参考文献  解説1



日本の戦争 図解とデータ
桑田 悦・前原 透 共編著

日清戦争から大東亜戦争までの主要67の陸海空戦を作戦地図と解説を対象表示したもので、日本の主要な戦争・作戦の特性・経過・結果等に関する簡潔なる要約と、作戦経過図及び重要な各種データから構成される。 大東亜戦争が主題となる部分で約三分の一を占め、「開戦へ」「初期進攻作戦」「攻防の転換」「本格的反攻に対して」「戦争の終末」の5つに区分されている。

著者の桑田悦、前原透の両氏は陸士58期の同期生で、ともに陸上自衛隊を陸将補で退官。長くて豊富な戦史研究の経験に基づく確かな二次資料であると云える。
初心者向けであると同時に、戦史を学んだ人にも全体の流れやデータを簡易に参照できるよう配慮されている戦史便覧の一つである。
 

大東亜戦争の本質
瀬島龍三 河野 収 奥村房夫 義井 博 船木 繁 杉山茂雄 ほか共著

陸軍士官学校や幼年学校の卒業生を中心にした経済人で構成される同台経済懇話会が、『近代日本戦争史 全4巻』に続いて刊行したもので、大東亜戦争の性格と意義と影響について重点的に論述した史論。史実に立脚しつつ誤解の多い俗説に対して批判を呈することを主張している。

大東亜戦争に関する論説としては、左翼/亡国思想は論外としても様々な立場から戦後数多く出版されている。 その中で本書は幾多の論の総括的役割を果たすものの一つである。 日本は正しく秩序ある発展のため、歴史の真実を学び、正しい認識を持ち、自らの国の在り方や考え方を確立していかねばならない。
なお執筆者の多くは陸士・海兵出身であり、かつ戦後は大学で教鞭をとった方々によるものである。
 

昭和戦争史の証言
西浦 進 著

防衛庁防衛研修所 初代戦史室長である西浦進元大佐による回顧録。終戦直後の昭和22年7月に記憶だけに頼って記述した『越し方の山々』を公刊したものである。はしがきに注記しているように「記憶によるものであるが、印象明瞭な事項のみ記述してあり公表を目的としたものではない」というところから見ても、その内容は本音に近いものがあると考えて良く、さらに戦史研究がそれほど進んでいない終戦直後だけに、『歴史の後知恵』という点でその価値が損なわれるところは少ない。

また西浦大佐自身軍政が担当であったので、予算・資材・人事面に関する軍事官僚の証言集としても、昭和史と大東亜戦争史にとって貴重なものである。 淡々としてケレン味のない語り口は、卓抜な識見を持つ西浦の人柄を偲ばせ、証言の信憑性を喚起するものであろう。
 

失敗の本質 =日本軍の組織論的研究=
戸部良一 寺本義也 鎌田伸一 杉之尾孝夫 村井友秀 野中郁次郎 共著

本書は、開戦した後の日本の「戦い方」「敗け方」を研究対象としたものであるが、戦史研究のレベルにとどまらず、大東亜戦争における日本軍の失敗を現代の組織一般にとっての教訓として生かし、戦史上の失敗の現代的・今日的意義を探ろうとするものである。ただし戦争指導全般を扱ったものではなく、失敗例として6つのケースに限定し個々の戦況における失敗の内容を分析している。

特徴的なのは執筆者の多くが、国際関係史や外交史などの歴史学者と組織論や意志決定論(政策決定論)を専門とする理論専攻者であり、本書が「学際研究」の成果であるという点である。
本書は昭和59年刊行以来ベストセラーとなり版を重ねた。戦史に社会科学的分析の導入という手法は高い評価を得て、大学の経営学などで研究書として使用されている。
 

関東軍 =在満陸軍の独走=
島田 俊彦 著

現代日中関係史を専門とし『満州事変』を記した著者が、関東軍の歴史的指標と認められる大事件を中心に、この軍隊の歴史と独走の実態を実証的に描き出そうとしたのが本書である。 昭和期の結節点となった事件と、実行板垣、智謀石原といわれた参謀をはじめ多彩な人間群像を通じて、日露戦争から大東亜戦争終焉までの関東軍の全貌を描き、性格を解明している。

著者は関東軍の行動を表面的に追うのではなく、一口に「独走」といっても個々の場合によってニュアンスの違いがあることを、その背景にある時代の潮流や陸軍中央部の動向をも含めて追求している。
 

帝国陸軍の最後
伊藤 正徳 著

海軍記者として第一人者であった伊藤正徳が、「聯合艦隊の最後」に続き帝国陸軍を弔った大東亜戦争の陸軍史。
戦争を発起した少数の軍閥は憎んで余りあるけれども、その結果として自己最高のものをなげうった140余万人の霊は国民的に敬弔されなければならない。この点を主要なる目的としている。広大な戦場に散った140余万人はいかに戦い、いかに勝ち、そしていかに敗れたか・・・。 それを書き残すことは犠牲者の霊を弔う道であり冷静なる多数国民の希望するところであろう。 犠牲の精神はいかなる時代にも、いかなる場合にも尊いのである。

本書は独特の文体で「読ませる戦記」を狙っており、基調は「精強無比の帝国陸軍」である。 資料としての信頼性に欠けるところなし、とは言えないが、今日の「丸」誌につながる戦記の先駆けといえる作品。