日本の決算開示制度が大きな変革期に遭遇しています。
いや、世界中の国がIAS(国際会計基準)という
新会計基準を目指して変化のときを迎えようとしています。
米国は、自ら作り上げた会計制度をIASに導入させようとし、
欧州はIASがFAS(米国会計基準)の傀儡になることに抵抗しています。
一方、途上国では自国の会計制度をすべてIASに合わせようと取り組んでいます。
しかし、日本の会計制度は過去からの未清算の課題を解決しないまま、
うわべだけIASを受け入れようとしています。

IASが重視するもの

1.キャッシュフロー(特に企業が生み出す自由に使える資金・フリーキャッシュフローを重視する)
 赤字になっても企業は倒産しませんが、目の前の資金が枯渇すると従業員の給与が払えなくなり、商品の仕入れができなくなったりと途端に「倒産」と言う事態に直面してしまいます。また、赤字企業でもキャッシュさえあれば配当出来ますが、資金不足の黒字企業は配当原資の確保に苦労します。そこで、IASではキャッシュフロー計算書を主要財務諸表に位置付け、企業評価に役立てようとしています。

2.将来予測キャッシュフローの割引現在価値としての資産価額(バブルの頃買った事業用土地は適正に評価減する)
 IASがキャッシュフローを重視する姿勢は徹底しています。例えば、ある事業が毎年5,000万円のキャッシュフローをもたらしてくれる場合、その事業の評価は毎年5,000万円の利子がつく定期預金(今なら元本50億円の大口定期)と同じ価値があるとみなします。例えばそれが簿価2,000億円のビル賃貸事業だとすると、IASではそのビルの簿価を50億円に切り下げて1,950億円の資産評価減を行います。

3.金融商品の時価評価(単に有価証券類だけでなく、関係会社貸付金などもCF割引現在価値により評価する)
 時価のある株式などは当然時価評価される(期末日現在の時価=期末時点でのキャッシュフロー)ほか、持ち合い株式や子会社投資などもキャッシュフロー評価の対象になります。これもキャッシュフローには恣意性(企業の意向)が入りにくいからで、厳正な客観評価の究極の形とも言えそうです。

日本の会計慣行が重視するもの

1.期間損益(特に経常利益、異常なほど信仰されている)
 日本では、長らく企業の本来的な活動からの収益(営業損益)に金融損益(営業外損益)を加えた「経常利益」こそが企業の本来の収益力を示す指標とされてきました。そのため、決算発表も「売上高」の次に「経常利益」「当期利益」と並び、日経新聞では各会社について、この3つの数字しか基本的に新聞に載せません。そのため、企業側の意向からか毎期特別区分に何らかの損失を計上している企業が多いのが実態です。(ちなみに、特別区分は「臨時で」「巨額な」損益を計上させるための区分と定義されていて、毎年コレが上がるというのは、かなり胡散臭い)

2.取得原価主義を元にした資産の含み損益
 日本会計の根本は「取得原価(資産購入時に払った代金)」だけが唯一の客観的事実とする会計観を基本に構築されています。そのため、時価による資産の評価はタブー視され、上場株式でさえ評価方法を「原価法」にする限り、50%以上評価が下がらない限り評価替えは認められません。土地に至っては再評価するとなると日経の一面を飾るほどの「異常な」出来事とされます。

3.税務会計を中心とした硬直的な決算
 日本の税務当局は税金の取りこぼしが無いように驚異的な尽力を持って税務会計基準を作成し時代の流れに伴って改定作業を行ってきています。例えば事務所用の建物で金属鉄骨が肉厚4ミリ超のものを使用している場合、耐用年数(使用可能年数のこと)は38年とされています。(平成10年4月1日以降取得分は45年に延長ヽ(´ー`)丿)また、減価償却費の計上方法は取得価額の10%を差し引いた残額を38または45(耐用年数)で割った金額とされ、これは砂漠の真中に建てようが東京の都心に建てようが同じにしなくては行けません。これは課税権を持つ税務当局が平等に配慮してそうしたもので、企業業績の測定などとは無縁のところで決まっています。ところが日本には税務会計以外にこのような会計の詳細を定めたマニュアルが無いためこの税務会計をデファクトスタンダードとして認めています。(ちなみに税務会計は利益増加方向に限って粉飾決算を認めています。これは法人税法70の2に「仮装経理で過大申告を行った場合…」として淡々と以下の手続を述べていることから分かりマス。)

IASが目指す会計と日本の会計が目指すもの

IASも日本式会計も目指すものはAccounting(説明)であり、企業が1年間経営した成果と期末日現在の状況の報告にほかなりません。
しかし、IASが企業能力をキャッシュフローという透明性の高い(恣意性が介在しにくい)指標をメインに、期間損益や資本取引計算を補助資料として企業評価を進めようとしています。
それに対し、日本式会計は決算書を開示する側の意向が強く反映された結果、正確に決算報告しようとするのではなく、良くも悪くも安定した決算となるように粉飾して報告することを許してきました。
さらに、税務会計については決算書上出来るだけ節税方針を採用し、会計処理をある程度曲げてでも節税しようとします。
そうした企業の会計処理に対して、会計実務は修正させるどころか税務や企業側に擦り寄った会計方法を妥当として認めて、結局、企業評価という本来の目的は曖昧にしてきたのです。