
  相場にも運がからんでいることも確かであると思います。調子が良いときは運も見方す
 
る時が多いようです。安値近辺で買えたり高値で売れたり、また何気なく持ったポジショ
 
ンに突然の良い材料がでて大きく設けられたりすることもあります。逆についていない時
 
は自分の指し値の一歩手前で止まったり、もってしまったポジションに対して悪い材料が
 
でてしまったりします。
 
  以前読んだギャンブルの本にのっていましたが、運というのは人それぞれ平等にあると
 
いうのです。そういう事もあるのかなと相場に長く接していると考えたりもします。要は
 
当人がその運をどう生かすかどうかであると思います。調子が良く運も見方につけている
 
時こそ儲けを大きく膨らませるチャンスです。ここを逃すわけには行きません。勝率6割
 
で充分儲かると力説している私ではありますが、やはり年に何回か大きく取れる時があり
 
ます。それをうまく掴まないと、年を通じてそれなりに大きく儲けることはやはりむずか
 
しいと思われます。逆にスランプに陥っているとき、つまり運に見放された時にいかに損
 
失を限定するかということも重要になります。運を生かすも殺すもやはり最後は当人次第
 
ということになるのです。
 
 しかし、言うまでもないことですが運のみにたよってはいけないことはむろんです。運
 
まかせに相場を張っても、勝率は5割にしかなりません。結局、切ったり、利食ったりす
 
るタイミングの悪さから、まず儲けが続く事はないことは確かです。日頃の努力の上に立
 
って、最後に運命の女神に委ねる必要があるといえるのではないでしょうか。これは、相
 
場に限ったことではないと思われます。他力本願では決して益は出ないことを常に胆に命
 
ずる必要があります。
 
 
スランプ
 
 さて、次はスランプの話です。またまた野球選手の話しとなりますがスランプといえば
 
私の世代では良く現役当時の王選手が引合いに出されます。あれだけのホームランバッタ
 
ーといえど良くスランプに陥っていたようで必死に素振りをする王選手の姿がよくテレビ
 
に写しだされていたりしました。スランプを乗りこえるには、とにかくバットを振る事と
 
考えておられていたようで、これも有効なスランプ脱出法の一つであると思われます。  
 
 何にせよ、ある程度経験を積んでいくと、どこかで壁にぶち当たることは良くあります
 
。ただ、あくまでこれはそれなりの経験を積み実績を持った者の話で、都合悪いことはす
 
べてスランプとしてしまう方もいらっしゃいますがこれは話しは別です。それなりの実績
 
をつんでいたのに突如、原因もわからないまま成績がダウンしてしまうようなことがスラ
 
ンプといえると思います。
 
  ディーリングにおいても、突然、大きく損失をだして、これが数日間続くという時があ
 
ります。相場の流れが変わったのに付いてゆけないのか、頭を切り替えるのが遅れたり、
 
また相場を見る上で自分でフィルターをかけてしまったりとかが原因かとも思われます。
 
このような時は、熱くなって売買高を増やすことは禁物です。利食いすべき時に、損失額
 
が頭にひっかかり、もう少し、もう少しと見ているうちに、ずるずると逆方向にいってし
 
まいます。また、切るべきときに切れず、取り返しのつかない額の損失がでる恐れも多分
 
にあります。 自分で「はまったな」と思ったら手を出さぬことが第一でしょう。しかし
 
、ディーラーなどの仕事は相場の世界で売買することにあります。特別な事情がない限り
 
、売買は行わなければなりません。ずっと新聞ばかり読んでいるわけにもいきませんし、
 
ある程度は相場に接していないと次の流れをつかむことができなくなってしまいます。ま
 
た、ディーリングはあくまで、トレーディングの補完業務でもあるわけで、当然ながら顧
 
客の注文にも対応しなければなりません。
 
 確かにスランプに陥った時はなにをやっても逆にいってしまいがちです。だからスラン
 
プなんでしょうが、こういった場合には極力売買高を絞るなり顧客の対応玉にフルヘッジ
 
するなりの対処が必要となります。また、神社仏閣に御参りに行くというのも良い方法か
 
も知れません。決して神の御加護を願うわけではないが、気分転換にはなると思われます
 
。私もスランプに陥ると、たまにあのアントラーズで有名な鹿島神宮に行っていったりし
 
ます。
 
 とにかく、冷静になり相場の流れをしっかりみつめることが必要となるのです。ディー
 
ラーにとってのスランプの大きな原因はこの切り替えの悪さによるところが大きそうです
 
。年をとると切り替えが遅くなります(私のことか?)。特に最近ではなにごともはやり
 
すたりのテンポが非常に早くなっており、そんなことも影響しているような気がします。
 
時代の流れの早さは加速しつづけるのでしょうか。
 
 スランプから抜け出すには 第三者の目で相場が見られるようする必要があると思われ
 
ます、そうするとなんとなく相場が見えてきます。相場に入り、気持ちがそわそわしてい
 
る段階では手をださず、冷静さがでてくるまで本格的なディールはやめた方が良いと思わ
 
れます。スランプの時期に大痛手を食うと取り返すのが容易ではなくなります。無心のま
 
まバットを振る王選手の姿を真似るのもやはり一考かとも思われます。
 
 
パニック
 
 「パニック」というとよく引き合いに出されるものにオーソン・ウェルズが演出したラ
 
ジオドラマがあります。私の年代の方でも知らない方もおいでかとは思います。まだ、テ
 
レビもなくラジオの全盛の時代の話しです。しかし、これはオーソン・ウェルズの演出力
 
のすばらしさとともに群衆心理などの研究材料として良く引き合いにだされているのです
 
。このドラマは確か「火星人来襲」という題で、H・G・ウェルズ原作の「宇宙戦争」を
 
ラジオドラマ化したものです。あのタコのような火星人がでてくるやつです。ドラマはい
 
きなり、ラジオアナウンサーが「宇宙からの物体が全米各地に飛来している」とのアナウ
 
ンスでスタートし、まるで実況中継のようなドラマであったようです。当時は前述のよう
 
に、メディアはラジオが主体でテレビなどない時代でありウェルズの卓越した演出力も手
 
伝い、真実と思い込んだ人が全米各地に続出し、パニックを引き起こしたといわれていま
 
す。
 
 当時、火星人を信じていた人がそんなにいたのかとみなすのは早計であると思われます
 
。あまりにリアリティある演出だったために、もしかすると「ありえる」と考えてとりあ
 
えず逃げ出すという人がでたようです。すると、その様子をみて隣人たちも逃げる算段を
 
する。みなしの情報に、次第に状況証拠がそろうことで真実性が加わって来るのです。テ
 
レビ局や警察に電話をかければ、当然、皆かけてくるので繋がらない。ますます、不安感
 
がつのり、「火星人」など存在するわけないだろうといっていた人も、こりゃ大変と荷物
 
をまとめ始める。そしてバニック状態となってゆきます。
 
  これは前述のようにパニックにおける群集心理の実験台(と言うと少し語弊があるかも
 
)として良く取り上げられています。 現在のように多種多様な情報が流れている状態に
 
あってはこのようなことは起こり得ないと考えるのは早計であろうと思います。むしろ、
 
情報過多の状態にあって人は常に新鮮な情報を欲しており、また自分は肝心な情報から取
 
り残されているのではとの恐怖心を常にいだいているといわれています。
 
  実際、情報が生命線である相場の世界ではこのパニックは大なり小なり頻繁に発生して
 
いると思われます。チャートで言うと大陽線、大陰線が出た時、また寄り付きから大きく
 
上放れ、下放れした時などパニック的な売買が行われたといえます。急騰する際の最たる
 
源動力は売り方の買い戻し、いわゆる踏み上げといわれるものです。また、急落の際は当
 
然、投げ売りとなります。損失を膨らませたくがないために、ポジションを整理しようと
 
する動きが一斉に発生するのです。もちろんロスカットルールが適用されるということも
 
あるでしょう。また、良く相場の撹乱要因とみなされているシステム系の売買も入ります
 
。機械的にやっているためある一定線を超すと一斉に順ばり型の売買が入りやすくなるの
 
です。
 
 では、このパニック相場に巻き込まれないようするためには、またあわよくばこれを利
 
用して儲けるにはどうしたらよいのでしょうか。突発的な材料がでたときは確かに回避は
 
不可能であるといえます。夜中に材料が出て朝方、売り気配や買い気配でスタートしてし
 
まうと、とりあえず寄付で手仕舞うほか手だてはありません。しかし、ザラ場中にずるず
 
ると下げていく内に加速されパニック的な売りが出るような時は、手の施しようはあると
 
思われます。
 
  例えば、外部環境などは良いはずなのに妙な安寄りをしたような時などは要注意です。
 
その後大きく下げる場合があるのです。この時、思ったより安寄りしたからと安易に手を
 
出すと痛い目にあいます。また、前にも述べましたが差し値を下げても下げても売れない
 
ときなども要注意です。ラジオドラマの例ではないのですが、皆荷物をまとめはじめてい
 
る時であるといえます。早く逃げないと間に合いません。また単純にチャートの下値抵抗
 
線を割り込んでなお下値を切り下げている時なども同様に危険な兆候であるといえます。
 
値段かまわず売って来ている者がいるのです。本当に、「火星人」が攻めて来た恐れがあ
 
ります。もちろんこの場合の火星人とは日銀の金融政策の変更であったり海外での大きな
 
ニュースであったりします。兆候は状況によりいろいろな形で出てきましょうが、ディー
 
リングを多少経験すればなんとなくこの兆候が見えて来るケースも多く、これがいわゆる
 
経験から培った勘と言えるかもしれません。
 
 ただ、注意すべきは流れの方向と逆のポジションを持っていた時の対処です。このよう
 
な時は目の前にフィルターがあるがごとく、いつもの冷静な目を失うことがありますので
 
注意が必要です。ディーリングは勘と度胸といいますが、切る度胸をつけておかないと当
 
然ながら予想外の損失を招きます。もし、玉を持っていない時、もしくは流れに添うポジ
 
ションを持っていた時にパニック売りの前兆が見えたときこそ、まさに儲け時であるとい
 
えます。ここで儲けずしていつ儲けるともいえます。他人の不幸を犠牲にしての儲けは気
 
がひけるかも知れませんがやはりこれは大きなチャンスとみるべきでしょう。ディーラー
 
の多くは順ばりといわれるスタンスをとっています。つまり、上がったら買い下がったら
 
売る。そして相場がそれ以上に加速したときに反対売買で儲けるという形です。そうなる
 
と、実はパニック相場こそディーラーの手腕が問われる場であるとも言えます。ただ、投
 
資家にとってたまったものではないことは確かですが。 
 
 
固定観念
 
  ディーラー35才定年説というのがあります。瞬時に変化する相場に対し臨機応変に対
 
応するには若くなければやってられないということしょうか。私もすでに38才。いうな
 
れば定年後の御隠居の年となってしまいました。ではなぜ経験豊富なディーラーが儲けら
 
れなくなってゆくというのでしょうか。
 
  一番の原因はその経験に基づく「固定観念」が形成されてしまうためと考えられます。
 
時代は移り変わります、そしてその流れは加速しつつあります。確かに安定した業務にお
 
いては経験がものを言う事は確かでしょう。業務の生き字引といった方はどの会社にも何
 
人かいらっしゃると思います。しかし、今日のようにこれだけ技術革新の進歩が速まると
 
安定した業種などは衰退する運命にあるといえます。金融界にもいよいよビックバンがま
 
もなくやってきます。ある意味でもっとも保守的な業種である金融機関にも当然ながら時
 
代の波は押し寄せるのです。すこし遅かったような気もしますが。
 
  固定観と言えば私も以前にこのような経験をしました。私はディーリングに携わる前に
 
事務(バックオフィース)の仕事をしたことがあります。そろばんができずに(小学校時
 
代にとったそろばん三級ではしょうがないようです)女子社員に白い目でみられた経験が
 
あります。当時、電卓はあったものの高くて会社には少なかったのです。わずか十数年前
 
の話しです。そして、今度は電卓が入っても機械をあてにできないとかでそろばんで検算
 
を入れられました。そのうち、パソコンが導入されやっと私の時代だとみなに使い方を伝
 
授し、業務の効率化につとめたものの今度は電卓でチェックを入れられたような始末です
 
。機械は信じられないとの「固定観念」が働いているのでしょうが、効率性を高めようと
 
して余計な仕事を増やしているといった典型的な事例です。
 
  相場においても同じようなことがいえます。変に相場の方向性を決めつけてはいけませ
 
ん。「こんなときは売られるよ」といった固定観念を持ったりするとろくなことがありま
 
せん。相場も常にいろいろな作用で動いています。そしてその要素にはいろいろなものが
 
ありまた要素に対する比重も刻々変化します。動物の細胞は良くできていてどのような環
 
境にも適応できるように(限度はあるようですが)適切な遺伝子の組み替えといった作用
 
が随時行われているといわれていますが、相場においても感覚で遺伝子でいう組み替えを
 
行わなければなりません。儲けるディーラーは切り替えが速いともいわれる由縁です。売
 
りと騒いでいたかと思うと、「えっ、まだ売っているのもう買いだよ」とすでにポジショ
 
ンが変化しています、まさに切り替えがうまく働けば相場に生き残るチャンスが増えると
 
思われます。
 
  また、気持ちの切り替えも大事です。仕事が終わるやいなや、もう商いやポジションの
 
ことは忘れているというような切り替えのうまさが必要となります。そうでもしないとス
 
トレスが溜まる一方となり、ストレスは決して相場を張る際に弊害となります。あとで思
 
い悩んでもしょうがなありません。悪いことは早く忘れることも必要です。良く、相場の
 
夢をみるというディーラーがいらっしゃいますが、なにもそこまで思い込まなくても、と
 
私など思うのですが。
 
  この切り替えということはやはり若い方が有利であろう事は確かだとは思います。先入
 
観などないため切るのも容易となり、また会社のためうんぬんで必要のないポジションを
 
とったりすることも少ないはずです。利食いも月々の利益などに追い込まれていないため
 
じっくり構えられるのでその分利益も上がるとも思われます。ベテランは場数を踏んでい
 
るだけに、いろいろ思い悩んでいるうちにチャンスをのがしてしまうどころか損失を拡大
 
してしまうことも多い事も確かです。
 
 別にディーラーに限らず、人は常にこの「固定観念」という邪魔者を取り除くように努
 
力する必要があると思われます。革新が安定すると衰退に繋がります。常に新鮮な心持ち
 
で望まねばなりません。「固定観念」を打破したとき新しい発想もうまれるのです。ビー
 
ルはラガーでなければ売れない、という固定観念を打ち破ってスーパードライが生まれま
 
した。そしてついにアサヒはガリバー、キリンを抜きました。株や土地は上がるものとの
 
固定観念がバブルを生んだのです。貧弱な通信網のインターネットの普及には限度がある
 
という固定観念を抱いたがため、あのビル・ゲイツすらインターネットに乗り遅れました
 
。例をあげればきりがありません。もし、あなたがこんな「固定観念」に縛られだしたと
 
感じたらすぐに状況を再認識しなければなりません。相場の世界も含め、常に世の中は新
 
しいものを求めているのです。おかげで、人間の世界はまだ前進しているともいえるので
 
しょう。
 
 
視点
 
  スピルバーク監督の代表作にETという映画があります。この映画の撮影は、子供の視
 
点の高さで行われたということを知っている方も多いと思います。子供の時には大人が大
 
きく見えたり地面の虫や草花が良く目についたりしました。子供の気持ちに近づくために
 
はまず視点を下げることが必要とも言われます。たとえば、幼稚園の保母さんが立ち膝で
 
子供と会話をしている光景も良く目にします。このように視点を変えることでこれまで見
 
えなかったものが見えたり見えるものが見えなかったりします。物事も視点を変えること
 
で思わぬ発見をする時があります。これまで事業などで成功をおさめた人々も他の人と違
 
う視点で「もの」をみることができたことが成功の大きなひとつ理由と思われます。もち
 
ろん、そこにはタイミングという重要な要素も含まれていますが。
 
  相場においても、この視点の切り替えは重要であると思われます。例えばディーラーな
 
ら投資家の立場で相場を見る必要や、投資家もディーラーが何故右往左往しているのかと
 
いったことを見極めておく必要があると思います。相場は結局市場参加者がつくるもので
 
す。ケインズの美人投票ではありませんが自分が票を投じる時は市場参加者が売り買いど
 
ちらに投じたがっているか見極めて投票しなければなりません。相場にも絶対というのが
 
ありません。美人にも絶対というのがあるんでしょうか。
 
  また、相場参加者が何に注目しているかも常に把握していなければなりません。後で考
 
えるととんでもない視点から相場を見ていたというケースもままあります。昔の話しにな
 
りますが、ミシシッピー川の水位が低下しているというだけで、日本の債券が売られたと
 
いうことが実際にありました。当時、円債は米国債の動向と非常に連動性が高かった事が
 
まず第一の原因です。そして、その米国債は非常にインフレに敏感になっておりそのイン
 
フレを示す代表的な指標としてCRBという指標が注目されていました。そのCRBイン
 
デックスは穀物相場に比重が大きくかけられていたのです。穀物相場は当然、天候等に左
 
右されやすいのです。アメリカの穀倉地帯はミシシッピー沿岸です。そのミシシッピー川
 
の水位が低下しているということは、雨が降らずに水不足ということを示しています。そ
 
のために穀物の収穫量が落ちる、そしてCRBインデックスが上昇、米国債が売られ、日
 
本の債券も売られるといったまさに風が吹けば桶屋が儲かる的な発想でした。今考えると
 
なんでそんなものを注目していたんだと思うことでも、当時はみな真剣にミシシッピーの
 
水位を気にしていたのです。
 
  また、テクニカル指標にもはやりすたりがあります。いまだに信仰(?)している方も
 
多い一目均衡表というテクニカル分析が流行ったこともありました。そういう時はねこも
 
杓子も均衡表ではうんぬんといったコメントをだされていました。雲を抜けたとかで売り
 
買いを行っていた方も多いと思います。テクニカル指標などはこれで相場が当たると評判
 
が立てばみな注目することによって実際に相場参加者が疑心暗鬼ながら売買に使用するよ
 
うになります。そうすればするほど確かに一時的にせよ当たるようになることも事実です
 
。するとまた評判が高まるといった循環を繰り返すのですが、残念ながらテクニカル指標
 
にも絶対的なものはなく、いづれみなの視点はちがうものに移っていきます。そういえば
 
占星術が流行ったこともありました。一時的にせよ当たると信仰者が増えます。私も糸川
 
英夫氏の占星術の本のデーターで分析を試みようとしたこともありました。非常に短期的
 
にものをみるにはこういった、はやりすたりの視点を気にする必要がります。しかし、木
 
見て森を見ずのたとえではありませんが、もう少し高い視点で相場見ていく必要があるの
 
も確かです。例えば先程のように投資家の視点を持つ必要もあるし、状況によっては政治
 
家の視点に立つ必要もあります。また、ヘッジファンドの視点も今は必要でしょう。相場
 
をいろいろな視点、観点からみるべきことはいうまでもなく相場に勝つうえで重要な要素
 
となると思われます。
 
 
反射神経
 
  ディーラーと呼ばれる人種は常に情報端末のディスプレーとにらめっこしています。ロ
 
イター、テレレート、時事、ブルムバーグ、クイック等の端末。そして円債関係者は、東
 
証先物端末と日本相互証券の端末等々。特に相場が動いている時など、神経を張り詰めな
 
がら端末のディスプレーをみています。ファミりーコンピュータ、いや今はプレイステー
 
ションでしょうか、そういったゲーム機で夢中になり徹夜している状態と言えばわかって
 
いただけるかと思います。このため、仕事が終わると目が痛みます。帰りの電車でぼろぼ
 
ろと涙を流しているのもしばしばです。他の人がみたら、「あら、リストラかしら」「き
 
っと不倫がばれたのよ」「社内いじめよ、きっと」とあらぬ想像をかきたてられてしまっ
 
ているかもしれません。
 
  なぜ、これほど集中して見ているのかと言いますと、値動きを追っているということも
 
ありますが相場の動向にからんだニュースが流れてはいないかと、各通信社のニュースを
 
虎視耽々と睨んでいるわけです。たとえば、9時20分と10時10分に行われる日銀に
 
よる資金調節や、日銀短観、鉱工業生産指数とかマネーサプライといった各種経済指標の
 
発表などが即座にこれら端末で発表されるからです。また、日銀総裁や蔵相、政府首脳の
 
発言などもこれらの端末から流れます。
 
  定例とか、発表時間があらかじめわかっているものはとにかくとして、突然、流れてく
 
るものも当然あります。「現在の株価は、経済実態に対して高すぎる」といったコメント
 
が政府要人から突如流れると、株式相場は突然、急落したりします。こういったコメント
 
が流れた時は、まさに反射神経がものをいいます。見た瞬間に売買注文を押さなければな
 
りません。しかし、えてしてこういったときは、トイレにいってたりするのですが。
 
  ただ、実際にその場で注文を執行しても、売り気配などに巻き込まれるケースも多く、
 
反射神経だけでなんとかなるものではないことも確かです。しかし、早めに気がつけば対
 
処できることもあります。かなり昔になりますが、公定歩合が上がる可能性が強まってい
 
たとき、時事メインのスポットニュースで「公」という字がでただけで、ショートして大
 
きく儲けたこともありました。しかし、こういったことはまれであることも事実です。特
 
に円債ディーラーは(私を含め)英語に弱い。英語で重大ニュースが流れても反応せず、
 
皆が辞書を片手に訳し終わったころ?動きだしたり、日本語になってから動くいうのも多
 
いのです。本当ですよ。
 
  別に、だからといって反射神経を磨けというわけではありません。むろん、ないよりあ
 
った方がよい事も確かですが。問題はこういった非常事態にどう対応するかであると思い
 
ます。現在の相場の居所、マインドがどちらに傾いているか。経済状態を相場がどう認識
 
しているかなどを常に頭にたたきこんでおかねばなりません。突然流れたニュースが、そ
 
れ自体はそれ程影響を及ぼすとは思えないものの、相場の流れを変えるきっかけとなるこ
 
ともあるからです。なんでこんなに反応するのか相場がおかしいんだ、と思う前に相場の
 
状況を良く認識する必要があります。そうすればこのような材料でで下がるのはおかしい
 
とかってに決め込んで、切るのをためらいさらに損失を大きくするということもなくなる
 
はずです。しっかりした状況判断と反射神経。両方兼ね備えられれば、相場に勝ち残るの
 
は容易になると思われます。
 
 
沈着冷静
 
  自分の感情を抑制し冷静に状況判断を行う。人間的な魅力には欠けるものの、非常事態
 
でも乗りきってしまう。確かにかっこいいのですが、実際にこんな人物が存在するかとい
 
えば、やはり物語だけのような気もします。非常事態でも慌てることなく、落ち着いて眉
 
ひとつ動かしていないと思ったら、気絶していたという笑い話もあります。
 
  やはり人間ですからうれしい時には笑い、悲しい時には泣いてもいいではないかと思い
 
ます。相場が、思った方向に動いたら、○○買い!!と声を出し、反対に動いたら机を蹴
 
飛ばす。やりすぎは問題ですが。実際にディーラーには奇声を発したり、物にあたったり
 
する人間が多いようです。ポジションを持つだけでストレスがいっきに溜まるため、なに
 
かで発散しようとする行為なのでしょう。できれば、他の者に迷惑をかけない程度でお願
 
いしたいと思いまいが。自分と反対のポジションを持つディーラーが大喜びしている時、
 
コノヤローと心のなかでさけんでいるのは私だけではないと思います。
 
  ただ、注意したいのは、表情・表現はとにかく、相場に対してはなるべく冷静沈着に対
 
処するように努力する必要があると思われます。熱くなっては当然負けます。少しで済む
 
損失を雪だるま式に増やさぬためには自分を押さえる能力が必要です。この能力が欠如し
 
ている方はどうか相場には参加しないでください。6割の勝率なんて無理ですよ。このよ
 
うに必要なときにこの自制心をもてるかどうかが、最終的にディーラー等の資質を決める
 
といって過言ではないと思います。このためにはやはり経験を積むしかないと思います。
 
若いうちは、ざら場中に大騒ぎしても、「活気があって良い」となりますが、ベテランが
 
騒いでいると「年甲斐もなく」となってしまいます。経験を重ね、波に揉まれると、いざ
 
という時に冷静に対処できるようになるはずです。人間味をもちながら、肝心なときに冷
 
静沈着となれる。言うのは易いのですが、実際には確かに難しいことではあります。しか
 
し、なるべくそうできるように努力しなければなりません。
 
 
右往左往
 
  以前にカップヌードルのCMで、原始人が恐竜に追われて、右・左にドタドタと動きま
 
わるのものがありました。外国で外人の俳優を使って撮影したとのことですが、なかなか
 
特撮もすぐれ良く出きたCMでした。しかし、この右往左往はなにも原始人に限ったこと
 
ではありません。現代人の行動にも良くみられると思います。相場においてもこれは良く
 
ある現象です。するすると買われて、あわてて買いを入れると、突然止まって今度は、す
 
るすると下げ始めるたりする。今度はあわててみな売ってくる。特に瞬時に売買をするこ
 
とを生業とするディーラーにおいてはこの現象は顕著であると言えます。「相場は相場に
 
聞け」という名言(迷言?)がありますが、まさに相場の動きを信じるあまり、その動き
 
で右往左往してしまうのです。東証とかの板を目の前にしていると、つい目先の動きに囚
 
われがちです。この動きをうまく掴んで、ちゃっかりと日々の値鞘稼ぎをするディーラー
 
もいるようです。いや、わざと相場を振らさせてひと稼ぎしようとする輩も実際多いよう
 
で、板(売りものと買いものが掲示されている)に見せ玉といわれる大口の指し値を入れ
 
て、相場参加者に動揺を与えようとしたりするのです。これも何度もやっていると、さす
 
がに見破られます。まあ、これはテクニックというより、自分のポジションの方向に動い
 
てくれないための苦肉の策ということでしょうか。私などはこういった事は労多くして益
 
少なしと思うのですが。
 
  しかし、相場は心理戦です。日銀総裁が同じことを言っても、その時の相場環境で捉え
 
方は大きく異なってしまいます。前述の原始人の例でも、一番前を走るひとから、恐竜に
 
踏まれそうになっている人まで長い列ができています。如何に適切に判断できるかがこの
 
原始人達の生死を分けます。反射神経のところでも述べましたが、相場でも実際に値が動
 
いてから対処していては遅い場合が多いのです。画面に出ている注文は、すでに数秒前に
 
出されたもので、それを見て動こうとする参加者が一斉に注文を出すのです。適時に反応
 
できた参加者は、その後の群集のおかげでゆうゆうと利食いがだせます。しかし、この時
 
点でもまだ、判断しかねている参加者もいるのです。確かに目先の利鞘稼ぎだけが相場で
 
はありません。むしろ、機関投資家など長期のスタンスで動いている投資家は、そう年中
 
、右往左往していては経費だけでもかさんでしまいます。ただ、大きくトレンドが変わる
 
ような材料には適切に対応しないといけません。相手は相場です。目先の動きの積み重ね
 
が結局、大渦を巻き起こします。カオスの理論ではありませんが、アメリカの蝶の羽ばた
 
きが太平洋に台風を起こすのです。もう少し、もう少しといっている間に恐竜に食われて
 
たということにもなりかねないのです。
 
 
朝令暮改
 
  相場の世界は一寸先は闇です。明日の相場もわからない以上、長期予想などは無意味と
 
私は常々考えています。確かに予想は予想であり現状をとらえその延長上に先行きの見通
 
しを建てる事は必要かもしれません。むしろ、その予想の組み立ての仕様が必要になる場
 
合もあるかもとれません。しかし、相場参加者が必要としているのは、あくまで当たる予
 
測です。確かに1ヵ月先の相場が正確にわかれば、一生遊んで暮らせるというより相場自
 
体なくなってしまうでしょう。その不確定要素が相場という場を与えているともいえそう
 
です。このため、どうあがいても予測も困難です。

 
そして、やはり実際に相場に
 
参加していない限り、相場の恐さはわからないであろうと思います。相場参加者も当然な
 
がら、予想・予測は常に行っています。いきあたりばったりの者はいないはずです。相場
 
に入っていることによって、その相場に内在する力やベクトルのようなものを肌で感じ、
 
その予測を状況に応じて適時に変更しているはずです。
 
  しかし、その時々で多少の軌道修正はするにしろ、基本的なトレンドをどこかで意識し
 
ていることも確かです。その、拠り所としているのは人によってファンダメンタルであっ
 
たり、チャートであったり、また場合によってはエコノミストの見方であったりす
 
ると思います。ただ、その予測が外れた時の責任はすべて当人に帰するのです。したがっ
 
て、あの人が言ったからと、かチャートがおかしいとかの言い訳は効きません。売買損益
 
という数値ではっきりと示されてしまうのです。その点、第三者はいいですよね。今回は
 
特別とか、異常事態とかで言葉を濁すだけでよいのですから。相場は異常事態の連続であ
 
るといっても過言ではないともいえるのですが。そういうわけで、相場参加者はえてして
 
朝令暮改どころか、一分前に言っていたことと実際にやっていることは異なる場合も多々
 
あります。いや、むしろその方が多いかもしれません。
 
 
リーク
 
  相場には一定のルールがあります。取引所で行っているものは時間が制限されています
 
。また、相場操縦なども禁止されています。しかし、相場参加者は誰しも利益を稼ぐため
 
に血眼になっています。このためルールやぶりに似た行為も行われることもありました。
 
  相場を張る上で情報は生命線です。相場参加者に限らず人間誰しも他人の知らない情報
 
を得たいという願望を持っていることも確かです。それがステイタスを示すからと考えて
 
いる者もあれば、それで一攫千金を狙おうとしている者もいます。人間、他の人が知らな
 
い情報を持つとその瞬間に優越感に浸れることも確かです。ただ、この優越感を実感とし
 
て感じとるために他の者に「ここだけの話しだが・・・」と伝えてしまうこともままあり
 
ます。「えっ、何で知っているの」と聞かれ、「ちょっとね。・・」となるのです。何が
 
ちょっとでしょうか、俺はお前と違うんだと本当は言いたいのでしょう。
 
  いくら情報開示だ、ディスクロージャーだといっても、肝心な情報ほど見えてこないも
 
のです。銀行も倒産して初めて不良債権の額がはっきりしたりします。もちろんプライベ
 
ートな情報など開示してもらっては困るというものも多いことも確かです。ただ、情報を
 
秘匿することで立場を擁護しようとする習慣が人間にはあることも確かであす。例えば米
 
国などの軍事関係者など階級に応じて接する事のできる情報が異なるようです(トム・ク
 
ランシーなどの読み過ぎか?)。偉くなりたいということは、むろん金銭的な欲求からも
 
あろうが、他の者が接することのできない情報を得ることができるためということも強く
 
影響していると思われます。
 
  結局、資本主義とか民主主義は不公平の上になりたっているといえます。ビル・ゲイツ
 
の資産と私の資産を比べれば明らかです。あまり年は違わないのに。しかし、ビル・ゲイ
 
ツなどは確かに自分の才覚と時代の流れを適格に見る目そして、得たチャンスを最大限生
 
かせる能力でここまでのし上がって来たと思います。DOSをIBM用に提供できたのも
 
、たまたま入ってきたチャンスをタイミングよく利用できたことが原因と彼自身の著作な
 
どで述べられています。確かにこのチャンスというものは万人に公平にあるといっても良
 
いと思います。公平なゲームでの勝ち負けに関しては誰しも文句はいえません。問題は不
 
公平な状況におけるゲームなのです。
 
  株式市場ではインサイダー取引は禁じられています。株式取引というゲームを公平化す
 
るためです。では、以前に債券市場で流れた妙なうわさはどう判断したらよいのでしょう
 
か。日銀短観や鉱工業生産指数など発表前に流れたうわさがなんと実際の数値とピタリ一
 
致したのです。景気動向指数など前もってある程度計算が可能なものならとにかく、短観
 
などはアンケート集計であり、正確な数値を掴むには内部情報が漏れたとしか言い様があ
 
りません。実際、かなり以前には短観のコピーそのものが流れたことも実際にありました
 
。このような前科があるため、先程の噂の件もリークと疑われてもしょうがないと思いま
 
す。日銀もリークがあったことは絶対に認めませんが(これだけ状況証拠があっても)、
 
発表日や発表時間を繰り上げるといった対策をとりました。しかし、内部調査をしっかり
 
やっていただかなくては今後も同様の事は起こりえます。
 
  ただ、この情報を握ったものは何故、前もってうわさとして流してしまったのでしょう
 
か。そっとポジションを作って儲けりゃ良いと思えるのですが。確かに数値発表前に相場
 
に与える影響を押さえるため、当局自ら流したという説もありえないことではありません
 
が、もしそれが本当ならは、それこそ言語道断と思われます。むしろ、最初にも述べたの
 
ですが、優越感に浸りたいがために他の者につい流してしまったからとみるべきではない
 
かと私は思います。
 
  それはともかく、リーク自体すでにルール破りであることは確かであり、できるだけ徹
 
底した調査を望みたいと思います。情報を流した者はたとえ、その者の立場から知り得た
 
といえど守秘義務を担っているはずです。このため、株式市場におけるインサイダー取引
 
同様の処罰を帰するべきであろうと私は思います。鉱工業生産速報値では、リークの存在
 
を隠蔽するためか、相場を撹乱し一儲けしようとしたのか知らないが、わざと異なる数値
 
をうわさとして流した気配もありました。多分、もう今後は警戒してリークした数値は流
 
しては来ないとは思いますが、依然としてリーク自体は続くことは十分に考えらます。こ
 
れでは一部の者が自分の才覚など関係なく、何等努力せずに売買益を揚げる結果は続いて
 
しまいます。どうかこういった事態は早急になくしていただきたい。神経をすり減らしな
 
がら相場に参加している者がばかをみてしまいます。楽して儲けることなどできないこと
 
を是非示していただきたいものです。 
 
 
そして、複雑系 
 
  はやりもの好きの私が最近興味を持出したのは複雑系という考え方です。最近になり多
 
くの複雑系に関する書籍もでてきました。複雑系というのは簡単にいうと「たくさんの要
 
素がつながりあっていて思いがけないことが起こること」(複雑系からみた経済、西山賢
 
一氏)です。常に進化している生物の生態と経済とかを同様の土俵で考えてみようとする
 
のが複雑系の考え方です。「特別の原因がなくても複雑系としての経済に内在する仕組み
 
から、為替も株価もまれに大きな変化を示し、ひんぱんに小さな変化を示すこととなる」
 
(西山氏)。ちょっとした誤差が後に大きな違を生み出すのがカオスの考え方です。複雑
 
にからみあった要素の一部の変化が大きな変化を生み出し、相場でいう「予想外」といっ
 
た現象を生み出したりしているのです。
 
  たとえば病気にしても原因がはっきりしているものもありますが、ストレスとか言うよ
 
うなものは原因がはっきりしていません。単純な分析では無理があり、総合的な分析が必
 
要となります。また、同様の遺伝子をもった細胞がどのように手となったり脳となったり
 
筋肉となったりするのでしょうか。免疫の仕組みも徐々に解明されているといってもまだ
 
まだ未知の部分が多く、新たな考え方が求められたりしています。ランダムのようでなん
 
かしらの規則性が見出せるもの、そういったものを分析しようとするのが複雑系という考
 
え方といえましょう。車の渋滞、鳥の群れの動き、そして相場と言われるもの。個々をみ
 
ると単純な動きなのであるがそれが集合すると大変複雑な動きとなります。米国サンタフ
 
ェ研究所ではすでに10年以上前からこの複雑系という考え方の研究を行っているといる
 
そうです。その研究のひとつに経済、なかでも相場の動きといったものも入っているよう
 
です。
 
  ノーベル賞授賞者級の方々の研究に、私のようなしろうとがどうのこうのと口出しはで
 
きないと思いながらも、とらえにくい相場の動きに対して新しい観点からの分析が可能に
 
なるのではとこの複雑系に対しては期待しています。
 
 
  ここでなぜ相場において価格の形成が行われているのか改めて考えてみたいと思います
 
。まず最初に、相場参加者は何故、リスクがある取引を行っているのでしょうか。もちろ
 
ん主眼は利益を上げるためです。当然、損をするために相場を張っている人はいないはず
 
です。結果として、そうなってしまうことはままあるのですが・・・。上がると思ってた
 
から買うのですし下がると思ったから売るのです。
 
  ただ、立場とか性格とかの違いで相場に入るタイミングが異なります。債券先物とかは
 
非常に流動性が高く値が瞬時に変化してゆきます。債券の相場も基本は最終投資家と呼ば
 
れる大手投資家の動向が大きな流れを決定しています。しかし、この日々の細かな動きを
 
演出しているのはディーラーと呼ばれる相場参加者です。米国ではフロアー・トレーダー
 
とかスカルパーとか呼ばれている参加者が流動性を高めているといわれます。
 
  これらの相場参加者は売買を行っても、すぐに反対売買をし鞘取りをしようとしていま
 
す。すぐに、というのは人や状況によって異なります。数秒、数分、数時間?。益がでれ
 
ばすぐに手仕舞うし、損がでてがまんしきれなくなると投げたり踏んだり(買いから入っ
 
て売るのが投げ、売りから入って買い戻すのが踏みと呼ばれます)するのです。
 
  債券先物の日中足というのがあります。最近の情報端末はずいぶん発達しついた値をす
 
べてグラフ化してくれます。昔は、自分で瞬間の動きをポイント&フィギュアでつけてい
 
たり私の知り合いのディーラーは全部の値をパソコンに入力していました(良く売買する
 
時間があったと思いますが)。この日中足をみると予想以上に値動きが激しいことがわか
 
ります。
 
  これらディーラー(反論はあろうが、日計り中心に売買する参加者を総称して)が売買
 
の目安としているのは、例えばこの瞬間の動きを示すグラフや、各種ニュース端末、そし
 
てディーラー間の情報交換です。むろん、直接投資家の動向がつかめた時は、その投資家
 
動向が最重要視されます。しかし、この投資家動向は通常は噂というかたちの口コミで広
 
がります。受けた業者も当然守秘義務があります。○○が売ってきたよ、などと他社にも
 
らすことならもう注文はこないであろうことは確かです。しかし、結局、どこからか漏れ
 
てきます。
 
  ディーラーはこういった情報をもとに売り買いを繰り返しています。口コミには確かに
 
タイムラグがありますが、しかし情報端末などは皆ほぼ同じものを使っています。大きな
 
ニュース等がでたときには一方通行となる場合がありますが、これは非常にまれであり通
 
常はバラバラの波といった動きをしています。ディーラーは多少でも経験をつむと、だい
 
たい同様な相場の見方が形成されると思います。それでもこのうねりが何故形成されるの
 
でしょうか。やはり個々人の性格や相場の経験度、ポジションの状況、上司が近くにいた
 
といった状況?とかの要素で売買のタイミングが違ってくるのでしょう。
 
 
  しかし、こういった個別の要素が相場というものに集約されるとまるで生き物のような
 
動きをするのです。もしこの動きが解明されれば現代の錬金術を解き明かした事になると
 
も思われます。過去にも多くの者がこれを解明せんとがんばってきました。しかし、これ
 
で絶対儲けられるという物を作ったものはいません。しかし、なんとかこれにアプローチ
 
できないでしょうか。複雑系という考え方がここに役にたつような気もするのですが。
 
  以上話があちこちとんでしまいましたが、相場に臨むにあたって是非目を通していただ
 
きたいことをいくつか羅列させていただきました。もちろん、これを読めば儲かるなとど
 
というものは存在しません。ただ、やり方次第では相場という荒波のなかで利益を確保す
 
ることは可能と思われます。確かに運用スタイルが異なれば当然、マーケットに接する方
 
法も異なってくると思われます。銀行でも投資勘定と商品勘定では運用方法は違うであろ
 
うし、生保や年金運用、信託、官公庁、事業会社、外人、個人などなど立場かわれば相場
 
に対するスタイルは大きく変ります。しかし、すべてにおいて「儲ける」という目的に変
 
わりはないはずです。「運用利回りをアップする」というのも結局、相場に勝つことに相
 
違ありません。相場に勝つことを目標とするならばこのサバイバル術が有効に働くことも
 
あるのではないかと考えています。特に「勝率6割をめざせ」ということはやはり念頭に
 
置いておく必要があるのではないかと思います。なかでもプロ同士の駆け引きの場となっ
 
ている債券相場など勝率アップこそ相場参加者の生き残るすべと考えています。最後にこ
 
こ数年の間に生じた巨額の損失事件について、その代表として住友商事の事件を事例研究
 
としてコメントします。
 
 
巨額損失事件
 
  1996年6月14日に発覚した住友商事の銅取引における不正取引は、英国ベアリン
 
グズ証券や大和銀行の事件などにひき続き、ついに日本を代表する商社でも、ディーリン
 
グにおいて巨額の損失を出すという事件が起こったことで国内外に大きなショックを与え
 
ました。
 
  今回の住友商事の例は金額からも史上最高の損失額であったようです。しかし、浜中氏
 
も井口氏もニック・リーソン氏も長い期間にわたって、よくもだまし通したものだと思い
 
ます。あらためて、リスク管理の甘さが痛感させられます。ディーラーは熱くなるとなに
 
をしでかすかわかりません。トイレの壁を壊す程度ならいいのですが(実際あった話です
 
)、損を取り戻そうとかっとなって相場を張って儲かるはずがありません。自制心を取り
 
戻すためにもロスカットルールなり、ポジションの限度額が設けられているはずで、これ
 
を徹底させる仕組みがつくられているのが当然といえます。また、回りにもディーラーの
 
善し悪しを判別しうるベテランのディーラーなりいたはずでしょうが、見抜けなかったよ
 
うです。
 
  実際、住商の浜中氏の近くにいたディーラーに間接的ながら話しを聞いても、少しも損
 
失を被っているようなそぶりはみせなかったとの話です。実は私もこれら事件の前に発生
 
した東京証券の外債における損失事件の当事者と何度か顔を合わせたこともありましたが
 
、あの人がそれほど損失をだしていたとはまったく想像できませんでした。
 
  新聞等の報道からみると、浜中氏は少なくとも10年前から損を出していたとか。損失
 
額は約18億ドルと報道されていましたが、腕利きディーラーにみせるために少なからず
 
益も計上していたはずで実際の損失はこれよりは少ないとは思いますが、信じられない額
 
の損失であることにはかわりありません。損失を取り戻すために商いが増え続けついにミ
 
スターファイブなどと呼ばれる程になり、また見せかけのために多大な犠牲を会社に強い
 
たことは確かです。
 
  多分憶測ではありますが、彼らは、当初ある程度儲けを出したのではないかと思います
 
。どのディーラーも50%の勝率はあり、たまたま、勝ったにもかかわらず自分の実力と
 
過信してしまった可能性が強いと思われます。まわりでもちやほやされ、また、業界内で
 
も名がでてくると余計にうぬぼれて一時的に損を被ってもいずれ取り戻せると思い込み、
 
ポジションを次第次第に膨らませて、結局、多額の損失を被ってしまう。こういうことは
 
大なり小なり多く見受けられます。元大和銀行行員の井口氏もやはり米国債の取引では名
 
うてのディーラーと思われていたようです。通常はこういったことは、早期に発覚され配
 
置転換等させられ、相場から遠ざけられるのが普通ですが、たまたま、隠しおおせたため
 
このような結果となったてしまったと思われます。
 
  しかし、ただのディーラーが良くここまで過大評価されたものです。浜中氏は温厚でソ
 
フトなイメージの紳士だそうですが、日本を代表する商社ですらその人間の適応性等の適
 
切な評価ができないようです。世界的に有名だというので、住友商事の社長まで会いに行
 
ったとか。大和銀行の井口氏も嘱託の身ながら本社の重要な会議に出席したりしたようで
 
す。人事のむずかしさが痛感させられます。
 
  ただ、確かに相場というのは特殊な環境であることは確かです。商社にしろ銀行にしろ
 
相場に携わる者はほんの一部であると思われます。また、大手企業ほど配置転換は頻繁に
 
行われています。やっとディーリングに慣れてきたら異動というケースも多いと思われま
 
す。これでは確かに人は育ちません。ただ、事件を起こした人間達はたまたま同じ業務を
 
何年も続けられる立場にいたことも事件を大きくさせる原因となっています。良い悪いは
 
別にして結果的に相場という特殊業務の専門家となり、他の者の信頼を大きく得ることが
 
できたと思われます。もし、本当に儲かっていたのならこれほど頼もしい存在はありませ
 
ん。しかし、実際にはあせりだけで相場をはっていた最悪の相場師であったわけです。
 
  管理上の問題も確かにあります。しかし、人間を管理する上で信頼という2文字に特に
 
日本人は比重を置きがちです。これでは同様の事件はなくならないでしょう。特に相場に
 
携わる者は厳重な管理を必要とされます。そして、ディーラー等を時間をかけて育てあげ
 
なければなりません。それには相場のベテランも必要となります。相場の恐さに精通し利
 
益の上げることのむずかしさを知っている者が必要でしょう。
 
  昔、債券相場が本格的なディーリング相場の様相を呈した時代がありました。89回国
 
債が指標のころの話です。この時は大手証券を中心としたグループが債券相場でまるで仕
 
手戦のような買い仕掛けをしていました。しかし、この債券バブルも長くは続かずタテホ
 
ショックなどを生み出しました。多くのディーラーが多大な損失をだして消えてゆきまし
 
た。しかし、この異常相場のなかで、実は慎重にリスク管理をしていたところがあったの
 
です。一見、大きく仕掛けをしているようにみえて、実はうまくポジションを減らしなが
 
ら利益を出していたのです。そして、最後の大きな下落の際にはそれほどの痛手はくわな
 
かったのです。リスク管理に失敗したところは、ほんとうに悲劇的なこともあったようで
 
す。このように相場に精通しリスクをしっかり掴んでいる者がいることはたいへんに重要
 
なことです。
 
  最近起きた巨額損失事件、そして銀行の不良債権処理問題。これらはすべて相場にから
 
んだ事件です。特に日本人はみんなで渡ればこわくないといった意識が強く、銀行当事者
 
も相場が悪かったと相場のせいにしている気配もありますが、相場ではなく相場感が欠如
 
していたことが数兆円もの不良債権を生み出してしまったのです。
 
  相場は確かに恐いものですが、やり方次第では富を生み出します。これを読んでいただ
 
いた方がもしマーケット・サバイバルに際して多少でも得るところがあったならば幸いで
 
す。私自身は、派手なディーラーではありません。しかし、これまで相場の世界で生き残
 
ることができました。これを読んでいただいた方が一人でも多く儲けていただき、この非
 
常におもしろい相場という世界で生き残ってほしいと思います。
 
 
  とりあえず、これでこのマーケット・サバイバルはいったん終了とします。ここま
 
でつたない文章ながらつきあっていただいた方には大変感謝します。もし、御意見・
 
感想等いただければ幸いです。1997年3月吉日